アルア=ゾルディック 作:セイヘキ ✕ ト ✕ ソウサク
※11/14 前半中心に、少し修正して内容を追加しました。
まだまだ続きます連続投稿3話目です。
念の伝導率良くする神秘文字みたいなのってどこに書いてありましたっけ。ヨークシンとかG.I.に出てきた記憶はあるんですけど、自分の探した範囲には、詳細がどこにも載ってないんですよね。
有識者居たら教えてクレメンス。
騒がしいのが好みな子らに、その部屋の価値は分からないのだという。
だからこそ、本を片手に傾聴するその子は、部屋を溜まり場にして自分の居場所としていても、追い出される事は無いのだと。
全く、実際そうは見えないはずなのに。
その場所はまるで、教会のような静謐な雰囲気を微かに醸し出す部屋だ。
十字格子デザインの木枠の丸窓がついた、光の差し込む珍しい部屋。
更にその部屋の中唯一の、少し大きい窓台*1こそが彼の溜まり場であり、定位置だった。
窓台に置かれた柔らかなクッションの上に少しだけもたれ掛かり、腰あたりに申し訳程度の毛布をかけたその姿は、まだまだ彼というにもはばかられる程の幼さであるが。
「──────っていうのが、最近の長老会でのお話かな」
「⋯⋯⋯なるほど」
パタン
本を閉じる。かの賢き子供の話を聞いていなかったわけではないが、さりとて全容を知らぬ、でも無かった。故に話半分に聞いていたところはあるだろう。
それが悪い事だとは思っていない。むしろその幼き子供にしてみれば、ゆったり咀嚼する時間が欲しいのを、本の文字を眺めることによって誤魔化していたに過ぎないのだから。
だが、それが余人の目にどう映るのかまでは気が回らなかったらしい。
幼き子供は決して、真剣な時に無駄口を叩くような性格ではなかったから。仮に、脳内で何らか無駄なことを思い浮かべていたとしても、周囲の人間からしてみれば、それら振る舞いは深謀遠慮の類だとしか思われない。
「どこか、気になるところはあったかな?」
「何も、ないよ。平時と何も変わらない」
そう、淡白に語る。その語気は、まるで齢3才にすらなっていない幼児のものとはとても思えないだろう。
「ただ、こんごに備えて柵のせいびと見回り、警備のきょうかはしっかりとしたほうがいいかもね。
それに2人目のちょうろうさま。あのひと、もう歳だから。そろそろ代役を立てておかないと、うまくまわらなくなるよ。万が一の時にまずいんじゃないかな」
不調、不備、不和。
一切無しと言えた。
予定調和だ。準備に抜かりもない。
あえて言うのであれば、その子が懸念するのは己、自身の存在。
「でもさ、1つ気がかりなことがあるんだ。僕の気の所為なら良いんだけど」
「勘は、今までのじんせいの経験全てのちくせきから、あらゆる情報を統合して、むいしきかで最適なはんだんを下しているもの。
・・・・・・というせつがある。
少なくとも、しぜんに生きるどうぶつ達にとってはそうなんだろうね。まあ、かれらのはじんせいではないけれど」
まだ舌が回りきっていない辿たどしい口調にも関わらず、話す内容だけ聞けば、その相手は大人かはたまたといった具合に感じてしまう。
それは、とても奇妙な光景であった。
「だから、はなしてみて。かならずしも、せいかいを答えられるわけではないけれど」
だからこそ、この異端の存在に自分は語りかけるのだ。と、これまたこの世界で成人でない賢き子供は言う。
「大人達は経年劣化だって言ってたけど。明らかに人の手が施された形跡にしか見えない穴があったんだ。そう、まるで抜け道みたいに」
「ぬけみちか。おだやかではないね」
だが、“そんなもの”と。
少し大人な方の子供が、幼い子供の方からそんなことを言いたげな雰囲気を感じる。
まるで、それも正に想像の最中であったかのような物言いに、彼は苦笑してしまう。
「君にとっては、これも考えていた可能性のうちの一つでしかない・・・・・・のかな?」
「べつに、そんなたいそうに言われてもな・・・・・・・・・
少しかんがえればだれでも思いつくことだし」
ぶっきらぼうな物言いは、全くの他人が見れば不機嫌なようにも見えるだろうが。ほんの少しでも関わりのある人物が見れば、それは照れ隠しで言っているとわかるだろう。
賢き子供は、その隙を見逃さなかった。やはりこの子も、どれだけ賢かろうとまだまだ子供なのだなと知り、少しだけ微笑ましくなったのだ。
