黄金世代の白雪姫   作:サリエリキキ

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ホワイトグリント産駒列伝~ウィンターウィーク~④

 事態は深刻だ。

 アメリカは公式には競馬の常識を説きながら、次々とアメリカの長者番付に名を記した人や偉い人が会食だのなんだの理由つけて来日し、今までの交流不足を埋めつつ、日本競馬の現状から見てのサンデーサイレンスの孫であるウィンターウィークの成功する可能性の薄さや、他方アメリカ競馬での成功の高さなど切々と話し込んできている。

 一切カネの話をせずに馬というか趣味の話しかしない姿勢に、個人的な交友関係を結んだ人も珍しくない。

 同士は早々と屈した。

「オグリキャップとサンデーサイレンスの孫で、スペシャルウィークとホワイトグリントの子にして、あれだけの成績をアメリカでおさめた馬が、日本で種牡馬入りは無理ですよ。ネイティブダンサーの子孫にしてサンデーサイレンスの孫が、日本で育まれた馬が、種牡馬としてアメリカに凱旋すると祝杯を上げませんか。

 ……ところでビャクウンですが、種牡馬入りしたらどうするか聞いていますか? あとトウカイステージは年100頭まで大丈夫だという研究結果が出ましたので、内町さんとも一緒に一席どうですか?」と既に過去の話にしている。

 ────チーが、サンデー系だからって冷血すぎんだろ! そんなにサンデー系は満ちて……るよなぁ。しかたねえわ、日本じゃもう要らんわ。と自分でも思うくらい溢れてるものサンデー。

 それはそうと、アメリカでは溢れても日本では活路があるミスプロ系やシアトルスルー系の繁殖馬をこの期に手に入れやがって。

 ブルータスに裏切られたシーザーとはかくの如く心境だったのか。うちは、ミスプロ系の牝馬五頭しか導入してないのに。ずるいっ。

 

 わかっている。理では向こうが正しいと。クラシックを日本ではなくアメリカを選んだ馬は、アメリカ三冠馬は、アメリカで種牡馬になるべきだと。ウィンターウィークの血は日本ではそこまで必要とされていないが、アメリカでは求められていて、アメリカに行く方が種牡馬として幸せになれると。

「家族と会わせたいなら種付けシーズン以外なら日本に返す。もちろん費用こっちもちで」とまで言ってくれているアメリカ競馬界の方が大人だと。

 ミスプロ系牝馬の売却に関してなどを、完全な別の話としたアメリカ競馬界の方が大人だと。

 

 ……まあ、それらにはあんまり心動かなかったんだけどね。

「ゼニヤッタには本当に相手が居ねえんだ! 何よりも俺は育てたいんだ! ウィンターウィークとゼニヤッタの子を!」と酒飲みながら涙するゼニヤッタオーナーの気持ちが、何よりもよく分かって心が動いてしまったんだけどね。

 そのゼニヤッタのオーナーとも「日本で種牡馬になったのなら、ウィンターウィークに勝ったし一株譲る。レース前にそう賭けしてたことにしよう。だから、日本に種付けに来てくれ。そういうことで日本で種牡馬になることに賛同してくれ」ということで話し付いたんだけどね。

 だから、日本で種牡馬になるという心理的な壁は全く無いのだけどね。

 サンデーサイレンスの血が飽和しきっている日本で、ウィンターウィークの嫁さんは限られ、先々で詰むことになるだろう。この容赦なき深刻な事態だけが、アメリカで種牡馬になることを望んでしまう。

 

 土地の狭さを起因として、ほぼサラブレッドだけの馬の生産が年12000頭で頭打ちになった島山国日本よりも、サラブレッドだけで7万頭、他種を含めると40万頭を超える馬が1年で産まれ人と共に過ごす大陸アメリカの方がウィンターウィークの幸せにつながると。

 

 ──年80頭制限は絶対に譲らねえが

 

 どうすべき、か。

 くそ、サンデーサイレンスがここまで淘汰しなければぁ。

 あと、広いよアメリカ。くそっ。広い平地持ってる国はこれだからよぉ。

 

 

 

 この頃の北野オーナーの心境はかくのごとしである。

 日本競馬に関係する人物が大なり小なり脳裏に浮かべている「サンデーサイレンス血統強すぎ問題」がその苦悩を深めていた。

 そんなオーナーの苦悩を知らず──いや、「どうしたの? 疲れてるの?」と顔を合わせたらペロペロ舐めてくれるウィンターウィークの愛らしさに、「この可愛い可愛い愛馬をアメリカ送りは嫌だ」と、更に苦悩を深めさせながらウィンターウィークは飛躍した。

