アルア=ゾルディック 作:セイヘキ ✕ ト ✕ ソウサク
シリーズタイトルでネタバレしていくスタイル。
※今話以降、最新巻の幻影旅団に関するネタバレを含みます。
「絶対に!絶対にこの赤子は俺のもんだ!!!!」
「穢らわしい賊がぁっ.......!!!今すぐに死ねっ!!!」ズシャッ
「たちゅけて.............(´•̥ω•̥`)」ブゥォッンン.......
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ゛!!!!!!」ポーイッ
「へっへっへっ、これであのベイビーは俺のもんだぜ」(死亡)
ドサッ
「うぎゃ」
あ、やばいこれ死んだ。と思ったら生きていた。
どう考えても落下したと思ったのが、何故が死んでいない。その原因は、どうやら咄嗟にあの人が投げ込んだもののお陰のようだ。
柔らかな布のような物が敷かれた籠。それはまさに、赤子を入れるのに適したサイズのものだった。
うん.......まあ、あまりにも運が良すぎて自分でも引いているが。
どうやらあの念能力者は、なるべく低いところにワームホールの出口を作ったらしい。お陰でほとんど高低差による運動エネルギーは存在せず、無事に着地出来たようだ。いや、赤子にはそれだけで致命傷になりうるかもしれないが。
籠が出てきた位置も運が良かった。まさに天に生かされたと言えるだろう。
あれか。転生したてで死ぬのはあまりにも可哀想だからって、神様が贔屓してくれたのだろうか。
まあそう思うことにしよう。ともかく生きてるんだ。なら、できるだけ足掻いてから死のう。せっかく2度目の生なんだしね。
つーか多分、いまなら死んでも神様保険みたいなやつで、またすぐ次の転生出来そうな気がするし。変な生き物じゃなければ良いよ。
え?するよね?まあしなくても良いけど。それならそれでさっさと天国に行きたいですわ。
色々言ったが、要は今死んでもそこまで失うものはないからって考えることにより、死への恐怖を緩和しているのである。できてるかなぁ.......俺今めっちゃビビってるけど。
まあ惜しむらくは、ゾルディック家っていう家格SSSランクの家には住めなかったことだけど。
それはそれで暗殺の教育とか面倒くさそうだし。別にいいか。
うん.........せっかく家族が出来そうだったのに、それが無に帰した事は、まあ、残念だけど。
いやいや、贅沢は言うまい。
この際この非力な赤ん坊の面倒を見てくれる人ならば誰でもいい!
頼むー!誰かー!助けて欲しいですー!
割と真面目に餓死はヤダー!それ以前に色んな原因で死にそうだけどー!!!
う、なんでっ.......せめて言葉くらいは話せればなんとかなるのに.......!
おい神様ぁ!!!こういうのって普通チートとかとセットじゃないんですかあ!?!?
そちらの不手際だと思うんですけどもぉ!!!!!もぉーー!!!!
「ぉぎゃぁ!おぎゃあ!!ぉぎゃあぁ!!!!!」
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△
瓦礫の.......いや、ゴミの山を踏みしめる。私達は今、赤く染まってしまった空の下でゴミ拾い紛いのことをしていた。
教会から、ゴミの山がある区域へ何か使えそうな物が無いか探しに行った日。ちょうどその日は、拾った新聞によると月の初めだった。
だからといって何かある訳でも無いんだけれど。
この場所では記念日なんてものは無い。いや、概念とかはあるけど、普段の生活すらギリギリなのだから、豪勢なパーティーなんて物は出来ない。
ただ、月の初めと半ばには、よく不法投棄されたゴミの山が増える。
その中にはたまにだが、まだ使えるパーツや道具なんかがあったりする。
大人達は、資源になる物だけを取り出して、身分を隠して外に売りに行っているみたいだが。行けるのはごく一部の人だけ。
もちろん持ち帰ってくる物資も少ないから。やっぱり子供達が贅沢するような余裕は無い。
私たちが集めているのは二束三文にもならないようなガラクタだ。
子供達がよく弄り回して、喜ぶような.......まあ私も含めてだけど。
そういう、玩具を作れるものくらいにしかならない。
つまるところ、自分達がやっているのはただの自己満足だ。それでも私は時期が来れば、クロロという男の子と一緒にここへ来るのが習慣になっていた。クロロはクロロでよくシャルやフランクリン達と一緒に探しに来てるみたい。
まあ、そんなクロロは危ないからってあんまり私を連れてくることに乗り気じゃないみたいだけど。
ウボォー以外にヤバいやつなんてこの辺にはいないから、ウボォーにさえ気をつければ大丈夫。なんて言ったら、さらに心配された。相変わらずクロロは心配性だ。
そういうところが..........好きだけど。
──────―――──────!
