BCクラシック。
「よく聞け客ども! テレビなんかで見ずに競馬場で競馬を見て馬券買えっ! それが一番競馬が面白いんだっ!」端的に言ってこんなことをしてしまったために、「家にいながらでも野球やアメフトが見れるし賭けも出来る」とした他競技に客を取られた結果、1970年代後半から顕著になったアメリカにおける競馬人気の下降を食い止め復活させることを目的として1984年に作られたブリーダーズカップのオオトリレースである。
……この1970年代後半から1984年までのアメリカ競馬がどれだけ人気なかったかというと。
現代に近い方が印象に残るはずの「20世紀のアメリカ名馬100選」において、1976年生まれのスペクタキュラービッドから1984年までの間、1980生まれのスルーオゴールド一頭だけが58位にしか居ないのが全てを物語っている。
まさに暗黒の10年である。
「大金を賞金とした大きなレースを連続でした方が客の熱は上がる」そうオーナーサイドがブリーダーと競馬場サイドに話を通した結果。
ブリーダーズカップは、1日に多くのGⅠ競走を行なう競馬の祭典となっている。創設当時は、優勝賞金が生産者(ブリーダー)の資本から拠出されていたことから名称は由来している。
始めたばかりの時から注目されていたが、第6回により注目は熱狂へと変わった。
西部サンデーサイレンスと東部イージーゴアの死闘。東部VS西部とも銘打たれた決戦。「20世紀のアメリカ名馬100選」において、10年ぶり80年代生まれで初めて30位前後を占めた超人気馬二頭の競走により、その人気は高まりに高まり、アメリカ競馬の人気にも繋がった。
ブリーダーズカップはその目的通りにアメリカの競馬人気を復活させたのだ!
……なら、良かった、ね。
「サンデーサイレンスとイージーゴア凄かったぁ! 次はあの二頭の産駒の戦いだ! それまで他の馬のレース見て賭けるぞ!」by新規競馬ファン
「サンデーサイレンスの血統の貧しさは我慢できるが、あの馬体駄目すぎるな。要らねえ。イージーゴアさえいれば良いや。サンデーサイレンスは日本に売っちまえ」by主催者のブリーダーさんたち
「だよな。サンデーサイレンスは馬体が悪すぎる。あんな馬の子は買わないよ。要らない」by主催に協力するオーナーさんたち
「まあ、そんなんどうでも良いじゃん。客が来てくれたんだ。ブリーダーズカップは客が集まるんだ。次はウチの競馬場な」byブリーダーズカップ開催地を奪い合う競馬場運営さんたち
「サンデーサイレンスとイージーゴアの子の争いは見れないのか…………つまらねえ。競馬止めよ」by新規古参含めた競馬ファン
直ぐに、また、もう一度、ファンの求めを掴めず、競馬人気は、売上は、来客数は、シガーという隔世の英雄が居た時を除いて*1、下がった。
ブリーダーズカップを始める前よりも売上も観客も下がった。
光が差した暗黒の10年は、何時明けるとも分からない絶望の時代へと変わったのだ*2。
オグリキャップとホワイトグリント父娘による半世紀ぶりのブームが訪れるまで。
何だ。このグダグダは、と呆れるかもしれないが。
競馬局が出来るまでのアメリカ競馬はこんな感じである。
責任者というか責任組織が無いため、長期的な目標を達成するための全体的な計画や方針──戦略が立てられず、オーナーサイドや競馬場サイドやブリーダーサイド、それぞれが同じ方向向いて話し合いながらも好き勝手に動くため、客観的には行き当たりばったりにしか動けないのだ。
……元老が一線からいなくなり行き当たりばったりにしか動けなくなった1920年代以降の大日本帝国と同じく、責任者や責任組織が居ないと組織ってのはどうしようもねえという良い好例である。
いや、JRAを擁した日本競馬も、オグリキャップブーム後に馬券購入層である庶民への忖度や配慮をしないで一度失敗したから、仕方ないかもしれない。
それを反省した顧客分析専門部門を、JRAが、JRAを参考にした競馬局も立ち上げてからはこのようなことは無くなったから問題ないのだろう。
そんなグダグダは今は昔。
競馬局が出来たアメリカ競馬は違う。
ブリーダーズカップが始まる以前は、米国内のGⅠは、西海岸・内陸・東海岸の各地域ごとの代表的な馬が、クラシックレースを除いてそれぞれの地域で出走していたが。
