夢のような、あるいは夢のお話   作:丼丼

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星月夜

 

今日は最高の1日になりそうだ。

出かけようと思ったら下駄の鼻緒が黒かったし、道端で猫が千切れているのを発見することができた。

その様なものが直接自分に何ら影響はしないのだが、気分の持ちようや身の振り方を決めるには十分な代物である。

せいぜい、縁起というものはそういうものである。 

 

さて、その時の夢はいつもの白い、どこまでも続く白い無限とは全く違っていた。

いつか最端に辿り着くと信じて歩き回ってみた時期もあったが、自分が立っているのか回っているのか座っているのかすらわからなくなってくるので、いつしか夢を見始めたら目が覚めるまでぼうっと待つようになっていた。

その無意味な時間から解放されたのかと思うと少し楽だった。

(この忌々しい空間の事はいずれ話をさせてほしい)

 

 

 

彼が目が覚ますと辺りには妙に艶々とした深蒼の空が広がっていた。丸々とした星たちが瞬き、彼を見つめている。

彼を取り囲む街並みに見覚えがあるはずもなく、辺りは暗かったがどこか中世のヨーロッパを思わせた。

彼は路地のど真ん中で寝転がっていたが、幸いどうやら夜も深かったらしく、この見知らぬ訪問者を観察しようと集まった観衆はいなかった。

身を起こすと少し向こうの方に教会のような建物と、そのさらに向こうには小高い丘を見とめる事ができた。

見ず知らずの場所に放り出された彼にとってそれは目的地を決める理由には十分だった。

こうして彼はとりあえず周りの様子を確認するために、その丘を目的地に定め、歩き始めた。(結局のところは認識の問題である。彼は歩いてると思っているから)

 

暫く何の変哲もない街並みを歩いて行くといやにしゃぁんとした糸杉が生えた丘が現れた。 

そのまま登っていくとてっぺんのところに誰かが座っているのを発見した。

ここに来てから初めての人間との邂逅である。

 

彼は突然話しかけても困らせてしまうだろう、という考えと向こうから話しかけてもらおうという甘い考えの元、少し離れた斜面に座ろうとしたが、それは叶わなかった。

なぜなら、あちらの方から彼に話しかけてくれたからである。

その男は「やあ、少年。待っていたよ。」と言った。それから、これはすべて君が招いた事なんだからな、とも。

何を言おうか迷っていると、男は「迷っているなら何も言わない方が良い。それに君にはそれを払拭する方法を知っていたはずだ。」

さらに訳のわからない事言ってきて、いよいよ何も言えなくなってしまったが、コミュ障の彼にとっては大助かりであった。(初対面の人間と会話しろなんて事は不可能である)

そんな事より彼は先刻の男の発言について考えなければならないのだ。どうも心を見透かされているようで、警戒していたのである。 (ひょっとしてテレパスなんではなかろうか。)

しかし男は「まあ言い方によってはそうかもね」なんて言ったのである。

男が言うには男は存在していないし、"存在"という点であれば彼も存在していないと言うのだ。本来だったら男がいた場所もここではないらしい。

 

ここまでの会話(実際に発言していたのは男だけだったので会話と呼ぶにはおこがましい)から、決して聡明ではない彼の思考でもこの世界についての、一つの考察を出す事ができた。

そうして彼はここに来て初めての発言を試みた。事実を確認する意味を込めて、「もしかしなくても、ここは夢の中だったりするんですか?」と。 

変に敬語になっていたが、男は概ね肯定してくれた。(とても不安そうにとてもやさしく)

男は「だったら君がすべき事は自ずとわかってくるはずだよ」と言って、体の方向を変えた。(彼が目覚めるにはまだ、早いのだ)

男はどうやら絵を描いている様だった。

ところが男が描いている絵とキャンバスが向いている方向にある風景は全く持って異なっていた。

月は出ていないのに月を描いていたり、糸杉が異様に曲がっていたり空が斑だったりと全体的に揺らいでいるように見えた。(具体的には不安に)残念ながら彼には何を表現したいのか分からなかった。

