黄金世代の白雪姫   作:サリエリキキ

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 感想、評価付け、ここすき、皆さんありがとうございます。お蔭で書けています。


2000年3月25日~ドバイワールドカップ~

 ドバイワールドカップ。

 それは砂漠の国を一夜にして世界の中心へと押し上げた、壮大な国家プロジェクトの物語である。

 

 創設者は、ドバイ皇太子であり、稀代の競馬愛好家でもある殿下。

 90年代、彼は確信していた。いずれ石油は尽きる。と。

 その時までに、ドバイを観光とビジネスの世界的なハブに変えなければならない。

 その為の目玉が必要だ。

 そう考えた彼が選んだ武器は、自らが心から愛する競馬だった。

 ……公私混同じゃね。と思うかもしれないが、ドバイは日本ほど公私が別れてないから仕方ない。あちらの文化である。

 

 イギリスやフランスやアメリカには、数百年かけて築いた「伝統」がある。まともに戦っても勝ち目はない。そこで殿下は、シンプルかつ最強の戦略を叩きつけた。

 

「世界一の賞金を用意すれば、世界一の馬が集まる」

 

 1996年、当時の常識を粉砕する総賞金400万ドル(約4億円以上)という破格の条件を提示。世界中のトップホースを擁する陣営が、この金額に色めき立った。

 そして、第一回から大成功を収めた。

 各国から選りすぐりの優駿が集まった上に、一頭の馬が参戦したからだ。

 

 その名はシガー。

 

 アメリカの生ける伝説にしてアイドルホース。15連勝中の最強馬。

 この超大物がドバイの地を踏み、シガーのベストオブレースにドバイワールドカップを挙げる声さえあるほどの圧倒的なパフォーマンスで優勝したことで、ドバイワールドカップは単なる「高額賞金レース」から、「真の世界一決定戦」へと昇華した。

 

 各国陣営に調教制限をしない公平さと賞金の高さに集まった人々がドバイの本気を理解したのは、1997年の第2回大会だ。

 開催直前、砂漠ではありえない猛烈な豪雨がコースを冠水させた。

 絶望的な状況。だが殿下は一切動じなかった。国防大臣でもある殿下は、UAE軍を動かし、数機のヘリコプターをコース上空でホバリングさせたのだ*1。凄まじい風圧でコースの水を吹き飛ばし、レースは5日遅れで無事に開催。

 レース場整備に加えて、延長期間の間、全ての陣営が「王侯貴族の生活が出来た。人も馬も。だから、完璧に走れた」と太鼓判を押した本気。

 この本気が、ドバイを競馬界の聖地へと押し上げ、早くも1998年にドバイワールドカップは国際G1となった。

 地元UAEの人々はもちろん、ヨーロッパ、アメリカ、日本、香港など、世界中から数万人のファンが集まる大イベントとなった。

 ドバイワールドカップは大成功を収めたのだ。

 

 そして、国際G1となってから2年の2000年。

 その年のドバイワールドカップは、単なるレースではなかった。ドバイというか殿下だからつまりは国家が総力を挙げて用意した、究極の戴冠式だった。

 

 ドバイミレニアム。

 

 殿下が、ヤザーからそう名を変えた最高傑作である。自らの最高傑作に「2000年のドバイ」を冠したのだ。

 これは単なる命名ではなかった。「この馬が2000年のドバイワールドカップに勝つ」と宣言したのだった。

「この馬こそが、ミレニアム(千世紀)の節目に、ドバイの砂漠で世界を跪かせる」

 その宣言は、ドバイという国家のプライドそのものだった。

 2000年のナド・アルシバ競馬場は、この一頭が勝つためだけに存在していたと言ってもいい。

 ドバイミレニアムは、それまでヨーロッパの芝で圧倒的な強さを見せていたが、殿下は確信していた。「この馬なら砂でも世界を支配できる」と。

 地元ドバイの観客、王族、そして世界中のメディア。全員が「ドバイミレニアムが勝つ物語」を観に来ていた。他の馬たちは、その完璧な脚本を引き立てるための「脇役」に過ぎない。

