黄金世代の白雪姫   作:サリエリキキ

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 なやらサブさん、Kplusさん、John Smythさん、ただの民さん、評価付けありがとうございます。やる気が出ます
 感想、ここすきなど皆さんありがとうございます。頑張ります。



ホワイトグリント産駒列伝~ホワイトスノー~
ホワイトグリント産駒列伝~ホワイトスノー~①


 ホワイトスノー(ホワイトグリント02牝)

 

 

 

 ~白雪姫伝説、再び~

 

 JRA『ヒーロー列伝コレクション』より

 

 

 

 

 ホワイトグリント初産駒。父はかのエルコンドルパサー。ホワイトグリントに初めて敗北を刻んだ存在がお婿さんとなった。

 ホワイトグリント種付け映像には、のっそりのっそりとやる気なさげなエルコンドルパサーがホワイトグリントを見た途端「ヒッヒーン!!??」と歓喜に咆哮し、ダッシュでのしかかっていく映像が収められている。

 種付けを嫌々やっていたことから、種付け嫌いと目されていたエルコンドルパサーだが、相手がホワイトグリントでないことが不満だったらしい。

 その日は一日中ホワイトグリントに伸し掛かり、ホワイトグリントも満更ではなさそうだった。

 約一年後、白毛の幼駒と一緒に歩くホワイトグリントが公表される。

 ホワイトグリントは白毛だが、早々遺伝しないと思われていた人々の認識を良くも悪くもひっくり返した。

 母譲りの美しい美貌の白馬が初仔として産まれたのだ。

 

 ──当然、売ってくれ攻勢が北野オーナーに向けられたが、北野オーナーが売るはずもなく入厩の時期となった。

 

 幼名、雪。長じてホワイトスノーと登録された白馬。

 誰もが瀬戸内厩舎に入厩させると思っていたが、池柄厩舎への入厩となった。

 誕生翌日に交渉した池柄調教師の意欲、定年前で定年したら厩舎解散予定の瀬戸内調教師の遠慮などが合わさり、池柄厩舎入厩となった。

 

 

 

 

 …………ホワイトグリント産駒を語るスレより抜粋

 

 :白雪姫同盟

 瀬戸内厩舎解散は痛手だよな。「解散するなんて正気か」と海外からも突っ込まれたほどの名門だったのに。

 

 :白雪姫同盟

 名門すぎて瀬戸内厩舎関係者が引き継げなくなり、馬も人も別れてしまったのが残念。

 

 :白雪姫同盟

 調教師は経営者にして調整役。瀬戸内先生が言う通りのスキル持ってる人が居ないのが仕方なかった。そんな人はもう独立してるからな。

 

 :白雪姫同盟

 定年延長させるべきだったよJRAマジで。

 外厩とかが始まって、調教師の仕事が馬の調教メインから馬のマネジメントメインに変わった変化に適応した数少ない調教師なのに。

 

 :白雪姫同盟

 オグリキャップ・ホワイトグリントの父娘ラインを育成した超名門厩舎の終わりとしては何とも言えん。

 まあ、関係者みんな幸せそうだから良いんだけど。

 

 :白雪姫同盟

 まあなあ、池柄厩舎も名門だから不満は無いんだけどね。

 ホワイトスノー入厩に関するツッコミどころは、タッケに集約されるし。

 

 :白雪姫同盟

 ああ、あのストーカーね。

 

 :白雪姫同盟

 奥さんに恥ずかしいから止めてと言われたストーカーね。

 

 :白雪姫同盟

 ホワイトスノー取材に行ったらほとんどの場合居たストーカーね

 

 :白雪姫同盟

 本物のストーカー竹優。

 

 :白雪姫同盟

 酷いことを言うんじゃない! 

 忙しい最中幼駒のホワイトスノーに何度も会いに行って

 初めて人を乗せる騎乗訓練なども自分が乗ったりして

 ホワイトスノーを育てながら自分を覚えてもらって

 入厩時には北海道から車で一緒に厩舎に行って

 馬運車から降りたホワイトスノーに乗って軽く走らせただけじゃないか! 

 ストーカーなんて生温い存在じゃないんだっ!! 

