【リメイク版】不遇な朝田詩乃に寄り添いたい。 作:ヤン詩乃ちゃん( _´ω`)_
「無事……って、訳でもないか。」
エストックの連撃とエンフォーサーの最後の一撃により左足を失ったキリトくんと、そのキリトくんに肩を貸すエンフォーサーが砂丘の上まで歩いてくる。
「とりあえず俺達は安全か……さて、キリトくん。俺達は今後どうすればいい?」
「そうだな。悪いが、まずはシュウとシノンのリアルの情報を聞かせてくれ。」
「おや?そんなことを聞くんですか?」
「あぁ……お前は何も知らないんだったな」
かくかくしかじか。キリトくんが死銃の事や自分の諸事情をエンフォーサーに説明する。俺とエンフォーサーはDAOからの腐れ縁だし、最後だけとはいえ俺達のために死銃と戦ってくれた恩がある。
事情を全て聞いたエンフォーサーは、自身も死銃討伐の協力者として、そしてキリトくんをSAO生還者としてGGOに送り込んできた人間に興味があると口にして、リアルの情報を言い始めた。
「私のリアルネームはアルレシャ・ファラムと申します。住所は神奈川県藤沢市━━━━━」
諸々のエンフォーサーのリアル情報を聞き、キリトくんはすぐにエンフォーサー━━━━アルレシャ・ファラムの所に人を送ると約束した。
「問題なのは俺達だな。俺の名前は柊 出雲。住所は━━━━━━だ。シノンちゃんと同じだよ。」
「私は朝田 詩乃。」
「わかった。ログアウトしたら、まずは安全確認してくれ。そして警察に通報するんだ。俺からも人を送る。」
「わかった……さて、どうする?」
「なにが?」
もちろん、第3回B.o.B本戦について、である。
元々この大会には勝つ為に来た訳じゃないが、恐らくここにいる4人以外生き残りは居ない。誰が勝者になるのかは、これを見ている観客達も困惑しているだろう。何故こいつらはバトル・ロワイヤルの最終局面で顔を合わせて話し合っているのか?と。
「死なば諸共。全員優勝でいいんじゃない?」
「どういう事だ?シノン。」
その問いに答えたのはシノンちゃんではなくエンフォーサーだった。
「第1回B.o.Bは、2人同時優勝だったのですよ。理由は、勝つ筈だったプレイヤーが油断して、お土産グレネードを貰ってしまったからです。」
「オミヤゲグレネード?」
「そうです。シュウくんは確かグレネードを持っていましたね。それで決着としましょうか。」
「まぁ、いいか……」
4人が円になって固まり、円陣を組むように1番下にエンフォーサー、次にキリトくん、俺、シノンちゃんの順番で右手を置き、シノンちゃんの右手に1つのグレネードを置く。ピッ、とボタンを押せば、タイムカウントが始まった。
「はぁ、まさかこんなことに巻き込まれるなんて。」
「優勝は次回までお預けだな。キリトくん、次はリアルで会おう。」
「そうだな」
「……」
「エンフォーサー、お前も何か言ったら━━━━」
パンッ!と1番下に手を置いていたエンフォーサーの右手が上に跳ね上げられる。
「「「は?」」」
必然、俺達の手も上に跳ね上げられ、シノンちゃんの手の上にあったグレネードは空中に飛ばされる。俺達が呆気に取られていると、エンフォーサーが大きくバックステップしてcoral48に光を溜める。
「騙されましたね!!仲良しごっこなんてごめんです!!」
「えっ」
俺達は唐突な裏切りに反応出来ず、coral48のエネルギー刃をまともに食らう。全員体を真っ二つにされ、空中に吹き飛ばされる。
「エンフォーサーァァ!!テメェェ!!!」
最後の抵抗とばかりにPー90(P)をぶん投げるが、あらぬ方向に飛んで行ってしまう。
「フフフフフフフ!!!!!フハハハハ!!!!やはりエネルギー武器こそ至高!!!!エネルギー武器こそ
━━━第3回
━━━【
B.o.Bが終了し、俺達はログアウト待機画面に飛ばされた。
最後の裏切りは予想外だったが、まぁいいだろう。問題はこの後だ。リアルに帰ってからしなければいけないことは山ほどある。まずは安全確保だな。
タイムリミットが0に近付くにつれ、緊張感が高まっていく。
パチリ。
少し肌寒さを感じながら、目を開ける。隣にいる詩乃ちゃんも起きているようだが、恐怖からか動かずに俺の手を握ったまま目を瞑っている。
