感想、ここすきなど皆さんありがとうございます。頑張ります。
CCAオークスにスムーズに勝てたのはホワイトグリントが完璧に舐められていたからです。それでも直線を末脚で昇っていく時に、勝たせまいとタックルされました。で、弾き返しました。
日本馬で強いと分かったので、容赦なく潰しに行きます。
非アメリカ馬、非名門厩舎、非アメリカ人騎手。この頃のアメリカ競馬的に潰す理由しかありません。
チーミングに加えてほぼ全員で結託します。
非名門厩舎相手だと、割と良くあるのがこの頃のアメリカ競馬の恐ろしさです。
ここらあたりの少し前の時代から薬物問題で焼き払われるまでのアメリカ競馬は本当に酷かった。
アメリカ競馬はノーザンダンサーで投機の対象にならないか、JRAのような強い組織が運営していれば、もっと何とかなったんですけどね。どうにもなりませんでした(無情
一生懸命に馬を育成し調教してレースに駆る人達が、金に目がくらんで他の馬を勝たせたり、弱小馬主だと馬主の権利を売ったりして名門と共同馬主にならないとチームで馬を潰されたり、名門厩舎じゃない相手ならばチームで非名門厩舎のエースを潰したりして人の道を踏み外していく。
──遂には馬に薬物投与まで行い競馬自体の存続を危うくさせる……これ以上の芸術は存在しえないでしょう(白目
この世界線は反省して直せるところ直しますのでご安心ください(優しい世界)
白は目立つ。
茶色の砂と栗毛や鹿毛や葦毛の馬に囲まれているとより際だつ。
白が周りの色に塗りつぶされようとしている。
そんな儚げな美しさが白にはある。
儚げな美しさが失われようとしている時に怒らない人が居るだろうか。
居るわけがない。
『ふざけんなあああああ!? なんやってんだアメリカあああああ!? この玉無しどもがよおおおおっ!?』
《これは赦されない!? 何やってんだクソッタレえええ!? このド畜生どもタマはママの所に置いてきたのか!?》
録音などであればピー音が入るような言葉を容赦なく叫ぶ日米実況。
生放送であるがゆえにスラングは公共電波に乗せられて運ばれる。
日米双方ともピー音入れるか実況を制止ようかという目をプロデューサーに向けるが、どちらともゴーサインした。
「なにやってんだクソッタレっ」
「白雪姫ちゃんになんてことしてるんだっ」
「ふざけんじゃねー」
日本は朝食時。アメリカは夕食時。
そんなこと忘れましたとテレビの前で絶叫する人達には、実況にスラングで叫ばせて「僕たちテレビは味方だよ。許せないよね」とやった方が良いに決まっている。
『このクソッタレども!? ふざけんなぁ!? まともに勝負できないのか!?』
《一頭しか居ない牝馬に何てことしてやがる! 去勢した2頭以外の全頭も去勢しろ!?》
結果として、このレースは実況が最後の直線まで馬の名前を呼ばなかったレースとして伝説になることになる。
【馬群が一塊になってる中、ホワイトグリントは抜け出そうとしていますが厳しいですね。何度かぶつかっています】
そんなわけで解説が実況していた。
真正面に1頭斜め右前と斜め左前に1頭ずつ。左横に縦に並んだ2頭右横に縦に並んだ2頭。真後ろに1頭。
完全に隙間なく囲まれた。
そんな白馬がガンガン周りとぶつかっていく。
アメリカ名物のポジション争いではない。
必死に抜け出そうとする白馬が、抜け出させまいと周りから包囲網に押し込まれているのだ。
あまりにも苦しそうで痛そうで辛そうだ。
いや、苦しくて痛くて辛いのだ。
「酷い酷すぎる」
「リンチじゃないか」
「もう、止めてくれ」
「そんな。こんなアンフェア、が、許されるのか」