 

徐ろに男は「君は、夜は好きかい?」と聞いてきた。ま、夢の中でも夜なんだから好きなんだろうね、と言いつつ「別に答えてもらおうと思って聞いた訳じゃないから、君は今まで通り黙っていてくれて構わないよ」と言った。少し棘があるような言い方で。

「夜は昼間に比べて色彩豊かだと思わないかい?僕はね、夜空が描きたいんだよ。あぁ違う、僕は彼とは分かりあえないんだ。」

その言葉に影響されたかのように空は渦を巻き始め、星は暈され、糸杉は歪んでしまった。

その様子を見ている彼は心の中に蟠っていた、妙な棘が吸い込まれていくように感じた。

そうして暫く経って周りを見てみると、辺りはすっかりその男が描いてた絵の状況と全く同じになってしまったのだ。

渦はいよいよ極めて大きく空を分かつように巻かれ、艶々としていた風景は大雑把に塗りたくられ、まるでこの世の全ての不安を吸い取ってしまったようだった。星々は彼の内側まで覗き込もうとしようとギラギラし始めた。

一つ違う点があるとすれば、相変わらず月が無い事だろうか。

彼はこれはきっと悪夢だと思った。

「そうだとも、これは悪夢だとも。君が見るべくして見た悪夢だ。そしてそんな悪夢から君は目覚めなければならない。」「これは君の夢だ。だから君が完成さでなきゃいけないんだ。」

不思議と、風で糸杉が揺れるとキャンバスの中の糸杉も同じように揺れているように見えた。

「簡単な間違い探しだよ。」男は呆れたとでも言うように天を仰いだ。

彼はそういえば昔は間違い探しが好きだったっけ、とぼんやりと考えていた。あれは確か、Can You See What I See?だっただろうか。あれに何時間も時間を費やした事もあったな、などと思い出している内に男はいよいよ痺れを切らしたようで、「どうやら君には明かりが足りないようだ。」と言って再度天を仰いだ。

どうやら彼はいつの間にか"月が出ていない"という簡単で且つ単純な事にも気が付かない、つまらない人間になってしまっていたらしい。

夢を追いかける事ができる贅沢な人間に、誰かの断りなしに夢を諦める権利なんてものは存在してはいけないのだ。

 

それに気づいた瞬間、突如として彼の手の中に"月"が現れた。(さながらブーメランのようだった)

彼はそのブーメランを思い切り放り投げた。それが在るべき場所へと。

月はぴったりと定位置にはまると、さも当然かのように周囲と同じようにぼやけていった。

 

男はそれを見届けるとやっと安心したような顔になって、「ほぅら、やっぱり知っていたじゃないか。最初からそうしていればこんな事にはならなかったのに。」

今更言っても遅いかと呟くと、「君はもう取り返しがつかないところまで来ているんだよ。それがわかっただろう?」と叫んでいた。

さっきまで近くにいたはずなのに男は彼の下の方にいた。

気づいたら彼の周りの全てがのっぺりと貼り付いたように平面になっていた。(そこからどんどん遠ざかっていく)

もう遠くになってよく聞こえなかったが男は後悔するなよと言っているように聞こえた。

 

すべてを見ていた月明かりがぐにゃりと笑ったように見えた。

 

星月夜

 

 

こうして彼の、ないし私の夢は始まりを告げた訳だ。

夢なんてのは見るだけ、追いかけるだけではいけないのである。

 

果たして私が夢を見るのを終える事ができる日がというのは、訪れるものなのだろうか。

残念ながらそれは彼にも、私にもわからない。

(明日の私へ:後は明日の私に託すことにします。今日の私には荷が重すぎるので)

 




初投稿です。
何かしら書きたいと思って書いてみましたが、そう上手くはいかないですね。文章として読みにくいです。生暖かい目で見てもらえれば、、
何かしらの反応があれば続きを書きます。なくても書きます。
辛辣でもいいのでコメントとか…
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