「先回りして何もかも先手打っておけることが、ね。実際やろうと思うと凡人には出来ないんだよ。僕とかね。
ほんと、君と比べればまだまだだよ」
「きみが凡人なら、この世の4割のにんげんは馬鹿ってことになるけれど」
「4割か、微妙な数字だな〜」
「ずいぶいとたいそうな自信があるね?」
「いや、そんなつもりで言ったんじゃないけどさ。例えの話だよ、君も僕もね」
「ふーん。まあいいや」
幼き方の子供が再び本を開く。今度こそ、纏める思考は終わったと言わんばかりに。そして、とどのつまりの結論を言った。
「どの道、考えつくことは。
「だね。じゃあ、今度はそういう風に伝えておくよ」
次に来る長老会で、再び協議して改良したものを提言する。そうすれば、今の流星街の治安も安寧も、以前より磐石になるであろう。
部屋を出る前に、本を読み始めようとした彼が声を出した。
「・・・・・・次の会はたしか、2週間後かな」
「正確にはそれより3日少ないよ、君が読み違えるなんて珍しいね?」
「・・・・・・うーん?」
おや、これは。と部屋を出ようとした賢き子供は思う。
もしかして
この前注意したばかりで、もうやったのかとは思うものの。
ここではそれをそこまで口うるさく言う大人は居ない。子供の数も減っているが、その面倒をまともに見れる大人の数だって多い訳じゃないのだ。
「────まさか、また部屋に籠りきりで本を読んでたの?」
問いかけると、途端に焦った表情(だったかは確認出来なかったがおそらくは)となり、それを隠すように本を顔の前に持ってくる。その姿は、先程とは打って変わって、まるで怒られる前の小さな子供そのもののようだ。
「・・・・・・・・・いや。まさかそんな」
「はぁ⋯⋯⋯別に沢山読むことは勝手だけど、流石に日が登っても分からなくなるくらい熱中するのは危ないよ?
気をつけてって言っても聞かないだろうけど。
そういうの、やめた方がいいよ?」
「はーい⋯⋯」
なんとも、さっきまでの威厳が台無しだ。
と、彼より7つは上の賢き子供は思う。なんだかんだ言って、この子も年下だ。ましてや信じられないかもしれないが、ここでの最年少なのだ。
ならば、賢き子供にとっては。
彼もまた守るべき子供達の内の一人であるのだと。
そのような会話を交わしつつ、今度こそ部屋を出ようとした賢き子供は。
ふと気になって、とあることを幼き子供の方へ投げかける。
「そういえば、なんとなく聞きたいんだけど」
「うん」
「どうして、工房へ彼らの襲撃があるって分かったの?前触れなんて、何も無かったように思えるけど」
奇跡のような采配だった。未来が見えているのでもなければ、説明がつかないような。才覚の一つだと言ってしまえばそれ迄だが⋯⋯賢き子供は、どうしても気になって問うてしまった。
だが、おそらくそれは望んだ答えでは無かった⋯⋯⋯ように、賢き子供は思う。
「どうしてって?だって、それは」
「余りにも解り易い駒だったから」
窓の外はまだ昼なのに、三日月が見えた。
三日月が笑って、いた。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
ぐでぇ〜〜〜〜〜〜〜〜
「んぁ〜〜〜」
やあ
今日は窓の外から、焼けた香木のいい匂いがするね。ローストビーフでも作ってるのかな?
久々に豪華なご飯が食べれそうで楽しみだ。と、夕飯に想いを馳せてみる。
こんなまったりしてて悪いね。いつものお部屋から失礼するよ。
転生から2年9ヶ月目の俺だよ。
この世界に転生してきてそろそろ3年、大分慣れてきた感がある。
もう体の制御はほぼ出来るようになってきたし、感情もある程度は無視出来るようになってきた。これは俺の特訓の成果って言うより、単純に身体が成長して、いわば理性が芽生えたということなのだろう。勿論、まだまだ拙いが、言葉も思い通りに扱いこなせるようになって来た。
これは、思考の上では魂経由で実践出来ていたことが、脳を始め様々な所が成長して、本当の意味で考えを己が理解して実践出来るようになってきているということ………で、合ってるか?
うん、とにかく。以前の俺ならぎこちなかった仕草も今や当たり前にできるし、世界自体への残酷さに対する耐性も出来てきた。結構もうこの世界の住人と見ても遜色なく擬態出来て居るんじゃないか?
