感想、ここすきなど皆さんありがとうございます。頑張ります
『あと400! セイウンスカイ先頭! 葦毛の逃亡者が先頭だ! しかし、単独ではない! 三馬身差でスペシャルウィーク! スペシャルウィーク!
日経賞を制したセイウンスカイに阪神大賞典を制したスペシャルウィークが迫る!
他は大差がついている!
二度はやらさないと! スペシャルウィークと竹優がセイウンスカイと横田典洋をマークしつづけ!
今! ステッキを入れて差さんとしています!
セイウンスカイ逃げる!
スペシャルウィーク迫る!
鞍上二人が鬼の形相!
先頭はセイウンスカイ! 先頭はセイウンスカイ! スペシャルウィークが迫る! スペシャルウィークが迫る!!
抜かし! いやまたセイウンスカイが!
ゴール板!
わからない!
わからない! どっちだ! わからない!
スペシャルウィークが抜かしたと思えば! セイウンスカイが再度伸びました! 何という勝負根性!!
三着は大差がついてのシルクジャスティス!
タイムはレコード! レコードタイム決着!
すばらしいレースです! 本物の競馬です! 先に伸びたのはスペシャルウィーク! ゴール間際にグイッとセイウンスカイ! その二頭の差は分かりません!
菊花賞の借りを返したのかスペシャルウィーク! 菊花賞と同じく勝ったのかセイウンスカイ!
……本当に素晴らしいレースでした。20分以上経つのに確定ランプが点きません。果たして、どちらが』
わあああっ!?
『おぉっ! 同着です! 中央競馬! GI競走での1着同着は初めて! 史上初の1着同着です!
第119回天皇賞は同着となりました! レコードタイムでの同着です!
伝説を作りました! 黄金世代はセイウンスカイとスペシャルウィーク!!!』
ホワイトグリントが復帰した翌週の同着決着に、少し熱が冷めていた日本競馬は再び加熱した。
『グラスワンダーだ! グラスワンダーだ! 広がる! 差が広がる!
シーキングザパール! マサラッキ! 追走するが置いていかれている!
グラスワンダーだ! グラスワンダーが一着!
グラスワンダーが圧勝!
グラスワンダー完璧だ!
中京でも変わらぬこの黄金の脚!
中距離の大阪杯から復帰して高松宮記念を次に選んだ時は色々言われました!
しかし、現実は3馬身差です!
スプリントでも、まったく問題ありません!
敵は居ない! 同じ黄金世代でなければ敵は居ない!
これがグラスワンダーだ!』
天皇賞三週間後の高松宮記念をあっさり勝利したグラスワンダー。
スプリンター戦線でも逃げ道は無いのかと他陣営を絶望させた日の二週間後。
日本ダービーで新たな記録が打ち立てられた。
『4コーナーをカーブして直線コース! アドマイヤベガはさらに外に持ち出している!
先頭はメイショウドトウに変わりました! メイショウドトウが先頭に変わった! 大里の騎乗は冴えている!
さあテイエムオペラオー! 外からはナリタトップロード!
テイエムオペラオー、ナリタトップロード やってきている!
さらに、さらにその外からアドマイヤベガ!
デビューが遅かったメイショウドトウが共に走ることで遂に揃ったクラシック4強だ!
先頭を行くメイショウドトウを! ナリタトップロードが! テイエムオペラオーが! アドマイヤベガが追いかけます!
メイショウドトウが先頭! メイショウドトウが先頭!
懸命にナリタトップロード! テイエム! テイエムは遅れたか!?
ナリタトップロード! ナリタトップロードが! 外からアドマイヤ! 外からアドマイヤ! 迫る!
迫るが! 一伸び! メイショウドトウもう一伸び! もう一伸び!
そこがゴール板!
ドトウだ! ドトウだ! メイショウドトウだ!
大里マジックが炸裂した! 最後の一伸びというタネを残してのマジック!
メイショウの馬がダービーを制した!!!
ダービーに響いたのはドトウの蹄の音!
NHK杯を制したマル外が日本ダービーを制しました!
初めてマル外の馬がダービー馬と成りました!
松元オーナーをダービーオーナーにしました!
