感想、ここすきなど皆さんありがとうございます。頑張ります。
コロナを本当に舐めてました。味覚も嗅覚も無く咳が止まらない。
『あと200! タイキシャトル! タイキシャトルここで先頭にかわった!
タイキ先頭にかわった! 2番手はキョウエイマーチ!
いや、外から来た! グラスワンダーが来た!
黄金の末脚を発揮してグラスワンダーがキョウエイマーチをかわした!
かわした! かわした! かわして、前へと! タイキシャトルへ迫る!
タイキシャトル粘る! タイキ粘る! しかし、かわしてグラスワンダーだっ!
グラスワンダー先頭! グラスワンダー先頭だっ!
タイキシャトルが盛り返そうとするがグラスワンダーだっ!
黄金世代グラスワンダーが最強マイラータイキシャトルを破りました!
タイムはレコード! コースレコードによる勝ちです!
強い!
世界を制したタイキシャトルを破りました!
強い!
黄金世代は強い!
本当に強い!
黄金世代グラスワンダーは強いとしか言いようがない!
マルゼンスキーの再来! グラスワンダー!!』
牛から馬に戻ったグラスワンダーは強かったとしか言いようがなかった。
「タイキシャトルに海外遠征から戻ったマイナスがあったと思えたら良い。が違う。ただグラスワンダーが強かった。グラスワンダーが強すぎた」丘部騎手が断言したほどに強かった。
そして、半馬身差敗北を喫したタイキシャトルが、引退予定を撤回して「距離の適性が無くとも何としても有馬記念でホワイトグリントに挑むべきだ!? このままだとタイキシャトルは永遠に認められない!?」ゴタゴタしつつもスプリンターズステークスをラストランに決めた翌週。
1998/11/29
ジャパンカップの日が来た
ジャパンカップ。
「世界に通用する強い馬づくり」の提唱により、1981年に日本初の国際招待競走として作られたレースである。
アメリカはワシントン国際。ヨーロッパはキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスと凱旋門賞。
これらのレースに遠征して大敗した日本の馬主たちや生産者や調教師や騎手はJRAと共に討議し、馬の血統、馬の管理、飼料、調教施設、騎乗技術、調教技術。端的に日本競馬は全てにおいて30年は遅れていると結論した。
だから、少しでも追いつくために海外の馬に来てもらうことにしたから作ったのだ!
──と格好いいこと言えれば良いが、勿論そんな事はない。
社大やメジロやシンボリなどの馬主の一部や調教師・騎手の一部を除いて
「音に弱い馬をロクに対策せず貨物同然に運ぶ飛行機輸送と馬場適性の違いだよ。そんなに劣ってる訳ないじゃないか。同じ馬なんだし」
というのが主流の考えだった。
なお、同時に「外国産馬は強いからクラシックと天皇賞でたら駄目だよ。マルゼンスキーみたいな持込馬も強いから同じようにしてね。あ、種牡馬にはしてね。父ニジンスキー母父バックパサーの超良血。日本競馬そのものを上げてくれるほどの血だよマルゼンスキーは」と主流派は言っている。
同じ馬だよ。とか言っておいて、外国産馬や持込馬強いから駄目だよ。と矛盾した事言って制限していたのだ。
だって、その方が楽に稼げるから。
つまりは、利権を守るためにその業界の権威や権力を集中させていたのだ。
オワコンに向かうコンテンツにおける第2歩目の考えである。
この有様に、海外との差を知る競馬コンテンツ維持発展ガンギマリ組織JRAが、一部の競馬関係者の賛同を受けて
「じゃあ海外馬が出れる超高額レース用意してやる! 遠征の不利を向こうが味わうんだ! こっちガン有利だ! 超高額レースだからな! お前らも最強馬を出せやぁ!
それで勝負してみろやぁ!!??
そして、現実を見ろやああああぁぁ!!!??? 」
怒り狂ったため出来たのがジャパンカップである。
そして、1981年、第一回──
よし、招待馬には調教制限しよう。これで日本の馬場に適応しないまま走ることになる。
よし、帯同馬は条件沢山つけて越させないようにしよう。これで寂しさにより馬は不調になる。
よし、水と食事は食べ慣れない日本の物だけにしよう。これで馬は不調どころか体調を崩す。
などなど大抵のホームグラウンド有利しぐさをした日本競馬界は勝利を確信した。
招待馬には大した馬は居ない。
唯一のG1馬が牝馬なうえ、年取って衰えているほどだ。他の馬もハッキリ言ってアメリカやカナダの今年勝ててないような二流馬三流馬だ。
インドのシンザンがいるが、明らかに馬場が合ってない上、蹄鉄さえしないインドの馬だ。初めての蹄鉄で走る以前の問題。
しかも、招待馬の殆どが今年10走以上走り疲労困憊な上で海外遠征などという、馬に辛いことしかしていない。だから、ただでさえマトモに走れるかすら怪しかった。
その上で、出来る限り弱めた甲斐があった。
見てみろ招待馬たちを、馬体に艶無く絶不調じゃないか。脱水症状さえおこしている馬も居る。
アレではマトモに走ることは出来ない。
こっちには万全な状態の、日本最強のホウヨウボーイやそれに次ぐモンテプリンスも居るのに。
勝ったな!
