【リメイク版】不遇な朝田詩乃に寄り添いたい。   作:ヤン詩乃ちゃん( _´ω`)_

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朝田詩乃と知り合いたい。

「やぁ、こんにちは。」

 

「……こ、こんにちは。」

 

 転入し、初めての授業の終わりの、初めての休み時間。早速詩乃ちゃんに話しかけてみた。当然だが、何故私に?といった風な顔をしている。

 

「先生が、朝田さんに学校の案内してもらいなさいってさ。俺、柊 出雲。よろしくね!」

 

 もちろん口八丁の嘘である。態々先生に確認されたら面倒だが、誌乃ちゃんならそんな事しないだろう。孤立してるし。*1

 言っちゃ悪いがクラスでは影の薄かった誌乃ちゃんが、明らかに困惑した顔をする。

 

「(先生が私に……?どうして……でも、そっか。このクラスで1人なの私くらいだし……暇そうな人選んだのかな……)う、うん。分かった……」

 

 ファーストコンタクトは成功……だろう。そう思うことにする。

 その後は、簡単な学校の案内を受けた。ぶっちゃけ学校に興味はないよ。ただの接触として不自然では無い形で話しかけただけなのだから。

 

「朝田さんは友達とか居るの?」

 

「……いないです。」

 

「タメ口でいいよ。」

 

「うん……」

 

 あまり外向的な性格ではなさそうだね。教室でも浮いていたし、対人スキルが高くないのかな*2。いや、9歳なんてこんなもんか……?でも教室のみんなは固まってたしな……

 

「朝田さん」

 

「何?」

 

「何か趣味とかってある?」

 

「……読書かな。」

 

「放課後は?」

 

「家だけど。」

 

「じゃあさ、学校だけじゃなくて、街の案内とかって出来る?引っ越してきたばっかでさ、あんまり馴染みなくて」

 

「えっ?」

 

 ちょっと踏み込みすぎたか?でもここはもっと押していけば……

 

「ほら、俺って越してきたばっかじゃん?街の事も知らないし、朝田さん暇そうだし。」

 

「言ってくれるわね……でも、家は?」

 

「商店街のすぐ外だよ。朝田さんは?」

 

「……偶然ね。私もその辺り。」

 

「嗚呼、()()。ならいいじゃん。マジで探索とかしたことないからさ。教えてよ。」

 

 本音の笑顔で詩乃ちゃんにそう語りかけると、困惑の顔から疑問の顔に変わる。

 

「ねぇ、なんでそんなに私に構うの?私……別に友達居ないし、先生が頼んだのは学校の案内だけでしょ?街の案内なんて他にいくらでも……柊君なら、他に頼める人沢山居るんじゃ。」

 

「朝田さんがいいんだよ。」

 

 間髪入れずそう答える。

 

「どうして?」

 

「……なんとなく。」

 

「…………」

 

 呆れられた。

 ふ、ふんっ。まぁいい。本当に理由が思い付かなかったんだ。しょうがない。

 詩乃ちゃんに対人スキルがないだの云々言ってたけど、実の所俺にもそんなにない。生まれ変わってから殆ど人と関わってこなかった弊害である。2年はダークウェブに潜ってたし、しょうがないしょうがない*3……

 

「まぁいいわ。分かった。じゃあ放課後に裏門で。」

 

「裏門?正門じゃなくて?方向的に正門じゃ」

 

「別にいいでしょ。嫌なら案内しないけど。」

 

「わ、分かりました……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後。

 お互い1度自分の家に帰って、荷物を置いてから合流する。

 9歳の街探索なんてたかが知れてる。そう長く続かず、すぐに詩乃ちゃんの門限が来てしまう。俺?俺は20:00だから余裕。でも門限ある当たりちょっとまだ心配性だよね*4

 

「そろそろ帰らなきゃ。」

 

「そうだね。朝田さん、途中まで一緒に帰ろう。」

 

「言われなくても、家の方向一緒じゃない。」

 

 街の大体の地形は把握した、つもりだ。

 詩乃ちゃんと一緒に家に帰り、先に詩乃ちゃんの家に着く。

 

「朝田さん、明日の予定は?」

 

「明日は学校もないし……何も無い。」

 

「そっか。じゃあ今日はこの辺りで。また学校でね。」

 

「……うん」

 

 押せ押せで明日も会う予定を繋いでもいいんだが、あまり押しすぎると断られるだろう。潮時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、こんにちは。」

 

 いつも通り、授業を終え本を読みながら休み時間を過ごしていたら、唐突に話しかけられた。

 私に友人はいない。女子小学生のコミュニティは閉鎖的だ。既に出来上がったグループに新しく入るのは難しい。私はそんな中で溢れ、孤立した。そんな私に話しかける人は居ないので、消去法的に今朝のホームルームで紹介されていた転校生だろう。

 

「……こ、こんにちは。」

 

 顔を上げて転校生の顔を見てみると、驚く程の綺麗さに一瞬目を奪われた。女性のような中性的な顔立ち、幼さの中にも知的さを感じる瞳。声変わりする前の高い声も相まって、一瞬女子かと思った程だ。今朝の紹介で転校生が男子だと言うことは分かっているので、すぐに男子だと分かったが。男子として見ると、なるほど確かに。男子にも見える。トリックアートみたい*5

 

「先生が、朝田さんに学校の案内してもらいなさいってさ。俺、柊 出雲。よろしくね!」

 

 私に?先生が?

