感想、ここすきなど皆さんありがとうございます。頑張ります。
物語は最高のハッピーエンドを迎えていたのを理解した男の話。
1998年8月15日デルマー競馬場
「いやあ、本当に広いなあこの競馬場は」
「当たり前でしょう。この西海岸きっての競馬場よ」
一人の日本人の男性が一人のアメリカ人の女性に競馬場を案内されていた。
「はは、そうだろうね。日本のどの競馬場よりも広いよ。何というかアメリカだね」
何よそれ。とけらけら笑う女性に微笑みながらも男性は感心する。
本当に広い。地平線と水平線が同時に見ることが出来るなんて島国には決して出来ない。
嫌味抜きで凄いと男性が言っていると分かっているのだろう。女性も嬉しそうにする。
「でも──こんなに人が一杯なのは初めて」
感嘆の言葉と共に女性が周りを見渡す。
彼方此方にならぶ露店からは威勢のいい声がして、そこらで芸をする芸人に対する歓声が止むことは無い。
祭りだった。
デルマー競馬場では大規模な祭りになっていた。
「サンディエゴっ子には喜ばしいわ。こんなにこの競馬場に人が溢れてお祭りが行われるなんて──競馬がメインの日なのに」
「競馬がメインだとお祭りにはならないのか?」
「ええ、少なくとも私のお婆さんの頃くらいからはね。人が集まるのは、サーカスとかリゾート客用のイベントばっかりよ。
色々と盛り上げようとしていても、そもそも人が来なかったし、どうしてもギャンブルだからね。来る人来る人が目をお金でぎらつかせていたから、芸にチップ払ったりグッズ買ったりしなかったのよ。勿論食事もサンドイッチだけ。
だから、こんなに露店も芸人も来なかった。
なによりも今日みたいに、子供の姿なんて絶対になかった」
「へえ、そうだったのか──日本だとオグリキャップの前の競馬場だな」
「ああ──あのネイティブダンサーの孫のヒーロー。彼はそんなところまで変えたんだ」
「そうだな。あいつが、オグリキャップが競馬をギャンブルからスポーツにしてくれたんだ──君はアメリカ馬だと思っていたけど」
「しょうがないでしょう」
はははと女性が笑う。
「だって、ネイティブダンサーにソックリな孫が西部劇に出てくるようなヒーローしたんだもの。アメリカ人なら誰だってアメリカ馬だと思うわよ。あなたに日本でのレースを見せてもらうまでそう思ってた。ううん。今でも疑ってる。いいえ、願っている。彼と、その娘はアメリカ馬だって願ってる」
「おいおいオグリキャップとホワイトグリントを取らないでくれよ。あんな馬はあいつらしか居ないんだ」
「ああ、やっぱり、そうか。スペシャルなんだ」
「うん。あんな馬はあいつら以外だとハイセイコーくらいかな。もう30年くらい昔の馬」
「そっか。そんな馬が昔にもいて、そんな彼らを日本の皆は大切にしたから競馬が皆のスポーツになれたのか……10万人を超えるお客さんか。羨ましい。今日のデルマーが日本では日常なんて本当に羨ましい」
言葉を切り女性は周りを見渡す。
ぬいぐるみを抱いた子供たちを連れた大人たちが居る。馬の被り物をした集団が居る。白馬と葦毛馬の旗を掲げた集団も居る。馬の餌やりを楽しむ家族がいる。乗馬体験を楽しむカップルがいる。馬に乗った俳優に対して拍手する観客が居る。カウボーイの恰好をして空き地を馬に乗って走り回る集団が居る
「……いや、此処までのはそうそうないよ。これだけのお祭りを競馬場でやったのは、オグリキャップがホワイトグリントの阪神3歳牝馬ステークスの時に阪神競馬場に来てくれたイベントと、オグリキャップとホワイトグリントがアメリカ遠征する前に中山競馬場でやった壮行イベントくらいだ」
「そうなの?」
「ああ、流石に競馬場でお祭りはやってない。競馬のレースと音楽隊の伴奏とかの小さいイベントだけだ」
「そっか──ああ、本当に羨ましい。日本の競馬はレースってだけで人が集まってくれるんだ。アメリカでは今日みたいに人が集まってくれた喜びでお祭りをするしかないのに
──彼と彼女は本当に凄いね。大好き」
「そうだね。オグリキャップとホワイトグリントは本当に凄い。外国に来ているのにその外国の人達にこんなに愛されるなんて」
「愛されるか。
そっか、そうか。アメリカの競馬では好かれる馬は居ても愛される馬はもう居なくなってしまっていたのね。マンノウォーもセクレタリアトもネイティヴダンサーも。愛された馬たちは歴史の彼方に行ってしまった。サンデーサイレンスは売り飛ばされたし。
数十年ぶりに愛されたのはアメリカの馬じゃなくて──日本の馬かぁぁぁっ」
女性は思いっきりため息をついた。