 

 :白雪姫同盟

 入厩前から「主戦は竹騎手です。それ以外は、何というか──無理でしょう」とオーナーと場長に言わしめた激重怪人竹優。

 

 :白雪姫同盟

 北海道から厩舎までの間は奥さんと小旅行ということにした魔人である。今までのホワイトスノーに会いに行っていた日々と同じく。

 

 :白雪姫同盟

 奥さんの天を仰ぐ表情が忘れられない。

 

 :白雪姫同盟

 ホワイトスノーと奥さんが仲良くなるくらいタッケはストーカーしたからな。

 

 :白雪姫同盟

 ホワイトスノーもタッケ大好きだし。タッケじゃないと調教時に??? なるくらいにタッケ大好き。

 

 :白雪姫同盟

 刷り込みされてるじゃねーか。

 

 :白雪姫同盟

 散々母親のホワイトグリントに邪険にされながら……認めようタッケは常人じゃねー

 

 :白雪姫同盟

 奥さんには愛想よくするホワイトグリント見て、奥さんに嫉妬できる男だ。面構えが違う。

 

 :白雪姫同盟

 そして、オグリに慰めてもらう。パカパカと歩かせるオグリじいじに、スキップして着いていくまだ人が乗れない頃のホワイトスノーを見つめるタッケの目。オグリに乗った状態で向ける目。キラキラしてんのよ

 

 :白雪姫同盟

 ストーカーって、目標に対してあんな目を向けるんだなって(怯え

 

 :白雪姫同盟

「エ!? アノ人が日本ノトップジョッキー!? オドロキッッッ!? 日本競馬ッテ楽シインダネ!!」

 

 :白雪姫同盟

 長期休暇で遊びに来て牧童してたケインの常識が可哀想なことに。

 

 :白雪姫同盟

 まだ幼気な少年だったのに。

 

 :白雪姫同盟

 日常生活が問題なく送れるようになったら、直ぐに「グリントに会いに行く!」だけの書き置き残して単身来日(家出)したケインも相当なんだよなあ。

 

 …………

 

 

 

 優れた母から生まれた産駒に人は期待と願望を集めるが、早々上手くはいかないのが競馬の常。

 そんな常識に中指を立てるように、ホワイトスノーは新馬戦を楽勝。

「三冠牝馬に巡り合いました」主戦の竹優が断言するほど格の違いを見せ、次走の新潟2歳ステークスもあっさり勝利。重賞馬となり、初産駒にして母に重賞馬を産んだ繁殖牝馬となる栄誉をもたらした。

 

 そして10月に入り──運命に巡り合う。

 

 運命の名はディープインパクト。

 性別の違う同い年にして、同厩。当たり前のように調教パートナーとなり、現役時代ずっと変わることがなかった。

 隔絶していた二頭は、名門池柄厩舎をして同い年では調教パートナーはお互いしか居なかった。

 いや、既に池柄厩舎最強のメジロガルダン以外は併せの意味がなくなってしまうほどだった。

 あまりにも違いすぎる強さの二頭。

 走るのが大好きな二頭。

 とてもとても幸せそうに併せる二頭。

 2歳牝馬にして500kgを超えるホワイトスノーと小柄なディープインパクトは、姉弟のように仲が良かった。

 一点を除いて。

 

 当たり前のようにディープインパクトにも乗り始め、主戦の座を掴んだトップジョッキー竹優。その一点を除いて。

 

「私が乗ってもらうのよ」「僕が乗ってもらうんだ」調教時に竹優を奪い合う二頭。

 竹優、苦悩の日々は始まる。

 

 

 

 …………畜生タッケを語るスレより抜粋。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 どうして、僕は分裂できないのだろう。分裂出来たら併せが出来るのに。人間ってなんて不便なんだbyタッケ

 マジで苦悩すんなよタッケ。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 冗談抜きで頭おかしいこと本気で苦悩していたからな竹優。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 二頭が竹を奪い合うからいけないんだ。併せ調教は助手しか出来ないくらいに竹を奪い合う。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 メジロガルダンが参戦しないだけ良かったな。あいつまで参戦してたら悲惨なことに。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 体幹が揺れないタッケの騎乗って馬に気持ちいいんだなって、知らしめた。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 飯食っている時にタッケを見つけて食べるの止めて「さあ、私に乗って」と服を噛むホワイトスノー。それを見つけて「僕だっ僕だっ」と嘶くディープインパクト。

 先にスノーだから。とプイに謝りながらスノーに乗るタッケ。

 優越の眼差しでプイ見詰めるスノー。ショックに震えるプイ。

 なお、先にタッケを見つけるのが変わると立場も変わる。

 