「誰も居ないよな……」
「大、丈夫かな?出雲……」
とりあえず寝室には誰もいない。しかし、リビングの方から風がびゅうびゅうと鳴る音がする。
「詩乃ちゃんはここに居てくれ。」
「嫌。私も行く。」
アミュスフィアを外し、絶対に離さないとばかりに俺の手を掴んでくる。仕方がない。一緒に寝室の扉を開け、リビングに歩を進める。するとそこに居たのは……
「やぁ、柊くん、朝田さん。」
もう1人の死銃、新川恭二だった。
「やはり君か、新川くん。」
「ハハ……やっぱり柊くんは凄いね。バレてたんだ。」
新川恭二はリラックスしたようにリビングの椅子に腰掛け、こちらを見ている。
背後にある24階のマンションから眼下を見下ろせる大きな窓には、人一人分が通れるくらいの穴が空いていた。
「窓から入ってきたのか……」
「うん。ヘリでこのマンションの屋上に侵入、ラペリングで窓まで行って、レーザーで焼き切って部屋に侵入した。ごめんね、窓壊しちゃって。」
先程からなって居た風の音はこの音か。24階ともなれば相当数の高さが伴う。
しかし、ヘリ?ラペリング?そんな金や技術は一体どこから……
「僕はこの場に死銃として来て、君達の友達の新川恭二としてここに居る。ヘリを運転してた人や、僕を連れてラペリングしてくれた人はもう撤退したよ。」
「なんで逃げなかったんだ?」
俺の言葉を聞き、新川恭二は少し悲しげに、そして自嘲気味に笑った。
「罰を受ける為だよ。ゲーム内の死銃が死んだ段階で、警察にも通報してある。あと数分で警察がここに来る筈だ。」
「どうして……?新川くん、お医者様になるんじゃなかったの?なんでこんな事をしたの?」
「間接的に死銃を生んだのはこの僕だ。直接的に生んだのは僕の兄だけどね……柊くん、水を貰えるかな。全て話すよ。最後に君達と話したくて、僕は逃げなかったんだ。」
「僕が
「あぁ。」
向かいに新川くん、こちら側に俺と詩乃ちゃんが座り、それぞれの前に水の入ったコップが置いてある。
「AGI万能論を提唱したゼクシードの事も知ってるよね。そのくせ、アイツは
「だから……だから、本当に殺したの……?」
詩乃ちゃんの問いに、水を一口飲んで間を開けてから答える。
「そうだね……僕が殺したようなものだ。」
「手は貸していないと?」
「どうだろうね。死銃という存在、殺し方、全てを考え出したのは僕と僕の兄だ。僕は自分の手で誰かを殺したことは無いが、僕のアイデアで実際に2人死んでる。直接的には殺人に関わってないけど、知能犯とでも言うのかな。こうこうこうすれば殺せるな、と兄と話していたら、実際にその方法で人が死んだ。兄が病院から緊急解除用のマスターキーと薬剤、注射を盗み出した時、僕はもう立派な死銃だったんだ。」
「…………」
「少なくとも、僕がゼクシードを恨み、殺意を持ち、SAOで殺人ギルドに入っていた兄にその話をして、連日連夜殺しの計画をたて、その末に【死銃】が生まれたのは事実だよ。」
「SAOで人を殺していたお兄さんに対しては、なんとも思ってなかったの?」
「なんとも思ってなかったよ。むしろ、兄がSAOでどれだけ本物の殺人者だったのか、どれだけ恐れられていたのかの話を聞いた時は、憧れすらした。実際にそうなってみると……不思議な気分だったね。」
「死銃にはどこまで関わってるんだ?」
「僕が提供したのは殆どアイデアだけだよ。マスターキーや薬剤を盗み出したのは兄の独断だし……まぁ、それを知って警察に通報しなかった時点で、どっぷり関わってるけど。ステルベンのアカウントを使ったのも、最初の死銃事件、ゼクシードをゲーム内で銃撃した時だけだし……それ以降は、兄とその仲間達が勝手にやってたよ。」
「なんで、自首しようと思ったんだ?」
「…………朝田さん、柊くん。まずは謝らせて欲しい。」
「えっ?」
椅子から立ち上がり、深々と頭を下げる新川くん。
「朝田さんと柊くんが……シノンとシュウが狙われたのは、完全な僕のエゴだ。僕が提供した殺し方じゃあ、本来朝田さんと柊くんは殺せなかった。」
後ろにある人一人分通れるくらいの穴を見つめる。