「やっぱり、アメリカにずっといて欲しいんだけどあの2頭。日本は狡い。あんな2頭が居るなんて」
「あいつらは絶対譲らないよ。日本の皆が愛しているから。あいつらの馬主さんと一緒に日本へ帰るんだ」
再度思いっきりため息をついた。
「こういう時に私が今まで相手した日本のサラリーマンは、どうもどうもって気味悪い薄笑い笑顔でぺこぺこ頭下げて、はいもいいえも言わないイライラだけが溜まる態度取って断固とした回答せずプラン通りにしか進めないんだけど、さ」
「仕事だからな。変な責任負わされたら面倒だから根回し通りにやるのが一番だ。少なくとも俺はアニメ制作の仕事を愛していない。ただ糧を得るための手段だ。でも、あいつらは愛してる大好きだ」
「はははは、そういう日本人の本音がオグリキャップとホワイトグリントが絡むと聞けるから、アメリカ人の皆の日本人に対するイメージ良い方に変わったよ。本当に良い意味で」
「──そうか。そうなのか。オグリキャップとホワイトグリント。あいつらはそういう所まで変えてるのかもな。まあ、オグリキャップとホワイトグリントだし。ありえるか。最近、日本だとオグリキャップが落下する子供助けてから安全管理に対する法律まで作られたし。他にも──」
色々と指折りながら変わったことを言っていく男性の様子に、ふうっと女性は笑った。
「日本の皆に愛されて社会を変えていく馬か。これはアメリカには来てくれないな──残念」
そんな女性に男性は熱を込めて笑った。
「ああ、オグリキャップとホワイトグリントだからな」
オグリキャップ、メジロマックイーン、トウカイテイオー、ミホノブルボン、ナリタブライアン、そしてホワイトグリント。
彼らは熱を与えてくれた。
漫然と生きていた自分にアメリカまで足を延ばさせるほどの熱を与えてくれた。
「馬券買おうか」
「うん、また後で」
馬券を買う。
1枚は1ドル。1枚は1000ドル。
応援馬券と、ギャンブルのための馬券。
英語でホワイトグリントの名を刻まれた馬券。
ホワイトグリントがデビューしてからずっと貯めていた応援馬券にまた1枚が増えた。
換金しないホワイトグリントの名が刻まれた応援馬券を入れ物代わりの名刺入れに入れる。
これからも増えてくれるだろう。
レコードデビュー。条件戦大差勝利。産駒初重賞制覇。G1レコード制覇産駒初G1制覇。エルコンドルパサーとの死闘。春クラシック2冠制覇。そして、日本馬初の海外G1を制覇して父の残した夢を果たした。
皆が待ち望んだオグリキャップの物語の続きはここまで来た。
今日勝てば西海岸最大のレースに勝利した日本馬というページが加わる。
「頑張れ、ホワイトグリント」
夢を見せてくれホワイトグリント。
父娘で仲が良いという類まれな白馬。
敵地であるアメリカでさえ愛されてしまう白馬。
オグリキャップの物語の続きを──
「──いや、もう良い」
ああ、そうか。
ごく自然と口から出た言葉。
漸く分かった。
もう良いんだ。
「ああ、そうだ」
あの伝説的なラストランで皆は願った。
身勝手に願った
オグリキャップは終わってなんかいない。
まだまだ絶対に走れるんだと。
だから、オグリキャップの、夢のような物語の続きをみたいと願った。
そして、ホワイトグリント。君が来て、オグリキャップの娘の白馬の類稀な競走馬が来てくれて。
皆、身勝手に願った。
俺も願った。
オグリキャップの夢の続きだ。と。
オグリキャップの物語は、オグリキャップの伝説は再興されたんだ。と。
ずっとそう願っていた。
ずっとそう目を逸らしていた。
「あの時、阪神で、か」
ようやく、理解できた。
君がG1馬になった時。
あの阪神競馬場の君とオグリキャップの仲の良い父娘関係を見た時に、理解したんだ。
理解していたんだ。
競走馬オグリキャップの物語は終わっていたのだ。と理解していたんだ
「葦毛の怪物はもういなかったじゃないか。オグリキャップは葦毛の怪物じゃなくなってたじゃないか」
阪神競馬場に、凄まじい目でスーパークリークたちを睨みゲートインする時に武者震いした葦毛の怪物は居なかった。
居たのは、優しい馬。
人間の子供を助けて人間の子供たちと遊んであげる優しい馬。
ホワイトグリントが来たときに人間の子供たちを振り落とさないようにゆっくりと立ち上がってあげる優しい馬。
甘えた顔でトコトコスキップしてくるホワイトグリントを優しく受け止めてグルーミングしてあげる優しい馬。
オグリキャップは、ホワイトグリントの優しいお父さんになっていた。
「オグリキャップは、ホワイトグリントのお父さんになっていたんだ」
葦毛の怪物は優しいお父さんになって、その伝説は終わっていたのだ。と理解していたんだ
