敵がいないってこんなにも書きにくいんですね。
『阪神競馬、第7レース。芝1400メートルで行われる、サラ系3歳新馬戦。出走馬は13頭。馬場コンディションは稍重馬場。10万人を越える阪神競馬場史上最多の来場者が見守る中、夢のクラシックの舞台へと向かって、羽ばたくのはどの馬になるのか? 2コーナー奥のポケットからの発走、内回りコースを使用します……係員が離れました。さあ、13頭ゲートに収まって』
10万人の息が止まる。視線が馬に集まる。馬券を買ったそれぞれの馬に集中する視線ですらも、今回だけは白馬に集まる。いや、集まってしまう。
単純に分かりやすいからだ。
葦毛よりも分かりやすい純白。
遠目だからこそ一際目立つ純白は、ほぼ強制的に目を引きつける。
『各馬スタート。そろったスタートぉっ!?』
想定外の光景に、一瞬の沈黙の後、わあああああ。と悲鳴驚愕驚倒様々な感情が篭った10万人の大声が響き渡る。
『いえ、1番人気ホワイトグリントが前に出た、そのまま、差を広げていく。逃げる気なのかホワイトグリント』
【どう見ても差しのタイプなんですけどね。沙藤騎手はどうしたんでしょう】
「よし? いいスタートぇ」「え? そのまま」「逃げ馬なのか?」「いや、田柳が違うって言ってる」真っ先に白馬が鼻を切る。それだけなら良い。そのまま差を広げていく光景に観客席はまず困惑した。
『速い速い11秒3で最初の200を通過した。凄い勢いで7番ホワイトグリントが鼻を切っている』
【11秒3って……まさか、暴走したんでしょうか?】
「おい、まさか」「ああ、沙藤の奴、まさか」「おいおい嘘だろ」「大逃げにしても、速すぎる」そのまま緩めることの無い光景に観客は疑惑の目を向けた。
『4コーナー入ってそのまま先頭ホワイトグリントのままで差が広がる。2番手は6番トーヨーチーター1番ヒガシサファイヤ追走続いて──』
【400mのコーナー入ってもこの速さって、おいおいテツの奴。え? 本当に? やらかした?】
「嘘だろ、おい」「テレビ馬じゃねーぞ」「おい、ラジオの解説聞いてみろ。やっぱりだ」「大逃げじゃねえ、暴走させてやがる」後続に5馬身以上付けてなお広げていく白馬に観客は確信した。
『後ろとはすでに15馬身が離れるなか4コーナーを曲がり終えたホワイトグリントは3コーナーに向かいます。速い速すぎる。大丈夫でしょうか?』
【稍重馬場でこのタイムをコーナーでも緩めないって、この年の馬には容赦なさすぎる。もう口を開いたほど苦しいし痛いし、何よりスタミナが持たない。ちょっと1着は厳しいですね』
「やっぱりかよおい!」「沙藤の奴若すぎたんだ。あんな素質馬無理だったんだよ」「あんたが乗ってくれよ田柳。もしくは竹。丘部とか幾らでもいただろうが!」「もう口割り始めてんじゃんかあっ!」「オグリの子の素質馬潰しやがった!」「白雪姫ちゃんを泥だらけにすんなぁぁっ!」「あんなに茶色になって可哀想だろぅっ!」中間地点前で苦しさに口を開かせた挙句白馬を泥塗れにした大暴走に観客は激高した。
コーナーを曲がって緩んだコースを走る白馬を見つめる。
速い速すぎる。
600m通過タイムは33.9。
この歳の馬が出していいタイムじゃない。それどころか紛れもなく3歳馬史上最速タイムだ。
「阪神1400mの前3ハロンってさ]
「ああ、古馬でも35秒切るの稀だよ」
「なのに、34秒切ってるよ。3歳馬が切ってる。デビュー戦で切ってる──無理だな」
「ああ、無理だ。直線で崩れる。ツインターボするどころかそれより酷い。オグリの白馬になんっつーことしやがるんだ沙藤っっ!」
「あぁの馬鹿野郎っ!?」
怒声が咆哮となり10万人の観衆に伝播していく。
音の衝撃と呼ぶべき代物が、ターフにそそがれる。
注がれるのは沙藤徹三騎手。
俺達の夢を壊したと。
俺達のオグリキャップの子を壊したと。
俺達のオグリキャップの物語を汚したことに対する悪態と非難が観客席に充満していく。
そうしているうちに、ホワイトグリントは3コーナーを最終コーナーを曲がり始めた。
誰もが、諦めた大暴走。
誰もが、呆れ果てた大暴走。
誰もが、コーナーを曲がり直前に入れば沈むと確信した大暴走。
そして、人は知る。
葦毛の怪物の娘。
白雪姫ホワイトグリントを。
【あ、いや、違う】
最初に気付いたのはかつて天才と呼ばれた騎手である解説だった。
その眼には見える。暴走しているように見えるホワイトグリントの走りが綺麗すぎると。
あれは暴走していない。
そして、ラップタイムをチェックして息を呑む。
思わず、感嘆の笑みが漏れた。
