黄金世代の白雪姫   作:サリエリキキ

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 輝きさん、ニキパイセンさん、B.I.Gさん、タンツーさん、ツンツルテンさん、レギオさん、さらやさん評価付けありがとうございます。頑張ります。
 感想、ここすきなど皆さんありがとうございます。頑張ります。

 あまりに長くなりすぎたので、ここで投稿させてください。


ホワイトグリント産駒列伝~トウカイステージ~②

 明けて2008年。

 北野牧場での放牧を終えたトウカイステージはそのままドバイの地へと渡った。

「挑戦ではなく、血脈に流れる使命だと思っている」夢とロマンに焼け切っている内町オーナーの言葉通りに秋の狙いを凱旋門賞に定めた陣営は、海外遠征の輸送に耐えられるかをテストするためにトウカイステージを渡らせたのだ。

 そこでトウカイステージは体調を崩してしまう。

 彼は、遠いドバイの地への適性が薄かったのだ。

 母のように牧場で仲が良かった祖父オグリキャップに来てもらうか。を本気で検討していた陣営だが、本番二週間前に愛馬を心配してドバイへ向かった内町オーナーが許可を得て持って行った日本のリンゴによって息を吹き返す。

 体重13kg減。「可哀そうなくらいやつれていたあの子がね。私の手からリンゴをしゃりしゃり食べると、目が輝きを取り戻してくれたんです」

 内町オーナーが涙するほど体調が悪かったトウカイステージは、内町オーナーこと大好きなリンゴのおじさんのお陰で急速に体調を回復させ、遠い異国の地に適応していった。

 

『サンクラシークが迫る! しかしトウカイステージ譲らない! 譲らずに突き進む! 譲らない! 譲らない! 突き放した! 

 トウカイステージだ! ドバイの地で幻の舞台が打ち立てられました! トウカイステージ!』

 

 父にフジキセキを持つ南アフリカの雄サンクラシークと、競り合って押し潰してのドバイシーマクラシックレコード勝利。竹優を鞍上にしたウオッカがドバイデューティーフリーを勝利すると同じく日本馬がドバイを制した。

 帰国後、陣営は今までの日本馬による海外遠征の歴史に鑑み欧州への長期遠征を決定。

 6月6日に行われるコロネーションカップを初戦に定めて日本を飛び立った。

 無論、大量の日本産のリンゴを定期的に輸送する手はずと出走2週間前には内町オーナーから手ずからリンゴを与えられるようにした。

 お陰でトウカイステージは、1ヶ月ほどで完璧に欧州に適応。万全の調子でレースに挑む。

 

 

 

 

 

 エプソム競馬場。

 350年近い歴史を持つダービー・オークスの始まりの記録を持つ歴史ある競馬場である。

 向正面のスタート地点から緩やかに右カーブして1000m余り坂を上り、コースの最高地点を迎える。最初のコーナーから1400mの引き込み線、さらに1200mの引き込み線と相次いで合流する付近は平坦。その後、勝負所の最終コーナーの坂を下りながら直線に入ると、最後に残り200mから急な上り坂が待ち構える。

 上って下って最後に上って。スタートからゴールまで約40mもの勾配。日本最大の勾配が中山の5.3mであることを思えば絶句するしかない。

 深い自然芝も合わせて世界一酷なコースと評価されている。 

 そんなあまりに酷なコースに勝つには、その馬にスピードではなくパワーとスタミナと折れない強靭な精神力を要求させる。

 

 コロネーションカップは1902年に創設された。

 BHBサマー三冠の一冠目となっているほどのレースである。

 競走名の意味は戴冠。1902年にエドワード7世の即位を記念して創設された歴史と名誉ある12ハロン(2400m)レース。

 そこに初めて東洋からの馬が挑戦する。

 

 トウカイステージは3番人気。この人気は明らかに高い物だった。無敗の三冠馬であることと、欧州でも知られていたシンボリルドルフの系譜にして『あのホワイトグリント』の息子。

 それらの評価がトウカイステージの名を高めていた。

 尤も、最近高速馬場が著しく進みスピードと瞬発力が第一に求められている日本競馬。

 それに比べて、パワーとスタミナが第一に求められる欧州競馬。

 その欧州競馬でさえ「酷すぎるからここで競馬するのやめないか?」「いや、300年以上の伝統があるからなここでやる。本当に酷だけど」とドン引きしているほど酷なエプソム。

 好走すれば上々だと誰もが思っていた。

 

『ソルジャーオブフォーチュンが抜け出しにかかる! 抜け出すところに! トウカイステージが併せてくる! 東洋の挑戦者が併せてくる! 