「もう、お父さんだったんだ。葦毛の怪物じゃなくてお父さんなんだよ。
さいっこうの、めでたしめでたし、じゃないか」
競走馬オグリキャップの物語は、優しいお父さんになるという最高のお終いを迎えてくれたんだ。と理解していたんだ
それでも君をオグリキャップの娘として、皆も俺も扱っていた。
オグリキャップの物語が鮮烈すぎて
君の走りがオグリキャップにそっくりで
君があまりにもオグリキャップと仲が良すぎたから
段々とオグリキャップこそがホワイトグリントの父親になっていったのに。
「でも、もう、俺みたいな根性曲がりも分かったし、皆すぐに分かるさ。
オグリキャップの物語は、オグリキャップの伝説は、再興すると同時に、終わっていたんだって。
ホワイトグリントの物語という全く新しい物語が始まっていたんだって」
ありがとう。まだ終わっていないと認めたくなかったオグリキャップのヒーロー列伝の題が漸く素直に言える。
「ありがとう。素敵な夢の続きを今までありがとう。ホワイトグリント」
だから
「頑張れホワイトグリント」
身勝手に願う。
「君の物語をもっと見せてくれ」
『8月16日日曜日7時になりました。ご覧のチャンネルはHHK特別編を私、島田が送らせていただきます。【白雪姫ホワイトグリントを応援しよう】でございます。本日は衛星中継によりアメリカとのタイムラグなく放送させていただきます。西海岸最大のレース、パシフィッククラシックステークス。天候は晴れ。馬場コンディションは良。歴戦の名馬たちに正面から戦えといっているようなコンディションです。
日本時間16日8時より、現地時間15日16時より行われるパシフィッククラシックステークス。映像をご覧ください。開始1時間前の今現在には皆さん詰めかけています。
デルマー競馬場発表では来場者数は22万人超え。アメリカ競馬史上最大の来場者数とのことです。それだけの来場者を余裕をもって飲み込むデルマー競馬場。馬券売り場などや観客席だけなく露店やイベント会場を臨時設営できるなんて凄まじい規模です。
今、映っているのは広場ではありません。広大なパドックです。日本からの来客によるものだけではなくアメリカの方が制作した横断幕が翻っています。ざっと数万人の大勢の方が見守るパドックをご紹介させていただきます。
解説は元JRA騎手で現調教師の田柳氏に来ていただきました。田柳先生、よろしくお願いします』
【はい、よろしくおねがいします】
『早速ですが、田柳先生から見たアメリカの注目馬を教えていただけますか』
【はい、まずは9番フリーハウスです。今は4番人気ですが、僕の中ではアメリカ馬の中でトップだとみています。この馬は昨年のサンタアニタダービー勝利馬で前走のベルエアHも勝っています。G1こそ1勝馬ですが、この馬は兎に角コーナーが巧い。直線までのコーナーリングと駆け引きが死命を決するデルマーでその強さを発揮するでしょう。
続いては、アルゼンチン馬ジェントルメン。G1・6勝とこの中でトップの成績です。昨年度のパシフィッククラシックステークス勝者でもあります。流石の1番人気ですね。ただ、僕の見るところこの馬のピークは昨年だったんじゃないかと思います。馬体のハリが衰えている馬の気配がしてます。ですが、間違いなく強い。強すぎるほどです。要注意です。
後は昨年度ベルモントステークス覇者タッチゴールドなどが人気ですが、正直ホワイトグリントなら勝てると断言できるでしょう】
『そうなのですか』
【はい。ホワイトグリントは、前走のCCAオークスで、アメリカの馬場に対する適正と末脚の確かさと馬体をぶつけ合っても跳ね飛ばすことが出来るほどのパワーを示しました。あれだけの能力を発揮できればフリーハウスとジェントルメン以外には勝てると断言していいでしょう。アメリカで2番人気になるだけあります】
『では、敵はフリーハウスとジェントルメン。そういうことになるのですね』
【はい。間違いありません】
『分かりました。田柳先生ありがとうございます。私、実は青森の牧場の出でして、実家には馬はいなかったのですが、近所の牧場の馬の世話を手伝っていました。
一応、競馬に関しては最低限教わっていましたが、その頃は興味がわかず馬といえば乗馬用に調教することしか知りませんでした。
テレビ局に入って、オグリギャルと呼ばれていた先輩に、オグリキャップの娘のホワイトグリントが白馬だから競馬場に行こうと連れられていき、あまりの美しさに一目で虜になりました。だって、白馬ですよ白馬。しかもあんなに綺麗。初めて見ました!