 

 

 

 

 

 

《ドバイミレニアム先頭! ドバイミレニアムが突き放す! ドバイワールドカップを勝つために、今ホームへ帰ってきた!》

 

 その期待は裏切られる事がないと誰の目にも見えた。

 スタートから先頭に立つと、更に引き離していくドバイミレニアム。

 

《他馬を破壊している! 完全に、圧倒的に叩き潰して》

 

 コースレコードタイムで走り抜ようとするドバイミレニアムは正にドバイの王だった。

 決して覆される事がないドバイの王の凱旋物語だった。

 

 ──そんな物語を覆すのは、神話と呼ばれる。

 

《な、に……!?》

 

 ナド・アルシバの熱狂を切り裂いたのは、絶叫に近い実況だった。

 完璧な逃げを打つドバイミレニアム。その背後は、王の進撃に蹴散らされた敗者たちの残骸でしかないはずだった。

 だが、砂塵のカーテンを突き破り、一筋の白い光が躍り出る。

 

《アル、ブラク……!?》

 

 それは、アラビア伝承に語り継がれる「天の遣い」の名。

 預言者を乗せ、一歩で地平線の彼方まで到達すると言われる、白く輝く伝説の神獣。

「稲妻(バルク)」を語源とし、その一歩で雷の如く、視線の届く果てまで到達する白馬の神話。

 

 ドバイミレニアム(ドバイの千年紀)という人工的で壮大な物語に対するのは、1200年以上も信じられていた神話。

 

 極東から来た奇妙なほどに白い馬。ホワイトグリントだった。

 

 

 

 ナド・アルシバのスタンドを埋め尽くした、純白のカンドゥーラ(民族衣装)を纏った地元民たちは、勝利を確信していた。

 

「ドバイミレニアム!」

「マシャア・アッラー(神の望むままに)!」

 

 彼らの叫びは、建国以来の急速な発展を象徴する、傲慢なまでの歓喜だった。

 ナド・アルシバの夜は、傲慢なほどに「現代」だった。

 数千億円の巨費を投じたスタンド、砂漠を昼間に変えるカクテル光線。そして、2000年という新たな千年紀を背負わされた王、ドバイミレニアム。

 全ては人の手で、計算通りに作り上げられた「完璧な物語」のはずだった。

 だが、直線の入り口。

 ドバイミレニアムが他馬を置き去りにし、砂塵を噴き上げたその背後で、物語の通じない神話が爆ぜた。

「……あれは、何だ?」

 最前列で叫んでいた現地の青年が、ふと声を漏らした。

 後方から迫るその影は、白銀を超えて発光していた。砂の上で、そこだけが月光を切り取って縫い合わせたかのように白い。

 その時、スタンドの喧騒を貫いて、一人の老人の震える声が響いた。

 

「……見ろ。シーラ(聖伝)に記された通りだ」

 

 老人の脳裏には、1200年以上も前──イブン・イスハークらによって編纂された、預言者の伝記の情景が蘇っていた。

 西暦770年前後。砂漠の民が、文字として初めてその「神速」を定義した時の記述。

 

『その一完歩は、視線の届く地平線に達する』。そう謳われた姿。

 

《まるで、白い稲妻だ! まるでアル・ブラクのようだ!!》

 

「アル・ブラク……。アル・ブラクだ!!」

 

 老人の叫びは、伝染病のようにスタンドを飲み込んでいった。

 人々は思い出したのだ。自分たちの血の中に流れる、太古の記憶を。

 石油が湧き、ビルが建つ遥か昔。8世紀の砂漠で、人々が畏敬を込めて語り継いだ「稲妻」の名を。

 

《信じられない光景です! ドバイミレニアムが、追い付かれる! 必死に追っているドバイミレニアムが!》

 

 実況の声が裏返る。

 

《背後から来るのは、日本のホワイトグリント! いや、違う! 地元のファンが! 叫んでいるのは別の名だ! 