 競り合う! 競り合う! ソルジャーオブフォーチュンどうした! どうした! 抜け出せないのか! トウカイステージを抜け出せないのか! 

 ユームザインが猛追してきた! ユームザイン猛追! 

 ソルジャーオブフォーチュン抜け出そうとするが! 逆に押し潰された! 

 上り坂で抜け出したのはトウカイステージ! トウカイステージだ! 

 トウカイステージ! 東洋の挑戦者が! アイリッシュダービー馬ソルジャーオブフォーチュンと凱旋門賞2着馬ユームザインをねじ伏せました!』

 

 まるで姉ホワイトスノーを思い出させる自ら併せての押し潰しての2馬身半差。

 パワーとスタミナに加えて強靭な精神力を求められるエプソム競馬場に相応しい能力に加えて優れた勝負根性を示した勝利で、エプソム競馬場に初めて日本の旗を打ち立てた。

「勝った馬が強かった。ただそれだけだ」ソルジャーオブフォーチュンを管理する名門オブライアン調教師すら認めるほどの強さを見せて、皇帝から願い続けた欧州G1制覇を果たした。

 

 

 

 

 

 ……………………最強! トウカイステージスレより抜粋

 

 553:そして幻の舞台へ連盟

「ルドルフが引退して20年も経ちました。でも、ようやくルドルフに言ってやれる。お前の血は海外でも通じたって……そうだ。万全ならルドルフは海外で勝てたんだ。勝てたんだ。何の問題もなく、絶対に……………………

(意見を求められる)本当に偉大な蹄跡です。トウカイステージは偉大な馬です。しかし、エプソム競馬場であれほど馬に負担をかけるレース展開はいただけませんね。万一のことがあるかもしれません。併せずに四角先頭を貫くべきだったと思います」byルドルフおじさん

 

 554:そして幻の舞台へ連盟

 あんた有馬記念の時併せろっていってただろwww

 

 556:そして幻の舞台へ連盟

 あっさりと前言をひっくりかえすんだからもうwww

 

 558:そして幻の舞台へ連盟

 突っ込まれるとレース展開で騎乗を変えるのは騎手として当然のことです。ってしれっとしやがってwww

 

 561:そして幻の舞台へ連盟

「絶対に」までの号泣までは良かったのに。直ぐこうなるんだからwww

 

 564:そして幻の舞台へ連盟

 号泣までは完璧に脳焼けた人だったのに。意見を求められたら嫉妬を露にするんだからwww

 

 566:そして幻の舞台へ連盟

 解説者として呼ばれて、レース中の解説は完璧だったのに。流石は丘部と言いたい程だったのに。最後の最後でwww

 

 567:そして幻の舞台へ連盟

 後輩の柴野騎手がイギリスダービーと同じコースのエプソムコロネーションをルドルフの系譜で勝っちゃったからって本当にさあwww

 

 569:そして幻の舞台へ連盟

 最早笑うしかねえこの嫉妬っぷりwww

 

 571:そして幻の舞台へ連盟

 逆に可愛いよwww

 

 573:そして幻の舞台へ連盟

 そしてトウカイステージは何時も通りに勝つと真っ先に内町オーナーに近づいて擦り寄る。

 

 574:そして幻の舞台へ連盟

 内町オーナーことリンゴのおじさんがトウカイステージは大好きだからな。

 

 575:そして幻の舞台へ連盟

 オーナーを周りの皆が認める偉い人って敬意を表す馬は多いけど、此処まで懐く馬は珍しい。

 

 576:そして幻の舞台へ連盟

 内町オーナーご夫婦がニコニコでペロペロ舐められてる姿が尊い。

 

 578:そして幻の舞台へ連盟

 ホワイトグリントの系譜はどうしてこう周りの人間大好きな奴ばかりなんだ。

 

 579:そして幻の舞台へ連盟

 気性が良い馬ばかりだからな。

 

 581:そして幻の舞台へ連盟

 内町オーナーを焼き尽くすわけだよ。

 

 582:そして幻の舞台へ連盟

 何を言ってるんだ。オーナーだけじゃない騎手も調教師も厩務員も焼き尽くしてる。

 ウオダスが絡まなければ本当に手がかからないし、絡んでも可愛いと。

 

