【リメイク版】不遇な朝田詩乃に寄り添いたい。   作:ヤン詩乃ちゃん( _´ω`)_

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色々リメイク前から端折ったり追加したりしてますが、基本的にリメイク前と比べ平均文字数が1.8倍くらいになっているので、お許しを。


【大会】第3回B.o.B編
朝田詩乃と第3回B.o.B予選 その1


「……ねぇ、本当(マジ)に買うの?それ。」

 

 キリトくんのチキチキ武器選びレースももうそろそろ終盤。見所がないからね。FN・ファイブセブン買ったくらいだし。

 

「えーでも、売ってるってことはそれなりに戦えるはずですよ。これでも」

 

 どうせ某星戦争ファンのスタッフが、面白半分で入れただけだと思うけどなぁ。

……待てよ。それならシュコーシュコーマスクも、何処かにあるのか……?

 

「とは言っても……フルオート相手にそれだけじゃ……もうお金もないわけだし。そりゃ、あなたの回避技術は凄いけど」

 

「もう無駄だぜシノンちゃん。買っちまいやがった」

 

「はぁ!?」

 

 フルオート相手にそれだけじゃ辺りで購入ボタンを押してたなぁ。付いてきてやってるのになんて奴だ……指導を受けたかったんじゃないのか?

 

「買っちまったもんはしょうがない。急いで総督府に向かおう」

 

 しっかりと弾丸その他諸々も揃え、外に出たら割とヤバい時間。しかし、近くのガレージに俺とシノンちゃんの共有ジープが配送されていた。

 

「おっともうこんな時間だ。これは歩いても間に合わないんじゃあないか!?」

 

「何よその口調は……私達のジープ呼んだんでしょ?それで向かえばいいじゃない」

 

 おぉっと気付かれていたか。

そりゃそうか。配送依頼を出した時もシノンちゃんは横に居たし。

 

「さっ、シノンちゃん、キリトくん。乗って乗って」

 

 このジープは、デカいし広いし改造してるから防弾窓装甲武器搭載エンジンブーストニトロ搭載なんでもござれのゴツゴツ車だぜ!味気ない!

 

「運転、出来るんですか?」

 

「そりゃ出来なきゃ持ってないっしょ。ムズいけどコツ掴んだら簡単だよ。」

 

 シノンちゃんの方を振り返ると、コクっと頷きOKサインがでた。

 

「よっしゃ!行こうぜ! 時間もねぇ!」

 

「わかったわよ……」

 

 シノンちゃんを助手席に、キリトくんを後部座席に乗せる。

 

「キリトく〜ん!」

 

「なんですか!?」

 

 窓を開けているので、強風でお互い声が聞き取りにくいが、大声で会話する事で対処する。

 

「このジープの特等席行ってみなよ!気持ちいいよ!」

 

「何処ですか!? 」

 

「銃座!上!空いてるでしょ!」

 

「ほら、貴方。ここよここ。ここに足引っ掛けて、頭出してみなさい。」

 

 意外とシノンちゃんが優しい。

キリトくんのカツンコツンという靴と鉄製のジープが当たる足音がして、銃座からキリトくんが顔を出す。

 

「……っわぁぁぁぁ!!すっげぇぇぇ!!」

 

「ハッハッハ!!いいだろ!!キリトくんはリアルでバイクとか乗る!?」

 

「乗ります!」

 

「あっ乗るんだ!?意外だな……まぁリアルのバイクとは似て非なる感覚でしょ!?」

 

「確かにー!当たり前ですがバイクより車高高くて、色々見えます!」

 

「2人共、子供っぽいわね……」

 

「「ハッハッハッハ!!!」」

 

 俺とキリトくんが意気投合しているのが気に食わないのか、シノンちゃんが頬を膨らませる。今は運転中なので手を出せないが、その頬をパクッと潰してやりたい。

 

 やがて総督府に俺達が着き、3人のエントリーを済ませ、近くのテーブルで一息つく。

 

 