『──3番手は3番マヤノイシス。2番手12番ゴールデンバードが追走。先頭は変わらず7番ホワイトグリントです。しかし、大丈夫か大丈夫なのかホワイトグリント。暴走していないか沙藤徹三』
【いいえ、暴走ではありません。区間タイムを見てください】
『え、タイムは、最初の200m11.3 400m22.6? え? 600m 33.9!!??』
【はい暴走していません。暴走しているにしてはラップが正確すぎます】
『ほ、ホワイトグリント大差を広げております。しかし、暴走ではありません。800mの通過タイム は』
【狙っていたのかよテツ。それが出来る馬なのかそいつは】
45と少し。
自分の体内時計通りならばこの程度だ。
順調だ。
やっていることは、調教のラップ指定の要領だ。
3ハロンまたは5ハロンを基準ラップで走るラップ指定調教と同じ。
違うのはその距離と速さのみ。
(大きな違いだけどな)
距離は3ハロンや5ハロンどころか7ハロン。
速さは1ハロン基準ラップ12.0の所を1ハロン11.3
狂ったのか。と言われてもおかしくない。沙藤も他の騎手がやっていたら正気を疑うし、ホワイトグリント以外の馬ではやらない。
だが、ホワイトグリントだからやる。
この程度では怪我の心配がないことを知り抜いているホワイトグリントだからやれる。
(苦しいだろう痛いだろうグリント)
ツインターボやカブラヤオーのように狂った逃げをする馬は、後半苦しさのあまり口を割る。
今のホワイトグリントも勿論、口を割っている。
苦しいと痛いよと口を割って
目を輝かせている
(よし)
狙い通り愛馬を存分に苦しめ痛めつけていることに満足しながら、沙藤は前を見据える。
残り600mつまりは3ハロンだ。
愛馬の状態から残り200mで体力は尽きる。
ツインターボならば逆噴射する。
(だが問題ない)
体力が尽きても問題ない。
体力が尽きても《その先》が
《その先》があるのがホワイトグリントだ。
「は、え?」「本当だ。暴走してない800も45.2だ」「え? 11.3-11.3-11.3-11.3で走って……る」「どうやったんだ、沙藤。どうやってんだよコレ」「公開調教じゃねーぞ」あまりのことに呆然とする観客。
先頭のホワイトグリントは直線に入った。
泥だらけになった白馬。
されど翠のターフにその白をくっきりと浮き立たせる。
大歓声が起こるべき状況。
されど、10万人を越える大観衆はただただ呆然とする。
小さなざわめきしか起きない競馬場。
ありとあらゆる感情が置き去りにされた観衆がただ目の前の白馬の疾走を見る。
目を見開いて、後続をはるか後方に置き去りにした白馬だけを見つめる。
『そんな、まだこのタイムで走っている!? 信じられない』
【新馬の走りじゃないですね。こんなペースだと胸は苦しいし、脚には痛みさえあるはずです。なのに】
『速い。速い。最後のコーナーも曲がって1000M56秒5。56秒5です。コーナーですら11.3で曲がっている』
【途中でスタミナが尽きるでしょうが問題ありません。後続とは20馬身以上大差がついている最後まで逃げ切ります】
『後続は来ない。後続はもう来ない。このまま逃げ切れるかホワイトグリント。いや、少しふらついた。これでは』
【ふらつきましたね。息は入れたと言え、流石にスタミナが尽きました。でも逃げ切れる。間違いなく逃げ切っ、なんだ、と】
オグリキャップの娘は、遂には天才と呼ばれた元騎手を驚愕させた。
『いや、ホワイトグリント未だ粘る』
ホワイトグリントは幸せだった。
自分でも速い速度でこんなに長く走れることが幸せだった。
普段はこんなに疲れるほど走ったらごすずんもごしゅじんもみっさんも止めるのに。
今日は、ここでは、まだまだ走らせてくれる。
此処はそういう特別な場所なんだ。
大好きな鞭をくれないのに気にならない。
だって、脚が痛くて胸が苦しいのに。
一歩一歩ターフを踏み込むごとに脚に痛みの電流が走る。
四肢を伸縮させるたびに軋むように痛みの爆発が起こる。
開ききった口からは白い泡さえ出ていて苦しみに痺れる。
全身に血を送り込もうとして心臓が苦しみの鼓動を轟かせる。
少しでも呼吸しようと大きく広げた鼻から肺が空気を貪る苦しみ。
なのに、走らせてくれる。
限界を越えて走らせてくれる。
ああ、なんて、素敵な場所なんだろう。
ああ、なんて──
『なんだ。残り200mでホワイトグリントの顔が』
きっっっっっっっっもちいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!??