 584:そして幻の舞台へ連盟

 自分を乗せたまま種付けしようとした愛馬にこの評価。柴野騎手はもう戻れないな。

 

 585:そして幻の舞台へ連盟

 ホワイトグリントの系譜は主戦を戻らなくさせるんだ。どいつもこいつも。

 ……………………

 

 

 

 

 

 ルドルフからの宿命を果たしたトウカイステージ。

 次はBHBサマー三冠の二冠目であるエクリプスステークスを狙うという話もあったが、エプソムであれだけの激闘を繰り広げた疲労が残っていたので断念した。

 ホワイトグリント産駒らしく強靭な内臓と頑丈な身体を持っていたトウカイステージなら行けるのではないかという意見もあったが、父がトウカイテイオーのため無理したくないという内町オーナーと安野調教師の決意を翻すには至らなかった。

 かくて、トウカイステージは現地の牧場で休みを取り8月28日に行われるインターナショナルステークスへ向かうこととなった。

 

 

 

 

 

 ヨーク競馬場。

 1731年から270年を超える歴史ある競馬場である。

 向正面からのスタート。その直後に緩やかではあるがコーナーを左に曲がり、550メートルほどまっすぐ走った後、今度は大きくコーナーを左に回って、900メートルの直線に向いてゴールというのが大まかな流れになる。コースの起伏は小さくそのため公平なレースができて、イギリスではしばしば「最高の競馬場」と賞賛されている。

 深い天然芝こそあるが、本当にイギリスの競馬場かと疑いたくなるほど走りやすい。

 逆に言えば、真に強い馬が勝つ競馬場。そう断言していい。

 インターナショナルステークスは、1972年創設のイギリスにしては比較的新しいレース。

 高速化していく欧州競馬に合わせた10ハロン、約2000mの中距離レースだ。

 

 今年のイギリスダービー馬であるニューアプローチも顔を出すほどの豪華メンバーが揃っていたが、注目されていたのは一頭の馬だった。

 デュークオブマーマレード。ソルジャーオブフォーチュンと同じく名門オブライアン調教師が管理する馬である。

 昨年までは善戦マンだったこの馬は、今年に入り、ガネー賞、タタソールズ金杯、プリンスオブウェールズS、キングジョージⅥ&QESとG1四連勝。

 紛れもなく当時のイギリス最強古馬だった。

 

「今度は私の馬が勝つ」オブライアン調教師がそう断言するほどの馬。

「いや、私のトウカイステージが勝ちます。本場イギリスのG1を2つも頂けるとは有り難い事です」思いっきり(素で)ヒールに徹する安野調教師。

 調教師二人が睨み合う中、レースが始まった。

 直線を4角先頭で突き進み、荒れの無い最良のコースを走るトウカイステージ。

 それを追い抜かんとするデュークオブマーマレードが、同じく最良のコースを走るために馬体を併せる。

 

『残り2ハロンでデュークオブマーマレードがトウカイステージを捉えた! そのまま抜かし、いや抜かせない! 馬体を併せた態勢で抜かせないっ! 

 二頭並んで駆け抜ける! 他の馬は来ない! 

 デュークオブマーマレード! 抜かせ! 抜かしてくれ! 

 並んだまま叩き合う! 

 デュークオブマーマレードの方が脚色良かったじゃないかっ! なんでっ抜かせない! 抜かしてくれ! 

 デュークオブマーマレード頑張れ! 負けるな! 頑張れ! デュークオブマーマレード負けないでくれ! 

 頑張れ! 頑張、ああっ、そんな、嘘だっ──磨り潰されたっ! 抜けられたっ! 

 怪物だ! あれは怪物だ! 

 極東の怪物! トウカイステージ!』

 

 あちらの実況が、現地の空気を教えてくれるほどトウカイステージは強かった。

 直線で馬体が併せられると、勝負根性勝負に持ち込んで磨り潰して抜け出し2馬身差。

 姉ホワイトスノーの笑みが見えるほど叩き潰した。

「強い。ただ強い」名門オブライアン調教師がそう言って絶句したほど強かった。

 

 

 

 …………2022年某騎手雑談会動画コメントより

 

