黄金世代の白雪姫   作:サリエリキキ

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 感想、評価付け、ここすき、皆さんありがとうございます。

 多忙すぎるので、切りが良い此処で投稿します。皆さん良いお年を

 新章にして最終章になりますが、よろしくお願いします



覇王の歌編
ジャパンカップ後のイベント~①~


 オグリキャップはノホホンとしていた。

 

 フカフカの芝生。

 ぽかぽかの日差し。

 近くには柵で囲まれている妻

 

 そして、自分に代わる代わる貼りつく元気一杯の人間の子どもたち。

 

 キャーキャー。嬉しそうだ。

 

 目を細める。

 

 最初は腹に子がいる妻にも纏わりつくのではないかと警戒したが、妻には柵越しで触れることしか出来ないと分かり警戒を解いた。

 その分、自分に纏わりつく子供たちに穏やかな気持ちになる。

 

 やはり、ごくごく一部を除いた人間は良い。大好きだ。

 

 ずっと前に妻と走った場所で妻と一緒に居る。ノホホンとしか出来ない。

 それに──

 

「はい、オグリ」

 

 ──それに子供たちが順番に青草だのニンジンだのバナナだのをくれるのが素晴らしいっ! 今回は少量のニンニク味噌を塗ったものをくれるっ! 人間はやっぱり良い奴ばかりっっ! 大好きだっっっ!!! 

 

 

「おい、去年より食ってるぞ」「どんな内臓してんだよ」「ホーリックスはもう限界なのに」「普通のサラブレッドだからなホーリックス」「オグホワ父娘はやっぱおかしいな」「食えるサラブレッドは強いよなあ」「この資質が他のサラブレッドも持ってたらな」

「そうなんですか? 普通は無理なんですか?」

「ええ普通は無理です。こんなに食えないんです」

「へぇ」「そうなんだー」「はいオグリ」

 

 ひっひひーん

 

「なんで歓声上げて食えるんだよ」「木曽馬思い出した。日本古来の馬の」「ああ筋骨隆々で雑草だろうが食う大食いのポニーな」「山羊並みに除草してくれるし力あるから、昔の日本の家畜シェアを牛と一緒に奪ったよなあ」「在来馬と牛と鶏で田んぼには十分だったからな昔の日本」「そういや、在来馬にゃ熊殺した馬いたよな」「鬼とか呼ばれた悍馬な。熊だけじゃなく盗人まで殺ったな。江戸時代に」「感動した殿様が自分の馬にして参勤交代で乗って、江戸城で自慢したらしいな」「鬼って偉大なものだからな」「武士と農民の馬だよなあ日本在来馬って。殿様はともかく家老の馬は普段農耕馬で田んぼ耕してたし」「ひょっとしたら、オグリって日本在来馬に近くなってね。星旗から70年、日本に根付いた血だし」「サラブレッドが日本の土地に適応したらこうなったかあ」

「へぇ、そうなんですねー」「オグリはすごいんだね」「まあ、オグリだしな」

 

 何か分かりあっている人間たちがいるが、知ったことではない

 

 普段食べれないご馳走が沢山。食い溜めしなければならない。まだまだ沢山食べれる♪ 

 おぉ、今度はリンゴか。味噌にあう。

 

 モグモグとオグリキャップは食べながら、ありがとうと食べさせてくれた子供に顔を擦り寄せて礼をする。

 そうすると、何時もと同じくみんなキャーキャー歓声上げながら顔に抱きついたり撫でてくる。

 そして、これまた何時も通り離れなくなるため、係員や親が「そろそろ時間だよ」と連れて行く時に泣く姿。

 心が寂しくなる。縄張り(牧場)でも同じだが違う。牧草は美味しいし温泉はあるし人間は親切だし知り合いが場長堕ちして、牧草は美味しいあそこは違う。

 人間の子供たちが、飽きて寝るまで遊ばせてくれるのが良い。今、泣いている子供も牧場に来て欲しいものだ。大抵の子と同じく自分の背中で眠るまで一緒に居られる。

 寂しい心が震えオグリキャップはしんみりした。

 

 次の子が新しいご馳走を持ってきてくれるまでは。

 

 新しい子がすぐに来た。

 ほぁぁっ、青草。素敵だ。味噌にあう

 青草をくれているのは見覚えのある女の子だ。

 高い所から落ちそうになった所を助けて、夏に縄張り(牧場)に会いに来てくれて自分の背中で眠るまで一緒に遊んでた子だ

 当然覚えていたため、久しぶり、と食べる前に顔を擦り寄せた。

 

「あいたかったぁ」

 

 青草を平らげる自分に、満面の笑顔で目をキラキラさせ抱き着いてきた。

 味噌付き青草たまらねぇ! 

