【リメイク版】不遇な朝田詩乃に寄り添いたい。   作:ヤン詩乃ちゃん( _´ω`)_

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本日2話目。


朝田詩乃と日常。

 時は流れ、約半年が経った。

 俺と詩乃ちゃんは10歳、小学五年生に上がり、計画も順調に進んで行った。俺はクラスの人気者ポジションを維持しながら、詩乃ちゃんは孤立して行った。そして、誌乃ちゃんは……

 

「出雲、起きて。」

 

「ん……」

 

 春の暖かさをまだ残した朝日を浴びながら、目を開く。まず目に入ったのは、ベットに腰掛ける詩乃ちゃん。

 2ヶ月程前から、詩乃ちゃんは朝に俺を起こしに来てくれるようになった。本当にただ起こすだけで、手を出された事はもちろんない。

 

「もう朝よ。いい加減起きなさい。」

 

「何時……?」

 

「6:54ね。朝ご飯まで後6分って所かしら。お義母さんが起こしてきてって言ってたのよ。」

 

「そっか。ありがとう誌乃ちゃん。」

 

 一つあくびを吐きながら、起き上がる。

 着替えるといって、誌乃ちゃんを部屋からだす。

 青のストライプの寝巻きから、赤いTシャツに着替える。

 

 孤立した詩乃ちゃんが俺に依存し始めるのはそう遅くなかった。そうなるように仕向けたのは俺だが。そこに恋心があるかは与り知らぬ所だ*1

 最初の段階【俺がクラスの中心的人物になる】は難しくなかった。精神年齢も上で人心掌握術も多少だが身に付けている俺にかかれば、小学生のグループリーダーになるのは簡単だ。そして同時に、詩乃ちゃんに()()特別な対応をした。小学生とは、特に女児は嫉妬深いもので、すぐに詩乃ちゃんは孤立し始めた。虐めは睨みを効かせていたので起こさなかったが、1度人の温もりを知った詩乃ちゃんが更に孤立して、また人の温もりを求めるのは分かりきった事だ。その人の温もりを手に入れる術が、唯一構ってくれる俺だけである事も。

 

 そうして、詩乃ちゃんが俺に心を開き、依存し始めるのは遅くなかった。言い方は悪くなるが、人間も所詮動物だ。幼少期の刷り込みは効くだろうな。

 

 朝ご飯を食べ、1度自分の家でご飯を食べてきた詩乃ちゃんと合流し、学校へ向かう。

 

「……通学嫌い」

 

「私は結構好きよ」 

 

 俺らの家から学校まで、歩くと結構かかる。学校へ行ってしまえば楽なのだが、如何せん歩くのが面倒だ。体力が無いとか疲れるとか、そんなのじゃない。歩くのが嫌なんだ。 

 

「詩乃ちゃんって歩くの好きだっけ?」

 

「歩く事は、嫌いでも好きでもないわね。こうやって、出雲と2人で歩くのが好きなのよ。」

 

「うん。ありがとう。とっても嬉しい。」

 

 他愛ない会話をしていたら、あっという間に学校へ着く。この時間も悪くないなと、毎日考えてしまう。

学校が程近くなってきて、他の登校生徒も見え始める。すると、誌乃ちゃんは独占欲を発揮して、俺の腕に自分の腕を絡める。教室では俺は常にクラスメイトに囲まれているので、その分登下校で詩乃ちゃんはくっついて来る。

 

「(うぅん。やはり可愛い。正直、前世の挿絵やアニメの二次元のイメージがまだあるが……そっくりだ。神の手作りなんだろうなぁ。)」

 

 思わずそんな事を考える。

 詩乃ちゃんが、まるで俺の事を自分のモノだと誇示するように睨みを効かせている。ムササビが飛んでいるのをビビる人間など居ないと教えてやりたい。

 まぁ俺が詩乃ちゃんのモノなのはあながち間違ってはいない。

 俺の心は前世から詩乃ちゃんに……【朝田 詩乃】に魅了されている。俺は今までの人生を詩乃ちゃんの為だけに過ごして来た。

 前世の記憶は知識としてあるだけなので、ほぼ人生のすべて。

 ならば、俺は詩乃ちゃんの物だと言っても過言では無い、のかもしれない。

 それを言うつもりはないが……

 

 そして学校が終わり、放課後各々の家に帰り、荷物を置いて俺の部屋に集合する。

 

「ねぇ、出雲。最近ずっとその雑誌追ってるよね。なんの雑誌なの?」

 

 基本的に集まるのは俺の部屋か詩乃ちゃんの部屋なのだが、やる事といえばお互い根っこがインドア気質なので、ゲームやら読書やら様々だ。そのお陰というか、ボードゲームがめちゃくちゃ上手くなった。

 

「MMOトゥデイだよ。茅場晶彦って人が本格的なVR技術の発展に乗り出したらしい。あと普通にゲームの攻略乗ってる。」

 

「ふ〜ん……」

 

