【リメイク版】不遇な朝田詩乃に寄り添いたい。   作:ヤン詩乃ちゃん( _´ω`)_

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朝田詩乃と死銃 その2

 

 

 

 

 

「……ペイルライダーは白だな。同時に、西に居たルルンドとパージャーも白、AAAAAAとステルベンはグレーって所か。」

 

 ペイルライダーのリザインを見届け、橋の上で俺達は顔を合わせる。

 俺はGGO最速の(アジリティ)を持っている。それでも、先程ルルンドとパージャーの居た場所からここまで走ってくるのは不可能だ。バギーや馬を使ったとしても無理だろう。

 

「危なかったな……本物の被害者が出るまでに奴をとめたい。アイデアをくれ、シノン、シュウ。」

 

「……サイレントアサシンを使ってる辺り、死銃は基本的には私と同じスナイパーだわ。なら、開けた場所は苦手な筈。行くなら、中央の廃墟群かしら。」

 

「だが問題はあのメタマテリアル光歪曲迷彩だ。」

 

「何?奴が持っていたのか?」

 

「あぁ、俺が追撃した時、柱に隠れた一瞬で使われ逃げられた。キリトくんはAAAAAAとステルベンがグレーと言ったが、俺的にはAAAAAAは限りなく白に近いグレー、ステルベンは限りなく黒に近いグレーだと思う。メタマテリアル光歪曲迷彩を持っているなら、サテライト・スキャンを回避するだろう。先程スキャンに映っていなかったのはステルベンだけ。あえてAAAAAA(死銃)が映った可能性もあるからグレーだが……ステルベンが死銃なのは80%くらいか。」

 

「なるほどな……とりあえず俺達であの中央廃墟群に向かおう。」

 

「あぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中央の廃墟群に到達し、丁度サテライト・スキャンの時間になる。物陰に隠れ、スキャン結果を見る。

 

「ッ!AAAAAAも中央に居るのか。ステルベンは……いない。」

 

 3人で北、南、中央から確認して言ったが、やはりステルベンは発見出来なかった。

 AAAAAA以外にも、中央には何人かプレイヤーが居る。

 ちなみに、ルルンドとパージャーは《Dead》になっていた。

 

「まずいな。死銃の狙いが絞れない。」

 

「最悪、ステルベンが死銃だとしたら、AAAAAAも死銃に狙われる可能性もある。」

 

「ステルベンがメタマテリアル光歪曲迷彩を持っている時点で、戦力を分けるのは悪手だ。3人1組で動いた方がいいだろう。2人組になったら、残り1人が危ない。メタマテリアル光歪曲迷彩に加えサイレントアサシンの麻痺弾もある。」

 

 スナイパーのシノンちゃんを完全後衛に回せないのは痛いが、しょうがない。

 とりあえず廃墟群中央のスタジアムに居るAAAAAAを倒そうという話になり、3人で移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果から言えば、AAAAAAは死銃ではなかった。

 邂逅した瞬間、それは分かった。見た目からして、完全に筋肉モリモリマッチョマンだった。ローブで隠せる程度ではない。俺とキリトくんが突貫し、AAAAAAの銃撃を俺はかわし、キリトくんは斬り伏せた。

 

「チーミングかっ!」

 

「言い方考えろ!同盟と言え!」

 

 まぁチーミングな事に変わりは無いが。俺の銃撃からかわす為、キリトくんの方に向かうが、あえなくヴォーパル・ストライクの餌食に。しかし、VIT(体力)STR(筋力)型のようで、キリトくんの斬撃だけでは殺しきれなかった。そこを針の糸を通すようなシノンちゃんの狙撃が襲う。

 

「クソが……!」

 

 そんな悪態をつきながら、AAAAAAは第3回B.o.Bから敗退した。俺はスタジアムの端に立ちながら、一呼吸吐く。

 すると、背中に鈍痛。次に痺れ。

 

「(なんだ……!?)」

 

 俺は体制を崩し、スタジアムの下に落ちる。

 

 

 

 

「「シュウ!!」」

 