 フェブラリーSを圧勝。

「ベストの走りをしたサクセスブロッケンの五馬身前に白馬がいた──モノが違いすぎる。アメリカ三冠馬がどういうものか教えてくれた」サクセスブロッケン鞍上に悔しさではなく感嘆の思いを抱かせたほどの圧勝。

 昨年のジャパンカップダートと同じく、日本のダート馬では、否、ゼニヤッタでなければ相手にならないと証明したのだ。

 それは次走のドバイワールドカップで更に深いものになった。

 

『ウィンターウィーク! ナドアルシバ最後のドバイワールドカップは白馬が勝った! 大差をつけて勝った!』

 

 紛れもなく偉大な記録である。そのまま勝っていく。

 

『オグリキャップ記念はウィンターウィーク! オグリキャップの孫のアメリカ三冠馬だ!』

 

 しかし、そこには

 

『開いた! 開いた! 差が開く! 開く! 差が開いていく! 差が開きすぎていく! かしわ記念はウィンターウィークだ! 

 カネヒキリ何も出来ないっ! エスポワールシチーも子供扱い! 大差でウィンターウィーク! アメリカ三冠馬とはこういう馬なのだっ!』

 

 賞賛はあれど熱狂はなかった。

 

『ヴァーミリアンとフリオーソを突き放す! 直線半ばから追っただけで! 七馬身は着けた! 帝王賞もウィンターウィーク! 他を圧倒した! まるでホクトベガだ! 

 強い! 強い! 強すぎる! ウィンターウィークは強すぎる! 単勝元返しっ! 日本馬にはっ! 世界のウィンターウィークはどうしようもないっ!』

 

 見て来て勝ったは賞賛されど熱狂されない。それが競馬の、大衆化した競馬の常である。

 競いあっていないから。

 競馬をしていないから。

 去年のBCクラシックで、サンタアニタパークで20万人の熱狂を受けた王者へは賞賛はあれど熱狂が無くなっていた。

 アメリカ三冠馬が出るのに、日本の全てのレースで馬券売上が前年よりも下がったほどに。

 

 ──強すぎてつまらない

 ──あまりにも強すぎる

 ──どうして行かないのか

 ──アメリカにはいるのに

 ──競い合える相手がいる

 ──ゼニヤッタがいるのに

 

 日本のファンにさえ、ウィンターウィークはそう言われながら馬券やグッズを買われなくなった。

 アメリカで牡牝混合レースを勝ち続けるゼニヤッタに同じように言い、馬券やグッズを買わないアメリカファンと同じく。

 だからこそ、日米ファンは二頭が争ったらどうなるかを楽しみにしていた。

 いや、望んでいた。

 

 北野オーナーとゼニヤッタのオーナーと同じく。競馬運営組織である日本のJRAとアメリカの競馬局は「「興行として失敗しているっ! 種牡馬の話は後にして取り敢えずアメリカのレースに出てくれっ! ゼニヤッタと競馬してくれっ!?」」と異なる言語で全く同じ悲鳴を上げていた

 

 そして、何よりもウィンターウィークに鋭気が無くなってきていた。

 小さい頃に、オグリキャップ相手にじゃれつきながら力勝負を挑む。

 そんな勝負精神豊富なウィンターウィークは楽に勝ち続ける日々がつまらなくなっていた。と、調教師と騎手は語る。

 

 故に決意した。

 

 アメリカへ行く。と

 

 陣営の誰もが分かっていた。今度渡航すれば、アメリカから帰れないだろうと。

 アメリカで種牡馬になるしかなくなるだろうと。来日し続けて北野オーナーを訪れる政府高官やアメリカ競馬界の大物の姿は、そう確信出来た。

 しかし──夢とロマンが、何よりも競い合える競馬がある。

 ゼニヤッタと、そして、レイチェルアレクサンドラと、戦い勝利し最強馬の称号を得る。夢とロマンが。

 ウィンターウィークに鋭気を取り戻させるための、競い合える競馬がある。

 ただそれだけを頭にアメリカに向かった。

 

 お帰り。もう離さないよ。と満面の笑顔を浮かべるアメリカ競馬界の許可を得て向かった。

 