「せっかくだし、全米の競馬場を持ち回りにして、遠征の補助して、地域に関係なく馬を集めようや」競馬場サイドがオーナーサイドと話し合った本レースのスタートにより、全米の有力馬の交流が盛んになった。
シアトルスルーとアファームドの頃にブリーダーズカップがあればもっと戦っていたのに。と残念がられるゆえんである。
ブリーダーと競馬場が運営していたかつては、アメリカ国内で繋養されている種牡馬の所有者にその種付け料1回分の資金を負担させ、資金を出した種牡馬の産駒のみに出走権を与えることで成立していたため、アメリカ以外の国で種牡馬登録された産駒の馬が出走する場合、莫大な金額の参加登録料が必要だったが。
競馬局が出来て国営にされた現在は無くなり、他国からの参戦がしやすくなっている。
その上、国際厩舎や地元の馬と変わらぬトレーニングの許可などの遠征の補助をしただけではなく。全ての競走に世界各国のGⅠ競走と比べても高額の賞金が懸けられた結果、現在は全米はもちろん、欧州馬や日本馬の参戦も目立つ世界屈指、いや、毎年20万人以上の観客が訪れる世界一の国際レースとまで呼ばれるようにまでなった。
ブリーダーズカップは大成功したのだ。
「ブルーエンジェルズの編隊飛行かあ。初めて見るけど国営ならこんだけして欲しいな。日本もやれればなあ」
国営となり
「相変わらず食い物が安いな。しかし、今年は本当に人が多い」
ブリーダーズカップも変わった。
「野外バーベキュー会場も埋まるか。三頭の激突はすげぇ」
ブリーダーズカップ。
「カジノの観客席までか。座れるところ埋まってる」
それは
「休憩所にサーカスまで、お祭りみたいね本当に」
アメリカ競馬界における一年の締めくくりの祭りである。
「お! 臨時客席増設のお知らせか……あっさり作れるんだからアメリカは広いなあ」
その流れが現代まで続いたブリーダーズカップは、前述した通り「世界一の国際レース」である。
そして、BCクラシックはそのオオトリ。
そのため、ブリーダーズカップ、否、アメリカ競馬最高の賞金額を誇っている
ウィンターウィークが二度目に挑戦した2009年時の一着賞金。
900万ドル。
大量の観客が訪れる好調極まりないアメリカ国営競馬場(カジノ等々込み)の売上に相応しい賞金額である。
世界一の賞金額を誇る世界一フェアな世界一のレース。
アメリカンが胸を張って誇るレースである。
そんなレースで注目を集めていたのは三頭。
ゼニヤッタ、ウィンターウィーク、レイチェルアレクサンドラである。
16戦16勝G1・11勝のパーフェクトホース・ゼニヤッタ
19戦16勝G1・12勝(+jpn1・2勝)のスーパーホワイトフェクタ・ウィンターウィーク
15戦12勝G1・6勝のアメリカ初の三冠牝馬・レイチェルアレクサンドラ
比類なき優駿たち。
アメリカ史上において、この三頭に適う馬は数えるほどしかいない。と断言される優駿たち。
その三頭が遂に決戦する。
その熱狂は人を呼びに呼び、30万人近い観客が世界から集まっていた。
そんな優駿を擁するそれぞれの陣営の胸中は綺麗に別れていた
まず、ゼニヤッタ陣営は感謝していた。
アメリカの名プロデューサにして名馬主が所持する名牝。それがゼニヤッタだった。
160㎝くらいが平均的な体高のサラブレッドなのに、172cmという体高とそれにふさわしい筋量を誇る彼女は、その巨躯ゆえにデビューが遅れた。
デビューしたのは何と三歳の冬である。
日本ならば新馬戦が終わっているが、「四歳で成長し始める馬は良く居る。その馬たちにもチャンスを与えなければ」と考える競馬大国アメリカでは普通に新馬戦があるとはいえ遅いのは間違いない。
こういう馬を主体にした考えを日本競馬は見習うべきだろ。晩成馬とか四歳で成長し始めたとか普通じゃねーか。カムバック無しとか含めて、本当に頭が固いというかお役所仕事なんだよ。
当然、終わっているクラシックとは無縁である。
そして、デビューしてから勝ち続けた。
ずっと勝ち続けた。
頂点までも、頂点に立ってからも勝ち続けた偉大なチャンピオンホース。
感謝している。
でも、巨体でレースするのは何時か身体を壊してしまう怖さがある。
だから、そろそろ引退してお母さんになってもらおう。
引退時にはオーナーの知人のカリフォルニア州知事のシュウちゃんを呼んだ盛大な引退式をやると決めた。
ウィンターウィークという旦那も用意した。
ここでも勝ってくれるゼニヤッタは、更に感謝を深めさせてくれるんだっ!