 スタジアムから落ちていくシュウに向かって手を伸ばすが、その手は空を切る。スタジアムの下を覗くと、体から電光を発するシュウの体と、近くにサイレントアサシンを構える死銃……ステルベンが居た。慌てて顔を逸らすと、サイレントアサシンから発せられた弾丸が頬を掠める。

 

「キリト!シュウは!?」

 

「下を見るなシノン!」

 

 下を見たシノンが見たのは、シュウの体を担ぎ、ビルの中に隠れる死銃。

 

「待て!!貴様ァ!!!!」

 

 シノンがへカートⅡを構えるが、ビルの中に姿を隠した死銃には当たらない。

 身を乗り出し、飛び降りようとするシノンの手を掴む。

 

「待て!死ぬぞ!」

 

「先に落ちたシュウが生きてるなら私も死なない!それにこのままじゃ出雲が殺される!!!」

 

「落ち着け!」

 

「落ち着け!?落ち着けですって!?この状況で!?出雲が死銃に殺されたらどうするのよ!」

 

「今俺達がすべきなのは安全にシュウと死銃を追跡する事だ!ここから安全にすぐ追いつくすべはあるか!?」

 

「ッ!……私はラペリング降下出来るからこのまま降りて追う!キリトは降りて走ってきて!」

 

 そして、シノンは俺の制止を振り切って飛び降りた。空中でワイヤーをスタジアムの端に引っ掛け、ラペリング降下を始めた。俺も走ってスタジアムの出入り口を目指す。

 

 

 

 

 

 

「……ここなら、邪魔、は、入らない……」

 

「ハッ………クソ野郎が。」

 

 死銃に捕まった俺は、乱暴に柱に投げ落とされた。

 シューと口から空気を出す赤い目をしたぼろマントの男、死銃と俺が対峙する。

 

「お前を、殺す、前に。いくつか、聞きたい、事がある。」

 

「(殺す?殺すだって?)」

 

 それはゲーム的な死を意味するのか、それとも死銃の意味する……本物の死を意味するのか。

 いや、まさか。そんな筈はない。死銃の手口を俺は知っている。その方法じゃ俺とシノンは殺せない筈だ。そんなことはありえない。

 

「お前は、何者、だ。」

 

「……どういう意味?」

 

 少し、そう、ほんの少しだけ、死の恐怖を感じる。

 

「(原作から殺しの方法を変えた?それともハッタリか?)」

 

「お前は、俺の、やり方に、気付いて、いるだろう。」

 

「!?」

 

 やり方。つまりは、殺し方。それに俺が気付いている事も奴は気付いている。

 

「スキャンで、ずっと、見ていた。お前は、俺が、Sterben(ステルベン)が、死銃だと、気付いて、いたな。俺の、戦い方、も。光歪曲迷彩の、事も、最初から、知っていた、ようだ。もう一度、聞く。お前は、何者、だ。」

 

「…………」

 

 冷や汗が止まらない。

 コイツは、サテライト・スキャンの僅かな時間で、俺がキリトやシノンと打倒死銃を掲げた事、キリト達をそれとなくSterben(ステルベン)から離して動いていた事を読み取ったのだ。それに加え、何故か分からないが俺が死銃の殺し方を知っている事まで勘づいている。

 

「答えない、か。まぁ、いい。」

 

 倒れた柱に腰かけていた状態から立ち上がり、腰から隠していた……忘れていた原作知識と、昔リアル世界で見た事のある唯一のハンドガンを取り出す。

 

黒星(ヘイシン)……54式……!」

 

 その銃口が、俺に向けられる。

 

「お前なら、馴染みの深い、銃だろう?安心、しろ。今回の、B.o.B。ペイルライダーを、仕留められなかったのは、惜しいが、残りの狙いは、お前と、シノン、だけだ。」

 

 その瞬間、俺の中でブチりと仮想世界には無いはずの血管が切れる音がする。

 

「貴様ァァァ!!!居るんだな!?!?今!!俺達の部屋に!!!貴様らがァァ!!!!」

 

「あぁ、そうだ。お前と、シノンが、死銃最後の、死者だ。」

 

 どうして!?どうやって!?誰が!?新川か!?それとも別の共犯者か!?