 とりあえずとばかりに、放牧後の9月頭の群馬はチャンピオンズカップを蹂躙して向かった。

 

 そして、渡米したジョッキークラブゴールドCでレイチェルアレクサンドラという新たな運命と出会う。

 

 ──の前に、「今年で引退。ラストランは日本。種付け年最大80頭。種付け一度で5万ドル固定。権利は毎年くじ引き。ウィンターウィークに勝利した馬のオーナーには毎年1株贈与。種付けシーズン以外は日本に帰る」が大統領府競馬局仲介のもと、喧々囂々のやり取りの後で決まった。

 

 そして、満面の笑顔のゼニヤッタオーナーにより、ゼニヤッタの今年限りの引退と毎年ウィンターウィークを付けるとの発表に、全米が拍手した。

 その上で、速くも今年度アメリカ三冠馬レイチェルアレクサンドラが、ウィンターウィークと戦うと聞いて熱狂した。

 

 

 

 …………ホワイトグリント産駒を語るスレ(2009)より抜粋

 

 :白雪姫同盟

 なんで今年の三冠馬おるん? ゼニヤッタと一緒にBCクラシックで待ち構えてる予定は? 

 

 :白雪姫同盟

 牝馬なのにアメリカ三冠制した魔女。どうしているの? 

 

 :白雪姫同盟

 予定変更して殴り込んで来やがった。

 

 :白雪姫同盟

 二年連続で三冠馬は、シアトルスルーとアファームド以来。三十年ぶりの二年連続三冠馬の片割れは初めての牝馬。

 アメリカンは熱狂したよな。

 

 :白雪姫同盟

 ゼニヤッタはアメリカ三冠馬に勝利した! ならば牝馬でもやれるんだぁ! うちのレイチェルアレクサンドラなら絶対にやれるぅっ! 

 オーナーの今年の頭の咆哮通りに牡馬ボッコボコにして、アメリカ史上初の牝馬でクラシック三冠制した魔女が何故??? 

 

 :白雪姫同盟

 勝てば種付け1株手に入れられると聞きました。レイチェルアレクサンドラはくじ引きの運に頼る余裕なんてないんだ! 絶対に勝つ! 旦那居ねえんだよぉっ!!! byオーナー

 

 :白雪姫同盟

 なんでそんな必死なん? 

 

 :白雪姫同盟

 レイチェルアレクサンドラ。

 父メダグリアドーロ(サドラーウェルズ系(祖にノーザンダンサー))母父ローア(ミスタープロスペクター系)

 超良血だからね(目逸らし

 

 :白雪姫同盟

 あっ(察し

 

 :白雪姫同盟

 また、サドラーウェルズとミスプロか(白目

 

 :白雪姫同盟

 旦那居ねえな。これは仕方ねえ。必死になる(震え声

 

 :白雪姫同盟

 ミスプロぉぉぉっっ!!! 

 

 :白雪姫同盟

 エルコンドルパサー・キングカメハメハ「お爺ちゃん凄すぎっ! 日本でもミスプロ系は僕らが割りと埋めたしなあ」

 本当にミスプロはよぉ

 

 :白雪姫同盟

 だからこそ、ウィンターウィークは大歓迎されたわけだし

 

 :白雪姫同盟

 祖父サンデーサイレンスはアメリカ二冠馬にして年度代表馬、父スペシャルウィークは芝とはいえBC含めたアメリカG1・3勝馬、母ホワイトグリントもアメリカG1複数勝利馬。

 そんな血を引いたアウトブリードの三冠馬。

 アメリカンからしてみれば、血脈でも実馬の能力でも成功の香しき香りしか立ててねえな。

 

 :白雪姫同盟

 実際に成功するだろうね。アメリカでは傍流のヘイロー系希望の星

 

 :白雪姫同盟

 ウィンターウィークは、アメリカではハルマン氏の牧場での種牡馬入り決定まで「ウチに置いて!」と争ったなぁ。

 

 :白雪姫同盟

 北野オーナーも遂に、か

 

 :白雪姫同盟

 アメリカが道理と義を守り続けながら押し切ったなあ。

 

 :白雪姫同盟

 アメリカ長者番付に乗る人達が誰一人としてカネに訴えなかったからな。

 

 :白雪姫同盟

 資産額が日本円で兆の大台に乗る大富豪たちが、ドルで頬を叩かなかったんだ。趣味人としての誠意しかなかった。仕方ねえよ。

 

 :白雪姫同盟

 日本人に効く交渉しやがって――これも、ホワイトグリントとオグリキャップが変えて競馬局が出来たアメリカ競馬の姿だからな。

 

 :白雪姫同盟

 それはそれとして、2億ドルをシンジケート代として北野オーナーに支払ったんだけどね。

 

 :白雪姫同盟

 80頭制限1発5万ドル。年400万ドルが稼げる限界の種牡馬に2億ドルっっ!? 50年も種牡馬出来る分けねーだろっ!! 