ウィンターウィーク陣営は複雑だった
サンデーサイレンスの血は日本競馬では飽和しきっているという現実。
アメリカではレッツカウンターバックやサイレンススズカが居るが、レッツカウンターバックは産駒デビュー前、サイレンススズカは何頭か重賞馬を出したが芝馬。
端的に言って、サンデーサイレンスの血の行き場所は幾らでもあるし、求められていた。
「よし、日本で成功出来なかったサンデーサイレンス系譜の牡馬の行き場所見つかったな!」と決めた日本馬産界とウィンウィンの関係を結び始めたのは当然だろう。
素晴らしい。本当に素晴らしい。理想的な関係だ。
自分の馬が、ウィンターウィークがその先駆けでなければ。
サンデーサイレンス系譜は出来る限り避けよう。馬主から牧場長から牧童まで全員が決意したほどに複雑だった。
万全の状態になったこのレースでも勝つだろうが…………アメリカで種牡馬になるんだよなあ。
レイチェルアレクサンドラ陣営は高揚していた。
アメリカでは日本のような確たる牝馬三冠が無い。
ニューヨーク牝馬三冠があるが、三つのレースの構成が年々といっていいほど変わり続け、東部のレースだけな上、一番格式高いケンタッキーオークスが含まれていないという致命的な問題が幾つもあるため三冠扱いされていない。
競馬局が作ろうとしているが、調整にもう少し時間がかかるだろう*3
だから、アメリカ競馬には三冠牝馬という存在が居なかった。欧州や日本にはいるのに!
だが、それも此処までだ!
ウチのレイは初めてアメリカで三冠牝馬になった!
英雄だ!
良血すぎて旦那いないんじゃという不安もウィンターウィークのお陰で問題なくなった!
後は、レイから最強牝馬の称号を盗んでいるゼニヤッタと、前年の三冠馬ウィンターウィークをぶちのめす!
レイチェルアレクサンドラが最強なんだ!!!
アメリカ競馬らしく、馬主席が一般観客席の近くにある。
つまりは、絶対に勝つ! と咆哮する偉いさんである馬主を見ることが出来る。
なので、それぞれを応援するファンも馬主の近くで応援団を作る。
より、加熱する。
より、アルコールや食べ物が売れる。
より、応援グッズも売れる。
より、様々なイベントも好調になる。
サンタアニタパーク競馬場は、競馬局が出来てからの何時ものブリーダーズカップ開催場らしく大金が落ちまくる光景に感謝の祈りをささげていた。
そして、決戦の火蓋が切られた。
《レコードタイム! 1マイルのレコードタイムを更新!
飛んでいる!
レイチェルアレクサンドラは箒に乗って完璧に飛んでいる!
魔女レイチェルアレクサンドラ先頭! 直線に! きたぁ! 入ったところで! 早くもウィンターウィークがやってきた
出し抜きなどしない真っ向から白毛と鹿毛がぶつかる!》
サンタアニタパークで大歓声が轟いた。
期待通り、いや、期待以上だった。
こんなに真っ向から競馬してくれるとは思わなかった。
《後続も動いた!
ゼニヤッタだ!
ゼニヤッタが外から上がってきた!
ゴール板で抜かせば勝ちにはしない!
直線で二頭とも切り捨てると!
黒鹿毛が上がってきたぁ!》
レコードタイムで逃げるレイチェルアレクサンドラと追い付かんとするウィンターウィーク相手では前目に行かなければならない!
腹を括った鞍上の激に完璧にゼニヤッタは応えた。
《追い付く!
並びかける!
真っ向勝負だ!
三頭の真っ向勝負!
こんなレースを見にきたんだぁ!!》
涙ぐむ実況が咆哮する。
30万人を越えた観客と一緒に。
そうだ。
こんなレースを見にきた。
前で潰し合いながら最後に前へ出た馬が勝つ。
ステイツの競馬を見にきた。
《ウィンターウィーク! レイチェルアレクサンドラ! 競り合う! 競り合う!