11月末のこんな時期に天皇賞以上の賞金レース!
ありがとうJRA!
美味しすぎるぜ!
これから俺達の財布はもっと膨らむんだ!
──日本競馬主流派は勝利を確信して絶頂の心持だった
で、レースが始まり
日本はボッコボコにされた。
笑うほどボッコボコにされた。
勝った馬はアメリカ馬メアジードーツ。遠征の不利で脱水症状さえ起こしていた馬である。
そんな馬が日本レコードで勝利した。
いや、1着から4着まで入った海外馬たちみんなが日本レコードだった。
そのうちに招待したアメリカ馬は3頭全て入っていた。
日本一流馬は、日本の技術ではマトモに走れないほどの体調不良にした海外馬、特にアメリカ馬の二流馬三流馬以下でしかない。
そういうことだった。
それ以上に日本のホースマンを打ちのめしたのは、勝ったメアジードーツほどの体調不良の馬は当時の日本競馬の技術ではマトモに走らせられなかったということだった。
日本競馬ではマトモに走らせる事が出来ない体調不良の馬を、アメリカ競馬の技術はマトモに走らせて勝たせた。
そんなアメリカ競馬と比べて、馬育成技術、騎乗技術、調教技術の遅れは致命的だった。
日本競馬の技術はそれほどに遅れていた。
馬質は勿論だが、人間の扱う技術こそ、日本競馬は致命的に遅れていたのだ。
日本競馬は全てにおいて遅れている後進国。日本競馬界の誰の目にもその現実が突きつけられた。
馬主も生産者も調教師も騎手も調教助手も厩務員も、ただ戦慄に青褪め震えることしか出来なかった。
JRAの狙い通りに。
いや、JRAでさえ「こんなに差があるのか」日本競馬の体たらくに絶望して崩れ落ちたほどだった。
海外馬陣営のコメントも容赦なかった。
「5着に入った日本の騎手の騎乗技術は素晴らしい。あれほど悪い馬質(※地方馬で日本最先着してのけた大里マジック)であれだけのレースをした彼の騎乗技術はアメリカでも通じる」
賞賛は大里騎手個人の腕に対するものだけだった。
「「「それ以外の全てにおいて日本は競馬後進国だ。アメリカでは稼げなくなってたウチの馬に大金ありがとう。後進国は後進国らしく、このままずっと美味しい稼ぎ場になってね」」」
それ以外は嘲笑一色だった。
で、「ふざけんなぁ!? 見てろよアメリカ!? 日本競馬舐めんじゃねーぞ!? 何時か俺達日本競馬で学んで産んで育てた馬がアメリカのレースを制してやるよぉぉぉ!?
お前んとこのクラシックや高額レースに日本の旗立ててやるっ!? 」
攘夷精神が爆発した。
種牡馬と牝馬をもっと輸入しろ! まずは血だ!
欧州よりもアメリカだ! アメリカで買うぞ! 古い血は捨てろ! 繁殖牝馬を入れ替えるぞ!
種馬もだ! 内国産種牡馬は当てにするな海外だ! 海外の血こそが正義だ! ……クソッタレっ!? マル父の馬や日本古来の血でアメリカのレースを制覇出来たらなっ!?
