【リメイク版】不遇な朝田詩乃に寄り添いたい。   作:ヤン詩乃ちゃん( _´ω`)_

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タイトル詐欺50%


朝田詩乃と観客。

「…………」

 

 

 【死銃】は困り果てていた。

第1回サテライト・スキャン、死銃はマップ北東、廃駅校舎にスポーンしていた。近くには《Kirito》の文字。距離にして3〜4km程か。

 

 

「…………ハァ」

 

 赤い目を光らせながら、マスクの中でため息を吐く。

死銃の第1目標はキリト……ではない。なにせ、死銃はキリトを本当の意味で【殺す】手段を()()()()()()()()()からだ。

 自分の怨敵。宿敵とも言っていい存在だが、今彼をB.o.Bから退場させるべきか悩んでいた。

 今後の事を考えるなら、彼の装備でちゃっちゃとキリトを【殺す】のではなく【退場させる】事が最善なのだろうが、如何せん相手はキリトだ。【黒の剣士】【二刀流】【ビーター】。彼を呼称する名は多いが、GGOに来てからは弾を斬ったりしているらしい。なんなんだアイツは。頭痛の種でしかない。

 しかし、もし、もし名前が同じだけの偽物なら…………いや、B.o.B本戦に残っている時点で、更に【弾を斬る】なんてGGO離れした芸当をする人間と【黒の剣士】が同じ名前である時点で、その可能性は捨て去っていいだろう。

 

「(……当初、の、目的……を、遂行、するか)」

 

 彼はとりあえずキリトは放置し、サテライト・スキャン端末から最も近い【殺せる】相手の名前を探し出し、其奴の場所へ歩を進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ファースト・キルは氷の狙撃手様かぁ。さっすがぁ!」

 

 ワイワイ、ガヤガヤとB.o.Bを観戦する人々の集まるグロッケンの某酒場。予選敗退プレイヤーや、物見遊山で来た中堅プレイヤー、勉強の為に来た初心者プレイヤーでごった返していた。

 

 ピトフーイは、そんな酒場のとある個室で、モニターを前にアイスティーのような何かを飲みながら観戦していた。

 

「何故俺を連れてきた。ピトフーイ」

 

「いーじゃんいーじゃん。友達でしょー?」

 

「お前なんかと友達になった覚えは無い」

 

 辛辣なこの黒スーツの男の名はパスト。同じ個室でピトフーイから出来るだけ距離をとって座って、反対側のモニターを見ている。

 

「まぁまぁ。お二方落ち着いて……」

 

 間に挟まるはケンタ。強豪スコードロン【メメント・モリ】の攻撃手(アタッカー)である。この個室の中では比較的まともな部類の人間だ。

 

「放っておけケンタ。どちらも話の通じる相手ではない……あぁ、パスト氏。別に貶した訳では無いから気を悪くしないでくれ」

 

 そしてジェイク。先程紹介した【メメント・モリ】のスコードロンメンバーであり、副リーダーである。他にも【メメント・モリ】のメンバーがこぞって集まっている。

 

「あの……なんで私はここに……」

 

 ちっこいローブを被った女の子がピトフーイの隣で常時冷たいアイスティーを小さな手で弄りながらピトフーイに話しかける。

 

「見学だよ見学。レンちゃんはまだGGO初心者でしょー?上澄みの戦いは見て損は無いって。ホントは参加して欲しかったけど……まぁそこはしょうがないか」

 

 ピトフーイがレンと呼ばれた少女の肩を組みモニターに近付ける。

 

「それじゃーレンちゃんの為に、今回第3回B.o.B(バレット・オブ・バレッツ)本戦出場者の目玉出場者達を紹介しよーーーーーーーっっっう!!!!!」

 

「五月蝿い……」

 

 パストが独り言るが、そんな事はお構い無しに参加プレイヤー一覧画面に切り替える。

 

「まずはこの子ね。第3回B.o.Bファーストキル賞受賞者の水色の髪の毛の女の子、シノンちゃん。通称【氷の狙撃手】。【不言実行】なんて2つ名もあるけど、まぁーこれはコンビ名みたいなものかな。スナイパーの腕は超一流。私の知り合いにも上手い人居るけど、その人とイーブンかそれ以上。使ってる主武器(メインウェポン)は【ウルティマラティオ】シリーズの【へカートⅡ】っていうユニーク武器の対物ライフル。ちなみに予選で私が殺られちゃった相手。」

 

「ピトさんが!?」

 

「そーよもーズバンとね。気付いた時には〜って奴?」

 

 ヘラヘラ笑いながらびっくりしているレンを横目に見ながらアイスティーを飲む。

 

「次にその相方、女の子らしい平々凡々な姿からは予想出来ないAGI(敏捷値)超特化型スタイルのシュウくん。ちなみに男ね。スピードで言えばラン&ガンの鬼【闇風】以上、多分単純な走るスピードならPS(プレイスキル)込みでGGO最速だね。どっかの誰かさんが言った【AGI万能論】を嘘じゃなく現実にした最強の一角。主武器はP-90(P)。P-90っていうレア武器のプロトタイプだよ。ちなみにこれもユニーク武器」

 

「プロト……タイプ?」

 

「開発初期段階みたいな意味かな。今の所市場にも出回ってないし発見報告もなし、まぁあんな松葉杖みたいな銃まともに使うのシュウくんくらいしか有り得ないと思うけど!」

 