 

「さらば、だ。」

 

 俺は、麻痺のステータスシステムに抗いながら立ち上がろうとする。

 

「うおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」

 

 死への恐怖はなかった。ただ、俺の頭の中にあるのはシノンの事。俺が死んだらどうなる?死銃の次のターゲットはシノンになる。俺が死んだら守れない。また彼女は1人になる。それはダメだ。許されない。

 

「(生きる!生きるんだ!俺は、こんな所で……死ねない……!)」

 

 死銃の指が黒星のトリガーにかかる。黒星から伸びる弾道予測線が俺の体を貫く。

 

「死ぬ、訳には……行かないんだァァァァァァァ!!!!!!」

 

「ッ!!」

 

 パンッ。

 チュンッ。

 先程まで俺が居た場所を黒星の弾丸が貫いた。麻痺で痺れる体のまま、AGIに任せた蹴りで弾丸を回避した。そのまま方向転換し、カランビットナイフを抜き取って死銃に迫る。

 

「ッ!」

 

 ナイフをやすやすとかわし、俺から距離をとる。

 

「どういう、事だ。何故、立てる。スタン、バレットは、まだ、効いてる、筈だ。」

 

 割れたガラスに反射した俺の姿を見て、背中に刺さった麻痺弾(スタン・バレット)を抜き取る。

 

「知るかよ……!」

 

 この時、割れたガラスに反射した俺の瞳は、普段の黒ではなく、黄色く光っていた。

 

「お前をこのまま逃がしはしないぞ……死銃!」

 

「フッ……銃のない、お前が、俺に、その貧弱な、ナイフだけで、勝つつもりか?」

 

 サイレントアサシンの銃口を掴み、引き抜く。

 

刺突剣(エストック)か……随分と小さいな。」

 

「そうだ。銃剣作成スキルで、作れる。重さや長さは、これが限界だがな。」

 

「そうか。」

 

 俺がナイフを構え、死銃が右手にエストック、左手に黒星を構える。エストックは兎も角、黒星。アレはヤバい。1発でも当たれば、HP関係なく俺は……死ぬ。

 いざ勝負、というタイミングで、聞き馴染みのある轟音。同時に死銃が後ろに飛び退いた。

 壁が抉れ、砂塵が舞う。その隙に俺はビルから出る。

 

「シュウ!」

 

「キリト!」

 

 まず出会ったのはキリトだった。後ろで、シノンがへカートⅡを構えているのが見えた。やはり、先程の轟音はへカートⅡの射撃音だったか。

 

「無事か!?」

 

「あぁ、シノンは!?」

 

「無事だ!とりあえず離れよう!」

 

 キリトの言葉通り、俺はキリトと共に路地を走る。シノンもそれに合わせ、走り出す。

 シノンが拾っていたPー90(P)を貰い、後ろに弾をばら撒きながら走る。万が一にでも黒星の一撃を貰う訳には行かない。

 

 レンタバギーのある場所まで走ってきて、キリトに運転を任せ俺とシノンは後部座席に乗る。

 

「シノン!へカートⅡであの馬を撃って破壊してくれ!」

 

「分かった!」

 

 へカートⅡの射撃音と同時に、バギーが発進する。これで死銃が俺達に追い付くのは不可能になった。

 曲がり角を曲がってきた死銃を見て、Pー90(P)を撃つ。死銃は物陰に隠れ、弾をかわした。

 段々と離れていく死銃をしり目に、俺達3人は息をつく。

 

「危なかったな……いってぇ!」

 

 パンッ!とシノンちゃんの平手が俺の頬を穿った。

 

「馬鹿!!心配したんだからね!!」

 

「ご、ごめん……気抜いてた。」

 

「シュウ、死銃には撃たれなかったか?」

 

「……そこなんだが、キリトくん。奴の手口が分かった。」

 

「何だって!?」

 

 もう隠す必要も無いだろう。

 

「キリトくん。そしてシノンちゃん、落ち着いて聞いてくれ。俺も動揺しているが、息を整えるんだ。」

 

