感想、ここすきなど皆さんありがとうございます。頑張ります。
『東京競馬、第10レース。芝2400メートルで行われる、G1レース、ジャパンカップ。出走馬は16頭。馬場コンディションは良馬場。規制して22万人という東京競馬場史上最多、いいえ日本競馬史上最多の来場者。それに加えて臨時会場での10万人近い人々が見守る中、国際招待レースを制するのはどの馬か? 八冠馬誕生となるか? それとも他の馬が制するのか? 観客席前からの発走、ゴール板を一度通過してコースを一周します……係員が離れました。さあ、16頭ゲートに収まって』
一瞬の静寂。
レース前の時間が圧縮した静寂。
『スタートしました! サイレントハンターが行く! ほか出遅れもなく綺麗なスタートとなりました!
先頭は好スタートのサイレントハンターが奪い取りました。ぐんぐん加速していきます。
2番手には、エルコンドルパサー! エルコンドルパサーは2番手で進める。続いては、おおっ、メジロブライトです。メジロブライトも前目に進める気か。
続いてはエアグルーヴ、チーフベアハートが続き、スペシャルウィーク、カイタノ、マックスジーン、サンライズフラッグ、ウンガロ、フェイスフルサン、ユーセイトップラン、キングヘイロー、ルソー、ゴーイングスズカ、七冠馬ホワイトグリントが続きます』
【いや、本当に白馬は目立ちますね。際立ちます】
(マズイな)
沙藤哲三は引き攣る思いだった。
(完璧にマークされてる)
日本馬だけではない、海外馬からもホワイトグリントはマークされていた。
もう少し前目で行きたかったが、進路を塞がれ最後方になってしまった。
(どいつもこいつもホワイトグリントを真っ先に潰しに来やがって、グリントが何を
──七冠馬やもんなあ。俺でもそうするわ)
ある種の諦観というか理解を噛み締めた。
そう、ホワイトグリントは七冠馬なのだ。無敗の七冠馬。
ドマゾだが七冠馬なのだ。
欲求不満を抱えたドマゾだが七冠馬。
だから、真っ先に潰しにかかられるのは至極当然だ。
(まあ、このくらいならどうにでもなるわ。進路は幾らでも探せる。操縦性高いしパワーあるからな。何時も通りに、射程圏内の位置を取りながら駆け引きして、鞭だな。思いっきり鞭打ってやろう。で、秀でた末脚で真っ先にゴールしよう)
沙藤哲三の内心の声を他の騎手が聞いたら「「「何でそんなに強いのに乗りやすいんだよその馬!? フザケンナ!! 狡いっ!!!」」」と泣き叫んだだろう。
(そうすることでホワイトグリントを気持ちよくさせるんだ)
続けた沙藤の内心の声が聞こえないのは、誰にとっても良いことだろう。
『第一コーナーを過ぎて、先頭は、ハナを切ったサイレントハンター。3馬身ほど離れてNHK杯馬エルコンドルパサーが続い、いやエルコンドルパサーが早くも上がっていきます。その後ろにはメジロブライト。メジロブライトも上がり始めた。まさかもう仕掛ける気なのか!
第二コーナー手前でエルコンドルパサー先頭に変わります!
第二コーナー手前でエルコンドルパサーが先頭!』
【ホワイトグリントが後ろにつけざるを得なくなったのを見ての位置取りでしょう。本気でホワイトグリントに勝つつもりです】
おおおおっ!?
ホワイトグリントのマークが厳しいと見て取った海老名が選んだのは逃げ。
共同通信杯の時とはもう違う。成長したホワイトグリントの末脚はエルコンドルパサーより上。
だから、射程圏外に付けて逃げ切る。
ホワイトグリントが後方に位置するが故の単純かつ効果的な戦術だった。
『場内がどよめく、先頭のエルコンドルパサーが後続を引き離し始めた!