 :タッケまじ畜生同盟

「私、私っ、私に乗って」ヒンヒン鳴くスノーを、ふっと流し目鼻息一つ、スキップしながらタッケ乗せて調教コースに向かうプイ。ヒイーンヒイーンとショックに鳴くスノー。

 なお、走らずノンビリしている時には気にせずにグルーミングし合う。

 タッケを鞍上に。と、奪い合うときしか争わないのがプイスノ。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 仲いいなぁ。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 池柄厩舎愉快な日々。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 タッケ苦悩の日々でもある。どっちも乗るのが楽しすぎる馬だからな。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 スノーかプイに乗って、もう片方からヒンヒン泣かれる竹優。

 めっちゃ辛そうだった。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 苦悩を像にすると、あの時の竹優になるんだなって。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 これが日常だから笑うしかない。後半はタッケの臭いで嗅ぎ分けてたぞコイツラ。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 騎手としての幸せを味わいつつ苦悩もタッケは味わっていたのだ。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 こんな映像沢山出回ったから、プイはデビュー前から人気あったよなあ。

 母譲りの白馬スノーは当たり前に人気あったけど

 

 :タッケまじ畜生同盟

 しかし、何でプイくんにも乗ってんのタッケ??? 

 

 :タッケまじ畜生同盟

 ホワイトスノーに乗ってディープインパクトと初めて併せるやろ。

「入厩したばかりでスノーと互角っ。あいつ凄い」って認識して頼んで乗るやろ。

「おぉ、蹄薄いのに走りたがりだから難しいけど、コイツ凄いぞ」と感動するやろ。

「性別違うということは両立出来るっ! 二頭でクラシック戦えるんだっ!」と閃くやろ。

「お願いします乗せてくださいっ!」と調教師と馬主に頼み込んだんや。

 で、主戦。両方の。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 悪魔かタッケ。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 ド畜生が。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 トップジョッキーに、入厩したばかりの自分の馬に乗りたい! と懇願されてイイエなんて馬主と調教師の誰が言うんだよ。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 騎手は依頼されてから乗るもの。タッケ、お前さんの主義だろ主義。何処行ったんだよ主義。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 それはそれ、これはこれ。サイレンススズカやメジロガルダンの時と同じく心に棚作って上げて主義をしまい込んだのだ。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 本物の畜生の所業である。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 ディープインパクトとホワイトスノーでクラシック。マジモノの畜生。

 タッケが乗って併せが出来たの最初の一回しかない、くらいしかホッコリがない。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 どうして僕は分裂出来ないんだろう。分裂出来れば二頭一緒に併せて調教してあげられるのに。

 奥さんに外で言うなと言ったのに。と、叱られたほど畜生なセリフである。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 二頭の鞍上譲る気なんてありません。と宣言しているようなものだからな。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 ホワイトスノーと仲良くなった奥さんが、ホワイトスノーのレース観に来てくれて口取り写真一緒に撮れたという喜びのあまりに口走りやがったwww

 

 :タッケまじ畜生同盟

 個人的な幸せもあったし弾けてたよなあwww

 

 …………

 

 

 

 

 

 

 

 3戦目の京王杯2歳ステークスもあっさり勝利したホワイトスノー。

 次走を母も勝利した阪神ジュベナイルフィリーズに定める。

 ファンは元より他の陣営すらもホワイトスノーが獲ると確信したレース。

 

 一人を除いて。

 祖父オグリキャップと母ホワイトグリントを育てた調教師を除いて。

 定年前のリーディングトレーナーが育てたラストドーター。

 その意味を知る。

 

『ホワイトスノー! ホワイトスノー先頭! ホワイトスノーはエンジン全開か! エンジン全開か! 

 ラインクラフト! ラインクラフトが来ている! 

 ラインクラフト脚色が良い! 

 追いつき、いや、ホワイトスノー追いつかせない! 脚を伸ばす! 

 脚を伸ばす! 

 内ホワイトスノーにステッキ! ラインクラフトにステッキ! 

 どっちだ! どっちだ!! 

 ラインクラフトだ! 

 僅か僅かにラインクラフトだ! 

 福長やりました! 