『アル・ブラク』! 1200年の時を超え、シーラの記述を思い出させる光景が、今ナド・アルシバの砂の上に広がっている!》

 

 ホワイトグリントの走りは、もはや競走馬のそれではない。

 一完歩ごとに、逃げるドバイミレニアムとの距離を消滅させていく稲妻。

 預言者を天へと運んだ、白い翼を持つ白馬。

 

 アル・ブラク!! 

 

 ドバイという国家が用意した「2000年の王」の名ではなく、砂漠の民は1200年以上続く神話を叫んだ

 

 アル・ブラク!! 

 

 え? どういうこと??? ホワイトグリントじゃないの??? とホワイトグリントの名を呼ぶのが「空気読めてないんじゃ」と不安になった日本人の大応援団を放り出して咆哮する

 

 アル・ブラク!! 

 

 馬主席では殿下すら立ち上がって咆哮する。「シロおおおお!」と立ち上がって咆哮する北野オーナーの隣り合わせに。

 

 アル・ブラク!! 

 

 それはもはや、競馬の応援というよりも、目の前の奇跡に思わず漏れた、本能的な歓声だった。

 自分たちの王が負けるかもしれない。そんな感情などすでに消え去った。

 

「行け! 行け、白い稲妻よ!」

「ドバイミレニアムを食らい尽くせ!!」

 

 貴賓席で身を乗り出す王族も、一般席で叫ぶ労働者も、今この瞬間だけは「物語」を忘れていた。

 あるのは、砂漠の夜に現れたアル・ブラクという名の伝承に対する、純粋な敬意のみ。

 地響きのようなアル・ブラクのコールが、逃げるドバイミレニアムの背中を、そして追うホワイトグリントの魂を、激しく叩きつけた。

 

《ミレニアム先頭! 迫るアル・ブラク!》

 

 残り200メートル。

 ドバイミレニアムの背に跨るデッターリは、生まれて初めて恐怖に似た戦慄を覚ていた。

 隣に並びかけようとするその白い影からは、馬の吐息ではない、大気を引き裂くような異音が聞こえる。

 それは、数千頭のサラブレッドを乗りこなしてきた彼ですら経験したことのない、次元の違う推進力だった。

 ──何よりも苦しくて辛いレースで満面の笑顔なんて見たことが無い! 

 

「行け! ミレニアム! きみはドバイそのものだろうが!!」

 

 デッターリの鼓舞に応え、ドバイミレニアムが再加速する。自らの名に刻まれた千年紀という物語を超えるように。

 世界最高の馬が、世界最高の舞台で、生涯最高の輝きを見せる物語。

 だが、その最高(物語)を、白い稲妻(神話)は飲み込んでいった。

 

《並んだ! 並んだ! 完全に並んだ!!》

 

 実況の絶叫は、もはやアル・ブラクの地鳴りに掻き消されていた。

 ホワイトグリントの瞳には、勝利への執着などない。ただ、レースがもたらす圧倒的な快楽と、ごしゅじんの鞭による喜悦だけがある。

 一完歩。砂塵が舞う。

 二完歩。ドバイミレニアムの鼻面が、白い肩の後ろへと下がる。

 三完歩。そこにいたのは、日本の競走馬ではなく、砂漠の民が1200年以上語り継いできた稲妻を思い出させる存在だった。

 

《差し切った! ドバイミレニアムに勝利した! 信じられない! 誰がこの光景を予測したか! 今、ナド・アルシバにアル・ブラクの再来を見ている! 少なくとも、砂漠の民はそう確信しています!!》

 

 ゴール板を通過した瞬間、ホワイトグリントの体は、カクテル光線を反射し、幻想的な白い輝きを放った。その姿は、古い伝承に語られる白馬のイメージを観客に強く想起させた。