擬態云々はともかく、これで多少のことではボロも出ないだろうし、メンタルもそうそう揺さぶられることは無いはずだ。
とはいえ今でも、さすがに流星街の住民が傷ついたりすることを許容はしないが。
メンタルと言えば。
念への心構えである“燃”に関しても。気持ち的な余裕が出てきて、落ち着いてやれるようになったのはいい事だと思う。
やはり“燃”の、精神の成熟にも一役買ったりする話は本当なのだろうか。
そして、自分には無いと思っていた感情にも気付かされた。
3年にも満たないという歳月だが、それはもう3年になるとも言える訳で。これからホームシックに陥るとしたら、多分それは流星街を思い浮かべられるだろう、というくらいにはこの土地に愛着も湧いたし、多くの人にお世話になり、また転生後の心の支えにもなってきた。
とまあこっちもいい事ではあるんだけど。
こういう思い入れの強さが弱点にならないか心配だ。とも思う。
我ながら、小心者である。
だがそれでも、未だに完全な安心を得ることは出来ていない。
なぜなら、前世の知識がある俺は知っているからだ。
HUNTER × HUNTER世界では、警戒する分にはアドだということを・・・・・・・・・
警戒は、自らの行動を鈍らせる程まで過剰でなければ、した方が良いという方針なので、まあ今世に限ればこういう性は大目に見るべきか。
本当は安全な方がいいと言えばそれはそうだが。前世も似たようなもんだったんだし、ああもうこの際、一々気にしないようにしよう。
ともあれその心配性おかげで、沢山準備をした。作業や訓練に集中することで、精神的に安定してきたのは事実。
やっぱり、何もしないよりはしていた方が良いよね。未来なんぞ知るかと、現実逃避が出来るというものである。
しかし、忘れてはいけない。ここからがスタートラインなのだということを。前世であった知識をフル活用出来ることや、この地での経験を0才の時から理解して吸収できるというアドバンテージがあっても、年齢という枷は未だ大きい。
油断は命取りであるならば、せめて最低限強くなるまでは研鑽は怠らないでいこう。
今の俺の体勢は、若干柔らかい?クッションと窓台に体を預け、ゆったりしつつ本を読んでいる。最近はかなり難解な内容の本も読めるようになってきたので、専らそういうものばかり読んでいる。
しかし以前のような事を警戒してからは、ブックカバーをすり替えたり、カモフラージュで幼児向けの本を実際に読む振り出来るように、すぐ手元に置いたりと。
まさに完璧な布陣を用意して、最効率な俺だけのエデンをひっそりと、日々模索しながら構築しているのだ。
パッと見、今までで一番寛いでいるように見えるだろうが。
これも全ては作業の効率化から始めたことであり・・・・・・
いわば、癖だ。癖ならば、多少は精神が動揺しても同じ事を行えるだろう。
さっき精神の安定がどうのこうの言っておいてアレだが……
実の所、心の中は大荒れである。
何故か?それは単純な話。
最短の話になるが、このままだと「丁度俺が3歳になった年」、の1ヶ月後くらい。
つまりあと4ヶ月後くらいには、例の事件が起こる事になってしまう。
あれが1年の初めの方に起こったことなのか、半ば頃に起こった事なのか?それとも終わり頃に起こった事なのか分かっていない以上。
いつ起こるかも分からない事態に警戒しておかなければならず、そうなると必然。準備期間も短い訳だ。
早ければもうあと3ヶ月で本編の一部である、幻影旅団過去編が始まってしまう可能性があるからね。悠長にしてはいられない。
現に今も、前から続けている念の修行は、“燃”を行う時と寝る時以外にほとんど欠かした事がない。
あの事件。
クロロ達の過去編を見る限り、年明けっぽくは無さそうだったが。
そんなの流星街なんだし、気候の様子が違うだったり、そもそも年明けを祝う慣習が無いだったり、幾らでも理由付けはできる。
まだまだ猶予はある、と俺は当初考えていたが。
これはあくまで推測に過ぎず、俺というイレギュラーの存在も加味すると、時期が何時にズレても可笑しくない。なんなら、早めに防衛対策をすると、その分
・・・・・・いや、うんだから俺という
ただ、一応まだ考察する要素として。根拠は薄いがメタ的な視点での時期予想がある。
というのも、ジンがハンター試験を受けにゴンを置いて島を飛び出したのが11才手前。ゴンとキルアもハンター試験を受けるのは11才手前。さらにクロロが幻影旅団を作ると決めたのも11才。と、かなりストーリー的に重要であろう彼らの年齢には共通点が見られる。
つまり、彼らと何らかのストーリー的繋がりを描写するのならば、同時期にした方が、都合が良いし所謂「エモい」ことになる。
そういうことを考えると、普通なら「なんだ、じゃあ実は原作開始まではまだ余裕があるのではないか?」と希望的観測も産まれてくるわけだ。
しかし、HUNTER × HUNTERに限っては……
寧ろその方が安心しきってはいけない。
「どういうこと?」と思ったアナタ。原作を買って下さい。「ああ、成程ね」と思った察しの良いアナタ。素晴らしい、良く勉強していますね(?)