 

 そして時間になり、泣きながら、いやぁ! 牧場いくぅ! 牧場の子になるぅ! とか言って親を困らせている。

 

 人間の言葉は分からないがニュアンスは分かる。

 

 わざとじゃないんだ。物足りなくて跳び跳ねてたら折れたの。

 こんな事を、牧場で自分と妻のホーリックスと場長に堕落したタマモクロスにしょんぼりしながら言ってくる娘と同じだ。

 種族が変われども子供というのは親を困らせるのだな。と同情する。

 なんてことしたんだ!? そんなことするんじゃありません!? 怪我するような危ないことするんじゃない。おっちゃんたちが困るだろ!? 叱る自分たちにますますしょんぼりした娘と同じく。

 今、また負けてショックに震えている娘と同じく。

 

 この子は目を離せん! 

 

 それはそれとして、一致団結した妻と一緒に娘が治るまで一緒に居た日々は楽しかった。

 甘える娘は可愛く、胎に自分の子を再度宿してくれた妻は愛しかった。

 子は親に心配かけるものなのだ。

 それで良い。

 それが良い。

 

 

 

 ん? 娘に黒鹿毛が近づいて? 

 

 

 

「え?! すぺえええっ!!!???」

ひいいんっ!!?? (いやあっっ!!??)

「は?! はぁぁぁっ!!!???」

 

 

 黒鹿毛から振り落とされた最後に一緒にレースした巧い騎手と、黒鹿毛にのしかかられかけて逃げてくる娘の悲鳴と、娘に乗った騎手の悲鳴が同時に響いた。

 娘に乗っていた騎手は無事のようだ。良かった。が──

 

 

 

 ぶひんっ! (くそがっ! 黒ってのはロクでもない奴を出す色なのか!)

 

 昨年のエルコンドルパサーと、暇があると喧嘩していたサンデーサイレンスを頭に置きながら

 

 オグリキャップは立った! ──周りの子供が危ないから丁寧かつゆっくりと

 

 オグリキャップは口を開いた!! ──オグリが! また! 立ったぁ! 乗せてぇ! とキャーキャーしながら登ろうとする子供たちに出来る限り悪影響を与えないように

 

 オグリキャップは吠えた!!! 

 

 

ブヒヒーン!!! (ぶち殺すぞ! クソガキィィィ!!!)

 

 

 東京競馬場全体に響き渡る咆哮を再度オグリキャップは上げた。

 

 

 

 

「信じてたでオグリ」

「去年に続いてとは、オチを分かってますね」

「グラスワンダーみたいに歌ってくれる相方もええが。やっぱ相方にする馬はオグリやな」

「馬を相方にすることが間違ってませんか」

「その前に、騎手振り落としてからいきなり襲いかかるなんて、スペシャルウィークは酷すぎませんか。気性難ってこういう馬なんですね」

「いえ、スペシャルウィークは気性とても良いはずなんです」

「森保騎手、そうは言われても、そんなの信じられません」

「僕も、今は疑ってます。前振りなく騎手振り落とすのは駄目です。危ない。気性難の代表的な姿です。僕が現役ならそんな馬には乗りたくないですね。重賞馬なら、他人に渡すまいと乗りますが(笑)」

「そうですよ。秋にウチの子を眠るまで背中に乗せてくれたオグリみたいなのが気性良い馬ですよ」 

「あとはメイショウドトウかな。あの子も子供と仲良くしてくれました。帰ろうとしたら、ドトウの首筋しがみついて子供が泣き叫ぶくらいに(笑)」

「わかるわかる。そんな子供にドットさん驚くことなくペロペロしてくれるんですよ。かわいー(笑)」

「飼いたいよね。ああいう馬。場所があれば(笑)」

「グラスワンダーもブラッシングさせてくれるし可愛いですよね(笑)」

「ホワイトグリントも子供乗せてトコトコ歩いてくれるんですよ。乗馬初めてなウチの子が才能有るんじゃって親バカするくらいに(笑)」

「なんで予約一杯なのかなあ。次が何時になるか分からないって子供に伝えられない。泣いちゃう。だから、近くの牧場の乗馬行ってきたら喜んで喜んで(笑)」

「最近、みんないくよねえ。馬ってルール守ってたら凄く優しくて穏やかだもの。自分からスリスリしてくれるくらいに。なんで現役の重賞馬は三頭以外ダメなのって嘆いてる(笑)」

