黄金世代の白雪姫   作:サリエリキキ

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 カガリ火さん、doraguさん、評価付けありがとうございます。頑張ります。
 感想、ここすきなど皆さんありがとうございます。頑張ります。



 アメリカ人の情緒はもうボロボロ
 それはそうと、この頃、日本競馬よりもアメリカ競馬の方が危機的な状況です(汗


日本競馬の伝説にまた1ページ

 

 1998年7月25日アメリカ・ニューヨーク州ベルモントパーク競馬場。

 

 ベルモントパーク競馬場。

 アメリカはニューヨーク州に1905年に開設された北米最大規模の競馬場*1である。

 楕円形のコースで、内側に芝コースが2つあり、その外側にメインコースであるダートコースがある。芝コースは内回りが1周約1900メートル、外回りが1周約2100メートル。ダートコースが1周約2400メートルである。すべての競走は左回りで行われる。1周1800m程度の大きさが主流のアメリカの競馬場の中では、例外的に広大な競馬場だ。

 CCAオークスは正式名称をコーチングクラブアメリカンオークスと言い、この時代はベルモントステークスと全く同じコースで実施されている。

 ニューヨーク牝馬三冠最終戦にしてアメリカ唯一の牝馬クラシックとなっている栄誉あるレースである。

 同競馬場は深めの砂を維持しているため、スピードに加えてパワーとスタミナが要求されているため、速いタイムが出にくい馬場である。

 CCAオークスの決着タイムは大体2分30秒前後だ

 この馬場で2分24秒0で2400mを走ったセクレタリアト? 

 ただのバグ。

 

 他の特徴としては、ヨーロッパ風をコンセプトとしているため、開放的な西海岸の競馬場とは異なり、パドックやクラブハウス、ジョッキールーム等がクラブ会員である馬主を中心に考えて配置されている。

 

 つまり、限られた人間が外に聞かれずに会話しやすい場所。ぶっちゃけ、密談しやすい所である。

 

 

 

 

 その密談の数々から通訳共々漸く解放されて、屋外でパドックを見ながら伸びをする二人の日本人が居た。

 

「そういえば、ここでホワイトグリントが勝てば日本内国産馬・日本調教馬初の海外G1制覇になるんですよね」

「ええ、その通りです大栗オーナー」

 

 北野オーナーにより阪神3歳牝馬ステークスから何時もホワイトグリントのレースに招待されており、今回も当たり前に招待されていた大栗オーナーは軽く頭をかく。

 

「いや、記念すべき記録なのにハツラツが色々やってすっかり抜けてました。まさかあんなことをして、あれだけ人気になるとは。何というか相変わらずこっちの想像をアッサリ超える子です

 ……土産の岐阜の桃に目を輝かせるのは、幼駒の頃のままなのに」

 

 アメリカに来てから、上院議員だの映画監督だのイベント主催者だの各州のアメリカ競馬界だの目白押しな客達からオグリキャップの自由と身柄を守り抜くために忙しすぎたから無理もない。

 特に、この競馬場に来てからは一気に「売ってくれたら一番良いが、せめて貸してくれ」という密談が押し寄せてきて凌ぎきった所だ。

 ホワイトグリントを売ってくれ攻勢を同じく凌ぎきった北野は笑顔を作る。

 

「完全にアメリカのヒーローですね。流石はオグリキャップです……ウチのグリントにもお土産をいただけて本当にありがとうございます」

「いやいや、何時も何時もあんなに美味しそうに食べてくれるなんて可愛い馬です。

 今回は体重を絞っていて一個しかやれなかったのが申し訳ないくらいで。

 物凄い寂しそうな目でした。思わずもう一個やりそうになって池柄さんに止められたくらいに、寂しそうで物欲しそうに目を潤ませて……」

「本当に食べるのが大好きなんですよグリントは」

「ハツラツそっくりですな」

「仲が良い父娘ですからね」

「いやはや、あの飯のことばかりだったハツラツがあんな立派な父親になるなんて誇らしいですわ」

「ウチのヤンチャなグリントもあんな可愛い娘になるとは、思いもしませんでした。あの子は綺麗な外見に反してヤンチャすぎて」

 

 ははは。アメリカの人達と色々あった疲労を馬の思い出で癒してもらう馬主達は笑い合う。

 アメリカの富豪たちと本業の商談もできたその表情は明るい。

 