その名はメイショウドトウです!』
NHKマイルカップで、松元オーナーに初めてG1のタイトルをもたらした馬はダービーをも捧げた。
その栄誉は、ウイナーズサークルでその馬体にダービーのレイが巻かれた瞬間、メイショウさんとファンや中小生産者から慕われる名物オーナーが号泣してメイショウドトウに抱きついほどのものだった。
普通の馬なら驚いて暴れるかもしれないが、メイショウドトウは違った。
ヒンヒンとオーナーに「泣かないで」と顔を擦り寄せペロペロと涙が流れる頬を舐める優しすぎるメイショウドトウの姿と合わせて、ファンは暖かい拍手をして帰路につく。
ダービーの思出話と、翌週の安田記念を話の肴にしながら。
なにせ
翌週は白雪姫が中央のターフに帰って来るのだから。
1999/6/13
安田記念の日が来た。
安田記念。
日本中央競馬を作り上げた男。そう呼ぶべき安田伊左衛門から名を取られたレースである。
1951年に作られたこのレースは、長距離が殆どだった当時の日本競馬には珍しく1600mの高額レースとして作られた。
そのため、昔の日本の強いマイル馬を知りたければ安田記念優勝馬を調べれば良いと言われるほどマイルの強豪馬が揃った。
そんなレースはグレード制施行時に当たり前のようにG1となった。
そのため、最近の日本の強いマイル馬を知りたければ安田記念優勝馬を調べれば良い。と断言できる。
つまりは、一番伝統あるマイル王決定戦が安田記念だ。
1999年、そんなレースには当たり前のようにマイルの強豪馬が揃っていた???
「10頭かよ。安田記念が10頭でやるのか」
「10着までは出走奨励金出るからな」
「キングヘイローもシンコウウインディも逃げやがって、重賞馬は何頭居るんだよ」
「えっと、ホワイトグリントとグラスワンダーとエアジハードとシーキングザパール……だけね」
「G1だぞG1。ホワイトグリントとグラスワンダーから逃げすぎだろ」
「逆に言えば重賞未勝利のオープン馬が5着以内を取れるってことだよな」
「オープン馬じゃなくともワンチャンあるぞ。見ろ林調教師は前の秋天みたく条件馬3頭だしだ。シーキングザパールに加えたうえでの」
「条件戦よりもG1の出走奨励金の方が美味しい、か……流石だ。何というか徹底してる」
「G1経験乏しいか無い若手を乗せている辺り、本当に凄いわよね林先生。若手にG1の空気を教えながら賞金は咥えこませる。経営者の見本ね」
「いや、本当に凄いわ。ホワイトグリントとグラスワンダーからみんな逃げたからって良くやるよ」
「林先生はいいとして、二頭関連の馬券が湿気すぎだろ」
「いや、仕方ないわよ。実質的に三着決めるレースだもの」
「ムータティールとかいう海外馬は何処だよ。登録したんだろ」
「アメリカG1馬のホワイトグリントが出走するから回避したわよ」
「ま、良いか。ホワイトグリントとグラスワンダーの戦いが見れるなら」
「だな」
1999年、そんなレースには当たり前のようにマイルの強豪馬たちは殆ど逃げていた。
「ただなあ」
「うん」
「黄金世代強いのは良いけどさぁ。黄金世代ばかりで」
「黄金世代同士じゃなきゃ勝ちが確定しているからな。黄金世代で直接対決してくれるし、名レースばかりなんだけど、有馬記念から二頭だけで対決されるとさ」
「馬券が美味しくないし、さ。ここまで強い馬揃ってるなら、間違いなく日本史上最強世代なんだから、海外に挑んで強さを見せつけてきて欲しいわ」
「だよね。海外走るの見たいよね」
「去年のホワイトグリントや、イスパーン賞とサンクルー大賞勝ったエルコンドルパサーの時も盛り上がったからな。セイウンスカイもホワイトグリントに勝ったら行くらしいけど、スペシャルウィークとグラスワンダーは、行く気ないらしい」
「でも走って欲しいよね海外。一度くらい」
「アーリータイムズターフクラシックステークス勝ってそのまま引退してアメリカで種牡馬になったサイレンススズカみたいに行きっぱなしは困るけど、挑戦はしてほしいよ。日本はパート2国だけど、あれだけの馬たちが育つようになったとパート1国に見せつけて欲しい」
そのため、「君ら国内ボコボコにして覇権とったんだから海外行こうよ。パート2国として下克上しに行ってよ」とファンの中で囁かれ始めていた。
「いや、はや、楽しみですなあ」
「ははは、まったくですな」
馬主席で北野オーナーはグラスワンダー馬主の半田オーナーと笑顔で語り合っていた。