 とも思ったが、適当な孤立している人に案内を頼むのは何も不思議な事じゃない。先生という職種の人は結構プライベートな所は冷たい。

 

「う、うん。分かった。」

 

 色々話しながら、学校の案内をする。ぶっちゃけ、あんまり覚えていない。見目麗しい彼と、地味な私が2人で歩いている図は他の人にどう映っているのか。そんな事ばかり気になって、ビクビクしながら歩いていた。

 気付いたら休み時間は終わっていて、何故か放課後も会う約束をしていた。え?本当になんで?

 放課後は街の案内も頼まれた。

 受ける理由はない。でも断る理由はある。

 暇なのは確かだが、あまり彼と関わり合いになりたくない。というのが断る理由。彼には悪いとは思うが、目立ちたくない。

 それというと、彼はモテる。あの案内の休み時間の後、彼は他のクラスメイトに話しかけられていた。男女比は女子の割合が多かった。彼の美麗さに惹かれたのだろう。そもそもこの歳の男子は内向的な子が多い*6ので、それも理由にあるだろう。

 さっきも言ったが、女子小学生のコミュニティは閉鎖的だ。あまり関わりを持つと、孤立しているこの状態からもっと悪く……虐めなんかが起こるかもしれない。今の私には特に評すべき点も罰すべき点もないので、虐めは無いが、彼が理由で虐められるのは大変に御免被る。女子小学生の【罰すべき点】としては十分だ。

 なので、放課後に街の案内を頼まれた時は、断りたかった。しかし、「貴方が理由で虐められるのは嫌だから」と言えば、彼はきっと傷付くだろう。それは……本意じゃ、ない。

 せめてもの抵抗で人目につかない裏門で合流するようにした。

 

 街の案内を終え、家に帰った。

 

「おかえり、詩乃。」

 

「ただいま、お母さん。」

 

 私を見たお母さんの目がキラーンと光り、私に詰め寄ってくる。

 

「ねぇねぇ、家の前で話してた彼は友達?」

 

「えっ!?……えっと、まぁ……その……うん(お母さんは男の子に見えたんだ。)」

 

 友達……って言って、いいのかな。

 お母さんは結構天然で、子供っぽい。昔はそうでも無かったらしいが、私が物心着く前に父親が事故で亡くなって、その時は相当荒れたらしい。でも今は私の為に強く心を保ってくれている。

 それでもやはり父の死は今でも引きづっているらしく、リビングに飾られた父の写真を見てたまに泣いているのを見た事がある。

 私に父の記憶は無い。だから、あまり男性の事は分からないのだ。分かるのは同年代くらい。

 

「あんなカッコ可愛い子、学校に居たかしら?」

 

「最近引っ越してきて、今日転入した転校生だって。私も今日初めて会ったの。」

 

「ふぅん?にしては仲良さそうだったじゃない?」

 

「べ、別にそんな事……!もうっ。私部屋戻るから。」

 

「は〜い。ご飯出来たら呼ぶからね〜」

 

 部屋に戻り、ベットに倒れ込む。

 今日は疲れた。新しい出会いと、慣れない冒険。カロリーを使う。

 彼に関しては、まだよく分からない。確かにお母さんの言う通りカッコ可愛いとは思うし、私だって普通の感性の普通の女の子だ。カッコイイ物も、可愛い物も好き。でも彼に関しては……いや、彼に限定したものじゃない。他人に関しては、私は結構ドライだ。どう話したらいいか分からないし、空気の読み方も分からない。

 だから孤立するんだろ。って言われたら反論出来ない。するつもりも無い。

 

「はぁ……」

 

 明日は休みかぁ……彼と顔を合わせなくて済むのは良かった。

 今会ったら、何を話していいか分からない……

 

「柊君……か。」

 

 なんであんなに構ってくれるんだろう。

 確か……「朝田さんだから。なんとなく」……って、言ってたよね。なんでだろう?その時にも言ったけど、彼なら私なんかよりいい子沢山居るだろうに……それこそ選び放題だ。少なくとも私よりスペックの高い女子なんてクラスに腐るほど居る。

 

「分かんないなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌週、学校にて。

 

「おはよう、朝田さん。」

 

「お、おはよう柊君。」

 

 私の席は「あさだしの」の「あ行」で、私より上の子はいないので、1番前の扉と机が近い。その前の扉から入ってきた彼が、私に挨拶する。私も少しどもってしまったが、挨拶を返す。こういう時にどもってしまうのは悪い癖だ。

 でもすぐに彼はクラスメイトに群がられ、私から離れていく。

 

「(まぁ……いいか。)」

 

 ちょっとだけもやっとしたが、気の所為だろう。フセイミャクってヤツ?