そこにゼニヤッタ! ゼニヤッタが満を持して迫る!
やってきたゼニヤッタ!
ゼニヤッタが追い上げる!
ウィンターウィーク! レイチェルアレクサンドラ! 競り合っている! ゼニヤッタが迫る! 》
直線半ばで並んだ三頭は競り合う。
その姿に誰もが叫んだ。
《やはりこの三頭だ! この三強だ!
ブリーダーズカップクラシックを掴み! アメリカ最強馬となるのはこの三強の誰だ!
ステイツの最強は誰だっ!》
最強馬。
それを決める直線。
三頭以外は大差が開いた直線をこれから何年もアメリカ人は呼び続けた。
《後続は無理だ!
この三頭の決戦だ!
鞍上三人の叩き合い!
三頭の競り合い!
ウィンターウィークか! レイチェルアレクサンドラか! ゼニヤッタか!》
時間が凝縮され三頭の競り合いは永遠のようだった。
《白だ!
ウィンターウィークがアタマ出た!
ウィンターウィークが勝った!
三年前の姉ホワイトスノーと同じホワイトグリント産駒がまたもBCクラシックを制しました!
なんというきょうだいだ! 何という母親だ!
スノーキング・ウィンターウィーク!!!
レコード! レコードタイム!
1と1/4マイル! 世界一のタイム!
1分57秒3!
1分57秒3だ!
セクレタリアトのケンタッキーダービーのタイムを2秒も縮めた!
よりタイムが出にくいサンタアニタパークで縮めてのけた!
スーパーホースだ!
ウィンターウィーク!!!》
大歓声が響き渡る。
ウィンコールが響き渡る
レコードタイムを最強馬の証の一つとするアメリカ人。
そんな彼らが最強馬の誕生を祝福しながら熱狂した。
「ウィンターウィークはゴール前に一番強く踏み込む癖があるから、そこで出来る限り柔らかく追った。そうすれば競り合っている状態から一歩前へ行けると分かっていた」
愛馬を知り抜いたベテランの騎乗の助けを得て、ウィンターウィークは死戦を制したのだった。
…………ホワイトグリント産駒を語るスレ(2026)より抜粋
:白雪姫同盟
やっぱバケモンだなあ。ウィンターウィーク。
:白雪姫同盟
日本競馬史上ダート最強馬だろ。間違いなく
:白雪姫同盟
個人的にはバレンティア産駒のトウケイサンセイと戦ってほしかったよ。
:白雪姫同盟
2011年生まれだぞトウケイサンセイ。時代が合わない。見てみたいけどね。地方最強の怪物とウィンターウィークのレースは。
:白雪姫同盟
トウケイサンセイなら負けないと信じてる(地元民感
:白雪姫同盟
地元ならそらそうだ。
:白雪姫同盟
水沢の魔王。調教師がトウケイニセイの騎手さんなロマン枠。なのにバケモン。
アリスワンダー・ホワイトステイシス・ラストグリントきょうだい以外の中央勢が太刀打ち出来なかった砂の魔王。地方の逆襲。東北の覇王。災害の日に生まれた英雄。
:白雪姫同盟
地方競馬に何れ程の熱狂を与えたことか。敵無しがあれほどに熱狂されるとはな。
:白雪姫同盟
だって、二軍扱いの地方馬が中央馬ボコボコにしたんだもの。東日本大震災の日に生まれた岩手の馬が。地方レース中央レース問わずに。あの頃はオグリキャロと併せて地方の怪物が中央を席巻した。地方馬なのが不思議なくらい。
:白雪姫同盟
トウケイニセイ*4のオーナーさんが権利持ってたからね。地方所属なのは当然。
トウケイニセイに種付けしたいと北野オーナーに頼まれた時、「私に産駒ください」と北野オーナー口説きおとした。
トウケイニセイが初めてG1馬に種付け出来たから、その産駒を求めた結果、あんなんが。
:白雪姫同盟
「トウケイニセイとトウケイサンセイは互角。メイセイオペラよりトウケイニセイの方が強いと断言した事に色々言われましたが──結果はこうです。騎手時代にトウケイサンセイに乗れなかった事以外に不満はありません」騎手から凄い目で見られながらの調教師さん。
:白雪姫同盟
だって調教自分で乗りながらやってたもの。「あと10年、いや5年若ければなあ」と嘆きながら。騎手乗せるときは相棒を盗まれる目をして。
:白雪姫同盟
だって乗りたかったんだもの……しかし、オールドファンが言う「ホクトベガと全盛期トウケイニセイは間違いなく世界レベルだった」が事実だったとは。
:白雪姫同盟
トウケイサンセイ後に、躊躇わずトウケイニセイとホクトベガの能力盛ったウイポ嫌いじゃないよ。
:白雪姫同盟
トウケイサンセイから離れよう。いや、オグリキャロと併せてロマンありすぎるんだがアイツは。
:白雪姫同盟
ウィンターウィークのラストランはBCクラシックだと思われてる問題?