 ちなみに、俺は2年後のSAO事件に関しては基本不干渉を貫くつもりだ。というより、何も出来ない。SAOの虜囚から来てくれたら話は別だが、そんな奴いるか?と、思っていた時期もありました。若いねぇ。居るんですよ。コレが。まぁ後でどうせ話す。

 行政機関のクラッキングというのは、意外とハードルが低い。

 それよりも、茅場 晶彦の作った人工知能(AI)【カーディナル】のハッキングは難しい。何故なら、日本のファイアウォールよりも茅場 晶彦の作ったカーディナルのファイアウォールの方が強固だからだ。カーディナルは人間のメンテナンスを必要としない独立したAI。挑戦してみたい気持ちはあるが、反対に防御プログラムにこちらの情報を抜かれる事は避けたい。

 

「でもただのゲーム雑誌追うなんて珍しいわね。」

 

「面白いんだよ。特にコレ。茅場晶彦の初の独占インタビュー回。結構昔だよ。フルダイブ型のVRMMORPGを開発してるんだって。同時に医療転用出来ないかの実験も行ってるらしい。MMOトゥデイはあくまでゲーム記事だから、そこあんま触れてないけど。」

 

「へぇそう。」

 

「詩乃ちゃんは興味無いの?フルダイブ型のVRMMORPG。」

 

「無いと言ったら嘘になるわ。発売されて一般化されたらやってみたいかも。もちろん、貴方とね。」

 

 俺も詩乃ちゃんもゲーマーである。PCで出来るネトゲならお互い廃人レベルにやっている。金の問題だが、俺が日本政府公庫にアクセスして電子マネーデータを移してほぼ無限に手に入る。少なくとも日本のAIなら特定は無理。人の目で見られたら一目瞭然だが、特定は直接入力しないと行けないので、そこまでされたらこちらも反撃する。今の時代、現金(キャッシュ)はあまり流通していない。もちろん不正アクセスの犯罪だし、バレたら少年法があれど一発懲役刑で少年院にぶち込まれるだろう。

 この時代は電子マネーにうるさいから、罪が重い。

 まぁ、そこら辺は電子マネーの不正アクセス以前より詩乃ちゃんの特定で犯しているのだが……

 バレなければ犯罪じゃないを地で行く俺にそれを言うのは、今更だよ。

 

「そうだ。今からDAO(ドゥアート・オンライン)で狩りしない?」

 

「いいわよ。クラインさん達も誘う?」

 

 さっき話したSAOの虜囚くんである。行くのを止めるつもりはない。というか止められない。()が凄い。まだ彼は大学生だが。

 

「誘うだけ誘ってみるか。でも最近アイツ、SAO(ソードアート・オンライン)の開発発表からうるさいんだよなぁ。」

 

 DAO、ドゥアート・オンラインとは、死者の世界をテーマにしたMMOFPSゲームである。VRではないただのPCのMMOFPSゲームだ。

 その中で知り合ったゲームフレンドの【クライン】。あの原作のクラインと同一人物だな。SAO初期のクラインと姿が似ている。俺が1番好きなのはもちろん詩乃ちゃんの出るファントム・バレット編だが、次にSAO編だから詩乃ちゃん程じゃないが少しは覚えている。

 なにより、彼はSAOに強い興味関心を持っていて、仲間想い。原作の彼とおんなじ。声若ぁいけど。

 

「俺は絶対SAOやるぞ!なんならベータ参加してやる!!」

 

 と、意気込んでいたので、是非頑張った末に外れて欲しい*2。なんなら去年の初詣、神への願いは彼がナーヴギアの抽選外れる事。

 まぁベータは無理だろうがな。

 何故彼がSAOやALO(アルヴヘイム・オンライン)のようなファンタジー世界強めなゲームではなく、DAO(ドゥアート・オンライン)のような3:7でファンタジー/SFの割合のゲームをやっているのかは知らないが、どうやら中々な強豪ゲーマーになっていた。まぁ、【ナーヴギア】の初期ロット10000個を手に入れる程のゲーマーなのだから、色々なゲームに手を出しているのだろう。

 

「そうだ詩乃ちゃん。スナイパーに転向するんだっけ?」

 

「まぁね。この前レアドロでFRーF2手に入ったでしょ?使い勝手良かったから。」

 

 原作でも詩乃ちゃんことシノンちゃんはスナイパーだったし、性に合ってるのだろう。ちなみに、FPSのようなガン・ゲームをやろうと言い出したのは俺である。後のGGO(ガンゲイル・オンライン)と、一応これも事件のケアの為である。もしも事件が防げなくて、原作通り詩乃ちゃんが強盗犯を銃殺しても、ガン・ゲームで慣れていれば幾分かマシになるかもしれない、程度の保険だ。

 

「それじゃ、やっそくDAOやるか。」

 

「えぇ。それじゃあ私は帰るわね。」

 

 アミュスフィアのようなフルダイブ型VRゲームなら、持ってくる事も出来るのだが、悲しいかなDAOは普通のPCゲームだ。PCとモニターをおいそれと持ってこれはしないし、各々の部屋に行くしかない。

 