「?どうしたの、パクちゃん」
「いや.......今、何か」
遠くで何かの音?声?が聞こえたような気がした。
気の所為かもしれなかったけど、なんだか胸騒ぎがした。
クロロにそう言ったら、「パクちゃんを信じるよ」そう言われて。
ちょっと嬉しい気持ちを抱えながら、私達は声?が聞こえたような方向へと警戒しながら歩いていった。
「大丈夫かな。フランクリンやシャルたちにも声をかけてみる?
ウボォー達は..........うん、まあ。頼りにはなりそうだけど、やめとこっか.......」
「うん。.............あ、あれじゃない!?もしかして」
「ぉぎゃぁ!おぎゃあ!!ぉぎゃあぁ!!!!!」
「あれは.......捨て子かな....?」
私達がその場所まで近づいて行って見た物は、....なんともこの場所では見慣れたような光景だった。
物だけじゃない。ここへは捨てられた子もいるんだ。それも大勢。
まあ、そうは言ったってここまで産まれたての子は中々見ないけど。
「まだ臍の緒がちょっと長いね。まるでついさっき産まれたみたいだ」
そうクロロが言う。見間違いかとも思ったが、どうやら私の目の前にある状況は現実らしい。
「実際そうなのかも。でも、もしそうなら、
だって、さっき産まれたならここまで連れて来れないだろうし」
「逆にもしここをゴミ捨て場だと思っているようなやつが産まれてすぐ捨ててるなら、それも変だ。
わざわざ籠に入れてるのもそうだけど、臍の緒をちゃんと切ってるから、多少なりとも育てる気があったってことだし。というか」
「まず産もうっていう発想にはならない、よね」
「うん。どっちにしろ怪しい点が満載だ。流石に何かの罠ってことは無いだろうけど.......」
わざわざこんな場所のこんな奥まで赤子を置いて得られる利益なんて、ほぼ皆無だ。
それに私達みたいな子供が引っかかった所で、大した意味は無い。というか、そのために赤子を一人犠牲にするのも利益なんて出ないだろうから意味が分からないし。いやでも、“人攫い”にならあるのかも?
「じゃあ、どうしよっか.......この子」
「何かしら事情があることは確定だろうけど。だからといって、ここに置きっぱなしっていうのもあれだ。
一旦連れて帰って神父さんに.......できれば、長老に色々聞いてみよう」
「うん、私も賛成」
お互いに話の方向性が纏まったところで、ここまで持ってきたガラクタは一旦クロロに預けてから、私はそっと赤ん坊を籠ごと持ち上げた。
「っ!クロロ!この子、すごく呼吸が弱くなってる!このままだと.......!」
「!?!!すぐに連れて帰ろう。でも、焦って揺らしすぎないようにね!!大丈夫、パクちゃん。間に合うよ、間に合わせるよ、絶対!」
「.......うん!」
結局、ウボォー達やフィンクス達にも見つかることはなく、協会へと着いた私たちは、すぐさま大人を呼びに行った。
この後、その日は赤ん坊を死なせないようにそれは色々と大変だった。
ロクな設備も無い中で、大人達は良くやってくれたと思う、凄い。
処置は無事に終わり、とりあえず命の危機は去ったけど、まだ余談を許さない状況?らしい。
あの赤ちゃんも、実は高いところから落ちたような跡が籠にあり、普通なら死んでいてもおかしくなかったが、打ち所はそこまで悪くなく、他にも色々と、とてつもなく運が良かったという。
きっとこの子は神様に生かされたんだと思った。なら、私達はちゃんとこの子の面倒を見ようと、そう決めたんだ。
でも、私は不意に心配になった。クロロが真剣に赤ちゃんを助けようとしているのは分かってた。
ただ、まだ一度も言葉にはしていないんだ。
今後もクロロはちゃんと、この子のことを助けてくれるのか。
どうするかはもちろんクロロの勝手だ。だけど。
これを聞くことは、優しいクロロに半ばやることを強制するようなモノだって、子供ながらに分かってた。だから私は──────
今思えば、私の動揺が伝わっていたのかもしれない。彼は、安心させるように笑っていた。
だから、彼の笑顔に気が緩んで。それでつい聞いてしまった。