いや、悔しいが夢だ。夢を見ずに輸入種牡馬を頼ろう、内国産種牡馬や今までの繁殖牝馬には泣いてもらう。両親が海外馬こそがこれからの日本近代競馬だ。
血統だけではない、抵抗勢力が消えてスムーズとなった制度面や教育面の改革も進んだ。
1984年にはG1G2G3を定めるグレード制も導入。
マルゼンスキーが泣いた持込馬制限も1983年には無くした。
パートⅡの競馬二流国家の評価も進んで受け入れた。その方が海外の血を取り入れやすいから。
マル外制限などの日本馬産を守る制度は、箱庭で稼ぐ為ではなく追いつくための臥薪嘗胆として使われるようになった。
1982年に開かれようとした競馬学校にグダグダ言って、騎手厩務員の一括教育を辞めさせようという人々も消えた。
いや、騎手も調教師も厩務員も慌てて海外から馬の育成騎乗ノウハウを入手して勉強し始めた。
「馬に学は要らないだろ?」と今まで訝しげに見られていた大学出の調教師たちも脚光を浴びた。彼らが言って行っていることが海外の調教師たちそのものだから。
海外へ留学する人も増え、その人達やそれまで海外に行っていた人達、「海外かぶれ」と口に出しさえして蔑み羨んでいた人達から必死で学んで翻訳して教え広げた。
そうすることで、留学をしてなくても日本に居たままで、海外の技術を学べるようにした。
いつか、日本だけで学んだ人々が海外G1を制覇する。そんな夢のために。
日本競馬は遅れている!
誰もが明らかになった容赦ない現実を見て学び始めた。
2025年今日の我々が知る日本競馬とは、日本近代競馬とは、このジャパンカップによる敗北によって作られたといっても過言ではない。
まあ、いつも通り外圧で変わる日本である。
そういう意味でジャパンカップとは、日本競馬界に現実を教えるべくJRAが用意した黒船と呼ぶべきかも知れない。
……1998年産まれのマル外葦毛馬にクロフネなんて名付ける馬主さんは心臓に毛が生えてるきっと。
招待馬に対するホームグラウンド有利しぐさをしても、それ以降も日本馬は勝てなかった。
1997年までの17回で勝てたのは5頭、カツラギエース、シンボリルドルフ、トウカイテイオー、レガシーワールド、マーベラスクラウンだけである。
それ以外はみんな負けた。
タマモクロスもオグリキャップもメジロマックイーンもナリタブライアンも。ヒシアマゾンも。エアグルーヴも。バブルガムフェローも。敗れた。
数々の名馬が敗れるたびに、日本競馬は海外との差に叩きのめされた。
それでも日本競馬は諦めなかった。
賞金額が上がったから、今来ているのは海外でも一流馬たちだ。
ホームグラウンドの有利があるとはいえ、そんな一流馬と渡り合えるくらいに日本競馬は進んだんだ。
俺達は確実に追いついてきたんだ。
だから、今に見ていろ。
いつか、海外に行って海外のレースを勝つんだ。
何時か、日本馬は海外のG1を勝つんだ。
ジャパンカップに勝つ馬が何時か海外のG1を勝ってくれるんだ。
そのためのジャパンカップなんだ。
ジャパンカップはただのG1じゃない。海外への登竜門なんだ。
と攘夷に燃える日本競馬界は考えていた。
その思いと熱狂が一番込められたのがシンボリルドルフだった。
無敗三冠馬にして七冠馬なら、きっと! きっと! 夢を果たしてくれる!
結果は、7頭立ての6着。ブービー。故障。
日本最強馬は、掲示板にすら載れなかった。
日本競馬界の思いと熱狂の結果は無残に終わった。
海外遠征は欧州一本にと主張する調教師と、先にアメリカに遠征へ行ってから欧州と考える馬主が仲違いしてしまい無残な結果に終わったシンボリルドルフ。
だが、ルドルフの馬主が先ずはアメリカにと遠征を強行してしまった思いは当時のホースマンたちは理解していた。
みんな同じ思いだからだ。
だから、シンボリルドルフの敗北でも絶望しなかった。
いつか
いつの日か
自分たち日本競馬は
アメリカに日本の旗を立てる!
攘夷精神は一切揺るがなかった。
そんな所に
稀代のアイドルホース・内国産馬オグリキャップを父として産まれたマル父の白馬、日本近代競馬の結晶ホワイトグリントは、クラシック期の夏にアメリカG1を2勝した。
日本競馬界のみんなが諦めていた留学もしていない日本だけで学んだ人達が、マル父の馬で、アメリカG1を制覇した。
星旗の息子クモハタから60年、綿々と続いた日本の血脈がアメリカG1を制したのだ。
日本近代競馬の結晶が日本古来の血で産まれる夢を果たしてくれたのだ。
競馬界みんなが応援して送り出したアイドルホースが願いを叶えてくれたのだ。
日本近代競馬の結晶の白馬が17年の時を経て完全な攘夷を果たしてくれたのだっ!
アメリカのクラシックや高額レースにマル父が日本の旗を立てたっ!!
よっしゃああああっっ!! アメリカに追いついたぁぁっっ!!!