さて、なぜなら。
メタ的視点で根拠が薄いというのは前提としてだが、時期が分かっていないクロロを除いて、彼らが行くハンター試験の時期は、大抵年の初め辺りだ*2。
つまるところ、仮にクロロ含めた彼らに同時期でイベントが起きているとした場合、どんな具合にしろ1月の初めの出来事であり、俺が準備する期間は実はもうほぼ残っていない、ということになってしまう。
こう整理すると、やはり焦らざるを得ない状況であるのが分かっていただけると思う。
しかし、かと言って俺はこれ以上計画をペースアップ出来ない。どれだけ期限が迫っていようとも、こればかりはどうしようも無いのだ。
何が具体的に不味いのか?
即ち、切り札である“発”の習得。どうやらこのペースだと間に合わなそうだ。
教師も師匠も居ない独学な事を加味した上で、ここまでの“念”全体の習得ペースを考えれば、俺もかなり才能がある部類だとは思うのだが。
如何せん生活もままならないこともあってか、まともな修行に使える期間が無さすぎるのと、今までは“燃”が出来なかったこと。(使えることが嬉しすぎて、つい“念”の方ばかりをやっていた。と言える)
さらに、この身体がまだこの世界に産まれ落ちたばかりの幼児なこともあってか、修得がもたついた感じがある。
今も何とか“発”の感覚を掴んできたはいいものの、未だにマスターするまでには到達していないし。
なんなら最近期限が迫って焦っているせいか、“練”をする集中力が落ちて注意散漫になり上手く出来なくなっているような気がするし。
そのせいで他の念技術に関しても、マスターする速度が遅くなっている感じがある。
こんな調子で本編を迎えても、せいぜい良いとこ、不良の子供を無限にボコすくらいしか使えないだろう。
俺がこれから相手にするであろう脅威は大人だ。しかも悪辣なタイプ。
どう考えても荒事慣れはしてるだろうし、一般人よりは動けるだろう。
単に屑なだけで、本人達の戦闘力は雑魚って可能性もあるっちゃある。原作でも流星街の大人に出くわすのを避けてたしね。あまり希望的観測をしすぎるのも良くないが。
ただ、アイツらはどう考えても念能力者では無いだろうってのは、何となく思ってる。
念能力者であれば、念を使えないただの子供を攫うのに、そこまで苦労するとは思えないからね。
そして仮に、あれが念能力者だったら、流星街の衛士的な人程度にビビりすぎだろう。
・・・・・・っていや、居たわここに。念能力者なのにビビりすぎなやつ。人のこと言えないわ。
でも実際、臆病な分には損はしないと考えている。だって、相手は大人だ。いくらなんでも体格が違いすぎるからね。俺が強化系である保証がない以上。慎重になるべきだ。
・・・・・こんなことを考えている時点で俺の性格的に強化系じゃない気がするけど。
ともかく。念を切り札として頼るにはかなり微妙なのが現状だ。他に教えてくれる人が居ない以上、リスク計算は自分でやらなければならないからな。
針刺されたキルアじゃないが、確実に勝てない相手と戦闘を避ける、というやり方も。俺は多分間違っていないと思う。
それも一つの戦法だろう。ただイルミのはやり方が極端すぎただけで。
まあキルアを死なせたくなかったという気持ちは分かるけども。
………俺はゾルディック家でも無いのに、「セルフ頭に針ムーブ」しているのが度し難いね。血の因果を感じる。
なんにせよ。
今のところ、俺の“念”を宛にする方向は無しにしておきたい。あくまで念は最終手段。取れる手は打って、それでもどうしようもなかった場合に最後に頼ることとする。
そもそも元が幼児なのだ。いくら“念”が使えない相手だったとしても、本人の強さも関わってくる世界で、元となる戦闘力がカスみたいなものだとそこまで旨味がない。
そうだな…………現状の強さを分かりやすくしようか。
言わば幼児の俺は、元々の戦闘力0か1みたいなもんなんだ。
念が使えても、それは大人との戦いの土台にようやく乗れただけで、頭脳以外のアドバンテージなんて無いに等しい?可能性がある。(それすら適わないことも視野に入れておくべき)
うんまぁ、大人と子供の差を大人になって埋めた所で無双は出来ないからね……。
それに、今完全に念の方向性を決めてしまうのは勿体ない。万が一これで、無理矢理人を物理的な攻撃で殺める能力を得たとしよう。
今の時点で、大人複数人相手に有無を言わさず制圧する能力などを作れば、おそらく無双して展開を変え、“暴力こそ正義ルート”に進むことはできる。
だが念とは、基本的に圧倒的スペックを発揮するには条件が要るものだ。
それこそそのくらいの能力なら、制約と誓約が必要な筈。
まあここは、要実験だが。
本人の強さ+念の強さ=強さの総合力、みたいな感じだから、これから“発”を覚えて、特定の方向性にしか使えない固有の念能力を、制約と誓約で倍化させるのは、それこそ
本人の強さ+念の強さ×制約と誓約での条件付けパワー=強さの総合力になってくるからね。
制約と誓約を決めるのは特に慎重になった方がいい。デメリットをこんな段階で負いたくない、というのもあるけど。
それに、どうせなら強くなってから制約と誓約は決めたいところである。俺自身が強くなれば、きっと“念”もそれに合わせて、制約と誓約が無くても強くなれ───
あいや、この場合掛けてるのは念の強さだけだから、俺が後から強くなって総合的な強さを上げる分には問題ないし、今作ろうが関係無いのか。かな?