 

 :白雪姫同盟

「種牡馬ウィンターウィークに対するアメリカ競馬界の評価を率直に払った。無論、契約通り一度に5万ドル以上は決して取らないし、年80頭制限を厳守する」シンジケートの代表者の台詞に震える。

 

 :白雪姫同盟

 史上最高額のシンジケートだな(白目

 

 :白雪姫同盟

 誠意とは言葉ではなく金額。

 ここまでされるとウィンターウィークをお願いしますとしか言えん。北野(息子さん)のように

 

 :白雪姫同盟

「チーは、日本で種牡馬になる道も絶対にありましたし、何よりも皆さんの前でもっと走らせて上げたかった。あの子はレースが好きだから」と契約した後も愚痴ってた北野オーナーの方が私は好き。

 

 :白雪姫同盟

 俺も

 

 

 

 

「「「どうなってんだ???」」」

 

 あくまでもステップレース。

 それも、遠征に心身が適応したかを確かめるためのレース。

 そんな軽いつもりで登録したウィンターウィーク陣営は、ゼニヤッタと並ぶ強敵と目している魔女がいきなり*1殴り込んで来たことに口を揃えて困惑した。

 

 魔法のように牡馬を叩きのめした姿が、自立した強い女性の意味とハリー・ポッター人気を込めて『魔女』と呼ばれるようになったレイチェルアレクサンドラ。

 アメリカ史上初めて牝馬の身でクラシック三冠馬となった女傑である。

 二歳年上のゼニヤッタと一緒に今年度全勝。牡馬牝馬問わずに叩きのめす姿を見たアメリカ競馬ファンたちは、二頭の強さに熱狂すると同時に牡馬の不甲斐なさに嘆いていた。

 そんな時に、ドバイを制して何故か日本を蹂躙していたウィンターウィークが帰ってきた(アメリカ人的価値観)

 それを見たレイチェルアレクサンドラ陣営は、躊躇いも怯みもせず挑戦状を叩き付け、その勇敢な姿にアメリカンは熱狂した。

 

 アメリカ史上三十年ぶりに三冠馬二頭がぶつかる! 

 

 そんな物語に熱狂するファンとは違って困惑し、海外なため、その理由を隠さないウィンターウィーク陣営。

 あくまでも環境に適応出来たかの試しレース。と断言するウィンターウィーク陣営。

 そのため、熱狂は消え去ってしまった。

 当然ながら一番人気をレイチェルアレクサンドラに譲った。

 アメリカ三冠馬二頭が久しぶりに同じレースで激突する。という物語も今は昔。

 勝って種付け権ゲットだぜ! と燃え盛っているレイチェルアレクサンドラ陣営を除いて、皆が前哨戦というか練習戦というか、1.4倍ついた馬連銀行か、2.6倍ついたレイチェルアレクサンドラ─ウィンターウィーク馬単銀行を見に来たレースだった。

 

 ウィンターウィークが、昨年にゼニヤッタに抜かされるも一度は差し返した馬。

 母方の祖父、そして母譲りの、レースを理解した負けず嫌いだということを皆忘れてしまっていた。

 

 

《レイチェルアレクサンドラ! レイチェルアレクサンドラ先頭! 逃げに逃げる! 魔女は箒に乗って飛んでいる! 後続とは9馬身はある! これは完勝か!》

 

 箒に乗った魔女。レイチェルアレクサンドラをそう評する走りである。

 直線で先頭となり、素晴らしい巡航速度のまま押し切る。

 ありとあらゆる牡馬と牝馬がやられた戦術。

 だが

 

《いや! やってきたぁ! 白馬が! スーパーホワイトフェクタがやってきたぁ》

 

 そこに流すだけで済ませようとした鞍上に逆らった白馬が突っ込んできた。

 