2コーナーを抜けて間もなく向こう正面直線へ向かう! 1000mを通過しました! 59秒と少し。59秒と少しです! これは速い! これは速いぞ! 今年のダービーが1分と少しだったにしてはちょっと速いだろう海老名とエルコンドルパサー!』
【オークスのホワイトグリントの逃げのタイムに近いですね。ホワイトグリントは最初から逃げての1000m58.8ですから、途中からのエルコンドルパサーの方が馬に辛いことをしてます】
逃げるエルコンドルパサーを追うようにレースが動き出した。
『向こう正面をエルコンドルパサーを先頭に馬群が進みます。
エルコンドルパサーに続いては2馬身差でサイレントハンター、いえ、メジロブライト! メジロブライトが交わした! ステイヤー! メジロブライトが早くも上がる!
続いては、ダービー馬です!
ダービー馬スペシャルウィークが上がってきたぁ!?
早い早い早すぎる勝負するには早すぎる!?
スペシャルウィークから10馬身ほど離れてエアグルーヴ、チーフベアハート、カイタノ、マックスジーン、サンライズフラッグ、ウンガロ、フェイスフルサン、ユーセイトップラン、ルソー、マーベラスタイマー、キングヘイロー、ゴーイングスズカの順、ホワイトグリントは最後方!』
【エルコンドルパサーもメジロブライトもスペシャルウィークも勝ちに行ってますね。ホワイトグリントが厳しいマークにより最後方に置かれている間に出来る限り距離を取る気です】
「向こう正面の坂の前で勝負しかけるなんてな」
「ああ、こういっちゃ何だけど最近じゃなかったよな。レースが直線ヨーイドンになった最近じゃ」
「当たり前だろ。これは俺達の親父たちの時代の、ステイヤー達の時代の走りじゃないか。前に前に行って、最後の直線は残ったスタミナとド根性だよりの」
「ああ、フラフラになりながらゴールする、な」
「日本じゃなく、アメリカでよくやるレースだよな」
「消耗戦、だな」
『ざわざわと。場内が静かにざわめき出しております。競馬実況に携わり30年が過ぎた私には懐かしい光景ですが、見慣れない方が多いでしょう。
懐かしきステイヤーたちの耐え忍ぶ戦いが、21世紀を間際にして行われようとしております。
先頭のエルコンドルパサーが向こう正面の坂に差し掛かりました。続きましては二番手メジロブライトも間もなく坂に
──おっとここで最後方一番人気ホワイトグリントが押し上がろうとして、後方の各馬も上がり始めました。
ホワイトグリントを抜け出させません!
先頭が3コーナーに差し掛かります。ペースが一気に上がってきました!
二番手は変わらずメジロブライト。内のスペシャルウィークはもうこのままメジロブライトとエルコンドルパサーを抜き去ろうという構え。4番手集団先頭エアグルーヴも上がってきたぁ!』
【正攻法ですね丘部騎手は正攻法を選びました】
実況と解説の言葉を聞けば、「衰え始めたエアグルーヴにはそれしか無いんだ」と丘部は苦笑しただろう。
エルコンドルパサー、メジロブライト、スペシャルウィークのような磨り潰しあいが出来る。そんな若さは、エアグルーヴにはもう無かった。
「これは先頭3頭で決まりそうだなあ」
「エアグルーヴやキングヘイローたちは届かないだろうな」
「ちょっと離れすぎてるよ。遠すぎる。3頭がツインターボみたいに逆噴射すれば違うだろうけど、ハイペースなだけだ。逃げ切るだろ」
「だな……ホワイトグリントは無理だろうな」
「悲鳴上げてる新規のファンには悪いけど最後尾だぜ。16頭立ての最後尾。マークされすぎたな」
「七冠馬だものな。後方集団全体が上がってきたとはいえ、先頭のエルコンドルパサーとは20馬身以上……無理だろ」
「不可能だな……馬券、ハズレちまった」
「……オレも」
『さぁ4コーナーの中間、後方集団が一気に加速して先頭を走るエルコンドルパサーたちとの差を詰めてきている! エアグルーヴ、チーフベアハートがゴーイングスズカとキングヘイローを伴って一気に上がってくる!
ホワイトグリントは未だ最後尾!
厳しいか!
抜け出す道はない!
厳しい!
七冠馬は厳しい!』
そんな!?