《その先》へとホワイトグリントは突入した。
『笑顔だ。笑顔になった。笑顔で白馬の子が進む。ふらついても全く速度を落とさないっ! そのままっ、大差をつけて進む!』
【馬鹿なっ! 何で、まだそのまま走れるんやっ! 息さえ苦しいやろっ。限界やろ! なんで、限界を越えて走れるんやっ! 馬は苦しくて痛いと走れないんやでっ! 越えたんか、精神で肉体の限界を……精神で肉体の限界を越えた馬なんて、今まで、あいつしか】
プロだからこそ分かる目の前の白馬の走りの異常さ。驚愕の余りに解説としての態度を投げ捨ててしまった声が、観客の持つラジオから漏れ聞こえる。
ある観客は、ラジオの漏れ聞こえる言葉に連想し思い出した
ある観客は、その笑顔のすばらしさに目を見開くと同時に思い出した。
ある観客は、僅かにふらついてすらいるのに変わらない速度で走る白馬の姿に思い出した。
──あれは
笑顔のすばらしさ越しでも明らかな限界を超えた疾走。
間違いなく勝った。
それでも一生懸命に限界を越えて走っている。
笑顔で限界を越えている。
限界なんて無いのだと。
限界なんて越えられるのだと。
そこに、道がある限り限界を越えて走ると。
ただ一生懸命に。
前へと。
──ああ、あれは
オグリキャップ。
誰もがその名を心の中や声に出して呼ぶ。
あきらめなかった。
最後まであきらめなかった。
ああやって、ふらついてもあきらめなかった。
葦毛の馬体をポンポン弾ませるように走ってあきらめなかった。
あれは、あの走りは──もう無理だ。勝てない。不可能だ。もう終わった。誰もがそう諦めた状況を何時も諦めずに覆し続けた走りだ。
忙しすぎる。契約が取れなかった。些細なことでつるし上げられた。家族と隙間が出来た。辞めたい。もう嫌だ。疲れた。何もしたくない。
そんな人々の目を奪い共感と感動と熱狂を呼んだ走りだ。
もう少し続けよう。まだ少し頑張ろう。負けるものか。家族と話し合おう。
だって、あいつは──オグリキャップはあんなに諦めずに頑張って走っているのだから。
日々の疲れや嫌なことを吹き飛ばしてくれ前を向かせてくれた走りだ。
日本競馬史上最高のアイドルの走りだ。
人々は口にする。
「がんばれ」
もう悪態はない
「いけ」
もう非難はない
「もう少しっ」
諦めも呆れもない
「走れ」
そこには共感と感動と熱狂しかない。
かつて、その父がもたらしたように。
ただその名を叫ばせる。
「「「「ホワイトグリント-!!!」」」」
オグリキャップの夢の続きの名だけが阪神競馬場史上最大数を更新した観客席で爆発する。
その先で白馬は疾走する。口を割り泡さえ吹いた満面の笑顔の白馬は疾走する。
ゴール板へと。
『残り100m。しかしホワイトグリントの脚色は衰えません!』
【本物や。本物のオグリキャップの、葦毛の怪物の子や】
後続は来る気配さえない。スタンドからも馬主席からも見えるはただ一頭。
『満面の笑顔だホワイトグリント! 嬉しいのか勝つのがうれしいのかホワイトグリント!』
翠のターフを純白ただ一色が走り抜ける。
『満面の良い笑顔でゴールイン! 1着でゴールイン』
うわああああ!
