黄金世代の白雪姫   作:サリエリキキ

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 あんとぅさん、スライムジェネラルさん評価付けありがとうございます。やる気が出ます
 感想、ここすきなど皆さんありがとうございます。頑張ります


北海道の初日

「いや、流石だな。オグリとホーリックスとタマ」

 

 三頭の葦毛馬に何度か嘶かれ叱られたホワイトグリントが大人しくなってスムーズに治療出来た光景を思い出して、錦田場長は満足の笑みをこぼした。

 到着直前にドマゾがバカやった動画を見せた甲斐があった。ちゃんと叱ってくれた。

 今は叱られた子供そのままに、父オグリキャップに先導され治療の一貫とした温泉に連れていかれた頃だ。

 

「ヌシと仲良くすれば良いがな」

 

 来たばかりのホーリックスが娘の後を心配して付いていく親子愛溢れる光景に目を細めながら独り言ちた。

 

 

 

 

(私は悪い子だ。みんなを心配させた悪い子だ。みんなを悲しませた悪い子だ)

 

 両親と師に叱られたホワイトグリントは、骨折した脚の痛みに夢中で気付かなかった事にしょんぼりしていた。

 

(いーさんたち厩舎の皆も悲しんでいた心配していた。勿論、お家(牧場)の皆も)

 

 それに気付いたホワイトグリントは骨折の痛みが(そこまで)気持ち良くなくなった。

 

 反省したホワイトグリントの様子を見た両親が「春に弟か妹を子作りする。一緒に走りたいでしょうだから怪我を治しなさい」と教えてくれたからホワイトグリントは大人しく治療してもらった。

 

 これからは怪我をせずに痛みの気持ち良さを追及するんだ! と決意しながら、弟か妹! どんな子だろう! 楽しみだなあ! とワクワクするホワイトグリント。

 

 そんな彼女は、骨は綺麗に繋がり始めているから少し筋を伸ばそう。そう診断されたから、ストレッチャーで運ばれて温泉に連れていってもらえた。

 

「あ、オグリ、来てくれたんやな。ちょい頼むわ。アイツ何とかしてくれ!」

 

 ひんっ(またかい)

 

 温泉施設前で、初めて会う人がホッとした顔で父オグリキャップに駆け寄ると、父は呆れた鼻息を漏らし周りの人も溜め息を付いた。

 

「またヌシか」

「アイツ温泉入れるのやめないか」

「無理だよ。アイツのオーナーさんと毎日入れてやって下さいと契約したから」

「契約か。なら仕方ないか」

「契約上身体に異常があれば温泉入れなくて済むんだが、健康体そのものだからな」

「有馬記念のご褒美だからと言ってもなぁ。まさかここまで」

「それと、オーナーさんは動画に映したアイツの姿に大受けしてるからな」

「見てる分には良いよ見てる分には。世話するのは堪らん」

「だな」

 

 

 

 温泉施設の扉が開かれる。

 一頭ずつの入浴場が10と大温泉が1つある温泉施設。

 ホワイトグリントを一頭ずつの入浴場のうち1つに入れた従業員は、獣医他二名を除いて大温泉に向かう。

 

 ひひっひひんひんひん♪ ひひっひひんひんひん♪ 

 

 何かが聞こえる。ババンババンとか何とか言っている馬の言葉が。

 なんだろう? 

 興味深げにホワイトグリントが視線を向けた先には、10頭は入れる広い温泉の向こう岸で、此方に背を向けて座り込む馬の影。

 

 ひっひっひひーん♪ ひっひっひひーん♪♪♪ 

 

 ホワイトグリントはびっくりした。

 歌っている。馬が歌っている。人間のように歌っている。

 気持ち良さそうに至福の声で歌っている。

 湯気で姿が良く見えないが、苦痛を堪能する自分と同じ満面の笑顔だとホワイトグリントは確信した。

 

 ひっんひっひっひんっん♪ ひひっひーんっ♪♪♪ 

 ひっひっひひ♪♪ ひっひっひひ♪♪ 

 

「……アイツにいい湯〇な。聞かせたのは誰だよ」

「私……ごめん。本当にごめんなさい。まさかこんな」

「無駄にうまいな。何番歌ってるんだ」

 

 ひっひっひひ♪♪ ひっひっひひ♪♪ 

 

 ひんっ(あの子かな? って何だよ)

 

 3番を熱唱する馬の歌を聴く従業員たちは肩を落とし、オグリキャップは死んだ目になる。

 

 何時ものことなのだ。慣れているからこそこんな反応になるのだ。

 馬として何かが間違っている馬が今温泉に入っている。

 あんまりな姿に、ドマゾとはいえ馬としての良識はあるホワイトグリントはドン引きする。

 

 自身も娘と同じくドン引きしたいが、ボス馬としてそういうわけにはいかないオグリキャップは前に進む。

 ボス馬としての責任感を持って、クビから上以外を温泉に入れた馬の影にオグリキャップは優しく声をかけた。

 