ホワイトグリントが!?
駄目だ!
マークが厳しすぎた!
エルコンドルパサーまで20馬身はある遠すぎる!
此処から追い付くのは不可能だ!
七冠を超えるのは無理だったのか……
頑張れ! 頑張れっ! 頑張ってぇ!?
悲痛な叫びがざわめきとなり東京競馬場を覆い尽くす。
ホワイトグリントが負ける。
大勢のファンたちが見たくなかった光景が現実のモノとなろうとしていた。
それも、マークによって最後方に追いやられて全力を出せないまま終わる。という誰もが望んでいなかった負け方で。
他の馬に賭けたり応援していた関係者やファンですら嘆いた。
ホワイトグリントはこんなモノじゃないのに。
ホワイトグリントと他の馬が鎬合って負けるならまだ納得できた。
ホワイトグリントは全力を出せずにらしくないレースで負けてしまう。
ホワイトグリントが本来の姿ではないのに勝つ、勝ってしまう。
そんなの嫌だ!?
関係者もファンも納得出来ずに嘆くだけで聞こえなかった。
──射程圏内だ
鞭を振りかざした沙藤哲三の声は誰にも聞こえなかった。
『直線を向いた!
エルコンドルパサー先頭! リード3馬身!
メジロブライトとスペシャルウィークが追い上げてくる!
が!
縮まらない!
エルコンドルパサーとの3馬身が縮まらない!
いや、僅かに! 僅かに開いている! 差が広がっている!
今年のダービー馬とさらに差を広げている!
モノが違う!
これがエルコンドルパサーだっ!
世界へ! 一歩一歩世界へ向けてコンドルが飛翔する!
コンドルが飛翔する!!
後ろの方は伸びが苦しい!!!』
(ここまでやな)
竹優は冷静に見切った。
悔しい限りだが、今現在のスペシャルウィークではエルコンドルパサーに及ばない。
(来年なら話は違うんやけどな)
悔し紛れではない。冷静な見切りとして断言する。
そんなスペシャルウィークにクラシックでは無いのに無理をさせる必要はない。
臼井調教師とも話し合ってオーナーも納得の上で決めたことだ。
今のスペシャルウィークが何処までホワイトグリントとエルコンドルパサーに通じるか。
それを知りたかったから出走した。
結果は、悪くない。エルコンドルパサーには及ばなかった。が、展開に助けられたとはいえスペシャルウィークはホワイトグリントに先着した。
アレだけ後方だ。
府中の長い直線とはいえ、
(2着か3着やな。メジロブライトと此方で2着と3着を分け合う。3番人気としては人気に応えたと言う事や──悔しいけど、本当に悔しいけど、此処までだ……言い訳だがな。スペシャルウィークだぞ。このレベルの馬で勝つ気がないのに出るかよ。エルコンドルパサーに負けた。悔しい限りだが負けたんだ)
追い方を変える。脚を速めるのではなく速度を維持するものへと。限界に近いスペシャルウィークを限界を超えさせない走りに変えた。
メジロブライトは未だ脚を速めるため追っているのが脚音で分かる。だが、エルコンドルパサーには追いつけないだろう。エンジンがかかりきらない。それ程に、メジロブライトはステイヤーだ。
ステイヤーのメジロブライトは追えるが、もうスペシャルウィークは追えない。加速させれば、故障す──
ドドド
(──え)
激しいステッキの音が聞こえる。
そのステッキの音を打ち消す脚音が聞こえる。
振り返る必要がない背中に叩き込まれる音が聞こえる。
大歓声を切り裂く寒気のするようなその音が聞こえる。
一頭の馬が出すには腹に響く、地響きさえ起こしているようかのような馬蹄の音が聞こえる。
その殺気。
「ぁ、ぁぁっ!」
その感覚は知っていた。
「おい」
その脚音を知っていた。
「まさか」
その圧力を知っていた。
「お」
妹のオグリローマンは持てなかった脚。
子のオグリワンたちは誰も持てなかった脚。
頭を低くして重心を下げて沈み込むような走りが出来る脚。
「おぐ……」
余りの加速に腹の底から震わせられた脚。
なのに乗りやすかった脚。
どの馬よりも乗りやすく操縦性が高かった脚。
バランスと速さと力強さを伴った脚。
その脚に勝ちたいと思い工夫を重ね続けるうちに腕が磨かれた。
そして、乗って。
虜になった。
だから、血族の馬たちに進んで乗った。
でも、継承されなかった。
血族の誰もがその脚を継承されていなかった。
二度と見ることが出来ないと諦め──
「なぁ……」
──もう一度乗りたいと願い続ける脚。
「……おぐ……りぃ」
一瞬。
ほんの一瞬。
初めてレースで自失した。
懐古があった。
羨望があった。
嫉妬があった。
悲嘆があった。
だが、何よりも歓喜した。
自分が乗っていないのに。
敵なのに。
喜んでしまった。
「やっぱりっ……おまえはっ」
喜びのあまりに泣きそうな声を竹優は出してしまった。
「オグリキャップの娘だ。オグリキャップの──再来だっ」
頭を低くして重心を下げて沈み込む姿勢で、外から一気に抜いていったのは、灰色ではなく白色だった。
(勝った!?)