 この時、個人情報の欄に住所や氏名を入力したが、大丈夫だろう。一瞬だが、原作でキリトくんはシノンちゃんを死銃ではないか?と疑っているシーンがあったので、ここで下手に住所を書き渋っていたら怪しまれる上、シノンちゃんと住所が同じなので、俺だけ書き込まなくても意味は無い。

 それに、既に俺達は新川くんとある程度交流を持ってしまっている。あれからも何の因果か新川くんとは顔を合わせる機会が多々あり、親睦を深めざるを得なかった。その分、対セキュリティには力を入れている。

 

 

 

 

 

 

「シノンちゃんはGブロックかい?」

 

 シノンちゃんはGブロック、僕はFブロック、そしてキリトくんもFブロック……ん?あれ、シノンちゃんとキリトくんの1on1って予選だったよな。

……あれ、本戦?本戦の最後?……あぁいや、予選で一発勝負して、キリトくんの勝ち。本戦では双方同意のお土産(道連れ)グレネードでB.o.Bは大団円END……だっけ。

 

「えぇ。シュウとキリトはFブロックか……」

 

「な、なぁ。これだと、どちらか片方は本戦に出られないんじゃ……」

 

「んー?そんな事ないよ。この予選は、決勝まで勝ち上がれば本戦出場なのさ。だから、俺とキリトくんが決勝まで上がればいい。幸いトーナメント表を見る限り、当たるとしたら決勝戦だし」

 

 それに、それぞれの予選優勝者だけだと、本戦が寂しくなっちゃうからね。

ドームにいたシノンちゃん曰く【お調子者】達の間を抜けて、俺は男子更衣室へ、キリトくんも男子更衣室へ、そしてシノンちゃんも男子更衣室へ……って、

 

「いやおかしいよね。こっちじゃないよね。明らかにシノンちゃんはFemale(女性)だよね!Male(男性)じゃないよね!?」

 

「はっ!ついいつもの癖で……」

 

「やめて!」

 

 GGO内の家でお風呂に入る時や、現実世界で服を脱ぐ時とか、いつも同じ部屋だからそれと同じ感覚なのかな!?

 

 この時シノンは、男だとわかっていながらも、女に見えるキリトが「出雲と一緒の部屋で着替える」という事に僅かながら、嫉妬と憎悪が込み上げてきた事は本人しか知らない。

 

「やぁ。こんにちは」

 

「お、よおシュピーゲルくん。あれ、お前出ないんじゃ……」

 

 更衣室から出て、予選開始まで暇を潰していると、新川くん改めシュピーゲルくんが応援に来てくれたとの事。

 

「全く来ないから心配したよ。遅刻するんじゃないかーって。」

 

「いやー、コイツの案内してたら遅れたわ。」

 

「へぇ……珍しいね。シュウがシノン以外の女の子連れ回すのは……」

 

「だろ?」

 

「だろ?じゃないわよ。ソイツ男よ、シュピーゲル。」

 

「……えっ!?へ!?」

 

「どーも。ソイツです。」

 

 キリトくん、分かってやってるな?

 そんな話をしてたら、いつの間にかキリトくんが淡い光に包まれ、消えていった。

そんな……!消えた……!あのお喋りなキリトくんが……!一言も喋らず……!消えていった…………!なんて1人カイジを脳内でやってたら、俺とシノンちゃんも包まれ始めた。

 

「じゃあなシュピーゲルくん。応援よろしく 」

 

「bye」

 

「うん、頑張って、シノン、シュウ」

 

 シュピーゲルくんのその声と笑顔を最後に、俺達の視界は光で埋め尽くされ、やがて消えた。

 

 

 

 

 

 

 眼を開くと、そこは森だった。

直径30cmはあるであろう太い幹をした木々が多く並び、まず考えたのは(シノンちゃんがこのステージだったらちょっと不利だったよなぁ。)だった。いつでも最初に思い浮かぶのはシノンちゃんである。

 

「さて……と」

 

グレーの質素なアーマープレートと太もも周りに着けた黒のマガジンポーチだとこの森ではよく目立つ。腰に装着したウェストポーチから緑のポンチョを取り出し、被る。これでカモフラ(カモフラージュ)は良しとしよう。