《もの凄い豪脚! ガンガン距離を詰めてくる! スーパーホワイトフェクタは! 三冠馬はやはり違うっ! 負け続けた玉無しどもじゃない!》

 

 愛馬が戦うと決めた姿を見て、腹を括った熟練の騎手である沙藤騎手の懸命な追い。

 それに応援されるようにウィンターウィークは伸びる。

 

《並ぶっ!》

 

 実況の涙ぐんだ声が轟く。

 それは1875年に三冠競争が作られ、1919年に三冠が定められてから100年近く。

 アメリカ競馬ファンが誰もが、シアトルスルーとアファームドでも見せてくれなかったと諦めながらも胸の中で描いていた夢だった。

 

《ならんだぁ!》

 

 夢は現実になった。

 三冠馬が二頭。同じレースで走る夢が。

 

《レイチェルアレクサンドラ! のびるぅ! 負けないとのびるぅ!》

 

 どちらが強いか互角に競うという夢が。

 シアトルスルーの圧倒で終わり醒めてしまったものではなく、最後の最後まで競馬してくれる夢が。

 

《がんばれっ! がんばれっ!》

 

 泣きながらただ応援することしか出来ない実況を含めたオールドファン。

 自分の推しを応援するファン。

 競馬場で馬券を買った馬が疾走する姿を見ながら絶叫することで得られる、何とも言えない快楽が観客の脳を焼く。

 そして

 

《レイチェルアレクサンドラだ! 凌ぎぎったぁ! 僅かにしのいだああああああ!》

 

 更に深い快楽であるその馬券が当たる。何物にも代えがたい快楽に絶叫する買っていた実況を含めたファンの咆哮が競馬場に木霊した。

 

《レイチェルアレクサンドラ! やったぁ! やったぁぁ! 

 だが! 流石はスーパーホワイトフェクタ! 

 本調子ではないのにっ! 

 今まで牡馬の誰もが出来なかったレイチェルアレクサンドラと互角の疾走! 

 BCクラシックが楽しみです!》

 

 帰りがけに店に寄ったり、グッズを買ったりして当たり馬券を還元する。

 熱狂するレースを見た何時も通りの観客たちの行動が起こるほど、アメリカ競馬三十年ぶりの三冠馬二頭のレースは素晴らしかった。

 

 その熱は、月末のBCクラシックへと向かう。

 

「ねえねえ、あなた速くてマッチョなのね。カッコイイ。種付けして♪ 種付け♪」「ごめんね駄目なんだ」「はぁ!? どうしてよぉ! ひどいっ! ──私を! ママンにしてぇっ!!!」

 レース後に襲いかかったレイチェルアレクサンドラを穏やかかつ優しく制圧したウィンターウィーク。

 騎手と厩務員に駄目だと教わった事はちゃんと護る愛らしい馬の姿にさらに高まった熱が。

 

「よくやったぞ! マイドータアぁぁ!!?? 来年か再来年を楽しみにしてろ! お前は惚れた雄の子のママンになる!!!」と感涙するレイチェルアレクサンドラオーナーへの拍手と歓声に更に更に高まった熱が向かう。

 

 ゼニヤッタVSウィンターウィークVSレイチェルアレクサンドラ。

 アメリカ人誰もが、否、世界の競馬ファン誰もが、月末のレースにBCクラシックに胸を熱くした。

 

 

 

 

「沙藤騎手に問題がありました。あれほどに馬が走りたがっているなら、前目に付けるのが騎手の仕事でしょう。あまりにも本番への課題を残した一戦でしたね」騎乗を欠片も諦めていない日本のトップジョッキー竹優*2の発言はアメリカには届かなかったし、届いても変わらなかっただろう。

 アメリカのトップジョッキーたちに乗せてほしいと頼まれ続ける北野オーナーが「チーが大好きな沙藤騎手が主戦だ。乗り替えなど考えもしない。万一、沙藤騎手が乗れない状況に陥ったら回避する」と断言していたのだから。

*1
レース一週間前に追加登録してきた

*2
モデルとなった方と比べてド畜生を隠さないのは、余裕の差です。オグリブームでデビューし、その熱を全身で味わいながら脳が焼かれていたのに、年を経る毎に客は1/3に売上は半分へと段々冷めていく競馬。そんな地獄に抗う為に色々する必要がないため余裕があります。なので騎手としての純度が高いです。




 年末で忙しいため、次回は遅くなりそうです
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