 ひひーんっ(おーい、入りすぎだー。気持ちは分かるが良い加減出ろー)

 

 ピクリ。圧倒的なボス馬の声に馬の身体が震える。

 そのまま馬の本能として、起き上がり身体を此方に向け歩いてくるはずだが。

 

 

 

 ………………トボン

 

 

 

「え? えっ!?」

「おい、アイツ潜ったぞ。背をこっちに向けたまま潜った」

「ああ、潜ったな。馬が温泉に潜ったな」

「馬なのに、熱いお湯に顔をつけるどころか沈めたわね」

「まさか、心だけでなく身体まで牛に?」

「新パターンだな。今までは振り向いてから、しゃっくり虫のようなスピードで歩いてきたのに」

「遂に、ボスに言われても、出たくないと反抗するようになったか……なっちまったかぁ」

「オグリびっくりしてるよ」

「そりゃあね。ボスの言うこと無視されても怒るより驚くわよこれは」

「アイツ、お湯の中にいたからボスの言葉聞こえませんでしたにする気だな」

「馬の本能としてボスにはまず従うのに、温泉を、自分の快楽を優先しやがった。本能を越えやがった」

 

 そこで言葉を切り、生温い視線をホワイトグリントに集中させる従業員たち。

 

「黄金世代ってこんなんばっかなのか?」

「繁殖期外のレース場で交配しようとする奴に。温泉狂に。ドマゾ……」

「他厩舎に逃げ込む奴がダービー馬だなこの世代。最強世代と呼ばれている世代代表がこんな連中。どうなってるんだよ」

「セイウンスカイはマトモだろ。セイウンスカイだけはマトモだ」

「あぁ、評判良いもんな。西森さんとこが羨ましい──取り敢えず出すぞあのヌシ。引っ張り出す」

「ああ、オグリ、アイツに縄付けてお前さんに引っ張り用の器具付けるから合図したら引っ張ってくれ。このままじゃアイツの蹄とか身体に悪影響あるかもしれん」

 

 ひん(わかった)

 

 温泉に潜った馬は手綱を取られた上での縄かけを暴れて抵抗するのに対して、そう答えて大人しく器具を取り付けられるオグリキャップに、従業員たちは感動でうち震えた。

 

「……やっぱり、オグリは最高だな。こんなに素直で気性が良いボス馬なのにレースでは誰より闘志を燃やしていたなんて」

「サラブレッドの理想の気性と言われるわけよねぇ」

「馬がみんなオグリみたいな奴ばかりならなぁ」

「今年ホーリックスと交配するけど、産駒が強さとこの性格を受け継いでくれたらいいな」

「ああ、牡馬なら言うこと無いよ。オグリの血を広げてくれるに違いない」

「幻想を持つなよ。そうそう強い馬なんて生まれないし……やっと生まれた重賞馬の全姉からしてドマゾになるんだからさ」

「……ドマゾな所以外は性格良いよ。ホワイトグリント」

 

 従業員の希望は叶う。

 素晴らしい脚の速さと内臓も含めた肉体の強さとサラブレッドの理想の性格を受け継いだ、では留まらない世界最強馬ウォリックが産まれるのだ。

 産まれた半年後には、あまりの評判を聞いて見に来たホーリックスのオーナーが実馬を見て「献上止めよう」と呟き、同じく見に来た英王族がその場で女王陛下に電話し「サラブレッドの理想です。神からの贈り物です。天使です」と激賞の限りを尽くす馬が産まれる。

 すったもんだの末、女王陛下からの(何通もの)お手紙がホーリックスのオーナーに届いたため女王陛下の馬となった。乳離れした2ヶ月後にウィンザー城に連れていかれる馬が産まれる。

 北野オーナーの尽力により種付3株を確保した種付け40頭制限の馬が産まれる。

 当然、沢山の人が見たいと押し寄せて北野牧場は修羅場となった。

 

 来年の秋から修羅場になるとは想像していない従業員は、速やかに温泉狂を引っ張り出す用意をし、オグリキャップと一緒にせーの! と声を掛け合いながら「温泉から出されてたまるか!」と必死で抵抗する馬を引っ張る。

 

 高い気温と湿度で汗だくになりながら。

 

 ひんっ(なんて酷い馬なんだろうか。温泉が好きだからと言って、自分が好きな事だけを考えて我が儘を貫いて皆に迷惑かけるなんて、酷い酷すぎる)

 

 怪我をしたことは悪い事だと認識したが、普段のマゾヒズム充実を悪い事だとは欠片も認識していない自分の事を棚に上げてショックに震えるドマゾが見守るなか、温泉から栗毛の馬が引っ張り出された。

 

 ひひーんっ!? ぶひひーんっ!!!??? (いやだぁ!? 帰してっ温泉に帰してよぉぉっ!!!???)