「そうでも無いぞ」

 

 ピトフーイの解説に横槍を入れたパスト。

 

「奴の予選で見たが、あのP-90(P)は【光剣】を受けてダメージエフェクトも出さない程並外れた耐久値を持つ。それにあのデカさだ。いざと言う時には予選でやったように盾にもなる。重量の問題でサブアームに重い物を持てないのは難点だが、シュウにはそれを補ってあまりある素早さがある。P-90(P)もP-90も同じPDW(パーソナルディフェンスウェポン)だ。DPSも高い。俺も予選で体感したが、シュウの素早さは恐ろしい武器だ。そこにあのPDWが加わったせいで手が付けられなくなっている。シュウと同じAGI特化型ならシュウのように見付け、走り、近距離から蜂の巣にする(見敵必殺)戦法が出来るし、お前のようなSTR(筋力値)特化型なら盾と弾幕で草原だろうが平野だろうが戦える。P-90はその脆弱さ故に使い手を選ぶ武器だが、P-90(P)にはそれが無い。多少重い程度苦にもならん強武器だ。まぁその大きさゆえに室内戦の取り回しの悪さ、アサルトライフルの直径でサブマシンガンの戦いを求められる難しさ、拡張性のなさは弱点だが」

 

「(い、いきなり饒舌に話し出したぞこの人......)」

 

「ハイハーイ厄介オタクくんは黙ってようね〜」

 

 少し引き気味のケンタと、それをサラッと流すピトフーイ。プレイヤー一覧をスクロールしながら、次なる強敵を探す。

 

「そーそー私あんま知らないんだけど、このキリトって子も強いらしいね。なんと弾を斬ったとか」

 

 少しピトフーイの顔が動くが、すぐに元に戻る。

 

「弾を?」

 

 ジェイクが驚いたように聞き返す。

 

「私も見た訳じゃないんだけどねー。シノンちゃんに頭ぶち抜かれて自棄アイスティーしてる時に酒場からそんな声が......」

 

「フン。お前のような奴の言葉信用出来んな。」

 

 若干所じゃなく険悪ムードのパストとピトフーイ。昔なんやかんやあって仲の悪い2人だが、実はこの個室の主はジェイクだったりする。ピトフーイがレンとパストを引きずるように乱入し、嫌な顔をしつつも【初心者育成の為】とレンを引き合いに出され紳士で押しに弱いジェイクは流されてしまった。

 

「他にはそだなー......この子かな」

 

 そう言ってピトフーイが参加者メンバー一覧の1人の名前をポチりと押す。

 

「エンフォーサー。2つ名は【ルールブック】」

 

「押し付けがましいクソの間違いだろ」

 

「実力は本物だって」

 

 苦虫を噛み潰したような顔をするケンタ。過去苦渋を飲まされた事がある。

 

「まぁコイツは強さで言えば今まで言ったトッププレイヤーには及ばないけど、恐ろしい程視線や殺意に敏感。マジで変態な奴かな。主武器はCoral48。まさかまさかの光線銃使い!防護フィールドはみんな付けてるだろうし、減衰も考えて使ってる変態プレイヤーだよ。でも対人による光線銃使いとしては、トップレベル。通称も光線銃使いにとっての【ルールブック】だから。って意味ね。本当なら対モンスター用の光線銃をあまつさえ対人大会のB.o.Bで使う生粋の変態......2回言っちゃったけどまぁそんなヤツ。組むヤツ組むヤツに「近未来(エネルギー)武器とは素晴らしい!」って事を布教して回るって事で、ある意味煙たがられるよ」

 

「光線銃ってそんなに対人で弱いんですか?」

 

 初心者プレイヤーのレンがピトフーイに質問するように声を出す。

 

「弱いも弱い。超弱い。実弾タイプと戦ったらまず勝てないね。防護フィールドでダメージ減衰激しいし、リロード......まぁ光線銃の場合エネルギーパックの交換も手間がかかるし。いい所なんて弾速とエネルギーパックのコスパの良さかなー」

 

「でもこの人はその光線銃で予選通過して本戦に出てるんですよね?」

 

「そう!だから変態なのよこいつは」

 

 そんな会話をする横で、ケンタがレンの隣まで来て、耳打ちするように話す。

 

「まずこのエンフォーサーとかいう奴は参考にしない方がいい。光線銃には光線銃なりの良さがあるのは分かるけど、神みたいに崇める奴が一定数いるから、君も気をつけな」

 

「は、はい」

 

 ケンタはそれだけ言って、メメント・モリの仲間達の元へ戻っていく。

 

「どしたレン。口説かれた?」

 

「そ、そんなんじゃないですよ!」

 

 慌てて弁明するレンに、?マークをうかべるピトフーイ。

 

「まいっか!他には、そうだなぁ。この夏侯惇っていうプレイヤー......」

 

 ピトフーイが夏侯惇のプレイヤーネームを指差した瞬間、ピコン。という音と共に赤く染まる。

 

「............」

 

 無言のピトフーイ。

 

「............」

 

 オロオロするレン。

 

「............」

 

 無関心なジェイク。

 

「............で?」

 

 そしてパストが嘲笑を浮かべながら固まるピトフーイの方を見る。

 

「......は、ザコ!!!!!!」

 

 快活な笑顔でプレイヤー一覧を閉じるピトフーイを見て、レンは静かに苦笑した。

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