「こんな大掛かりな事してまで朝田さんと柊くんを狙ったのは……君達が昔、本物の銃で人を殺したからだよ。」
「ッ!!」
口を抑えて驚愕する詩乃ちゃん。
俺に驚きはなかった。元々、新川くんはその理由があったから俺達に近付いたのだろうだから。
「兄も興奮していたよ。本物の銃で人を殺した事のある高校生なんて、日本中探しても君達だけだ。僕が死銃が生まれる前から君達と仲良くなりたくて近付いたのは、単なる人への興味じゃなくて、その事件があったからだ。」
「私が人を殺したから……だから、私達と友達になったの?」
頭を上げ、椅子に座り直す。
「あぁ、そうだよ。僕は君達が人殺しだから友達になったんだ。」
「さっきも話したけど、僕は兄の殺人性に憧れていた。君達に興味を持ったのも同じ理由だ。」
「分からないな。なんでそんな精神性の新川くんが、最後の最後に自首しようと思ったんだ?」
「アハハ……うーん。どうだろう。僕は人の殺人性に憧れ、兄と、柊くんと、朝田さんに憧れた。実行する勇気もないのに、死銃の構想を練った。僕はね、人殺しに憧れると同時に、君達に【人殺し】以外の部分でまた憧れたんだ。」
「絆されたとでも?」
「そうとってくれても構わないよ。きっと、この気持ちを言い表す言葉はまだこの世にはないんだ。【人殺しに憧れる自分】【2人と日常を過ごす自分】。両方の自分が混ざり合って……最後の死銃として、ここに立つ事を兄に提案した。」
「もしあの時、俺が死銃に撃たれていたら、新川くんは俺を殺したか?」
「いいや、殺すのはここに僕を連れてきたもう1人だ。でも止めなかっただろうね。そういう意味では、僕は君を殺していただろう……」
ピンポーン。ドンドンドン!!
『警察です!開けますよ!』
「時間だね。思ったより話せたよ。」
「待って!まだ貴方と話したい!まだ……私……新川くんともっと……」
「ごめん、朝田さん。所詮僕は人殺しで、君達に近付いたのも、君達が本物の人殺しだから。それ以上の理由はないよ。」
「……嘘つき。」
ガチャガチャと玄関の鍵が開けられる音がする。俺と詩乃ちゃんはその音に目もくれず、新川くんに目を向ける。
「嘘なんて……」
「確かに俺達に近付いたのはその理由だからかもしれない。でも、日常を過ごしていくうちに変わったんじゃないのか?」
「……」
「俺達の【人殺し】以外の憧れた部分に、未だ名前の付けられていないその気持ちに、答えがあるんだろ。」
「そう……かも、知れないね」
バンッ!と扉が開き、警察がリビングに突入してくる。
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫です。」
「警察の方、僕が侵入者です。」
新川くんは水を全部飲み、警察の前に歩いていく。
警察に事情を説明し、新川くんの手に手錠がかけられる。
「新川くん。」
警察に連れられていく新川くんの背中に向けて声をかける。
「待ってるからな。」
「……そう。ありがとう。」
念の為、俺と詩乃ちゃんも警察署まで行き、事情聴取を受けた。キリトくん……いや、桐ヶ谷和人くんの名前を出し、彼から聞いた依頼人の名前、菊岡誠二郎の名も出したら、するすると話は進んだ。その日の深夜に警察署を出て、隣接する病院で1泊した。
翌日、俺、和人くん、詩乃ちゃん、菊岡さんで高級ファミレスで顔を合わせた。リアルで和人くんと会うのは初めてだな。
「まずは、協力感謝するよ。朝田さん、柊くん。キリトくんも、今回の事件に関して感謝を述べさせてもらうよ。」
そして語られる、新川恭二とその兄、新川
概ね原作通りだが、1つ違うのは俺達……いや、詩乃ちゃんに固執したのが新川恭二くんではなく、新川晶一である事。彼は世界は違えど同じ殺人者である俺達に興味を持ち、是が非でも殺したかったそうだ。
「そういえば、菊岡さん。」
「なんだい?」
「現実世界のヘリの調達・操縦やラペリング降下、窓ガラスを焼き切るレーザーなんて、007のやりそうな事をやった死銃の共犯者は誰なんですか?話を聞いた限り、その
「まだ分からない、とだけ伝えられるかな。とは言っても、ここ日本でそんな大掛かりな事が出来る人物は限られてくるから、恐らくは日本の手の者じゃないだろう。かといって、新川昌一……もっというなら、