うーん。そこんとこよく分かんないんだよなぁー。
原作でもこの辺の仕組みは曖昧に描かれてて、イマイチ正確に測りかねるし。
逆に言えば、描写されてないってことは好きに補完してもいい。と冨樫先生が言っている?と取れるけども。
実際、そういう後付けで強くなるのも個人差があって。具体的な数式を作れないからこそ、先生も作中で細かい指標を出していない──────ってこともあるだろうし。
ま、そこん所はおいおい考察しておきますか。
分からないことをいつまでも考えるよりかは、今自分に出来ることをしつつ成果を出していった方が効率的だしね。
頭の中で思い浮かんだ様々な事象を全て言語化し、さらにそれをカテゴリ化して脳内フォルダにしまう。あちこちに散らばったそれらを整理整頓しつつ、だが念能力の維持は続ける。
どちらにせよこの身体じゃあ鍛えるってことも難しいし、もし隠れて鍛えようとしてる事が皆にバレようもんなら、無理矢理止められそうだし。
今、この時間が無い状況で1番最悪なのは、今後の俺の行動が制限されることだからね。
今まで通り、警戒を特にされていない自由な環境でやりたい放題やるのなら、少しでも忌み子的な要素がバレるリスクは避けた方がいいだろう。
というか別に忌み子じゃ無かろうが、3才の子供がフルマラソンとかしてたら普通に止めるだろうしな……(極端)
その点やっぱり念は良い。覚醒していない人には何も見えないし、まさか念の修行をしてるとは思われないだろうから念を知っている大人にもそこまで警戒されないし。
“隠”さえ使えれば、そういう
ただまあ………
隠れてやるってことは、その分他人からの教えも受けられないって事なんだろうけど。
でもしょうがないよね。俺だって急に幼児が念使ってたらビビるもん。どう考えてもまともな存在じゃないって思って距離とっちゃうかもね。
………え?そうでもない?あー確かに。
いやうん、確かに。
これはあくまで、現実的な観点だったらそう受け取るって話であって。
多分実際に俺が転生した上で、俺みたいな赤子を見つけた場合、ビビるどころか嬉々としてその存在に絡みに行くと思うけども。
それはそれとして。
現実的な一般の大人としての反応を考えてね。
あでも、念が見える=念使いって時点で充分一般的では無いか。
ともかく。仮に念が使えたとて、普通の感性を持つであろう大人を欺く必要がある以上。
俺は目立った動きが出来ない。
だからこそ、こうして息を潜めつつも、ルーティーンである本を読みながら念の練習をしているというこ──────
バタンッ!!!!
うおっっっ!?!?!?あっ“練”解けた。う〜む。まだまだ維持の練習が必要・・・・・・じゃなくて、何事?
「弟っ!ごめんすぐに来てっ!!!!」
え、な、本当に何事ぉ………?
てかさりげさっきから息を潜めつつぅぅだったんですが………?
何故バレた。
なんて。
“絶”してなかったからですね、はい。やっぱ存在ごと隠すのに“隠”は向いてないか。
付け焼き刃での修行ついでに、“練”と“隠”2つの念技術の同時練習をしてたけど。やはり素人判断では効率が悪いということが分かったし、まあいいか。今後はやはり誰かに師事しよう。失敗も一つの前進なのである。
うーん。それにしても、最近尋ねてくる人や話しかけてくる人が増えてきたから、隠れながら修行やるのムズいな・・・・・・
そこは今後の課題としよう。
頭の中でとっちらかった考えを再び整理整頓して綺麗に纏めつつ、*3大人顔負けの真剣な表情は奥にしまい、目の前の光景を見る。
と、サラサが切羽詰まったような顔で部屋に飛び込んでくる。
以前とは違い、今日はぶつかって怪我しなかったようだが。
おいおい、もしかしてもう原作始まった???
予定ではどれだけ早く始まっても、それこそ今でも。
クロロ大立ち回りからの劇団結成、それから劇団公演編までの流れがあるから*4、時間が残り少なくなっていたとはいえ、だいぶ開始までの期間に余裕持ってたつもりだったんだけど??