そして、阪神競馬場での父娘愛に、馬の父と娘に親子愛が生まれる奇跡に魂が掴まれる衝撃を覚え、常に追いかけております。
このように応援馬券を所持しています』
【おお、新馬戦からCCAオークスまで全部ありますね】
『はい。仕事がなければ今回もアメリカに行って応援馬券を得つつ喉が枯れるまで全力で応援したかったのですが。
誰も彼も薄情で交代してくれる者がおらず、ならばということでこの実況の席をデスクに直談判したら、最初からお前をメインアナウンサーにしようとしていた頑張れ。とこの席を獲得いたしました。
正直、今嬉しくてたまりません。
テレビ局に入って、お前は面と声が良いからと無理矢理勧められたアナウンサーになって良かった!
初めてのメインアナウンサーがホワイトグリントのレースだなんて!
裏方希望だった私にクビかアナウンサーの2択を迫って、今回の休暇申請を却下したデスク!
裏では鬼畜野郎と呼んでましたごめんなさいっ!? 貴方の下で働けて幸せです!』
おい、なーちゃん。生放送なのにぶっちゃけてるぞ。いいのか。
いや、だめだろ。え? このままいくんですか。プロデューサー
ちょ、こっちの音はい──プツン
【そ、そうなんですか】
『はい。ですので。今日は実況は特定の馬に対して贔屓しないように平等を心掛けてレースの状況をお伝えするのではなく、ホワイトグリントを中心として実況いたします。
いえ、一人の日本人。一人の女としてホワイトグリントの勝利をただただ応援いたします。
公平な実況なんて日本のレースだけで良いのです!
日本馬が、ホワイトグリントが、海外遠征しているのだから、レースに出ている唯一の日本馬ホワイトグリントだけを応援して追いかければ良いに決まっています!
視聴者の皆様にはご理解いただけると幸いです』
いや、あんた、それ、え? ゴーですかプロデューサー
視聴率が上がってる? あ、なら良いですよね、あ、まだ、音が──プツン
『ところで田柳先生』
【は、はい】
『今見えるホワイトグリントの調子はどうなんでしょうか。
パドック周りの観客の皆さんが手を振ったりしてるのに合わせて、何時も通り無表情ななかで目を細めたりしてくれてとても愛らしいです。無表情でもホワイトグリントは感情が多彩で分かりやすいのが、本当に愛らしい。
私もしてもらいました。可愛すぎて抱きつこうとジャンプしようとするも、柵に邪魔されました。仕方ないとはいえ、柵の存在を厭いました。一緒にやろうとした皆さんと笑い合ったのは良い思い出です。
ホワイトグリントの調子の方はどうなんでしょう』
【あ、ええ、そうですね。CCAの頃よりは調子が良いと思いますよ。CCAの時は短時間のダイエットで少し辛そうだったのが払拭されています。絶好調。そう言って良いでしょう】
『なるほど。絶好調ですか。
私、お父さんにリンゴを分けてもらいながら食べるホワイトグリントの映像に、歓喜に叫び続けました。なぜ私はマイクとカメラを手に飛行機に同乗出来なかったのかとデスクに泣き叫びました。私は青森の牧場の出。近所のとはいえ馬の世話は何年もしてきた。だから馬の事はそれなりに分かっている。絶対に厩務員さんのいうことを聞いたのにと何十分も泣き叫びました。
そんなデスクも、飛行機に同乗する許可を得ようとして断られたと嘆き怒っていました。オグリキャップの一件以来、瀬戸内厩舎はマスコミに不信感があると。
瀬戸内厩舎の皆さんは何も悪くありません。当然のことです。怒るのは当たり前です。
私やデスクが怒っているのは、取材したゴミどもです。
お父さんのオグリキャップに24時間付きっきりとか馬のこと何も知らんアホしたクソどもがよぉ。やってまるや。
コホン。失礼。
そして、太り過ぎてレースが増えたことに笑いながらも同情しました。やはり女の悩みは人も馬も同じですね。動かないと減りません。美味しいものはツイツイ進んでしまうのは馬も人も同じですよね。可哀想なグリント。大好きなお父さんにりんごを貰ったら沢山食べてしまいます。
私が世話していた馬たちもリンゴが好きでした。現役競走馬でなければ幾らでも食べられたのに。