完全攘夷を果たした熱気で競馬界は当然歓喜に爆発した。
歓喜に、飲み歌い騒ぎ踊った。
誰もが喜びに泣きながら笑った。
JRAも馬主も生産者も調教師も騎手も歓喜に咆哮した。
マル外重賞馬が追加登録料払えばクラシックと天皇賞に出れる[黄金世代ルール]も「良いよ良いよ追い付いたもの」と鷹揚に賛成した。
……そして、マル外馬シーキングザパールとタイキシャトルの欧州G1制覇の偉業は、日本のホースマンにすら「まあ、マル外馬だからね。高い金出して輸入したもの。そのくらい出来ないと金の無駄だよ。でも凄いよ。おめでとう。ホワイトグリントと戦うの? え? 戦わない? そうか。逃げるんだな。──あぁ分かるよ。責めたりしない。サンデーたち輸入種牡馬の仔ではない種牡馬の仔。一発20万円のマル父種牡馬であるオグリキャップの仔に負けたらね。うん。共同通信杯のエルコンドルパサーみたいに互角に戦い雄々しく敗れるならまだしも……うん、分かるわかる。マル外は高いからね。辛いよね(意訳」と、偉業と判定されなくなってしまった。
強力な光により生まれた影は兎も角、ホワイトグリントのアメリカ遠征成功以来、ジャパンカップの立ち位置も変わった。
登竜門ではなく、日本の誇る日本初の国際GIにして八大競走と同格の権威あるレースへと変わった。
そのレースにアメリカで勝利し牝馬戦線を完全制覇した七冠馬ホワイトグリントがでる。
その情報を聞いた日本競馬界は思った。
日本ダービーと同じコースで海外を制したマル父馬と戦える。自分の愛馬は果たしてどのくらいの強さなのだろう。
牝馬は尽くホワイトグリントに敗れたが、牡馬は未だだ。ホワイトグリントと戦えるのならば、自分の馬も海外に通じるのではないだろうか。
海外へ行くためにホワイトグリントと、日本近代競馬の結晶と戦おう!
今日のジャパンカップは攘夷を果たした賢者タイムも過ぎ去り新たな目標と定めた日本競馬界の関係者が集まっていた。
2400は私たちメジロには短い。そこで日本近代競馬の結晶であるホワイトグリントに勝てないまでも、ある程度戦えたならば私たちの馬は海外に通じるのです!
予定を変更してメジロブライトを出しましょう。
好走したならば、海外へ、欧州へ行きましょう!
メジロブライトは長距離馬。いいえ、長距離しか走れない馬。長距離レースは欧州の方が充実しています。
こちらを見下すことしかしない、あのクソッタレなパート1様ヅラしてる連中に目にもの見せてやるのよ!?
おじいさんの夢を見ましょう!?
……おそらく、これが、おじいさんへ、お土産を作れる最後の機会になるでしょう、からね。
西森牧場30年の結晶セイウンスカイが居るのに、疲労でジャパンカップに出られないなんて!
切り替えよう。有馬記念だ。有馬記念でホワイトグリントを倒す!
海外……か。見てみたい。パーキンソン病で歩くのが困難でも、西森の馬が海外で走る姿を見たい。
西森牧場30年、いや、私の30年が、いいや、私の半生が通じるのかを知りたい。
この機会に社大グループの重賞馬が引退間際のエアグルーヴしか居ないとはどうなってるんだ!? エアグルーヴはもうエリザベス女王杯でホワイトグリントに負けてケリがついたじゃないかっ!?
こうなったら、裏街道予定のステイゴールドを、アルゼンチン共和国杯を制したばかりの重賞馬を出すか……放牧したばかりだから無理だな。
クソッ戦略に失敗したぁぁぁっっっ!!??
まあ良い切り替えるぞ。ホワイトグリント産駒をセリ市に出させるようにするんだ!
あの人気馬産駒を、陛下に献上する馬以外全部抱え込む気の空気読めない北野オーナーを説得するんだ!
ルドルフを超える八冠なんてさせるか! エアグルーヴで止めてみせる!
何? どうしたの? 競馬界出身者ではない沙藤にそんなことはさせない? だから、包囲網?
やめときなさい。白馬への包囲網は目立つし、ホワイトグリントは包囲網が意味の無い馬だ。パシフィックステークスでは包囲した馬の方が消耗した。
こっちが圧倒的な悪者になるだけで何の意味もない。
マークして消耗させるだけにしときな。
若手の沙藤にこれ以上栄光をやれない? 包囲網? ホワイトグリントに? 丘部さんは?