???まだ全然猶予はあるよね?え、やばいか、これ???
・・・・・そういえば、なんか焦げ臭いっすね……
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
よく、皆は僕のことを「産まれる場所を間違えた、頭のいい子」だという。大人だけじゃない、子供達ですらそう思っている。
最近は特にそういった視線が目立つと思う。別にそれが嫌だというわけでは無いんだけどね。悪意があるという訳じゃないし、それに小さい子達からの純粋な憧れの視線は、ちょっと嬉しいという気持ちもある。
むしろ、そういう風に見られていた方が侮られることも少なくなるし色々と動きやすくなるからやりやすい。
今後の事を考えると、僕としては願ったり叶ったりだ。
ここしばらくはごたついていたから尚更、子供だとしても優秀な子の手は借りたいんだろう。ここは協力して皆が生きている街。流星街だからね。
持て囃されるのは悪い気はしないし、僕のこの頭脳を活かして皆の為になることを出来るなら、それ以上に素晴らしいことは無いと思う。
自惚れて調子に乗るなんて、ない。僕だって、子供なりに自覚はあるつもりだ。別に本能に身を任せて、子供らしく偉そうにもできたけど。
どうやら僕という人間は、どうも理性が強いらしい。
そのせいか、同年代の子から偶に距離を置かれることがあって(悪い意味じゃないけどね)。
それはちょっぴり寂しいけど、弊害なんてそんなものだ。ここ流星街では、大して気にするような事でもない。
だから本来は、それで良かったんだ。
──────でも、皆は致命的に1つ見逃しているものがある。
きっと、まだ僕とパクちゃんくらいしか………いや、もしかしたらサラサも気づいている可能性はあるけど、とにかく。
世界にはもっと、凄い人が沢山いるんだから………
それこそ、僕が天才児だと言うなら──────
──────きっとあの子は神童だ。
「もー!!!だからやめておこうって!!!言ったのに!!!」
「そっちだって途中までノリノリだったじゃん!!!ってキャー〜ーー!!?」
「わーっ!?どうしようっクロロ!?!?」
「ふっ、二人とも落ち着いて───ッ、こういう時は・・・・・・」
「大丈夫、だよ。クロロ──────
なんとかなる」
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△
とある事件から少し時は遡って、日がちょうど落ちてきたくらいの夕方。
僕は今、謎の儀式に参加させられている。
儀式と言っても、子供が遊ぶような玩具を少し不気味にして、それっぽく飾っただけのエセ占いみたいなもの。
正直ここ最近、なんだか考え事をする機会が多くて(普段から考え事なんて山程してるじゃんと言われればそうなんだけど)。
ちょっと精神的にも疲れていたのもあって、小さい子達の面倒をみるという名目で、気分転換の為遊びに付き合っていた。
そうしたら、その子達がなんだか怪しげな占いの本を見て、ここに書いてある事をやろうと言い出した。ぶっちゃけ気味が悪い気配がしたし、危ない事をしそうになったらすぐに止めようと思いながらその一部始終を眺めていた。
ところが特に何か危険な事をする訳でもなく、単純に占いの真似事のようなことしかしていないその子達を見て、問題は無さそうだとボッーとその様子を見ていた。
本当に前触れも何も無かった。何も危険な要素などないし、強いて言えば、はしゃぎすぎた子が転んで怪我しないか見張っておくくらいのものだった。
だから、油断したんだ。疲れもあって、思考も上手く回っていなかったのもあるんだろう。それでも、その場では年上の僕が、ちゃんと見てあげなければならなかった。
──────突如、目の前に天へと伸びる程の燃え盛る火が出現した。
「・・・・・・え?」
原因だとか、理由だとか。疑問だとか?そんなものは二の次だ。いくら有り得ない事象だったとしても、現実に起きているのだからしょうがない。これを放置すれば、それこそ大惨事になりかねないのだから、考えるのは後だった。
「3人ともすぐ離れて!!!僕の後ろに!!!!」
「キャーー!?!?」
「クッ、クロローーー!!!!」
「うわーー?!?!なにこれぇ!?!?」
咄嗟に前に出て庇ったのを見た3人はすぐさま僕の言うことを聞き入れ、僕の後ろへと避難する。幸い巻き込まれて直接怪我をした子は、パッと見は居ないようで一先ず安心した。
しかし油断してはならない。急な発火に伴い、あたりは一面火の海・・・・・・ということは無いにせよ、先程まで無かった煙が充満しており、赤い灯りが煌々と部屋全体を照らしている。
このままでは火事になるだろう。と直感的に理解した。
(──────っ、出口は!?・・・・・・よし、とりあえず塞がれてない。退路は確保出来てるな、あとは消火出来るものを・・・・・・この部屋には無いけど、すぐ近くに確か水道があったはず、水を汲むバケツもその近くの部屋にあった!!!よし!!!)