デスクにホワイトグリントの応援にアメリカに居るなら、取材許可貰えたから現地に居るカメラマンと一緒に行ってこい。そういわれ、CCAオークス前にアメリカの牧場で初めて取材した時はとてもとても苦しそうでした。
スキップしていったことを後悔しました。
ホワイトグリントは食事制限に苦しみ本気で嫌がっていました。瀬戸内先生も池柄厩務員もやりたくないけどやらざるを得ないと心苦しそうで、思わずもらい泣きしたらホワイトグリントが顔をぺろぺろと舐めてくれました。
──わった好き。
見た目が良くて性格が良いなんてホワイトグリントは可愛すぎます。
放映に対する反応も凄かったらしいですが、そんなことはどうでもいいです』
どうでもよくねーよ。超大事だよ。俺らの給料それで貰ってるんだぞ。
なーちゃん、あれで瀬戸内厩舎に気に入られて舐められてるシーンの視聴率もめっちゃ良くて人気になったからって、良いんですかメインなんて。牧場上りが珍しいからって、まだ2年目。若すぎますよ。プロデューサー。
え? 視聴率? お、さらに上がってますね。なら、なんの問題も
おい馬鹿また入ってる──プツン
『で、絶好調なんですね。田柳先生。ホワイトグリントは』
【……まあ、絶好調ですよ。はい】
食事制限の苦痛による快楽。
最初は何時もよりも厳しいハードトレーニングを合わせた素晴らしい気持ちよさがあったが、大好きな桃のおじさん(大栗オーナー)やいーさんが食べ物を手に持って悲しそうにしながら食べさせてくれない姿に、瞬時に気持ちよさが無くなった。
大好きな人たちを悲しませている。そんな衝撃に震えるホワイトグリントに訪れたのは、食事制限で沢山食べることが出来ない絶望そのもの。
空腹と食事が制限されてしまうのは、ホワイトグリントにとって地獄だった。ハードトレーニングの気持ち良さでその時だけは和らいだが、すぐに空腹に襲いかかられ食べさせてと強請るも返ってくるのは悲しそうで辛そうないーさんの顔だけ。
これ違う。愛がない悲しみしかない。気持ちよくない。悪い苦痛。
食事制限の苦痛はホワイトグリントにとって鬼門となり、本気で嫌がっていた。
そんなホワイトグリントが嫌がる姿は、号泣しながら頑張って頑張ってと言い続けた島田を慰める動画により、本当に食べるのが好きなんだなあと視聴者にホッコリさせつ同情させ、自分が苦しいのに人間を慰める優しさに感動させて視聴率を跳ね上げていた。
ホワイトグリントは周りの人間に更に愛されていたのだ。
まあ、食べるのが大好きなのは本当なので間違ってはいないし、サドとマゾが同じ方向を向いたお陰でダイエットが上手くいったので良かったのだろう。
『そうですか。では、一緒にホワイトグリントの応援をしましょうね田柳先生』
【いや、私は、出来る限り平等に解説しようと思います】
『え? 先生、裏切るんですか!? 日本を!?』
【(なんでそんな話がデカくなるんだよ)いえ、そうでなくて──島田さんが完全にホワイトグリントの応援をするならば、違う視点。そう、平等な視点を入れた方が放送として面白いんじゃないかなあ。と思うんです。勿論、私も日本馬を応援する身。解説はホワイトグリント寄りですが】
『なるほど。言われてみればそれもアリですね。失礼しました。JRAで天才騎手と呼ばれ、調教師に転身したばかりの田柳先生が日本馬を裏切るわけがありませんでした』
【はははは、勿論ですよ(俺が間違ってたわ。解説辞めて真面目に預託馬たちの調教頑張ろう。西海岸最大レースに日本馬が出る記念すべき時にこんなトンデモないド新人と組ませるテレビ局の畜生どもと比べて、一部の嫌な馬主を除いた競馬界の人間関係の暖かさと馬たちの何て可愛い事よ)】
預託馬少ないし、何よりも調教師となったら人間関係面倒臭すぎる、もっと馬の事を優先してやれよ。と、逃避+バイト感覚で解説していた田柳調教師は、これからは真面目に調教師頑張ろうと心を入れ替えていた。
この頃の全方向に中指立ててた〇HKが懐かしい(懐古
N〇K『中継での失敗はよくあることです(棒読み)』え?確信してやった?まさか!そんなことないですよ!はっはっはっ!