 2着、ドバイミレニアム。

 その差、わずか、しかし決定的な半馬身。

 タイムは、ナド・アルシバの歴史を数秒単位で塗り替え、廃場するまで更新されることが無いコースレコードだった。

 

 

 

 

 

 ゴールを過ぎた直後、数万人の観衆を飲み込んだのは、歓喜でも落胆でもない。静寂だった。

 あまりにも美しく、あまりにも超越的なものを見せられた時、人間は声を失う。

 やがて、その静寂を破ったのは、一人の男の拍手だった。

 

 馬主席。

 自分の「完璧な物語」を完璧に破壊されたはずの殿下が、拍手していた。

 その顔に悔しさはない。あるのは、自分が愛してやまない競馬というスポーツが、ついに神話の領域に達したことへの、至上の歓喜。

 

「……私は、ドバイを世界一にするためにこのレースを作った」

 

 殿下は、隣で歓喜に両手でガッツポーズする北野オーナーの肩を叩き、静かに、しかし誇らしげに告げた。

 

「だが、創造主は私の想像を遥かに超える贈り物を、アル・ブラクを、あなたの国から連れてきてくださったようだ……好きな金額を書いてくれ…………ただし、金で買えないというなら、私は私の貴方への友情をもってこの馬を迎えたい」

 

 その夜、ドバイの街から石油の匂いが消え、代わりに太古の砂漠の香りがしたという。

 表彰台に上がるホワイトグリントの白さは、ドバイの誇る超高層ビルのどれよりも高く、眩しく輝いていた。

 

 公式記録には「White Glint」と刻まれたドバイワールドカップ勝者。

 しかし、その日ナド・アルシバにいた全ての人間、そして中継を見守ったドバイの民の心には、別の名が刻まれた。

 

『al-Buraqと呼ばれた日。2000年3月25日、彼女は確かに砂漠を駆け抜けた』

 

 そんな文字が刻まれた銘板が移転後のメイダン競馬場(旧ナド・アルシバ競馬場の魂を継ぐ地)に置かれたように。

 石油が尽きても、ビルが朽ちても、この夜の物語だけは語り継がれるだろう。

 人工の王が、悠久の神話に畏怖し、敗北した、あの一夜のことを。

 

 

 

 

 

 レース後、殿下がオーナーに白紙の小切手を突きつけたのも無理はない。

 彼は単に速い馬が欲しかったのではない。自分の庭で生まれた「神話」を、どうしても手元に置きたかったのだ。

 当然、断固として、断られて、日本に帰られて……ちょっと、色々あった……のだが……

 そのため、唯一セリに出したホワイトグリント産駒の白馬は、当たり前のように(112億円。セリ史上最高額で競り落とした)殿下の手に渡り、アルブラクと名付けられ、砂の地に四年に渡る絶対の稲妻を轟かせ、歓声を巻き起こすことになるのだが、それはまた別の話である。

 

 

 

 

 

 

 …………

 

 ナド・アルシバの夜から11年後。

 砂漠の空気がまだ熱を帯びる、ドバイ郊外の厩舎。

 そこは殿下が世界に誇る競走馬帝国、すなわちゴドルフォンの中枢だった。

 ホワイトグリントの唯一セリに出された白馬。

 母の血をそのまま写し取ったかのような、白を固めたような毛色。

 セリ会場でハンマーが落ちた瞬間、歴史的高額が記録された。

 その馬は、迷いなく殿下のもとへ迎えられドバイへ送られ命名の式典を迎えた。

 

 式典は、ただの登録手続きではなかった。

 それは再び神話を呼び戻す儀式だった。

 白馬は静かに立っている。

 まだ幼いが、瞳の奥には既に雷の光が宿っている。

 殿下はゆっくりと歩み寄る。

 彼の背後には側近、調教師、通訳、そして宗教指導者が揃っている。まるで国家行事のように。

 だがその場にいた全員が理解していた。

 この瞬間は国家行事ではなく、一人の競馬愛好家の、極めて私的な感情の時間だと。

 