 ホワイトスノーを打ち破りクラシックへ向かいます!』

 

 予想よりも遥かに脚が伸びた。先生の言った通り間を空けて走ったからだ。クラシックが楽しみだ。

 興奮する福長。

 ホワイトグリント初子にG1を。と盛り上がっていた競馬界。

 ゼンノロブロイとメジロガルダンの戦い、即ち最強の中距離馬VS最強のステイヤー以外の軸を欲していたJRAに水を差した。と嘆かれそうなほど興奮していた。

 そのホワイトスノーが、祖父オグリキャップ譲りの怪物の表情で自分たちを睨みつけていた事を知るのは後日のことである。

 

 

 …………畜生タッケを語るスレより抜粋

 

 :タッケまじ畜生同盟

 幸せそうな福長のBGMにドナドナ当てたの誰だよwww

 

 :タッケまじ畜生同盟

 だって、これがある意味始まりだもんwww

 

 :タッケまじ畜生同盟

 これでホワイトスノーに目を付けられたんだ。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 祖父は同じ馬のスーパークリークとかだけを睨みつけてたけど、ホワイトスノーは馬と騎手両方を睨みつけて覚えるのだ。

 

 :タッケまじ畜生同盟

「負けたのは僕の甘さによるものです。容赦なく併せて潰すべきでした」by畜生

 

 :タッケまじ畜生同盟

 タッケ、オブラートに包もうよ。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 普段のトーク力は何処行ったのよ。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 プイとスノー絡みだと畜生っぷりを隠さない竹優。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 まあ、でも良かったよ。

 スノーの睨みつけた表情がオグリキャップそっくりな事もあって、「畜生を露骨に出す昔のままのタッケがオグリの孫に。懐かしい頑張れ」とタッケを応援させ、福長たちを責める声が少なかったんだ。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 勝った馬が非難されたら堪らないよな。

 プイとスノーは人気あったけど、そういうのは少なかった。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 プイは別の機会として、タッケを乗せたまま逆立ちしながらラインクラフトたちを睨みつけ威圧する白馬ことスノー。その鞍上で一緒にラインクラフトたち睨みつけながらウンウンと頷くタッケ。

 あまりのインパクトにヤジとかは飲まれたんだ。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 あと、本格化前だったスノーがこの敗戦を糧にして強くなるのもいい。

 

 :タッケまじ畜生同盟

 スタイル確立したからな。

 此処までは正統派差し馬だったけど、此処からよく知られるスタイルになった

 

 …………

 

 

 

 桜花賞当日。人気は3頭が分け合っていた。

 チューリップ賞を勝ったホワイトスノー。

 フィリーズレビューを勝ったラインクラフト。

 フラワーカップを勝ったシーザリオ。

 紛れもなく優駿と断言できる3頭。

 そのうち2頭の主戦が福長騎手と言う事でゴタゴタしたが、この時期「引退するので新しいお手馬は取らない」と宣言していたゼンノロブロイなどの主戦で知られるリーディングジョッキー大里騎手。

 強いお手馬を他者に渡したくない人気騎手の駆け込み寺となっていた大里騎手に、一時的にシーザリオの鞍上になってもらうことで解決した。

(*なお、駆け込み寺大里騎手に一番駆け込んだのは竹騎手である)

 かくて、3強のレースが始まった。

 

『3頭並んだ! 並んだ! 広がらない! 広がらずに叩き合う! 

 デアリングハート、エアメサイアはこれない! 

 やはりこの3頭だ! 200を切った! 

 ホワイトスノーか! ラインクラフトか! シーザリオか! 

 シーザリオ遅れた! シーザリオが潰れました! 3頭が2頭になり! 

 また1頭が潰れました! ただ1頭が抜けます! 

 ラインクラフトをも潰した! ただ1頭! ホワイトスノーが突き抜けた!! 

 ホワイトスノー! ホワイトスノーだ!! ホワイトスノーがクラシック制覇! 

 雪景色だ! 阪神競馬場は雪景色! 

 桜の季節に雪景色! 

 ホワイトスノー! 母娘2代桜花賞制覇! 