「どうでしょう……ラフコフがどれ程の規模か知りませんが、出来るやつがいた可能性もあるんじゃないですか?」
「もちろんその方向でも考えているよ。」
これに関しては、俺は本当に分からない。現実世界でヘリをチャーターし、ラペリング降下技術を持ち、レーザーで窓を焼き切り侵入する死銃に加担する人物……まるで検討もつかない。俺は原作に関しては詩乃ちゃん関連の事以外殆ど忘れてしまっているし、そもそもそこまで
「やぁやぁ!遅くなりました菊岡氏!」
「ゔっ」
そんなことを考えていると、背後からゲーム内でしか聞いた事のない、しかし良く聞き慣れた声がする。その方向を向くと、長い髪を先端で纏めた特徴的な髪型に、切れ長の碧眼、細い眼鏡に190cmはあろうかという長身の男が立っていた。
「エンフォーサー……」
「アルレシャ・ファラムとお呼びください、出雲くん。まぁ気軽にアルレシャと呼んでくださっても構いませんよ。あ、ウェイターさん、紅茶と砂糖を。ミルクもお願いします。」
最後の死銃討伐協力者、エンフォーサーことアルレシャ・ファラムが到着した。
「さて、菊岡氏。説明を。」
「いましたばっかりなんだけどねぇ……まぁいいけどさ。」
そして先程話した新川一家の事や俺達の家が襲撃された事を再度説明する。アルレシャはその間何も言わず、ミルクと砂糖たっぷりの吐くほど甘くなった紅茶を啜っていた。
「ふぅむ。成程。長く生きて来ましたが、色々な人が居るのですねぇ。」
「長く生きてきたって……アルレシャ、お前いくつだよ。」
「23ですが?」
「23如きが「長く生きてきた」と言うな!!」
「えぇ!?何故!?」
「何となく!」
アルレシャも合流し、諸々の説明も終わった。
「さて、私から話せる事は以上だ。何か質問あるかな?」
「あの、新川くん……じゃなくて、恭二くんは、これからどうなるんですか?」
詩乃ちゃんが不安そうに質問する。
正直、俺も気になっている。あの最後の新川くんの言葉、気持ち。彼が死銃を作り出し、人殺しに憧れたのは事実なのだろうが、それで俺達と過ごした日常が無くなった訳じゃない。少なくとも、原作の新川くんのような詩乃ちゃんに傾倒する感じは無かった。
「うーん……彼の言動を見るに、
「菊岡さん、私、出雲と一緒に彼に会いたいです。会って……私達が何を考え、彼と接してきたのか話したい……」
……珍しいな。詩乃ちゃんは基本的に俺以外に興味関心を持たない。人に対しては特に顕著だ。
「詩乃ちゃん、俺も同じ気持ちだけど……何故かな?聞いてもいい?」
「最後、私達の部屋で自首をした恭二くんは、とても儚かった。あぁなった人がどんな気持ちなのか、私には分かる。だって昔、貴方に見捨てられたと思っていた私も、きっと同じ顔をしていただろうから。」
成程。最後の新川くんの姿と、自分で強盗犯を射殺し、俺が訪れた時の自分の姿を重ねた訳か……
「うん、貴女は強い人だ。是非そうしてあげてください。面会が出来るようになったら、御2人にご連絡しますよ。」
「私の出る幕ではありませんね。全く、困ったものです。普通にゲームをしてたらこんな事に巻き込まれるなんて。」
「アルレシャさんには悪いね。」
「てかお前、自分から首突っ込んできただろうが。本当ならここにも来なくていいんだぞ。あの場でペラペラリアルの情報言い出したから、一応ここに呼んだだけで……」
甘ったるい紅茶を飲み終え、高そうなパフェを食べながらアルレシャが口を開く。
「寂しい事言いますねぇ。出雲くん。私と貴方の仲ではありませんか。」
「そんなに親しくなった覚えはねぇ。」
「言葉は刃物だと何処かの少年探偵が言っていましたが、その気持ちが今分かりました。」
パフェをパクパク食べているアルレシャを他所に、菊岡さんが腕時計で時間を確認して荷物を持って立ち上がる。
「申し訳ないが時間だ。ここでお暇させて貰うよ。」
「あぁ、すまなかったな。手間を取らせて。」
「あの、ありがとうございました。」
「ありがとう菊岡さん。」
「いえいえ。貴方達を巻き込んでしまったのはこちらの落ち度です。これくらいの事はさせて下さい。」