 殿下は白馬の額にそっと触れる。

 あ、優しい飼い主さんとペロペロと白馬はその手を舐める。

 

「あの夜を、私は忘れていない」

 

 2000年3月25日。

 ドバイワールドカップ

 ナド・アルシバで見た、白い稲妻。

 彼は敗北した。

 しかし同時に、競馬というスポーツが神話へ昇華する瞬間を見た。

 その名は──

 

 アル・ブラク。

 

 アラビア語で「稲妻」。

 預言者を天へと運んだとされる白き神獣。

 

 殿下は静かに告げる。

 

「この馬の名は──アルブラク」

 

 側近が復唱する。

 アラビア語の響きが、乾いた空気を震わせる。

 

 アルブラク。

 

 白馬が小さく鼻を鳴らしながら殿下の手に顔を擦りつける。

 まるでその名を受け入れるかのように。

 宗教指導者が短い祈祷を捧げる。

 

「この稲妻が、砂漠を再び照らしますように」

 

 殿下は目を閉じる。

 そこにあるのは支配欲ではない。

 あの夜、自らの完璧な物語を打ち砕いた存在への敬意。

 そして、その神話をもう一度この地で走らせたいという純粋な願い。

 母を超えるために。

 殿下は、自分にスリスリし続ける白馬の耳元で低く優しく囁く。

 

「お前は買われたのではない。お前は迎えられたのだ」

 

 彼は理解している。

 金では神話は買えない。

 だが、敬意は示せる。

 舞台は用意できる。

 幼駒の頃から彼女と仲の良い騎手*2に鞍上を任せられる。

 

 そしてこの二年後から四年間──アルブラクは砂の女王として君臨する。

 

 ナド・アルシバの魂を継ぐメイダン競馬場で。サウジアラビアを含めた彼女を見たいと作られた新たな中東の競馬場で。

 その白い稲妻の名は、もはや実況が遠慮することはない。

 スタンドが迷うこともない。

 最初から最後まで、叫ばれる。

 

 アルブラク!! と

 

 殿下はスタンドで静かに頷く。

 あの夜、敗北の中で見た神話は。

 今は自らの庭を含めた中東の地で雷鳴となって轟いている。

 それは買収ではない。

 復活でもない。

 

 ──継承だった。

 

 

 …………別の話である(震え声

 

 

 

 

 

 

 ドバイワールドカップ後の日本競馬界は、何故か現地の実況さえホワイトグリントの名を呼ばなかったことを疑問視しながらも歓喜に震えていた。

 

「この一戦の勝利は日本競馬の金字塔である。日本競馬が、マル父の日本調教馬が世界一になった」

 

 そう断言したJRA理事長のセリフは何ら過小評価ではなかった。

 それほどまでに、このレースの勝利には意味があった。

 あまりの激戦にあのホワイトグリントが軽く筋を痛めたほどのレース。

 ホワイトグリントのベストオブレースをこのレースにするファンは極めて多い。

 

*1
日本でこんなことやれば「俺らの時間を勝手に使うな! 税金を自分の事に使うな!」と先ず自衛官が怒るだろうが、ドバイでは問題ない。だって給料から装備代含めたすべての金は、王家の財布から出てるもの。ぶっちゃけ王家の私兵

*2
一般人がタッケすると呼称しながらドン引きしたストーカー行為について「そのくらい馬に焼かれてなければ鞍上を委ねない」当然のことと考えるのが殿下の領域である




 ナド・アルシバの夜、数万人の観衆が叫び、実況が思わず口走った「アル・ブラク」という名は、翌日の現地の新聞、そして現在に至るまでのドバイワールドカップ公式記録のどこを探しても、その名は比喩としてすら残されていません。
「偶像崇拝」に近い冒涜と紙一重の行為だからです。
 殿下が後に産駒にその名を冠した際も、あくまで「神話の名前」としてではなく、あの日見た「光そのもの」への敬意として、極めて個人的な祈りを込めたと言われています。


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