都内某所
「なるほど、これは……」
蘆屋が依頼を引き受けて3日が経った。現在彼女の前に在るのは雑草が生い茂った一軒家である。
数ヶ月放置しているにしても、蜘蛛の子一つ、シロアリの一匹も居ない異様さに蘆屋は岩子や、それに関わっている人物が只者ではないと察した。
聞き込みをしても長らく空き家であり、どんな顔の者が住んでいたか覚えていないという地主には暗示の術がかけられていた。
「…さて、あなたの番ですね。あなたには、何が見えます?」
庭に入り、誰も居ないことを確認すると、女は自身の膝元の高さに視線を移す。そこには誰も居ない。しかし、女はまるでそこに誰かがいるかのように話を続ける。
「ほゥ、術の…この癖、鬼道に連なる……なるほど、机の上………ありました。ふむ、燃やされていますがやってみましょう………………哭倉村、ですか。」
ブツブツと独り言を呟きながら、埃が積もった机を物色し、時が戻ったかのように塵が集まり一切れの紙に変わる様を見守る人は居ない。
「さて、少々調べ物の時間と参りましょうか。」
用は済んだ、と寂れた家屋から出る。
「待ちなあんた…この家に何しに来よった。」
呼び止める声が聞こえた。
「おや、あなた…」
白髪を長く伸ばした老婆が、女を睨みつけていた。
「ここは空き家じゃなくてね、留守中なんだよ。」
「はて、ここの大家には話を通していたのですが…あなたは、岩子さんとはどういった関係でして?」
「……古い、友人さ。」
「まあ、そうでしょうねェ。」
「あんた…」
「まあ誰も居ないのでいいでしょう、
「チッ…そうかい。」
老婆、改め砂かけ婆が悪態をつく。
「まあまあ、早急に出るつもりでしたし、足取りも掴めました。」
「…はァ、あんたのその胡散臭さはどうにかならないのかねぇ。」
「生まれつきこういう面にて、申し訳ありませんね。」
「ま、落ち着いたらワシにも教えてくんろ。
ため息を吐き、呆れたように再び蘆屋を睨む砂かけ婆。
「まあまあ、式による縛りも課していないんですし、どうやらあなた達とは少し違うみたいですよ?
「そうさねぇ…確かにこの国生まれだが、うっすらと大陸の西に近い匂いもする。可哀想に、こんな小さな子が…何、気にしていない?呑気じゃのォ。」
「まあ、路頭に迷っていたのをたまたま見つけたのが私ですし、期間中は責任を持ちますとも……では、この辺りで。図書館も1日中開いているわけでは無いので。」
「とっとと行きな!しっしっ」
塩を撒く要領で、砂をちろちろと蘆屋の法衣に振りかける。
「さて…表の依頼人にはどう示しをつかしましょうか…警察なんかに通報されても邪m…どうにも出来ないでしょうし…まァ、なんとかなりますか。」
いい加減な言動に対し、クツクツと笑う女に怪訝な視線を送る目々が、それに応えた。
さて、リンボガールが連れている「子」とは、誰でしょうね。
ヒントは「水木作品だけど水木しげるが書いていない」とだけ。