「そういえば、日本に帰ったらオグリキャップは」

「はい、検疫後に東京へ」

「まさかまさかのですな」

「本当に。いやはや、アメリカの大使がアメリカの勲章を授与すると外務大臣にハツラツの事を話されてから話がどんどん膨らんでしまいました。

 ハツラツは──オグリキャップは日本の馬。だからアメリカが勲章渡す前に、日本の勲章を。でも、日本には適当な勲章がないので前例に従って位階を。

 そういうことで、従四位をハツラツは戴けることになりました。

 しかも、陛下から直接授与して戴けることに。それで、私どもを皇居にお呼びしていただけることになるなんて。

 ハツラツも偉くなりましたよ」

「本当ですな。ひょっとしたら、どなたか皇室の方が撫でてくださるかもしれませんね」

「いやあ、そこまでされると恐れ多くて私の心臓が持ちませんな。今でさえ礼服は和服か洋服かで胃が痛いのに」

 

 ははは。と陛下に前から興味があったオグリキャップに乗りたいと言われ、目を白黒させながら「光栄です。好きに乗ってください。今からでも大丈夫です」と脊髄で応えることになる大栗オーナーは笑う。

 まったくですね。と皇室ニュースで満面の笑顔でオグリキャップに乗る陛下をはじめとする皇室の方々に驚愕している時に、

 全力を尽くしたJRAから「お喜びください。陛下はホワイトグリントにも興味があり、良い機会ですので秋華賞に来ていただけることになりました。秋華賞は東京競馬場での99年ぶりの天覧競馬になります。おそらくそのままホワイトグリントに乗られると思うので準備をしておいてください。こちらも警備を万全にします」と聞かされて飛び上がることになる北野オーナー。

 その後「助けてください! エリザベス女王が、ホワイトグリントを観るために急に来日して両陛下とともにエリザベス女王杯を観戦することになりました! ジャパンカップではなくエリザベス女王杯にホワイトグリントを出してください! 日英友好のためです!! エリザベス女王杯に登録されていたことにしますので、どうか!!!」と農林水産大臣と外務大臣に直に泣き付かれてしまう北野オーナー。

 そんな事になるとは、欠片も想像していない馬主二人は笑い合う。

 

「いや、しかし、アメリカは凄いですな」

「パドックでホースショーとは日本では中々出来ません」

「本当に。しかし、ハツラツも楽しそうにしてくれて何よりです」

 

 彼らは、パドックの中央でカウボーイの格好をした役者が跨る展示馬オグリキャップが大声援を浴びるのを微笑ましく見守りながら笑い合う。

 訓練もしてないのに投げ縄だとか低い障害のジャンプを平然とオグリキャップがしているのだが、二人には驚くに値しない。

 少し乗った役者さんが「コイツには訓練が要らない。ずっと乗りたい。コイツと一緒にショーをずっとしていたい」なんて言ってくれるオグリキャップ(ハツラツ)だもの。それくらいはできるに決まっている。

 競馬場関係者を驚かせた、万を超す人間の絶賛と歓声を間近に受けても平然としている所も驚くに値しない。

 オグリキャップ(ハツラツ)だし。

 それはそうと、日本から数千人の多数の客が来ているのもだが、パドックでさえ数万人の観客が詰めて大歓声を送っているのが凄い。

 日本の数倍の広さのパドックが、埋まるとは思ってもいなかった。

 

「お客さんも溢れるくらいに一杯ですね。アメリカでは競馬人気が衰え始めていると聞いていましたが」

「いやいや、何時もはこの1割も来ていませんよ」

「ああ、これは」

 

 東部競馬場の総支配人というか東部競馬場の総責任者というかアメリカ競馬界の牧場連盟? の幹部とか沢山肩書がある人、兎に角アメリカ競馬界の大物ブラウン氏と暫し通訳越しに挨拶を交わすオーナーたち。

 挨拶が一段落すると、ブラウン氏はにこやかに話し続ける。

 

「ミスター大栗とミスター北野には感謝の言葉もありません。テレビ戦略に失敗した我々がオグリキャップ・ホワイトグリント父娘によって挽回させて貰える機会を得ることが出来るとは」

 

 こんなに客が来てくれたことに満面の笑みを漏らすブラウン氏。

 出走予定時間1時間前のベルモントパーク競馬場来客数10万人超えである。

 ニコニコの笑顔に陰りも嘘も一欠けらも無かった。

 

 このベルモントパーク競馬場の来客数が10万人を超えているという数値は、ブラウン氏だけではなくアメリカ競馬界の人々を一瞬で焼き尽くした。

 

 だって10万人超えだぜ! 10万人! しかもまだまだ増えている! 

 マンノウォー時代にしか見れない数字だよ! 