「三頭が特別なんですよ」

「へぇ、そうなんでっか森保騎手」

「ええ、勝負根性引き出すために、わざと気性荒くするのが現役馬ですので。だから、らしくなさすぎるんですよ。ホワイトグリントとグラスワンダーとメイショウドトウは(笑)」

 

 レギュラー番組として復活した、ヨンマのナンでもダービー。

 今回はちゃんと母親である女優さんたちを呼んでいたその番組プロデューサーは、司会と同じくガッツポーズしていた

 

 

 

 

 

 そんななか、去年のエルコンドルパサーと同じく吠えられたスペシャルウィークは直立不動となり

 同じく、ボスであり父親の背後にホワイトグリントは逃げ込み

 圧倒的ボスの咆哮により、またも東京競馬場に居た全ての馬が震え上がり服従の姿勢を取り

 

 オグリかっこいー! やっぱり、いいっ! もう一度! もう一度吠えて! 真っしろー! シロちゃん、しゃがんで! 乗りたい! グリちゃん乗りたい! オグリ歩いてー! 走ってー! グリきれー! スペちゃんもかわいー! よしっスペちゃんに登れたっ! オグリの一番はわたしっ! シロちゃんしゃがんでくれてありがとー! スペちゃんもっ! ヒサシブリ! グリントッ! 

 

 去年と同じく、迅速にオグリキャップとホワイトグリント父娘と、オグリキャップの威圧に直ぐ様地面に座り込んで屈伏したスペシャルウィークに子供たちは纏わりついた。

 

 今年もか。あ、たてがみは引っ張らないでねお馬さんの髪だから。ほら、背に乗るだけにしてね。写真撮っても良いですかー? あ、すいませんオグリキャップ以外はオーナーさんの許可もらわないと駄目なんです。とりあえずどうするか連絡しますね。競走馬って大人しいんですね。普通は暴れるからお子さん近づけないでください。杖手放してからそのままよじ登らないでっ! えーと、アメリカの子かな。日本語喋れるの! 凄いねケインくん。

 

 東京競馬場では爆笑と拍手が轟く中、事前に訓練していた職員は的確に動き始めた。

 

 で、上はなんて? え? 騎手のサイン会やるから整理始めろってか。イベントにする気かよ。嘘だろ。馬だぞ。大人しいと言っても大型草食獣相手に。ああ、追加の係員まで来た。グッズ沢山持ってきてな。しゃあねえ。増えた給料分だと割り切ろう。

 

 

 

「あの、グリントは無事で──はい? サイン会ですかぁ! 次のレースは?!」

「あ、大丈夫です。スペは無事──え? サイン会? 今ぁ!」

「次のレースは延期します。この件をトラブルではなくイベントにするために。その一環としての握手サイン会です。人気騎手が愛馬の傍、客の近くにいるのですよ。

 そうしなければ、お客さんが白けるでしょう。トラブルが起きたと。

 そんなの許されません。客第一。それが興行です。

貴方がたの懐に入る一レース何百万って大金は、お客さんあってのこと。疑問抱くより、サインペンを先ずは持ってください身の安全は確保しますから」

「そうですね。そのとおりです。いくぞテツ」

「え? 竹さん? なにを?」

「お客さんと一緒にオグリと写真とるようにしたほうが良いでしょうか? モチロン追加料金なしで、フラッシュもなし」

「流石は優さん分かってますね。お願いします。握手しながら写真撮ってください。あ、ホワイトグリントとスペシャルウィークは待ってください」

「勿論です。オーナーから許可貰う前にそんなこと出来ません──流れによっては、オーナー二人に頭下げる覚悟で写真撮ります。どちらもファンサービスに理解のある馬好きのオーナー。言葉は悪いですが、馬に何の問題も無ければ許可してくれるでしょうだから、フラッシュだけは」

「この場に居るお客さんは、フラッシュはカメラから取り外して貰っていますが、更に衆知します」

「竹騎手、沙藤騎手、ペンと色紙です」

「ありがとうございます。よし、オグリの傍行くぞテツ」

「え? 「ゴホンッ!」あ、はい、わかりました竹さん」

「ホワイトグリントとスペシャルウィークの許可すぐ貰ってきます──沙藤騎手もよ·ろ·し·い·で·す·ね」

「……はい、がんばります」

 

 こういうのに慣れている差が主戦に出ていたりしたが、トラブルは速やかにイベントとなった

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