海老名は確信した。
エルコンドルパサーは勝った!
ジャパンカップを制覇したんだ!
ドドド
ホワイトグリントに勝った!
七冠馬に勝った!
不完全燃焼かもしれないが勝った!
それは誰にも否定できない!
(行くぞ欧州へ! なあ、エル、コンドル……パサー?)
エルコンドルパサーの耳が立っていた。
ドドド
警戒する存在がいる。そう語りかけるように立っていた。
それが示すように、エルコンドルパサーは脚を速めている。
残り200。スペシャルウィークとメジロブライトには4馬身差をつけた。
エルコンドルパサーと同じく逃げたあの馬たちは、もう勝負に絡めない。いや、それどころか末脚がエルコンドルパサーに劣っている。離れるだけだ。
その他の後続はそもそも離れすぎていた。
どう考えても、スペシャルウィークとメジロブライトさえ捉えることが出来ないほどに。
だから、エルコンドルパサーの勝利を確信した。
だから、勝利を確信できた馬らしくしてやった。
身体を休めるために、追うのを速度を維持するものに変えたのだ。
当然のことだ。僅かとはいえふらつくほどスタミナが尽き、精神力で前に進んでいる愛馬に対して「もう良い」と伝えるのは当然の事。
それに従って喜んで愛馬が脚を緩めるのは当然のこと。
なのに
(俺はもう追っていない。……少なくとも脚を速めるように追っていない。なのに──)
ドドド
ドドド
微かに
微かに
馬蹄の音が聞こえた。
エルコンドルパサー以外の馬蹄の音が聞こえた。
ドドド
不意に思い出す。
同期の竹優と飲んだ日のことを。
オグリキャップを肴にして飲んだ日のことを。
デビューしたばかりの自分が絡めなかったアイドルホースを肴にして飲んだ酒を。
ドドド
──「勝った! と思ったときに聞こえるんだぜ。勘弁してほしいよ」
ドドド
──「聞こえるって、何が?」
ドドド
──「音だよ。音が聞こえて分かるんだよアイツが来たって」
ドドド
──「音? やっぱり大歓声か?」
アイドルホース。その名が示すようにオグリキャップに対する大歓声は凄かった。
競馬場でレースしていた騎手が衝撃波と例えるように。
ドドド
──「いや、脚音。馬蹄の音」
そのままグイッと飲み干し新しく手酌する竹の、苦味が含まれた羨望の表情を思い出す。
ドドド
──「脚音? 一頭の馬の脚音が分かるくらいに聞こえるのか? そんなはず無いだろレース中だぞ。色々な音に紛れて聞こえるはず無い」
ドドド
──「ああ、普通ならな。でも、アイツは普通じゃないんだ聞こえるんだよアイツは、アイツの脚音は
オグリキャップの馬蹄の音は
聞こえるんだ」
ドドド
馬蹄の音がハッキリと聞こえる。
大歓声などの色々な音にさえ押し潰されない程の力強い馬蹄の音が。
今まで聞いたことが無かったし信じていなかった。たった一頭の馬の馬蹄がこんなに力強く聞こえるなんて。
──「みんなに教えるように聞こえるんだ──自分が、オグリキャップが来たぞって
吠えるように」
ドドド
汗が流れる
──「スーパークリークの時もバンブーメモリーの時も他の時もさ、実は悲鳴上げてたんだよ」
ドドド
喉が渇く
──「来やがったって、怪物が、オグリキャップが来やがったって」