ふんふん、止めとけって言ってたんだな。
なら、俺もパス。
竹優はパスだって皆に伝えて、ついでに止めといた方が良いよとも伝えといて。
オグリキャップもだけど、アイドルホース相手にはそんなことしない方がみんなの為だと伝えてくれ。
スペシャルウィークと実力でホワイトグリントを獲りに行くよ。
騎手の中で色々とあったが、生産者や馬主たちはホワイトグリントと戦い自分の愛馬の強さを確認すると燃えていた。
自分たちの馬が海外へと向かうために。
海外への試金石。ある意味でこの日はジャパンカップらしいジャパンカップだった。
秋華賞とエリザベス女王杯が入場制限されたため「ようやくアメリカでグリントコール伝説を作ったホワイトグリントが見れるんだ」とファンも押し寄せた。
従四位を貰い、シュウちゃん乗せてハリウッド映画の主役馬になったオグリキャップとの触れ合いイベントも開催されると決まり押し寄せた。
アメリカからも2万人を超えるファンが押し寄せた。
22万5000人。東京競馬場に消防法によって定められている収容人数を超えて押し寄せた。
「オグリキャップ! ホワイトグリント! ばんざい! ばんざーい!! ばんざぁぁぁい!!!」
歓喜と信仰に満ちた万歳三唱をしながらJRAは22万人の入場制限を定め、せっせと臨時会場や通訳や英語看板や案内所などを用意してホテルやバス会社やタクシー会社と契約したりした。
客を逃がす気などJRAにはサラサラ無かった。
かくて、22万人のファンが入場した東京競馬場はかつて無い熱気に満ちていた。
パドックはうっとりしっとりネットリした空気が何時も通りに支配していた。
きれい、びゅーてぃ、すてき、わんだほぅ。
ホワイトグリントの芸術的美しさを堪能する女性ファンたちにより前列を押さえられたパドックは、うっとりしっとりネットリしていた。
家族連れはオグリキャップの触れ合いイベントを堪能していたので、後ろに追い払われた何時もの競馬ファンは肩身が狭い思いをしていたが、まあ良いのだろう。
「どうですか」
そんなパドックで、今朝馬頭観音に祈りを捧げた時に羽音だけでなくコンドルの鳴き声までもが聞こえたために勝利を確信した渡辺オーナーは呟く。
馬主席も悪くはないが、やはりパドックに降りて生で見なければならない。
特に、宿敵ホワイトグリントと愛馬エルコンドルパサーを見るときには絶対に。
「ホワイトグリントはどうですか」
目を白馬と愛馬の二頭にだけ集中させる。
いや、それ以外に目がいっていない。
ギラギラと輝く目はそれだけしか映らない。
愛馬エルコンドルパサーと、春にエルコンドルパサーを破りアメリカに日本の旗を打ち立てた怪物しか映らない。
「残念ですが──絶好調です。エルコンドルパサーと同じく絶好調です」
全く同じ心持ちの三ノ宮調教師は言葉とは裏腹に不敵に笑った。
「ふふ、それでこそです」
中一週のローテーションであっても、オグリキャップに遊んでもらえた宿敵ホワイトグリントが絶好調ということに不敵な笑みを浮かべた
「「それでこそ、勝つ意味がある」」
一致団結している馬主と調教師は不敵に笑う。
互いの細君ですら、呆れて一歩離れたガンギマリたちは不敵に笑う。
勝つんだ。
ホワイトグリントに勝つんだ。
勝って欧州は凱旋門賞を目指すんだ。
そうすればエルコンドルパサーは、タイキシャトル達のような『強いマル外馬』ではなく『ホワイトグリントに勝った馬』として栄誉ある遠征を行える。
ファンにも関係者にも認めさせることが出来る。
明るい未来が拓ける。
そのために勝つんだ。
いや、そうじゃない。
そうじゃない。
敗北の悔しさに落ち込んだエルコンドルパサーの為でもある。
明らかにホワイトグリントに惚れたエルコンドルパサーを種付けさせてやるんだ。
北野オーナーが言った通り、勝てばホワイトグリントのお婿さんになれる。
だから勝つ!
しかし、
「エルコンドルパサーが勝ったらホワイトグリントとエルコンドルパサーの産駒を売ってください! 他の産駒は売ってくれと絶対に絶対に頼みません! どうかエルコンドルパサーとの産駒だけは売ってください! 後生です!! お願いします!!!」
泣き落としなど様々な手を使って頼み込んだのに首を縦に振らない北野オーナー。彼には人の心が無いのだろうか。
自分が同じ立場なら同じ事をする渡辺オーナーは、北野オーナーの譲らなさに悲嘆していた。