「みんなよく聞いて!!!火事になる前に、すぐに火を消すよ!
ミナは近くの水道からバケツに水を汲んできて!近くに力のある子が居たら、火事があったって教えて消火に協力して貰って!確かバケツはこの階の階段の横の部屋の入って右奥の棚にある筈だから!」
「あ、え、うん!おっけーわかった!」
「サラサ!すぐに周囲の大人を呼んで来て!火事があったって事を伝えて回って欲しい!!ちゃんとこの部屋の場所を伝える事も忘れずにね!!!もし大人が居なくても、子供たち同士で話を広げて大人に伝わるようにして!!!」
「おっけー!!!アイアイサー!!」
「リティも水を汲んできて欲しいけど、バケツ程じゃ無くていいから水を浴びてきて!それから僕にもかけられるくらいの水を掌とかポケットに入れたらすぐ戻ってきて!どうして燃えたのか理由を聞きたいから、なるべく隣に居て欲しい!」
「う、うん!」
即座の指示は的確であり、まるで齢10の子供とは到底思えない理路整然としたものであった。
それもこの状況では気にしては居られないと、頭の中からそんな思考をかき消す。指示された子達は皆違う反応をしていたが、一先ず動く事が最優先と理解してくれたようで、仕事を遂行すべくそれぞれが出ていった。
だが、出て行く直前にサラサだけが立ち止まり、一瞬振り返る。
「クロロ!クロロはどうするの?この部屋にいるわけにもいかないんでしょ!?」
「いや、僕はこの部屋に残って近くの可燃性のものをどかさないと。更に炎が燃え広がる前に対処する必要があるんだ。だから早く戻って来てよ?焼け死ぬのは流石に勘弁だから」
「あーもう!クロロ無茶しないでね!!」
「大丈夫、心配しないでよ。危ないと思ったらすぐ逃げるから。さ、早く行って。助けを呼んできてよ!」
「う〜、任されたーー!!!」
こないだまで最年少だったサラサに気を使われるという恥ずかしいことはありながらも、目の前の火から意識は逸らさない。
覚悟を決め、集中する。できるだけ近くへ、しかし自身の服や体に燃え移らないように、全神経を研ぎ澄ませる。
恐怖を必死に抑え込みながら、意を決して燃え盛る部屋の中心へと飛び込んだ。
ごおごおと、火が燃える音が至近距離で聴こえてくる。未だかつてこんな経験はしたことが無いから、心臓が先程からとてつもない速度で早鐘を打っているのに気づく。だが、やらねばならない。皆の為にも。
「く──そっ.......!」
近づくとやはり熱い。少しでもいいから水を浴びてからやれば良かったかと思うものの、今この瞬間も炎は勢いを増している。この時点で戻っても時間をさらに浪費するだけだと考え、手早くしかし慎重に、火元の周囲に落ちている物を集め始める。
まずあの占いの本、既に燃え盛る中に埋もれている為に退かす必要も無いだろう。というか、あれが最初の薪になった可能性すらある。
そっちは水の到着を待ち、一先ず辺りに散らばる呪術道具もかくやといったガラクタや玩具、それに布などを素早く取り去る。
まだまだ周囲には物が落ちているが、少なくともこれで更に勢い良く燃え広がるということは無くなっただろう。まあ、ここは2階な上に床が木造なので、無駄な足掻きだとは思うが。少なくともやらないよりはマシである。
ここで、リティが戻って来たため、皿に水を入れてきた彼女に水を掛けてもらい、そのまま再び炎の傍へと突っ込む。リティが不安げな顔から、悲鳴を上げた表情になったが、今は気を遣っている余裕が無い。
悪いが我慢してもらおう。
炎の近くに飛び込んで、物を掻き集めて離脱する。ということを数回繰り返した後。
まるで最初の火元は分からないが、薪となった本以外はほとんど無事に引き離すことに成功した。
神父さんや大人達に見られれば、なんて危険な事をと怒られること間違い無しだが、こうでもしないと事態が悪化するのは目に見えていたのだ。何もしない訳には行かなかった。と言えば、更に怒られてしまうだろうか。
色々言われている流星街だが、住民同士の結束は意外と根強い。だから心配もするし、何かあれば助ける。
普段ならば兎も角、緊急事態であれば、どんな荒くれもきっと協力するのだろう。そんな信頼があった。だからこそ、あの子達にも助けを求める指示を出したのだから。
大人達さえ来てくれれば何とかしてくれる。最悪、戦力になりそうな年長の子供でもいい。自分はそれまで出来ることを精一杯やるだけだ。
──────と。
やはり、齢10の子供が持ち合わせる精神性では無いなと、我ながら自嘲しながら、リティと一緒に集めたものを部屋の入口の邪魔にならないように外へ放り出しながら、そんな事を考えていた。