 俺たちが生まれてからは勿論見たことないよ! 

 テレビ戦略に失敗した最近では、セクレタリアトのベルモントステークスが6万7千人が最高記録! 

 これでさえ、第二次世界大戦後類を見ない大観衆って言われたのに! 

 

 今日は10万人超え! 

 

 1万人以上の子供込みの10万人超え! 

 

 父娘とここにいる両オーナーにキスしたいぜっっ!! 

 

 ブリーダーズカップがこんなに楽しみなのは初めてだ!!! 

 

 ブラウン氏というよりアメリカ競馬界はあまりの大観衆に脳焼きされていた。

 どのくらい焼き尽くされているのかというと、オグリキャップとホワイトグリントは日本の馬で8月末には帰国するという情報まで綺麗に焼き尽くされたくらいである。

 悪意の欠片も無いのだ、ネイティブダンサーの孫の葦毛馬とひ孫の白馬か。よしっ! アメリカ馬だな間違いない。ごくごく自然にそういう認識をしているだけで、悪意の欠片も無い。

 こんな感じで見事に焼き尽くされてから脳内インプットされているブラウン氏の目にパドックにCCAオークス出走馬が姿を現した。

 

 かの、白馬ホワイトグリントも。

 

「ほうっ!?」

 

 数々の馬を見て来たブラウン氏ですらホワイトグリントには衝撃を受けた。

 余りにも美しいだけではない。素晴らしい資質と極限まで鍛え上げられた鍛錬の結晶。

 まさにサラブレッドの理想形だった。

 日本を発った時から2kg減。

 調教師達による短期間での38kgという普通の馬では精神的にも肉体的にも耐えきれない減量をしつつも体力も競争能力にも影響を与えない、そんな職人魂とサディスト魂とドマゾ魂が合わさった摩訶不思議な精神の結晶がそこに居た。

 

 どうして売ってくれないんだろう? いや、売るはずないかあれほどの馬。

 でも、共同馬主くらいは良いんじゃない? どうして駄目なのだろう? 

 仕方ないな。産駒購入に切り替えよう。産駒は逃さないぜ! 

 

 密談の際に、ホストの立場を放り投げて全力で購入しようとしたブラウン氏は嫉妬と悲しみを抑えながら溜息をつく。

 他にも密談した馬主たちが溜息をついたり肩をすくめたり産駒購入に切り替えたりしている。

 条件はめっちゃくちゃ良いがホワイトグリントは俺達だけのだし、何より共同馬主にしたら絶対に日本に帰れない! そんな北野の危機感が極めて正しかったとその光景は証明していた。

 

 そんなある種の緊張感というか生存戦略が凌ぎ合っていた馬主席とは違い、観客席ではただ見惚れていた。

 それほどのまでにホワイトグリントは完璧だった。

『生きた芸術』『白という色の意味を初めて知った』『サラブレッドとは何かを教えてくれた』

 翻訳された日本の記事に記してあった内容が何ら誇張されたものではなく、過小評価されていたものだと、富裕層だろうが一般層だろうがアメリカ人に関係なく知らしめた。

 それほどに白馬は美しく生きた芸術だった。

 

 おぉっ、びゅーてぃ

 

 あまりの美しさに感嘆の声を漏らして崩れ落ちる者さえ出るなか、生きた芸術ホワイトグリントの目はある存在を捉えた。

 

 ひんっ(おとうさん)

 

 ホワイトグリントの目に映るカウボーイを乗せた父の姿。無表情だったホワイトグリントの表情が甘えたものになる。

 そして、トコトコ父親の元へとスキップしながら進んでいく白馬。

 

 きゅーと

 

 芸術が愛らしすぎる生き物へと激変した衝撃に、そこかしこで崩壊した語彙と共にドサリという腰砕けになる音が幾つも同時に轟く。

 慣れている日本からの観光客は兎も角、アメリカ人の情緒が一瞬で崩壊していた。

 それに構わず、大大大大大好きな父の姿に飛び込んでいくホワイトグリント。

 

 ひんっ(やあ)

 

 葦毛のアメリカンヒーロー(アメリカ人的価値観)オグリキャップが愛らしすぎる白馬の娘を優しくグルーミングする姿。

 

 わあああああああああっ!!!??? 