B.o.B予選は1on1で1×1kmフィールドで行われる。

俺の場合は森だったが、廃墟ビル立ち並ぶ高低差のあるフィールドだったり、アメリカの住宅街のような平屋が立ち並ぶ市街地フィールドだったりする。らしい。

まぁ森はいい。足場は悪いが、P-90(P)*1使い接近戦AGI超極振り構成の身としてはやりやすい事この上ない。

 

「……」

 

 まずは索敵。その場に伏せ、周りをぐるりと見渡す。敵は見えない。当たり前だが、すぐ接敵する距離にお互いスポーンさせる程運営も馬鹿じゃないだろう。なれば、まずすべきことは……

中腰になり、歩き出す。出来るだけ枯葉や木の枝を踏まないよう、しっとりとした土だけを踏み足音を立てないようゆっくりと動く。1体1のガンバトルという性質上、そしてGGOのシステム上先に発見した方が先ず有利だ。先手必勝という訳では無いが、有利なことに違いはない。

B.o.B予選ではHP(ヒットポイント)回復アイテムは持ち込めない事になっている。戦いの長期化を避ける為だ。

そうしてしばらく歩いていると、

 

「……は?」

 

 思わず声に出して疑問符が浮かんでしまう。何故なら、ガシャガシャベキベキグシャグシャと派手な足音が左前方から聞こえてきたからだ。

確信した。これは初心者(ニュービー)だなと。

1回戦目は楽勝かと思って、極振りしたAGIをフルに使って足音の方に向かう。もちろん出来る限りスニークして。

 

 居た。

すぐに発見することが出来た。何故なら、俺のようにポンチョで偽装もしていなければ、掲げるどデカいマシンガンを隠そうともせず片手で銃口を上にしてキョロキョロと周りを見回していたからだ。

まだバレてないな。と思い、銃口を素早く敵の頭部に当てる。敵がこちらを視認していれば、弾道予測線は相手に見えない筈だ。

 トリガーに指を触れると同時に、バチンと視線が合った。

不味い!と思い、すぐに射撃。毎分900発以上の弾丸が敵を襲うが、頭に2発当たっただけで避けられてしまった。

しかし、いくら5.7×28mm弾とはいえ、頭に2発も喰らえば相当なダメージだ。それに相手はポンチョすら持たないニュービー。無傷な俺がまだ慌てるような時間じゃない。

 

「見つけたぜぇぇぇ!!」

 

 その声が聞こえた瞬間、弾道予測線が俺の居た場所を貫く。AGIをフル活用してバックステップで樹の陰に隠れた瞬間、ドガガガガガガガガ!!!!という激しい連射音と共に、俺がさっきまで居た場所を蜂の巣にした。

 

「ヒャッハー!!!マシンガンを撃つのはやっぱりたまらねぇぜぇぇぇぇ!!!」

 

 という声と共に、未だマシンガンは炎を吐き続ける。

 

「おいおい!いつまで撃ち続けるつもりだァ!?」

 

「弾が無くなるまでだよォォォォ!!!」

 

ドガガガガガガガガガガ!!!!

ドガガガガガガガガガガ!!!!

ドガガガガガガガガガガ!!!!

ドガガガガ……ガチン

 

「やっと弾切れかこのハッピー野郎!」

 

「おぉっとリロードタァイム!ちょいタンマな!」

 

「待つかバッキャロー!」

 

 仕返しとばかりに、バッと樹から飛び出して弾丸でぐしゃぐしゃになった通り道を駆け抜ける。

幸い、さっきまでの爆射撃で枝や木の葉が飛び散り獣道のようなものが出来ている。その道を全速力で駆け抜け、直線上にあった樹に回り込む。

 

「リロード完りょ……ォ!?」

 

 のんきに銃を【く】の字にして新しい弾倉を込め終わって構え直そうとしていた所に、俺の飛び膝蹴りが顔面に炸裂する。

しかし、ことGGOに関しては【体術】によるダメージは殆ど期待出来ない。飛び膝蹴りによるダメージエフェクトは発生したが、それでヒットポイント全損までは行かなかったようだ。