ブーイングが落ち着いた観客席では、あまりに悲惨な白馬の様子に涙声が響いていた。
右に出ようとすれば押し込まれてぶつけられ
左に出ようとすれば押し込まれてぶつけられ
前に抜けようとしても隙間さえなく顔を前の馬の尻にぶつけられる
こうなったら、と白馬は最後の手に出る。
「あ、下がろうとしてる」
「もう、それしかないよな」
「ああ、そうして仕切り直すしか」
「諦めてないんだ頑張──はぁぁぁっ!?」
22万人を超える観客が、同時にはぁぁぁっ!? と絶叫した。
白馬が後に下がろうとしたら馬群ごと下がっていき、ホワイトグリントの真正面にいた一頭の馬が前に出たからだ。
その馬が居なくなって空いた隙間を、ホワイトグリントの横と斜め前にいた馬が直ちに埋めた馬の名前は
前年覇者ジェントルメン。
一番人気のアルゼンチン馬が軽快に邪魔する者もなく進んでいく。
『きまげるなあああっ!? カンッぺきに示し合わせて全員で手ぇ組んでんじゃねーかあああ!?』
《チーミングにしてもコレはないだろぉぉぉっっっ!? アルゼンチン馬じゃねーか!? アルゼンチンに幾ら貰ったんだぁぁっ!? それとも尻差し出されたのかぁっ!? 売国奴どもがぁぁぁっ!?》
あんまりな光景にガンッガンッと机を叩きながら咆哮する日米実況。
デルマー競馬場が二度目の全観客の大ブーイングに揺れた。
否、テレビを前にした全員が「ふざけるな!?」と絶叫した
「どうですかね」
「諦めるにはまだ早いですが、正直厳しいですわ。かなりきついです。やられたくないことやられました」
「それほどまでにですか」
「えぇ、直線の短いデルマーで包囲網。秀でた末脚があっても厳しいです。しかも、コレは直線でバラけて抜け出すことが出来たら。という話です」
「観客席からは罵声が上がってますね」
「まあ、観客はそうでしょうね。どう考えても絶体絶命ですから」
「ええ、ウチのホワイトグリントがドマゾとは知りませんから」
「普通の馬だとここまで囲まれて身体をぶつけられると心が折れますからね」
「けっこう気持ちよくなってますねグリント──間違いなくピンチですが」
ショックで顔を抑えてうずくまるアメリカのご婦人さえいる天覧席で、ホワイトグリント陣営の北野オーナー瀬戸内調教師錦田場長は悠然と双眼鏡を構える。
ホワイトグリントがドマゾ。
ただそれだけが3人とその奥方たちを支えていた。
『このド畜生ども!? 卑怯者!? 卑劣漢!?』
《クズやろー!? 下種野郎!? カス野郎!?》
「……実況は駄目ですね。レースがさっぱり分からない」
「まあ、そうですな。しかし」
【先頭は少し離れて栗毛のジェントルメン。他は2馬身ほど離れて馬群ひと塊で進んでますね】
「さすがは田柳さんだ。冷静ですね」
「ええ、しかしなりふり構わずとはこのこと。やってくれます」
「たとえ勝っても抗議しますよ私は」
「よろしくお願いします」
「そして、アメリカ競馬にはフェアが無いと痛感しました」
「ええ、全くそのとおりですな。こんな事ばかりしたから客が居なくなるんです」
「JRAは立派ですよ。本当に──これを理由にアメリカから帰りましょう」
「ようやく、煩い人達も黙りますね。それしか良いところはありませんが」
それはそうと、双眼鏡を握りしめる手が白くなるほど全員ブチギレていた。
レースも半分以上が終わった第3コーナーを曲がる時に、ホワイトグリントの前を行く左前と右前の馬の間が僅かに開く。
好機。
【あ、僅かに開いた。ホワイトグリント前を抜け出そ──はあああぁぁ!?】
『きゃあああああああっ!?』
《のおおおおおおおおっ!?》
はあああぁぁ!?
きゃああぁぁ!?
のおおおっっ!?