 

 大歓声が巻き起こる。否、誰もが歓声しか上げていない。

 初めて見る馬の父娘愛に、観客のアメリカ人皆の脳が焼き尽くされていた。

 

 

 

 

 

 

 

「流石に不味いのでは?」

「ですね。出走前ですし」

 

 父娘の仲の良さに慣れている北野と大栗オーナーは愛らしさに目を細めるが、それ以上に心配する。

 明らかに競馬場の予定を自分の所有馬が妨害しているからだ。

 その心配通りに競馬場が動き出した。

 

「やっぱり係員が止めに入りますね」

「ですね。迷惑に」

「失礼」

 

 ブラウン氏に謝罪すべきだと考える馬主たちの横で、ブラウン氏は顔色を変えて近くの電話があるガラス張りの部屋に飛び込んだ。

 

《チーフ私だ。何をしている。直ぐに係員を下がらせろ。この大歓声が聞こえ──ああ、すまん。そこからでは聞こえんな。

 大歓声だ……そう、大受けしている。発走時間を延ばして少し様子をみ──いや、待て、視聴率はどうなっている? 提携している競馬番組の今の視聴率は? 

 …………なに! 本当か!? 間違いないな!? 葦毛の父と白毛の娘が触れ合ってから東海岸40%超えのトリプルスコアトップで西海岸でも30%超えダブルスコアトップだとぉぉぉっっっ!!?? しかもまだ上がっているぅぅっ!!?? 5%いけば踊り狂って祝杯を上げる競馬番組が東海岸今年トップになっているのかっっっ!!!??? 

 ……おお、主よ感謝いたします。

 クーン……そう、その通りだ。トラブルだ。よくある機械的トラブルで発走は、1時間、いや、2時間遅れる。直ちにホースショーマネージャーに連絡してくれ。

 ……そうだ。関係者以外馬にはノータッチ。フラッシュ撮影など馬には過度なストレスを与えない条件で出走馬全頭含めたイベントを組ませろ。馬主の説得は私がやる。

 ……ああ、勿論だ。そうしてくれ。直ちに軽食を観客に配るんだ。一セントも取るなよ。機械的トラブルだからな。ベルモントパーク競馬場、いやアメリカ競馬界はケチとは程遠いと全米に映すんだ! 

 ……いや、アルコールは不味い。子供の観客が多いからな……ああ、その通りだ。まさにあの父娘は天使だ……そう、飲み物はコークで食べ物はキャラメルかホットドッグかポップコーンが良い。

 ……流石はクーン・クールだ。そうだな。手拭きが必要だな。馬券マークシートと鉛筆を配る器に入れよう……ホースショーマネージャーに? 

 ……素晴らしい素晴らしいぞ。そうだマークシートの裏面を使って馬の絵を描くイベントを入れよう。子供たちと一緒に! 子供の笑顔ほど親の財布を軽くさせるものはないからな! そうだ。日本から届いたばかりのぬいぐるみなども売り場に出そう。港や空港の倉庫にあるだろう。

 ……税関の検査? 検品?? そんなことは州知事を通じて何とでもするんだ。ウチが幾ら税金納めてると思っている。こういう時の為だろう。今はただ運び出して客が目に映る場所に並べるんだ。レース後の客が帰る時間までには絶対に! 

 ……あの子はケインくんは来ているのだな。あのグリント・セラピーで話題の少年は。招待したはずだ……そうかホースショーマネージャーはすでに動いていて……ケインくん以外の他の子にも? あの父娘なら障害がある子供でも乗せられる? ……レース前は厳しいかもしれんが何としてもレース後なら可能にするように馬主を口説いて見せる……ナイトショーでいけるか検討してくれ。

 ……後は任せたぞ。競馬の話題を全米に広げられて、客を捕まえて逃さないように出来るなら全責任は私が取る。私の名を使って全て好きにしてくれ……私は馬主を含めたホストたちの相手をする。

 後は任せたクーン・クール!》

 

 ガラスに囲まれ声は聞こえないが、その顔色から何が起こっているか分からない馬主兼経営者二人ではない。

 だって、完全に達してる表情しているもの。目が♡になっているもの。そんな人が父娘の持ち主であるこっちに何を言ってくるか目に見えている。

 

「北野さん」

「なんでしょう?」

「ウチのハツラツはレースもないですから、このままイベントをやると言われても余程の条件でなければ賛成しますが、そちらは?」

 

 心配する大栗オーナーに対して、北野は凄みのある笑みをした。

 

「他の出走馬もイベントに参加するなら、余程の条件でなければ賛同いたします。正直、有り難いですわ」

「ほう──ああ、ホワイトグリントは」

「ええ、2時間も人前でイベントなんてすれば、馬のストレスは多大なものになりますな」

「そうですな。特にこの年の若駒なら」

 

 得たり。という微笑みを浮かべる大栗オーナーに北野は強く頷いた

 