「しかし、あの番組は見事でした。ドリフター○の皆さんとグラスワンダーが一緒にウチの温泉で歌うなんて、よく許可なさいましたな」
「はは、馬主仲間の志街さんに頼まれたら嫌とは言えませんよ。それに、ドリフター〇の番組にウチの馬が出してもらえるなんて嬉しくて嬉しくて」
「はは、わかります。私もホイホイ良いですよと言ってしまいました。いやあ、療養中のグリントは餌を貰うくらいでしたが、オグリキャップは活躍しましたな色々」
「大栗オーナーに感謝ですよ。ボス馬のオグリキャップが先頭に居るとはいえ、それぞれが馬に乗ってドリフター〇の皆さんでコントするほど馬たちが大人しいとは。家族みんなで沢山笑わせていただきました」
「はは、ウチの家族もみんなで笑わせていただきましたよ。絶対に真似しないでくださいのテロップからずっと」
勿論、欠片も目を笑わさずに。
コイツの馬に勝てば俺の馬が勝つ。
確信する二人は周囲を空白にした笑顔だった。
本来なら半田オーナーは関東側、北野オーナーは関西側で席が離れているのだが。
アイドルホースは関東関西関係ない。というオグリキャップ以来の暗黙の了解と。
周囲の馬主からの「海外行けよ。マル父のホワイトグリントでさえ欧州に顔出す予定なんだから、マル外グラスワンダーは故郷に錦を飾りに行けよ。アメリカ競馬制度改革済んだんだからさ」眼光と圧力を避けるために隣り合っていた。
この春、ホワイトグリントが居ないのに黄金世代にボコボコにされた他陣営は、ファンとは違いほぼ満場一致で怪物たちの海外遠征を圧していた。安田記念が10頭立てになるほど皆勝つのを諦めてしまっていたのだ。
当然その隔意のある冷えた空気をオーナー達は感じ取っていた。
「北野さんは海外への遠征の伝をお持ちなのですよね」
「ええ、少なくともアメリカには持っています」
「それをお借りすることは出来ないでしょうか」
ゆえに、本業に支障をきたす可能性を考えた半田オーナーは決意した。
そんな半田オーナーの想いを見て取った北野オーナーも応える。
「……ほう、それは、ひょっとするとグラスワンダーも」
「ええ、夏に一度アメリカに里帰り、いえ錦を飾らせてやろうと思っとりまして、まだ登録だけしかしておらず……いやはや、具体案も無しに登録だけとはやらかしました」
「はは、ウチも昨年そんな感じでしたよ。今年の夏の欧州は巧くいってホッとしとります」
「なので、少しお力をお借りしたいと、そう思いましてね」
「勿論、あちらの牧場を紹介いたします。と言ってもココが良いと責任をもって言えるのはハルマン氏の所だけですが」
お互いに大きな声で話し合い始め周りにアピールする。
そして、直ぐに周りは反応した。
「半田さん、北野さん、失礼、話に割り込ませていただいても」
「ええ、勿論です吉沢さん」
「ありがとうございます。半田さん、恥ずかしながら、我々、社大は少しばかりの伝手をアメリカに持っていると自負しております」
「ははは、何をおっしゃいます。社大の吉沢さんが少しばかりなどと」
「ははは、いえいえ、少しばかりですよ。彼方の牧場はともかく競馬場はあまりです。ですが彼方の牧場に紹介することは出来ます。アメリカ遠征、いえ、故郷に錦を飾る壮挙の手伝いを少しばかりさせていただければ」
「おお、それでは、私は競馬場にも伝手があります。よろしければ私も一口噛ませていただいても」
「丘田さんまで、有難いことです。よろしくお願いいたします」
私も、私も。頑張ってください。グラスワンダーならやれます。
かくて、露骨なまでに馬主席の空気は暖かくなった。
……なお、半田オーナーは「ファン投票で選ばれて出ないのではファンに申し訳ない」とか言って宝塚記念には出て勝つ気である。
因みに、黄金世代が客を呼べる存在だと認識している興業主たるJRAは、全く違う意見を持っていることは明言しておくべきだろう。
因みに、史実だと林先生はアグネスワールドも出しましたが、こちらでは前日の中日スポーツ賞4歳ステークスに出しました。勝ちました。流石です。師匠の戸〇調教師亡き後「あ、無理だ直ぐに治らない。不良債権だ」と二冠馬ミホノブルボンを損切りしただけある。時代に適応した調教師です。
日本競馬がパート2の時代なので、強い馬には海外へ挑戦して目にもの見せて欲しいという思いが今より遥かに強いです。今までは経験不足で無理でしたが、昨年ホワイトグリント達が勝ったので希望が見えました。
他の春戦線は史実通りです。
次回はおそらく遅くなります。