ドドド
背筋が粟立つ
──「オグリキャップの妹や子供のオグリワンとかにも乗ったけど誰も持ってなかったな」
ドドド
額から汗が滴る
──「頭を低くして重心を下げて沈み込むような走りから出る力強い脚音と」
ドドド
首筋が寒くなる
──「汗が流れて喉が渇いて背筋が粟立って額から汗が滴って背筋が寒くなる圧力を」
ドドド
再度、いや、このレースで初めて必死で追う。
動物としての本能でエルコンドルパサーを必死で追う。
──「へぇ、オグリキャップってそうだったんだな」
──「あぁ、乗るとまた違うんだ。素直で精神力あって瞬発力あって勝負根性あってパワーあってスピードも勿論あって特に操縦性が高いんだ。乗ってた人たちズルいって思ったよ。
こんな素晴らしい馬に乗っていたのかって」
──「ベタ褒めだな」
──「乗りやすさだけでいえば今まで乗った馬の中でピカイチだよ。どうやっても勝負に持っていけるもの」
──「へぇ」
ドドド
エルコンドルパサーは更に加速し始めた。
本当に素晴らしい馬だ。
ふらつくほど限界なのに完璧に応えてくれる。
そうだ。エルコンドルパサーは完璧だ
……だが
だがぁ……
ドドドドド
……遅い!
心が悲鳴を上げた。
必死で逃げていたエルコンドルパサーに応えず追いを緩めたのは自分なのに。
(遅い!)
あまりにも身勝手で情けない悲鳴が口から出そうになり何とか心で押し込めた。
──「もう一度あの脚と気配がある馬に乗りたいな。まあ、また味わうのは御免だ」
ドドドドドド
「き──」
わあああああっ!!??
ドドドドドドド
『大歓声を切り裂いて!
やってきた!
やってきたぁっ!?』
──「多分また悲鳴を上げる」
『後方から猛烈な勢いで! 一気に白い閃光が! 耐え忍んでいた優駿たちを瞬発力で抜かして先頭へ!』
ドドドドドドドド
──「はは、俺なら悲鳴上げないさ。少なくとも口に出しては、な」
──「お、言ったな。なら賭けるか」
──「良いぜ、何賭ける」
──「酒。高いの」
──「よし、乗った。あぁ、どっちかがオグリキャップの再来に乗っても恨みっこ無しな」
──「勿論、俺が乗るよ絶対に。──絶対にまた乗るんだ」
ドドドドドドドドド
──「オグリキャップに。オグリキャップの再来に」
「きや──」
『大外から! 日本近代競馬の結晶が!? エルコンドルパサーを捉えに! やってきたぁぁぁ!!』
ドドドドドドドドド
一際強い脚音に目だけ向ける。
満面の笑顔の白馬を海老名は見た。
腹に響く脚音と圧倒的なプレッシャーで迫る白馬を見た。
追い込み馬ではないのに、最後方から直線だけで14頭の優駿をぶち抜く大外一気をしてのけた怪物白馬を見た。
エルコンドルパサーから一馬身まで詰めた日本近代競馬の結晶を見た。
『ホワイトグリントがやってきたァァァ!!??』
ドドドドドドドドド
「くそがぁぁぁっっっ!? 来やがったぁぁぁっ!!?? このっ怪物がぁぁぁっっっ!!!???」
勝利を確信したその時にやってきた。
エルコンドルパサー以外の全ての優駿を抜かしてやってきた。
勝ちにやってきた。
誰もが無理だと不可能だと認識した事象をひっくり返した。
書き溜め無くなったので次回遅くなります