「ウチのグリントなら問題ありませんが、他の馬はキツいでしょう」

「そうですね。日本でウチのハツラツと、2つ大きなイベントをしたホワイトグリント。あの子は元々動じなかった所に慣れがありますからな……北野さん」

「はい」

「全ての出走馬がイベントに参加してくれるならば──日本内国産馬・日本調教馬初の海外G1制覇見えましたな」

「はい。オグリキャップとオグリキャップの帯同を許可して頂いた大栗さんのお陰です。

 ありがとうございます」

「いやいや、お礼を言うなら私の方です。私のせいでクラシック馬にさせてやることが出来なかったハツラツに、また新しい名誉が戴けるなんて幸せですわ」

「ははは──しかし」

 

 ひんっ(おとーさん)

 ひんっ(いつも甘えんぼうだね)

 

 おおおおっ!? きゅーと! びゅーてぃ! えくせれんと! えんじぇるっ! 

 

 じゃれあう様に、涙を流す観客が普通にさえなっている。

 アメリカ人の語彙と情緒を崩壊させながら、大歓声と拍手とシャッター音を浴びるオグリキャップとホワイトグリントの姿。

 

「可愛いですな」

「ええ、ハツラツもグリントも可愛いです」

 

 その姿に、日本の二人の馬主は勝利を確信しつつ、可愛さにデレデレになるのだった。

 

(駄目だな。ホワイトグリントがドマゾだと公表出来るのはずっと先だ。あまりにも大人気すぎる)

 

 それはそれとして、現状に鑑み、現役引退したらホワイトグリントがドマゾだと公表する予定を延期させることにした北野だった。

 

 

 

 

 

 

 かくて、実にアメリカンな理由で2時間遅れたレースは

 

『キーパーヒル! ケンタッキーオークス馬が進む! 

 バンシーブリーズが併せに行くところを! 

 キタキタキタァァァ! ホワイトグリントがやってきたぁ! 頭を低くして重心を下げて沈み込むような走りでやってきたぁ! 

 ベルモントパークの茶の砂をかき分けてホワイトグリントがやってきて! 

 体当たりと見まがう接触を受けるも弾き返したぁ!?』

《凄い! 凄いぞ!! あの美しい白馬はまさか鉄で出来てるのかっ!?》

 

 日米両方の実況が同時に驚嘆するなか白馬は差す。

 

『競り合う2頭を白馬が抜かしたぁ! 

 先頭はホワイトグリント! 200を切った! 

 ホワイトグリント頑張れっ! もう少しだ頑張れっ! 

 ホワイトグリント! 満面の笑顔! 差を広げるっ! 

 ホワイトグリント! もう少し! もう少しっ! もう少しだっ! 

 もう間違いない! 間違いないっ! 頑張れホワイトグリント! 

 ホワイトグリントぉぉぉっっっ! ホワイトグリントがゴール板を真っ先に通過したぁぁぁ! 

 やったっっっ! やってくれたぁぁぁっっっ! 

 今、日本競馬の歴史が変わりました! 

 ホワイトグリントやりました! 日本内国産馬初の海外G1制覇! 日本調教馬初の海外G1制覇です! 

 またも白雪姫が歴史を変えました!! 

 アメリカは牝馬クラシックCCAオークスを制して2カ国のオークス馬となった馬! 2カ国のティアラを戴冠した馬! 

 その名はオグリキャップの娘! ホワイトグリント!!!』

 

 日本からの来客8000人以上を含めたベルモントパーク史上最大の12万人超えの大観衆が大歓声を上げるなか、アメリカ史上初めて白馬がG1を制する結果となった。

 

 圧倒的だった。まるで他の馬が絶不調な中で唯一絶好調だったような圧勝だった。

 

 機械的トラブルで発走が遅れ、その間ホースショーに参加した精神肉体両方の疲れをまるで見せない心身の毅さ。

 アメリカの観客も日本の観客も関係なく白馬の勝利を祝い称賛した。

 

 満面の笑顔ではしゃいでアメリカ人の祝福に日本語や拙い英語で抱き着いてくる日本の観客たちの姿は、薄笑い笑顔でペコペコ頭を下げる何考えているか分からないという日本人のネガティブイメージを破壊したほどだった。

 

 英雄オグリキャップの娘は、ヒロインになった。

*1
城場面積は東京競馬場に勝るが、コース面積では東京競馬場に劣る




 普通に走ってもホワイトグリントは勝ちます。だってダイエット完全成功したもの(無情)
 I'll be back!は西海岸でやります
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