すぐにあの赤ちゃんを助けようとした動機について。他にもいくらでも捨て子は居るというのに。あの子をすぐに助けようとした理由を。
───その日、クロロが言っていたことがとても印象に残っている。
「あの時。あの赤ちゃんからは、生きる意志が.......理不尽な世界や神に精一杯抗う意思を感じ取れたんだ。それがどう転ぶかは分からないけれど。少なくとも、僕は手を差し伸べてみたくなった。他にも理由はあるけど、無意識なうちにそれが決め手になっていたのかもね」
こうして私達は、1人の赤ん坊を拾った。
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あれからしばらくして。
流星街の大人達の尽力もあって、赤ちゃんは無事完全に一命を取り留めた。
ただ、やはりまだ産まれたばかりということと、これからいくらでも死に至る危険性はあるということで、ひとまず安全な環境で面倒を見ることになった。
私達も接近を禁じられて、再びその赤ちゃんに会えるようになったのは、あの日から2ヶ月程経ってからだった。
どうやら現在は
「ああ、クロロ。皆も、よく来てくれたね」
「こんにちは、
「ああ、あの赤ん坊なら。ちゃんと寝かしつけていますよ。見たいかい?」
「うん!もちろん」
「ねえ、早くみせて!」
「ふふ。そう言うと思ったよ。着いてきて」
しばらく施設の中を歩いていったら、1つの扉の前で神父さんが止まる。
神父さんがその扉を開けた先には、何人かの赤ちゃんが寝ていて、その中の1つの籠へ神父さんが近づいて行った。私達もそれに着いて行く。
すると、神父さんが少しだけ撫でた後、私たちにもっと前で見て良いと言ってきたので、少し遠慮しつつ籠の中へ頭を覗かせる。
「わぁー....!可愛いね!」
「おー」
今更だが、そこそこの人数で押しかけてしまったのだが、大丈夫だったろうか。少し前には静かだったであろう赤ん坊の部屋が、なんだかガヤガヤし始めた。
とはいえ流石に、ウボォーとかフィンクス達みたいなやかましい子達は連れてきてないけど。俺達も行くって、だいぶ文句言っていたなぁ。
「無事にまた会えて良かったね、パクちゃん」
「きゃっきゃっ」
「うん。わ、手ぇちっちゃーい。かわいいー」
「あ、お姉ちゃんになったってこと!?私!」
「残念。最年少はこないだ2才になったサラサだよ」
「ていうか、赤ちゃん他にもここにいるんだけど」
「あ、そっか」
「神父さん、この子の名前は決まってるの?」
確かに、私も気になる。
「ふむ、実はこの子のお包みに名前の書かれた紙が入っていてね」
「え!そうだったんだ」
「ねえ神父さん、なんて言うの?この子の名前」
しかし、神父さんは何故か苦い顔をしていた。そして、罰が悪そうに続きを話す。
「入ってはいたんだがね.......どうも遠方の言葉なのか、読みが分かる者が誰も居なかったんだよ。可哀想に、折角名前を与えられたと言うのに、誰にもその名では呼んで貰えないなど.......」
「そんな..........」
「..........」
それは.......可哀想ではあるものの、無理もないことだ。ここでは実の親から名前を貰えない子も少なくは無い。その上、この赤ちゃんのように実の名前が分からず、この地で育つ上でつけられた名前で過ごしている子達も居る。
私たちですら、その可能性があるのだ。
ここはそういう環境の場所であり、しかしその中で生きることを受け入れているのが今の私達。そして、またこの子もきっとそうなのだろう。きちんとした教育が受けられる環境というのはそれほど貴重なのだと、実際にこういう立場になってから、人は初めて思い知るのだ
「.......それなら僕が調べてみるよ」
「え!?クロロが!?」
しかし、それを是としない人間が居た。きっと今までに思う所があったのだろう。
皆は驚いているようだが、彼の知識欲なら、その先を刺激されないワケは無いと、私も薄々気づいていたのだ。
「でも、そんなことできるの?」
確かにクロロは私達の世代でも、どころか子供達全体の中でも、かなり頭が良い方だとは思うけど。
共通語じゃない別の国の言葉なんて、流石に無理なんじゃ.......