:白雪姫同盟
アブラが乗ったサトテツが乗ったウィンターウィークが日本走っても、あの面子じゃ蹂躙にしかならん。
:白雪姫同盟
ホワグリの頃の自分の騎乗を「下手糞」とサトテツが評するわけだよなあ。ウィンターウィークの頃は日本で五本の指に入る騎手だし。
:白雪姫同盟
「気付くと負けてる。本当に巧い」byラメール。
:白雪姫同盟
「ホワイトグリントに乗れたから。僕の足りなさや蒙を開いてくれた」巧い若手からランクアップするには良い馬乗らないと駄目だなやっぱり。
:白雪姫同盟
大里に似てるのよね。馬に無理させない限界の順位を取りに行きながら、勝てる馬に乗っていれば虚を突いてでも勝つ。
:白雪姫同盟
経験と努力による巧さよな。竹雪菜含めた若手が尊敬するわけだ。
:白雪姫同盟
ジャパンカップダートにゼニヤッタたちが来ていればなあ。
:白雪姫同盟
ゼニヤッタは引退したからな。最後に二着になったけど「間違いなくコイツのベストレースだった」と馬主さんも涙ぐみながら笑ってた。
:白雪姫同盟
レイチェルアレクサンドラはもう半年アメリカで走って勝ち続けたけど、ドバイ含めて海外行かなかったからな。
:白雪姫同盟
8月に引退したんだよな。逃げ馬は消耗が激しい。
:白雪姫同盟
32万人というアメリカ、いや世界一観客が入ったレースでの決戦。1分57秒3というレコード。
もう一戦年内に走ったウィンターウィークがおかしいな。
:白雪姫同盟
ホワイトグリント産駒だからな。
ラストランのジャパンカップダートは語るべきことは一つしかない。
『この目に焼き付けよう! これがウィンターウィークだ! これがアメリカ三冠馬だぁっ!
これが世界最強ダートホースだぁぁっっ!!!』
ジャパンカップダートを15馬身差、大差での勝利。
『タイムは! 2分04秒2!
レコード!
クロフネのタイムを更に縮めました!
白い雪の王者はダートを去ります!
己こそが最強だと!
記憶にも!
記録にも!
刻み込んでっっっ!』
ウィンターウィークは最強ダート馬だった。と。
そのまま、日本で引退式を終えたあと、二週間後に渡米。
当然アメリカでも引退式をやった。
大統領を呼んだ*5盛大なものが、北野オーナーが一銭も出さずに、ファンの参加費だけで賄ったものを。
そして、種付け入りして、競馬場とは違ってゼニヤッタたちに飛び掛からんばかりの勢いで、かつ、紳士的に種付けを始めた。
父親が父親だけに大丈夫か? という心配を吹き飛ばした。
旺盛な性欲を持ちながら、現役時は大好きな騎手たちの言うことをちゃんと聞いて我慢していた頭の良さと精神力に「流石は三冠馬は違う」と頷かれながら、ウィンターウィークは種牡馬生活を過ごす。
ウィンターウィークが性欲旺盛だと分かってからは、嫌がらなくなるまでの数と北野オーナーが再契約を結んだため、年120~130頭の種付けを楽しみながら過ごした。
最初は日本に帰っていたが、友達の馬が沢山できて「ここにいたい」と主張し始めたため、五年後には日本には行かなくなった。
彼はアメリカを故郷としたのだ。
彼が次に日本に行くのは──大好きな祖父が死去した別れの時である。
主な勝ち鞍:フューチュリティステークス、ブリーダーズカップ・ジュヴェナイル、サンフェリペS、ケンタッキーダービー、プリークネスステークス、ベルモントステークス、トラヴァーズステークス、ジョッキークラブゴールドC、ジャパンカップダート×2、フェブラリーステークス、ドバイワールドカップ、チャンピオンズカップ、ブリーダーズカップ・クラシック
通算成績:21戦18勝(G1・14勝+Jpn1・2勝)2着2回
受賞:JRA年度代表馬、エクリプス賞年度代表馬、JRA最優秀3歳牡馬、JRA最優秀4歳以上牡馬、JRA最優秀ダートホース、エクリプス最優秀ダート古牡馬、JRA顕彰馬、アメリカ殿堂馬
素晴らしいというより桁が違う成績である。
この馬が産駒最強だと断言できないホワイトグリントはいったい???