解説の田柳や日米実況だけでなく、見ていた全員が驚愕するか悲鳴を上げる。
抜け出そうとしたホワイトグリントの顔に前を進む騎手の鞭が炸裂したのだ。
左前と右前の騎手の鞭が同時に。
騎乗している馬に鞭を入れようしたと誤魔化せる姿勢で。
雲一つない晴天の光の下、白馬の顔から血が噴き出した。
白に朱が染み付く様はゾッとするほど美しいが歓声は上がらない。
微量だが、鮮血の朱は白い毛に恐ろしいほど目立つ為、大量出血したのだと皆が認識した。「ふざけるな!」と瀬戸内調教師が絶叫しながら双眼鏡を地面にたたきつけたほどの非道。
【ふ、ふざけんなぁぁぁ!? それだけは駄目だっ!? 騎手としてそれだけは駄目だっ!? 馬の顔を鞭で叩くんじゃねぇぇっ!!?? それをやったら騎手じゃねぇぇぇっっっ!?】
『こ、このゲス野郎どもがあああああ!?』
《子供も観てるんだぞ!? うじ虫野郎どもがあああっっっ!?》
ワザとだと確信した実況と解説が怒りに咆哮するなか、デルマー競馬場は三度大ブーイングに揺れた。
「パパ、ママ、白馬さんだいじょうぶなの」
ぎゅっとオグリキャップとホワイトグリントの父娘ぬいぐるみに顔を埋めて、父に肩車された少女が涙する。
レースまではとても楽しかった。
葦毛のお馬さんのショーは面白くて、パドックという広場で歩いてる白馬さんは綺麗で一目見て虜になった。
両親が買ってくれたぬいぐるみはフワフワで可愛くて気に入った。
色々なイベントがあった。
お馬さんに乗せてもらったし、お馬さんに乗った人達の芸が楽しかった。お馬さんにニンジン上げたり出来た。
でも、レースが始まって、白馬さんが苛められた。
周りの大人がすごい顔で怒り続けて、それが怖くて
白馬さんが周りのお馬さんに苛められて、それが悲しくて
とても痛そうで辛そうで苦しそうな白馬さんを見ていられなかった
何時しか買ってもらったぬいぐるみに顔を埋めていた。
周りの大人の怖い声がする。
「少しずつ後ろに下がっていった馬群だが、ジェントルメンから3馬身の位置で下がらなくなったな」
「見上げたもんだ。あの白馬は諦めてない。だが、どうしようもないな」
「サンデーサイレンスみたいに逃げてればな」
「ああ、サンデーサイレンスもこうだった。あいつは逃げ馬だと言われてたけど、違うんだ。逃げるしかなかったんだよサンデーサイレンス。あいつは調教師は兎も角馬主が弱小だからこういう風に包囲されると分かってたんだ」
「で、無理がたたってクラシックの翌年に故障だ。クソがよっ」
「本当は日本の強い産駒みたいに瞬発力で勝負したかったはずだ」
「ああ、前飲んだ時に騎手が泣いてたよ。あいつは本来差し馬だって。イージーゴアと互角? ふざけるな。何時だってサンデーサイレンスはハンデ背負ってたんだ」
「イージーゴア様はご名門の良血様の出だからな。何時だって有利だった。クソがよ」
「名門とか金持ちって奴はいつもこうだ。こうやって、弱小のエースを潰していくんだ」
「今回は日本の馬だからな。極東の馬なんて潰しても構わない。はっ。アメリカ競馬だな」
「フェアじゃない。金持ち絶対有利。アメリカンドリームが無い。何時ものアメリカ競馬だ」
「だから、アメリカ競馬がつまんなくなったんだよ」
「幾ら何でもやりすぎだ。今回は処分されるだろうけどな」
「あの白馬のガッツだよ。直ぐに折れると思ったのに折れなかった。だから、どいつもこいつもやりすぎてる。まともにレースしてんのはフリーハウスくらいだ。包囲するだけで身体一度もぶつけてない──そういう意味ではジェントルメンもか」
「レースとしてはクソの極みになっちまったな」
「久しぶりに客が来てくれたのに、たまんねーよこれじゃあ。名門と金持ちか他の陣営に賄賂送った奴しか勝たせない何時ものアメリカ競馬じゃねーか──見たくねえっ」
「アルゼンチンの金になびきやがって、ああ、見たくねえよこんなレース」
「帰るか」
「だな」
そう言って踵を返していく人たちがちらほら出て来た。
「──私たちも帰りましょうか」
「そうだな。子供が見ちゃいけないよ。こんなの」
両親も顔をしかめて踵を返そうとする。
ぎゅっと、顔を埋めたぬいぐるみをもう一度抱きしめる。
怖かった。
周りの大人は皆怒ってる。
ずっと顔を埋めていたかった。
でも、少女は見た。少女は知った。
あまりにも美しい白馬を。
だから、もう一度。
怖いけどもう一度見たかった。
さようならと言いたかった。
だから
バイバイ。というために顔を上げて
「あ──」
白馬の満面の笑みを見た。
サンデーサイレンス関連は西海岸の人達ということを割引いてください。私はイージーゴアと互角だったと思っています。