「え、えぇ。」

 

 そして、俺は満を持して口を開く。

 

「奴の人を殺す手口。それは、ゲーム内のハンドガンの射撃に合わせ、リアルにいる無防備な俺の体を殺す、事だ。」

 

「……えっ?」

 

「俺があの銃に狙われたのを見るに……シノンちゃん、俺達の部屋に、死銃の仲間が居る。」

 

「ッ!!!」

 

 へカートⅡを置き、身体を震わせるシノンちゃん。俺は慌ててシノンちゃんの体を抱き、落ち着かせる。

 

「落ち着け!落ち着くんだシノン!今アミュスフィアの緊急ログアウトで落ちたらもっと危ない!奴は殺しに美学を持ってる!あの銃で撃たれない限りリアルの死銃も俺達を殺さない筈だ!」

 

「でもっ!でも!出雲……出雲!」

 

「大丈夫、大丈夫だ。俺が守る。大丈夫だから……」

 

 キリトくんはこちらの様子を伺いながら、口を開く。

 

「殺しの方法はなぜわかった?」

 

「死銃と話した。奴がベラベラと喋ってくれたよ。」

 

 もちろん嘘である。奴にはこのまま都合の悪い事を被ってもらおう。

 

「そうか……」

 

「でも、どうやって?お医者さんが調べても死因が分からなかったから、不審死なんでしょ?」

 

「ゼクシードと薄塩たらこは死後数日経過していた。グロい話だが……腐敗が進んでいたらしい。注射かなんかの小さな傷跡なら、腐敗で分からなくなっても不思議じゃない。薬の入手ルートなんかは、本人に聞いてみないと分からないな。」

 

 情報のすり合わせを行う。

 

「キリトくん。奴は刺突剣(エストック)を使っていた。」

 

「エストック?この世界に金属剣があるのか?」

 

「奴いわく、銃剣作成スキルで作ったものらしい。まぁ、エストックと言うには小さかったがな……」

 

 胸の中で震えるシノンちゃんを抱きしめる。

 

「俺とシノンちゃんが死銃の手の中にある今、安全なキリトに矢面に立ってもらうしかない。シノンちゃんはまだ狙撃があるが、俺は奴の前にそうやすやすと姿を現せられない。」

 

「もちろんだ。あの銃が人を殺すものでは無いとわかったなら、俺も怖いもんはない。俺は病院から、近くに人がいる状態でダイブしてるからリアルの心配はないだろう……疑問なのは、リアルの死銃がどうやって君達の家を特定、セキュリティを突破したのかだ。」

 

 着目すべきは、セキュリティの突破だ。俺の家は高層ビルの24階だ。前も言ったが受付もガードマンも居る。

 

「住所は……恐らく、総督府だろうな。あのメタマテリアル光歪曲迷彩が圏内でも使えるなら、総督府でB.o.Bエントリーの時に入力した住所を見て特定したんだろう。直接はブラインドがかかって見えないだろうが、鏡やスコープ、双眼鏡を使えば見える……と、思う。」

 

「なるほどな……セキュリティの突破は、考えても分からないな。でも死銃が君達を殺せると公言したなら、撃たせるわけにはいかない。」

 

 死銃が黒星(ヘイシン) 54式を使っていた事は伏せよう。シノンちゃんには要らぬ心労をかける。

 そんなこんなで運転していると、俺が最初スポーンした砂漠と同じ場所につく。

 

「こんなに見晴らしがいいと、隠れる場所もないな。」

 

「キリトくん、あそこに洞窟がある。あそこで次のスキャンをやり過ごそう。」

 

 そして、洞窟の前でバギーを止めて中に入る。

 

「ここなら、奴が姿を消しても荒い砂で足音がわかるし、足音で奇襲も出来ない。ここで待機だな。」

 

「そうだな。」

 

 シノンちゃんを抱えながら、洞窟の中に腰を下ろす。シノンちゃんは俺の膝の上に乗り、首の後ろに手を回す。

 

「ふぅ……」

 

 とりあえず、誰も死ななくて良かった。

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