調教師をして「ダート最強。特に日本のダートなら負けることさえ想像できん。2400のセクレタリアトであっても勝つ」と言わしめた日本で初めてダート馬の身で年度代表馬になった怪物。
「サンデーサイレンスの血を引いた馬の中で最強なのは?」
「ウチの生産馬ではないのが残念極まりませんが──ウィンターウィークでしょう。あいつはサンデーサイレンスの成し得なかったアメリカ三冠の、アメリカ最強の夢を果たしました」
無礼な質問に即答で断言した社大代表吉沢氏の発言が物語るほど桁が違った。
ダートを去って10年以上経っても、未だ、日本競馬史上最強ダート馬と呼ばれるのは当然である
種牡馬成績も素晴らしかった。
ゼニヤッタとレイチェルアレクサンドラを、G1馬を生んだ母にしたのはもちろんのこと。
同世代のイントゥミスチーフたちと争いながら、「ヘイロー系? 昔は凄かった血統だよね」扱いになっていたアメリカ競馬にヘイロー系を根付かせていった。
だが、この馬の真価は、日本第二位の北野牧場に非サンデー路線の追究を決心させたことだろう。
この時にそう決意されていなければ、「持込馬や海外産馬以外、全てのG1馬の血統にサンデーサイレンスの名が刻まれている」という破滅的な状況の可能性さえあった。
「こう言っては何ですが馬産一本槍な自分たちには出来なかった。日本一の座は決して譲りませんがライバルがいるって幸せです」社大代表さえここまで断言するほどの路線変更。
それを成したのがウィンターウィークだと、あまり知られていないのが残念である。
尤も一番ファンがこの馬の事で気になるのはそこではあるまい。
私と同じく気になるのは別の事だ。
ホワイトグリントと比べてどちらが強かったのか?
それが気になる。
何と言ってもホワイトグリントと同じ騎手は彼だけであり、ホワイトグリントの調教師が産駒が走る頃に引退したため、調教師にどちらが強いのかと聞けないのがホワイトグリント産駒たちなのだ。
だから聞いてみた。
「芝も入れたらホワイトグリントなのですが(笑)
どちらも巡航速度も速い今の日本のレースも出来て、脚溜めて一気に解放する欧州向きのレースも出来、前へ前への押し潰し式のアメリカ競馬も出来ましたからね。
馬の能力は、皆さんガッカリされるでしょうが互角です。優劣は競えません」
そんな当たり障りの無い台詞で終わらせる気か。失望を噛み締める私に、沙藤騎手はただ、と続けた。
「ただ、騎手を加味すると違います。
ウィンターウィークは、最初の負け前提の芝レースを除いて、ゼニヤッタとレイチェルアレクサンドラ以外に負けなかった。
負けたレースも、悔しい限りですが自分の騎乗を飲み込むことが出来た。
未熟な自分のせいで何度も負かせてしまい今も後悔するホワイトグリントの時とは違って。
あの頃の自分が乗ったホワイトグリント相手なら、ウィンターウィークに乗って確実に勝つ自信があります。
グリントの時にウィンの頃の腕が私にあれば、ただそれだけが二頭の違いでしょう」
ホワイトグリントがドマゾだと分かる前に聞いたのが無念である。
ドマゾだと明かされた後で聞いても「以前と同じです」としか返さない沙藤騎手が遺憾である。
是非とも、ホワイトグリントがドマゾだと明かされた後の眼差しでネットリと語って欲しかった。
だが、ウィンターウィークへの沙藤騎手の想いだけは伝わった。
ドマゾが明かされたホワイトグリントを語っている時と同じく、その眼は危険かつ達した輝きに満ちていたのだから。
師走なので忙しく、次回遅くなりそうです