 という訳で、DAOを起動する。

 改めて説明すると、DAO(ドゥアート・オンライン)は死者の世界というファンタジー要素と、現代銃・オリジナル銃のSF要素の入り交じったMMOFPSである。

 レベルなし、スキルあり*3、魔法なし、銃あり、剣あり、PS(プレイスキル)重視、PK(プレイヤーキリング)推奨。

 銃と剣の世界で、中々シビアでヒリヒリするゲームだ。

 推奨年齢?もちろん無視してる。クラインも薄々俺達が未成年な事には声で気付いているだろうが、黙ってくれている。てか君もギリだよね。何歳か覚えてないけど。

 

『よぉクライン。今日は仕事じゃなかったのか?』

 

『ドロップ率UPイベント中だろ!?やるっきゃねぇよ!』

 

『━━━━━もしもし。クラインさん、シュウ?』

 

『よぅシノンちゃん!』

 

 シュウとは、俺のアバターネームである。(ひいらぎ)の別読みでシュウ。安直な名前であるが、詩乃ちゃんも本名の「詩乃」に「ん」を付けただけの【シノン】という安直な名前なので、同レベルだろう。

 

『それで?どこ行くんだ?』

 

 クラインは自動小銃(オートマチック・ライフル)を愛用する中距離タイプだ。クラインの率いるクラン*4【風林火山】のメンバーも基本的に自動小銃を利用している。

 俺はPDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン)を愛用する近距離タイプ。

 そしてシノンは極最近AR(アサルト・ライフル)からSR(スナイパー・ライフル)に転職した遠距離タイプ。

 

『クライン、今日は雪のオーク狩りをしたいんだ。標準ドロップ率低いからな。イベント中に羅針盤を作りたい。』

 

『いいぜ!』

 

 暫く俺、シノンちゃん、クライン、そしてクラインのクランメンバーと宝物アイテムドロップ目指して狩りをして、夜になった。

 

『ふぁ〜。すまん、俺は今日は寝るわ。明日も講義だし。』

 

『OK。いやードロップしなかったな。後羅針盤の針だけなんだけどな〜。』

 

『こればっかりは確率だから仕方ないわね。』

 

 狩りを終え、狩場から中立エリアに戻る道中、奇襲を受けた。

 

『うおっ!』

 

『なんだぁ!?』

 

 先頭の俺が狙われたが、寸前の所で回避。右手武器にダガー、左手武器にPDWのPー90を持ちながら、臨戦態勢をとる。後ろでクラインとシノンちゃんも各々の武器を構える音が聞こえる。

 

『━━━━━━━あーあー。もしもし!聞こえますかな!!』

 

『オープン回線……?』

 

 奇襲を仕掛けて来た相手が、ゲームのオープン回線で語りかけて来た。

 

『御機嫌よう!私の名前は《Enforcer(エンフォーサー)》!銃を愛し、未来を愛し、エネルギーを愛しているガンナーである!』

 

『……シノンちゃん、知ってる?』

 

『知らない。』

 

『クラインは?』

 

『あ、あぁ。名前だけなら聞いた事ある……近距離から遠距離まで完備したエネキチ(エネルギー狂人)だって噂だ。』

 

 俺とシノンちゃんは聞いたことないが、クラインが聞いたことのある名前なら、DAOである程度実力を持った輩らしい。

 しかし物好きな野郎だ。奇襲を仕掛けた癖に、オープン回線で話しかけてくるとは。

 

『諸君の中に!DAOオリジナル武器かつ、エネルギー武器を使用している紳士淑女は居るかな!』

 

『なんだアイツ。名前(エンフォーサー)*5といい通称(エネキチ)といい……どうする?』

 

『どうするったってよぉ……』

 

『相手は1人よ。(KILL)しちゃいましょ。』

 

『……いや、伏兵がいるかもしれない。俺もオープン回線に行く。』

 

 そして、VC(ヴォイスチャット)をプライベート回線からオープン回線に切替える。

 

『エンフォーサー!何用か!』

 

『(子供?)コホン。私の目的は最初に言ったが?まぁいいでしょう。もう1度言います。DAOオリジナル武器かつエネルギー武器の使用者はそちらにいますかな?』

 

『いいや、居ない。』

 

『……そうですか。ならば!有罪(ギルティ)処刑(エクスキューション)!聞け!!我が名はエンフォーサー!!法の執行者である!!』

 

『ハッ。悪法だな。随分な正義もあったもんだ。』

 

『何を言う?法こそが正義である!!(ゆえ)、私こそが正義である!!!』

 

 そう言って、DAOオリジナルエネルギー武器を構え始めた。

チュイーンという音と共に、エンフォーサーの持つエネルギー武器が光り始める。

 

『シノン!クライン!戦闘準備!!』

 

 オープン回線のまま、後ろに居るシノンとクラインに叫ぶ。

*1
釣った魚に餌やらない。

*2
外道鬼畜妖怪の類。

*3
スキルレベルはなし。

*4
ファンタジーゲームで言うギルドやファミリー、スコードロンの事

*5
エンフォーサーとは、ルールの強制者という意味。




【小説情報】
 祝☆エンフォーサー反抗期。
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