「何であんな姉とそっくりな戦術するかなあ。日本で見ててトウカイステージに勝つ見込みが無くなったって絶望したよ」

「絶望ですか」

「ああ、併せたら何とかなるかもって儚い希望が儚く散ったからな。

 4角先頭で突き放しが基本だったから、ひょっとしたら併せたらって皆思ってた所にあの勝負根性だろ。どうしろって話だよ。

 勝てないよ。本当に勝てない。あっちのほうが操縦性良くて、騎手が柴野さんだからな。何時もあっちに主導権があるんだ。

 ウオッカとダイワスカーレット以外の馬に出来ることは、突き放されて負けるか競り合って磨り潰されて負けるかのどっちかしか無かった。

 ……姉のホワイトスノーが引退してホッとしてた安心を返してほしかったよ。姉ほどエグくないけどさ。何で、あんな弟が出てくんの?」

「そんなにだったんですか」

「4角先頭で纏めて押し切れる末脚だけでもどうしようもないのに。あの勝負根性だからね。先行して逃げ切ろうとしても、そのまま抜かされるか。追いつかれて競り合ってから潰されるのが目に見えた……

 何度もすり潰されたからな。本当に容赦なく潰された。ホワイトスノーが併せて来た時に、来ないでくれっ!? って何度も悲鳴上げたよ」

「デュークオブマーマレードの騎手も抜けられた時に悲鳴上げてましたね」

「俺、あの騎手の気持ち痛いほどわかるよ。俺もやられたからさ。

 末脚のある馬に先行されてインコースの荒れてない良い道通られてる時に、少しだけ末脚が勝る馬に乗っていたら、川他はどうする?」

「そりゃ良い道通って併せて交わしに行きますよ。荒れてる道通ったら負けるし、他の荒れてない道探して向かうロスしても負けますから」

「だよな……だから、突っ込むしかないんだよ。エグい勝負根性持った馬に併せに。突っ込むしか。

 何度も行ったよ。行かざるを得ないからさ。

 ……笑顔なんだ」

「笑顔?」

「竹さんが」

「……はあ?」

「竹さんがさ。『いらっしゃい。待ってたよ』って物凄いサディスティックな満面の笑顔浮かべて待ってんだよ」

「うわあ」

「あの人が向こうからも併せて来て、進路妨害にならない程度に進路抑えられたらもう躱せないよ。競り合うしかないんだ。そしたら、ガンガン圧かけてくれんだよホワイトスノー」

「あの綺麗な馬がですか」

「綺麗な馬だから怖いんだよ。あの雄大な馬体に併せられて目合わせられて睨みつけられながら同じ末脚の速さで抑え込まれてみろよ。こっちの馬が怯えきっちゃって耳ペタリって倒すんだぞ。

 この馬には敵わねえって

 ……で、磨り潰された」

「うわぁ」

「離れて逃げようにも、そんな脚を使っちゃったら、ホワイトスノーに負けるからどうしようもなかった。

 それでも、逃げて荒れた道行こうとしたんだ。一度だけな。

 そしたら、あっちのほうが操縦性良いし鞍上竹さんだから、逃げられなかったよ。潰されるの待つだけだった。そん時も悲鳴上げたな俺」

「……でも、ホワイトスノーに勝ったことあるじゃないですか」

「そうだな。勝ったな……なんで勝てたんだろうね俺……いや、あいつ、ホワイトスノーの奴、勝った後は俺の顔覚えてたよ。思いっきり睨みつけてきたもの。だから、それから、真っ先に潰しにきてたよ。なあそうだろ」

「うーん、どうですかね」

 

 ・川他、突っ込んでやるんだ。今はホワイトスノーじゃなく、トウカイステージの話だって

 

 ・無理言うなよ。福長完全にトラウマ発症してるじゃないか。

 今やってるように相槌打ちながら酒飲ませるしかないよ。

 

 ・まさかここまで福長のトラウマが酷かったなんて。そんな何度も潰されてないのに

 

 ・ごめん。もっと軽いものだと思ってた。

 

 ・俺も、公開動画の忘年会で、こんな……

 

 ・もう、ネタに出来ねぇ

 

 ・クラシック期は福長が強い馬に乗ってるから潰せば勝てるだったものな。竹って本当。

 

 ・その戦術に完璧に応えたホワイトスノーも本当。

 

 ・一部界隈で競馬界の女王様と呼ばれるだけあるわ。

 

 ・ある程度でもそんな戦術が出来たトウカイステージ凄かったよ

 

 ・デュークオブマーマレードこれ以降勝てないどころか掲示板にも乗れなかったからな。

 マジで潰された。

 

 ・このレース以降、徹底してトウカイステージとの勝負を避けた福長を悪く言うんじゃなかった

 

 ・だな

 ………………

 

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