 授業が終わり、放課後。私は足早にランドセルに荷物を詰め、帰ろうとする。正門から出ると……

 

「お〜い」

 

「うわっ!」

 

「えっ、酷くない?」

 

 後ろからかかった声に、思わず私は「うわっ!」と言ってしまった。申し訳ないが、本当に「うわっ!」って気持ちなのだ。

 ハッキリ言って彼から逃げるように出てきた。その当の本人が来てしまったのだから、「うわっ!」って声も出る。

 

「なんで逃げるのさ。」

 

「逃げてない*7。柊君こそなんで居るの、クラスメイトに囲まれてたんじゃないの?」

 

「あぁ、振り切ってきた。」

 

「なんで?」

 

「そりゃ朝田さんと帰りたくて。」

 

「……」

 

 どうして彼はそう言葉にし辛い言葉をスラスラ言えるのか。少しでいいからその勇気分けて欲しい……いや、この手のタイプは勇気など使わないか。

 

「私に用でもあるの?他の子に遊びに誘われたりしなかったの?」

 

「そりゃしたさ。俺だしね。」

 

「随分と鼻につく言い方ね……それで?」

 

「朝田さんと帰るから、って言って断ってきた。」

 

「ちょっ、何してくれるのよ!」

 

 そんな事したら、私が更に孤立して虐められるじゃない!……なんて、本音は言えず。

 

「何か悪かった?」

 

「…………いや、別に。もういいわ。」

 

 過去は変えられない。仕方ない……彼に悪気は無いのだろう*8

 

「帰ろう、朝田さん。」

 

「はぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 準備は上々。

 これで詩乃ちゃんは益々孤立して行くだろう。

 土台は出来上がってきている。残り1年……後1年で、詩乃ちゃんは事件に巻き込まれる。どうにかして回避させようとしているが、原作でも細かい日にちは明記されていなかった。

 10月頃とだけ書いてあったのを覚えている。賭けても良い。命をダブルダウンする*9

 それまでに、詩乃ちゃんを学校から孤立させ、孤立した詩乃ちゃんとだけ友好的関係を結び、何とかしてプライベートまで俺の存在を埋め込む。出来る事なら、依存させる。それしか俺に事件回避の方法は見出せなかった。

 恋愛感情を生ませる必要は無い。ただ、依存させればいい。対人スキルはあまり無いと言ったが、人心の掌握についてはある程度自信がある。

 俺の目的はあくまでも詩乃ちゃんの心に寄り添う事。その為に手段を選ぶつもりはないぞ。なんせ敵は世界(ソードアート・オンライン)なんだから。

 

 俺が事件の回避に見出した方法は1つ。

 まず、前述の通り詩乃ちゃんを学校で孤立させる。理由はいくつかあるが、これは保険でもある。保険とは、もしも事件が回避出来なかった場合のダメージが少なくなる、というものだ。元々孤立していたら、虐めが発生したら隠せなくなるだろう。同時にクラスメイトとの仲も深めていくので、情報網を作っておく。

 次に、彼女を、詩乃ちゃんを俺に依存させる。理由は言わずもがな、出来るだけ彼女の動向を把握する為である。出来ることなら、事件のあった郵便局に行く際声をかけてくれるくらいには。

 流石に詩乃ちゃんの一挙手一投足を把握する手段は……なくはないが、人道に反する。いや、孤立させるのも人道に反するが、流石に詩乃ちゃんの部屋なんかに盗聴器やカメラなんやらを仕掛け、1年後の10月頃に郵便局に行く日を把握、なんて手段は取りたくない。事案(事件案件)です*10

 なので、出来るだけ詩乃ちゃんからアクションを起こしてもらう必要がある。

 

 出来るだけ人道的かつ合理的な手段で、詩乃ちゃんとその母親を守る。

 そう、俺が、誰でもない、この俺が詩乃ちゃんに寄り添うんだ。

*1
チクチク言葉。

*2
団栗の背比べ。

*3
それは魔法の言葉ではない。

*4
親の心子知らず。

*5
ちょっとチクチク言葉。

*6
自分は棚上げ。

*7
嘘である。

*8
悪気しかない。邪悪である。

*9
命は2つもない。

*10
とっくに事案。




【小説情報】

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