 日本競馬史上初の偉業です!』

 

 強い馬を潰して最後抜ける。

 女帝ホワイトスノーの女帝たる所以である。

「あの馬と併せたら駄目だ。次からは気を付けて乗りな」とシーザリオの鞍上を福長騎手に返した大里騎手はアドバイスしたほどだった。

「阪神ジュベナイルフィリーズの時は成長途上だった。本格化して母並みに強くなった。ラインクラフトは別路線を目指すよ。グリント……良い仔を産んだなぁ。良かったなぁ」と涙ぐむ瀬戸内調教師に太鼓判を押された圧勝。

 他の陣営が認めるほどホワイトスノーは本格化した。

 

 

 

 高々と竹優は1本指を掲げ。

 翌週もディープインパクト鞍上で1本指を掲げ。

 その翌々週はメジロガルダンで天皇賞春を連覇して、前年と同じくメジロのおばあちゃんとおじいさんの遺影を掲げた。

 

 競馬関係者は口では祝福しつつも眉をひそめた。

 この頃はそれで済ませていた。

 

 その3週間後までは。

 

『先頭はエイシンテンダー! エイシンテンダー! ジェダイト! エアメサイアちょっとヨレた! 

 馬群を割いてシーザリオ! シーザリオ! ホワイトスノーは外からか! 粘っているエイシンテンダー! 

 シーザリオ! 抜けた! シーザリオが抜けた! 

 が、ホワイトスノーが併せる! ホワイトスノーが襲いかかる! ずいっ! と横に動いて襲いかかる! なんという操縦性!! 

 福長! 福長が悲鳴を上げた! 実況席からわかるほど悲鳴を上げた! 

 シーザリオ! ホワイトスノー併せる! シーザリオ潰された! ホワイトスノーだ!! ホワイトスノー抜ける!!! 

 白く美しい馬体がただ1頭で府中を駆ける! 

 ホワイトスノー! これがホワイトスノーだ!! 

 竹優に導かれてホワイトスノー、見事に、見事に2冠を制しました! 

 母娘で2冠制覇! ホワイトスノーと竹優! 』

 

 師と慕う大里騎手のアドバイス通りに、馬群を割いて抜け出すことでホワイトスノーと併せまいとした福長。

 そんな戦術を白馬とその鞍上は踏み躙る。

 人馬一体で「「見つけた」」とばかりに横に動いて襲いかかり蹂躙して2馬身離して勝利した。

 ワープと言われるほど有り得ない動き。抜群の操縦性と強靭かつ柔らかな肉体と騎手への厚い信頼、全てを合わさなければ出来ない動き。は、日本競馬界に衝撃を与えた。

 そして、シーザリオ陣営は逃げるようにアメリカに旅立った。

 

 

 満面の笑顔で竹騎手は高々と2本指を掲げ。

 翌週もディープインパクト鞍上で満面の笑顔で2本指を掲げた。

 

 カブラヤオーとテスコガビー以来の同年同騎手2冠制覇、そして初の同年同厩舎2冠制覇に、ファンは概ね熱狂した。

 ファンは秋が楽しみだ。3冠馬が同年同騎手同厩舎で生まれるかも。と、熱狂してくれた。

 しかし──

 

 

 徐々に、徐々に、竹騎手と池柄厩舎に対して、競馬関係者の目は冷たくなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 作者注)

 

 ホワイトグリントが引退して客足と売上が減るという危機感を抱いていたJRA。

 蓋を開けると、初年度から白馬の2冠牝馬などという大ホームラン。新規ファン沢山。だけでなく。

 同厩の仲良しな可愛らしい牡馬も2冠牡馬。一緒に3冠馬となるか!? という状況により、客足と売上はクラシック戦線で競うように上り、波及して競馬界全体が昇り調子になったJRA。

 

 その理事会に加えて農林水産大臣が、多忙な中、揃って毎年夏に『北海道畜産業大臣巡回』をこの年からはじめるのだが。

 その巡回が農林水産省とJRA内部において『オグリキャップ詣』『ホワイトグリント巡礼』と呼ばれている件についての正式な回答は未だにない。

 馬を神とした新興宗教を公的組織が公に信仰しているという疑義を持たざるを得ない状況である。

 「我々は個人的な神道信徒である」という回答が事実であれば異論はない。が、口頭によるものでしかない。速やかな文書での回答を切に望むものである。

 

 

 

 

 

 

 更なる注)

 

 上記の注に関しては、大栗馬乃命の神号宣下前の注であり、現在では異なります。

 JRA職員及び農林水産省職員は個人的な神道信徒であり、新興宗教を信仰していないことをここに明記させていただきます。




 この世界線では、ホワイトグリントたち黄金世代の競馬ブームの余熱が続いているため、ディープインパクトは勿論ホワイトスノーですら過剰に持ち上げられません。
 我々の世界でのナリタブライアン時代をイメージしてください。
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