そして、1分程した頃だろうか。バケツを持ったミナと、何処で合流したか、一緒にバケツを抱えているフィンクスが慌てて走った様子でやって来た。流石の彼も、火事となると普段のナリでは居られないらしい。
フィンクスらと消火活動を開始する傍ら、暫くするとサラサが息を切らせて走ってやって来た。
良かった。救援は呼べたのか。と、安堵しかけたが、サラサの顔はあまり芳しくない表情だった。
それだけで、ある程度は察せてしまう自分が、この時ばかりは憎かった。
「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・クロロ、ごめん・・・その・・・・・・」
「うん。分かってる。居なかったんだね、近くに大人が」
「おいおいマジかよ、どーすんだ」
「うん、一応近くの子達には大人を呼びに行ってってお願いしたけど、まにあうかな・・・・・・」
「上出来だよサラサ。むしろよく途中で戻って来てくれた、ありがとう。それならそれで方針を立てやすいからね」
と、サラサを安心させるように言う。端的に言えば周囲に大人が居なかったこの状況は最悪だが、しかしサラサが悪い訳でもないのだ。彼女に罪悪感を覚えさせる必要は無い。
さて、この状況をどうするか。今も皆で消火活動は続けているが、まさに焼け石に水といった感じで、全く効果が見られない。火元というか薪はあれしか無いのだから、とっくに消火出来ていてもおかしくない筈なのだが……………?
床にも多少燃え移っているし、それが良くないのだろうか?とはいえそれではどうしようも無い。それに──────
「ああっくそ!!!何で消えねえんだよ!!!もう5回は全員でそれぞれ水ぶっかけてるぞ!?!?」
そう、フィンクスの言うように、この炎、いや火は少し変なのだ。
さっきも急に何も無い所から発火したように見えたし、今この状況でも全く消える気配すらない。
なにかそういった現象でもあっただろうかと自分の知識を総動員して、過去の記憶を辿るも、それらしきものは思い浮かばない。
水をかけても消えない火という手掛かりはあるのに、今の状況にマッチするものが分からない。
なんだか暑いのに背筋が凍るような不気味さが、辺りを包んでいるような気さえした。
「しょうがない!サラサとリティはもう1回助けを呼んできて!なんだか普通の火と違って、消火しずらいっていう事も伝えて欲しい!
他のみんなは引き続き水を掛け続けるよ!効果が薄くてもやるんだ!」
「うん、行ってくる!」
「ラジャー!」
「くそっ、なんで俺がこんなことぉ!!!」
「お、重い・・・・・・」
皆がそれぞれの言葉を口にして、その場から弾かれたように動き出す。例え子供だけでも、出来ることを。ここは燃やさせる訳にはいけない。
多くの子供達がこの建物を使い、寄辺にし、辛い日々を力強く、はたまた楽しく生きているのだから。
だからこそ・・・・・・ここは──────
と、いったところで、思考がある1点に止まる。
それは1人の子供の存在。もう居る必要も無いのに、普段からこの建物に入り浸り、僕と同じかそれ以上に本の虫となっている彼の存在を。
あの子ならば、なにか知っているだろうか。なんて、一瞬でも年下の子に頼ろうとした自分が情けない。
すぐに頭を振り、目の前の事に当たろうと心を持ち直す。
さあ取り掛かろうと意気込んだ僕は、つい自分が口にしてしまって居ることに気づかなかった。そして、それを部屋に出て行く直前の子に聞かれていることにも。
「あの子なら、もしかしたら──────」
「・・・・・・・・・・・・」
そうして、後からしばらく経って一番最初にやって来たのは、力仕事ができそうなフランクリンやウボォーギン、冷静に物事を見れそうなパクちゃんや頭がキレそうなマチ、そして念願の救援である大人達。その誰でもなく─────────
「待って!皆!クロロ!!!連れてきた!!!!」
「・・・・・・えっと、これ、どういう状況───?
かはまあ、見れば分かるけど……」
「!?!?な、なんでこんな危険な所に連れて来たんだ!!」
この暑く燃え盛る世界で、明らかに場違いな。
しかし確かに、自分が心の何処かで待ち望んでいた『答えを持つ』人物だった。
to be continued.......
あえて彼は理屈屋っぽく書いてます。自分のペースで計画を進めているのも性格が出てますね。
でもそのせいで、計画が間に合わなそうで最近は焦りが生まれている模様。
え?そんなことより火事はどうするんだって?
気にしなくていいよ(冷静)
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遅れてしまいましたがこれからもよろしくお願いします。