 

「お前には俺のP-90(P)を使うまでもないね!」

 

「おォ!?」

 

 GGOは数あるVRMMOの中でも、【痛み】。つまり、【ペイン・アブソーバー】というものが軽く設定されている。つまりは、痛みを感じやすいという事だ。

もちろんナイフで切られたら本当に裂傷のような痛みが襲う訳ではなく、じーん……とした、強めの指圧ぐらいの痛みが襲う。これは銃でもナイフでも体術でも同じだ。ダメージ量に関係なく、同じくらいの痛みが襲う。

 頭にそれを食らった相手はよろめき、銃と共に後ろに倒れる。P-90(P)をスリングで背中に回し、太もものマガジンポーチの後ろに隠されたカランビットナイフを取り出し、相手の首にすかさず切り込む。

 

「ぐぇ」

 

 そんな潰れたカエルのような声を出し、パタンと相手は倒れる。

 

「ふぅ……マシンガンのリロード速度だけは褒めてやる。ニュービーは撤回だな」

 

 そう言った瞬間、転送が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に明かりから目を覚ますと、元いた待機エリアに居た。まぁ、勝ったから当たり前なんだが。

当然と言えば当然だが、シノンちゃんとキリトくんも居ない。シュピーゲルは少し離れた所でモニターを見ている。

 

「あんたはぇーな!」

 

「えっ?あぁ、まぁ、相手が相手だったもんで……」

 

 待機エリアにいたやつに話しかけられたが、軽く受け流す。これは本当に相手が相手だった。倒しやすいと言っちゃ失礼だが、流石に1体1でマシンガン撃ちまくってリロードタァイム!とか言ってその場でリロードし始める奴に負ける気はしないし、長期戦もありえない。それぐらいのトッププレイヤーに俺は居るのだ。

 

ボーッとモニターを見ていると、キリトくんが《餓丸》なる相手に光剣*2でギャンギャン弾に斬りかかり最後は胴体に一撃決めて終わる様を見る。

やっぱ原作主人公強いな。弾道予測線があるとはいえ弾を切るとかどんな反応速度だよ。

キリトくんが戻ってきて、キョロキョロしてるのを遠巻きに見つめていると、灰色ローブの男がキリトくんに近づく。

 

「(アレが死銃か……)」

 

「ねぇシュピーゲルくん、今キリトくんに話し掛けてる人知ってる?」

 

「キリト?……あぁ、彼ね。いいや知らないね。」

 

 あーやっぱクロか。シュピーゲルくんも結構古参プレイヤーだし、プレイヤーの引き出しは多い。そんな彼が記憶の引き出しを漁る間もなく答えた。この距離ではローブしか見えないのに、だ。

ふむ……

 

 暫く話し合い、灰色ローブの男が待機エリアの出口に向かう。

そして、顔面蒼白といった様子のキリトくんに話しかける。

 

「よっキリトくん。1回戦凄かったねぇ〜」

 

「あっ?……あっ、あぁ……」

 

「……どした?なんかあった?」

 

 あえて自然体に振る舞う。

 

「……シュウ、キリトがどうかした?」

 

「おかえり。シノンちゃん。いやぁ。なんかキリトくんの様子がおかしくて。さっきローブ被ったやつに話しかけられてたけど、なんかあったん?」

 

「いや。本当に、なんでもないんだ……気にしないでくれ」

 

「まぁ……そこまで言うなら。でも、アミュスフィアの限界ギリギリ!ってくらい動揺してるぞ。とりあえず落ち着け〜瞑想でもスっか?」

 

 ちらりと待機エリア入り口に目を向けると、件の【死銃】の赤い双眼がこちらを見据えていた。

 

 その眼が俺達の誰に向けられているのかは分からない。

 

 しかし、ハッキリとした殺意だけをひしひしと感じた。

*1
Pー90プロトタイプの略称

*2
ライトセーバーのような武器

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