そんな不安を、彼は容易く吹き飛ばすように言った。
「僕が絶対この子の名前と言語を探してみせる。だから、信じて。みんな」
クロロは暴力的なアイツらとは違ってなんだか安心感がある。きっと、彼なら大丈夫だと思い、私達は頷いた。
「んまぁ〜あぅ」
「ふふ、良かったね。クロロがあなたの名前、探してくれるって!」
「きゃっ!きゃっ!」
そっと握った小さな手は、ほんのりと暖かかった。
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コンコンコン
風が通り抜け、蝋燭に灯された火が揺らめいている。
薄暗い石造りの廊下に青いライトが反射していて、気押されそうな雰囲気が漂う。私がいる場所は、そんな廊下の半ば。豪奢な金属の縁どりがなされた、木製の両開きの扉の前でございました。
「旦那様」
「..........なんだ」
「ご報告したいことが」
しばらくの沈黙の後、中から返事が返ってくる。
「..........入れ」
「失礼致します」
扉を開いた先には、失意の深き底であろう旦那様。私の直属の上司であり、当主のシルバ=ゾルディック様の姿が。
体はこちらの正面を向いているものの、顔は俯いており、表情もとても暗い。その心情は、あの事件を知っている者であれば、察するに余りあるもの。
なんと、お労しいことでしょう。
しかし、ご当主としての本領を発揮してもらう必要がある。気持ちは痛い程解りうるが、このまま再起不能になられても困るのです。
ゾルディック家の為に。なにより、他の御子息の為にも立ち止まられてしまってはいけない。
心苦しいですが、専属執事として.......旦那様を倒れないように支えていかなければ。
決して失礼の無いように、しかし余計にかしこまり過ぎて無駄なことを言わないように務めつつ、私は報告書をそっと読み上げる。
「これとこれはいつも通りで良い。部下達にもそう伝えろ」
「ええ、心得ております」
「それからこの件だが──────」
いつもの仕事の書類を読み上げて、それの承認で判を貰う。
旦那様は現在、以前とは比較にならないほど落ち込んでおられる。仕事に関しても、中々机に向かった事務仕事はなさらなくなってしまった。
元より暗殺一家の彼らはあまり書類仕事は致しませんが、当主であるシルバ様はそうもいかない。
とはいえ、今してもらっているのは重要な承認のみ。
一時的にゼノ様が軽い承認は請け負っているので、どうしても当主の承認が必要な重要な物だけを持ってきた形となっている。
「こちらは以前の依頼主からですよ。また依頼をしたいと」
「今は忙しい時期だから余り受けられないと伝えろ。どうしてもと云うなら、以前の5倍の金額でなら請け負う.......とも言っておけ」
「承知致しました」
それから、複数の報告を終えた後で。おそらく旦那様としては1番の本命であろう報告を行う。
「未だ御子息の行方は掴めておりません。痕跡すら.......まともに出てこない始末です」
「.............」
「近隣諸国まで捜査の手を広げていますが、一切の手掛かりが出てこない.......というのが現状でございます。
それらしき赤子の情報はいくつかありましたが、どれも人違いで終わっています」
そもそも、赤子の行方不明者などそうは居ないと。仮に居たとしても、赤子は見分けがつきにくいわけですが。
一応手掛かりとして、籠と名前の書かれた紙はあるにしても、それでも見つけるのには相当な労力がかかるでしょう。
そもそも、生きているかどうかすらも定かではないのですから。仮に見つけられたとして、最悪のパターンを想定しておいた方がいい。
「.............やはり、死後の念か」
「認め難いですが。
ええ、おそらく。現場の状況からも、そうかと」
ある賊の念能力により、御子息は何処とも知れない場所へと飛ばされた。それはまだ分かる。その念がその者のキャパシティ以上の力を死の間際に発揮して、強まった念でかなりの遠方まで飛ばされた、というのも。まだ、分かる。
しかし、だとしても。いくらなんでもこれは見つからなさすぎる。赤子相手といえど、ゾルディック家のあらゆるコネを使っても見つからないなど、前代未聞ですよ。
私はこの家の全てを知っていると思う程驕っているつもりは無いけど、少なくとも赤ん坊一人すら見つけられないほど、この家の情報網は弱くない。その筈ですから。
「オレの.......せいだ。すまない.......」
「旦那様.......」
ここまで見つからないのなら、どこかのスラムにでも放り出されて、そのまま放置されて死体となってしまっているのだろうか、と。そう考えたくは無いが、その線も捨てきれない。
しかしそういった地域に関しても、ゾルディック家は裏のルートを持っている。金を握らせたごろつきどもから、大した情報が出てこないことから、結局そちらもハズレの可能性はありますか。
無事保護したら報酬が出る旨は伝えているため、ごろつきどもも含め、金欲しさから、治安の悪い地域に住む一般人からの有力な手掛かりが出てもいいはずですが。
「.......ふっ」
不意に旦那様が笑みをこぼした。どうしたのだろうと思うのも束の間。
ドゴォッ.......!!!
旦那様が力強く横にあった机を叩く。
いや、もはや勢いが凄く、真っ二つに叩き割っていた。その亀裂は、下の地面にまで届いていた。
「くっ.............どうしてだ!!!一体どこに行ったと言うんだ.......!」
深刻な面持ちの旦那様に、私は掛ける言葉が見つかりません。
早く見つけなければと使命感を抱き。せめて、早く見つかるようにと..........そう、願うばかりでした。
蝋燭に灯っていた火が悲壮さにあてられたように、鈍く揺らめいていた。
幻影旅団すこ。でもスクワラ殺したから嫌い(豹変)。