 

 断末魔の叫びを上げて暴れる栗毛馬は、前のレースでホワイトグリントととっても強い葦毛馬と鹿毛を打ち破った馬だった。

 

 ひひーん!!?? ひひーん!!?? (酷いっ、温泉入りたい!!?? 酷いい、温泉んんん!!??)

 

 母馬と乳離れする仔馬のように泣き叫んでいるのは、とてもとても強かった栗毛馬だった。

 ホワイトグリントは信じたくないが間違いなかった。

 ヒンヒンと母馬と乳離れする仔馬のように泣き叫ぶ馬に負けた。馬として走り負けた。

 一番速く走りたい馬の本能が揺さぶられ、ホワイトグリントはあまりの衝撃に固まった。

 そのまま、泣き叫ぶ栗毛馬はゴロゴロ転がって抵抗するが、オグリキャップが力を入れられないように引っ張っていることもあり人間たちに抑え込まれ──ホワイトグリントを目にした。

 

 すくっ(泣き叫ぶのを止め立ち上がる)

 ぴーん(背筋を伸ばす)

 すたっ(自分の馬体が一番綺麗に見える姿勢を取る)

 

 ひんっ(お久しぶり。素敵なお嬢さん)

 ひんっ(あ、はい。お久しぶりです)

 

 あの子こと、温泉に入っているホワイトグリントを見て格好つけるグラスワンダー。

 

「美人の前では格好つける。か。牡だな」

「男ってやつは」

 

 ひんっ(まあ、襲いかかりはしないし)

 ひんっ(馬体よし。脚良し。かアリね)

 

 人間が力が抜けた吐息を漏らし、父親がもどかしい感情を飲み込み、母親は娘のお相手として採点するなか。グラスワンダーがアピールしていると気付かない箱入り娘ホワイトグリントの療養生活初日は本格的に始まった。

 

 

 

 …………夜

 

 オグリキャップは膨れていた。

 娘と同じ馬房に入り見守る。という予定が崩れて膨れていた。

 

 ひんっ(お前さんボスなんだからな。若いのの前ではやるなよその湿気た面。あのどうしようもない喧嘩屋がまた喧嘩始めるぞ)

 

 隣の馬房のタマモクロスが呆れ返っているが、知ったことではない。少し前から滞在しているどうしようもない喧嘩屋ことサンデーサイレンスがまた暴れるのなら矯正すればいいだけだ。あいつは恐がりだから暴れるのだから可愛いものだ。

 こんな状況と比べれば何ほどでもない。

 

 ひんっ(嬢ちゃんは、目の前に居るんだ。それで良いだろ。様子が変だったら叫んで人間に知らせる。それで十分だ。それで十分面倒見てるんだよ)

 

 隣のタマモクロスがしたり顔で言う。

 ……これだから、種付けした後は放置する牡はよう。お前の娘の面倒見たの俺だぞ。

 と、言いたいが、他の牡馬が父親にならないと知っているオグリキャップは溜め息だけ吐いて目の前を見る。

 目の前の馬房をみる。広い馬房をみる。

 

 ひんっ(お母さんお母さん)

 ひんっ(なあに)

 ひんっ(えへへ何でもない)

 ひんっ(そう……久しぶりね一緒に寝るの)

 ひんっ(うんっ)

 

 仲良く同じ馬房で過ごす娘と妻。

 穏やかな気持ちになる。

 そして、妬ましい気持ちになり、慌てて打ち消す。

 妻に嫉妬するなど牡としてあるまじき事だ。絶対にしてはならない。

 

 ひんっ(お母さん)

 ひんっ(もう、どうしたの)

 ひーんっ(だーいすき)

 ひんっ(私もよ)

 

 

ぶひんっ(……どうして、俺だけ除け者なんだよ)

 

 

 

「万一があると怖い、というかホワイトグリントには絶対に交配しなくてもホーリックスと同じ馬房にいるなら交配するだろお前さん」という場長の判断により、馬房は別にされたオグリキャップは膨れていた。

 それ以外に何も出来ないから。

 治療具を付けた娘が変な動きをしないように見守りながら膨れていた。

 

 

 

 

 

 

 ドマゾ要素が入っていないこれらの動画は当然公開され、高い視聴率でテレビ局を笑顔にし、グラスワンダーファンを増やし、ファンたちに笑顔をもたらし。

「このシーンをアニメにするんだ! 表情などアニメとして強調すべき所を強調したアニメに!! 現実と比べてこそアニメが際立つと視聴者に教えてやれ!!! ……出来ないだと!? ウォ○トの言葉を忘れたのか!! 不可能なことを成し遂げるのを楽しみながらやり遂げるんだよ!!! それこそがディ○ニーだ!!! カネは日米競馬界と協賛する事で何とかしたんだっ!!! やるんだよっ!!!」オーナーに許可を貰ったディ○ニーにより、見事なアニメーションの一場面となった。

 日本人は日本人なのでウマ娘のネタにした。




 この頃のデ〇ズニーは職人魂溢れた人たちがいたなあ(懐古
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