「菊岡氏、私はまだ紅茶とパフェしか食べていないのだが?パンケーキも絶品と聞き態々訪れたというのに。」
「お前……」
「ハハハ。なら、多めに払っておくから好きなだけ食べてくれ、アルレシャくん……そうだ、キリトくん。死銃……いや、【赤目のザザ】こと新川晶一くんから、君への伝言を預かっている。もちろん、聞く義務はない。聞くかい?」
菊岡さんがスーツの中から封筒を1枚取り出す。和人くんはチラリと俺達の方を見るが、すぐに菊岡さんの方に向き直る。
「聞くよ。」
「それでは。えぇ〜……「これで終わりじゃない。終わらせる力はお前にはない。直ぐにお前もそれに気付かされる。イッツ・ショウ・タイム」……以上だ。」
ザザの言葉を聞き、深く考え込むキリトくん。俺達にその心労は測れないし、その権利もない。これはSAOを生還した彼の問題だ。俺や詩乃ちゃんが口出しをしていい問題じゃない。
「さて、今度こそお暇させて貰うよ。じゃあね。」
「俺も出るよ。シュウとシノンはどうする?」
「俺らも見送りだけするよ。」
「私は出ませんよ。まだパンケーキがあるので。」
外でタクシーに乗り込む菊岡さんを見送り、俺達3人は立ち尽くす。
「シュウ、シノン。今回の件、本当にありがとう。良ければ、今後も仲良くしてくれ。」
「こちらこそな。近々ALOも始めるから、レクチャーよろしく、和人くん。」
「あぁ。任せてくれ。」
和人くんと連絡先を交換し、先程までいた店に戻る。そこには、美味しそうにパンケーキを頬張る成人男性が。
「アルレシャ。」
「おや、帰ったのでは?」
「見送りだけって言ったろ。お前に手伝って欲しい事がある。」
「なんですか?改まって。」
「ペイルライダーって知ってるか?」
今回の事件で被害者になりかけた女性プレイヤーの名前を出す。2日後、彼女とGGO内で会う約束をしているのだ。今回の事件を話していい範囲内で説明しなければ。
「知りません。」
「簡単に言えば、死銃のターゲットの1人だ。幸い殺されなかったがな。その説明に同席して欲しい。」
「まぁいいですけど……何故?」
「ペイルライダーはリザインしたからな。あの勝気そうな性格だ。酒場で最後まで俺達の戦いを見てただろう。説明するなら、お前の紹介は必要だと思ってな。」
「余計話が拗れそうですがねぇ……あんな事しましたし。」
確かにアルレシャは最後の最後に俺達を裏切って第3回B.o.Bの覇者となった。だがそれはそれ、これはこれだ。ペイルライダー視点では、俺と詩乃ちゃんと和人くんがチーミングして、しかも謎のぼろマントからキルせず助けてくれて、更には仲間をもう1人増やして最終局面にまで行き、挙句の果てには最後に仲間になった男に裏切られ優勝を漁夫の利されている。訳が分からないだろう。
「確かにあんな事はしたが、死銃討伐に協力したのは事実だろ?ペイルライダーへの説明はしないとな。2日後の17日、19:00にSBCグロッケン南東にある【フェリード】って酒場に来てくれ。」
「ふぅむ……まぁいいですが。分かりました。30分前には連絡しますよ。」
家に帰ってくる。1日ぶりだというのに、なんだかとても久しぶりな気がする。一応警察の手で数日後にレーザーで焼かれたガラスが交換される手筈になっており、今は毛布で物理的に遮断している。
「大変だったな……」
「本当にね。」
ソファーに横になり、詩乃ちゃんが上に覆い被さってくる。
「疲れた。」
「ペイルライダーさんへの説明が終わったら、暫くGGO休む?」
「んー……どうしようか。ALOをやるとは言っても、剣なんててんでだしなぁ。コンバートなんて論外だから、一から育成になるだろうし……学校もあるし。」
死銃事件は、一先ずの収束を迎えた。
今はただ、この幸せが心地良い。今しばらくは、こうして詩乃ちゃんとくっついて居たいな……
【小説情報】
第3回B.o.B編終了です。
やむなくカットしたシーンや追加したシーンもありましたが、とりあえず一旦区切りです。
時系列的に、次はマザーズ・ロザリオ編か、第1回スクワッド・ジャム編になりますかね。
え?キャリバー編?知らない子ですね。うちの子じゃないです。