圧さえ感じる大歓声が阪神競馬場に木霊する中、沙藤徹三は目論見通りに上手くいったことに笑みを浮かべた。
だって、見ろこの愛馬の満足しきった姿を。
「ようやったな、グリント」
「ぷひ」
「苦しかったやろ痛かったやろ」
「ぷひん♪」
「これがレースや。これから何度も連れてってやるからな」
「ぷひひん♪」
人間の言葉は分からないが、そのニュアンスと何よりも鞍上への厚い信頼により、こんな素敵な場所に何度も来れることを理解したグリントは満面の笑みのままその目を輝かせた。
『今、日本競馬に新たな歴史が刻まれました!
白毛の馬の初勝利という歴史が刻まれました!』
グリント! グリント!
『刻んだのはあのオグリキャップの娘、ホワイトグリントです──これは』
グリント! グリント! グ・リ・ン・ト! グ・リ・ン・ト! グーリーンート! グーリーンート!
『コールです。ダービーでの騎手に対するもののような騎手に対するものではなく、馬名に対してのコールです! 今までオグリキャップとオグリローマンとトウカイテイオーしかされていないコールが、G1の大舞台ではなく新馬戦でコールが行われています。珍しいというよりあり得ません! ありえませんが、間違いなくコールが行われています。やはり、皆さん、白馬初の勝利を讃えられているのでしょうか』
【それもあると思いますが、多分根っこは違うと思います】
『そうなんですか? 田柳さん』
【ええ、ファンの方は確信したのでしょう。あの白馬の子が紛れもなく本物だと。日本競馬で初めて馬名をコールされたオグリキャップに匹敵する偉業を達成すると。今の私のようにです】
『はい、実は、私もそう思っています。夢を見ました。いえ、夢を確信いたしました。あ、タイムが出ました。
勝ちタイムは1分19秒1.俄かには信じられませんが各200mを11秒3丁度で走り切りました。ホワイトグリント。最初から最後まで同じタイム何て、本当に、本当に信じられません。
そして──ああ、何てことでしょう。レコードタイムです。
芝1400mの日本レコードタイムを新馬戦で出しました。
──その名は、ホワイトグリントです』
グリント! グリント! グ・リ・ン・ト! グ・リ・ン・ト! グーリーンート! グーリーンート!
一際、響き渡るコールの中を何度もスタンドに頭を下げながら通り、地下通路を歩いて、体重を測る部屋に向かう。その途中、トロピカルビーチと並び一緒に進む。
「おめでとうテツ。良い馬やなそいつは」
「あ、南田さん。おつかれさまです。本当に良い馬ですよ。コイツは」
「せやな。初めてあのオグリの子って呼べる馬をみれたわ。こら良い土産話になる」
「南田さん。そんな土産話何て」
「ええんや。自分の身体や。よぉ分かってる。騎手人生の終わりは近いわ……テツ」
「はい」
「俺はナリタブライアンに初めて乗った時、こいつは俺のダービー馬と確信した。まあ俺は最初の時2着やったけど──あいつと一緒にクラシック3冠を獲ったで」
「……」
「そいつは、そのレベルや。鞍上誰にも渡すんやないで」
「はい、ありがとうございます」
分かっている。引退を決めた南田だからこそこう言ってくれるのだ。
他の周りの騎手の目のぎらつきは凄まじいものがあった。
だが、
「渡さないよ。ホワイトグリント」
ひんっ。
自分が話しかけると必ず応えてくれる愛馬は渡さない。
そう心して、馬主や調教師に挨拶しつつ沙藤徹三は計測に向かった。
一夜明けて。
『新馬戦レコード勝利!』『オグリキャップの愛娘登場!』『白馬が阪神競馬場を揺らした!』『阪神競馬場史上最多10万1138人は物語の始まりを見た!』『あまりの美しさ、それは白雪姫!』
一面に載せたスポーツ新聞ではこの世代の主役として扱われた。
ラジオどころかテレビですらこのレースを取り上げられた。
それを見て聞いてレース内容に驚き興奮したファンたちは確信した。
この馬に勝てる馬は同世代には居ない。
トウメイ達歴史の彼方に去っていった牝馬やヒシアマゾンのように、牡馬でも、牝馬でも関係なく力を発揮してくれるだろう。
性別など超越するこの馬こそが世代最強だ。
あの白雪姫は直ぐにでも同世代と決着をつけ、古馬を世界を相手にするだろうと確信した。
これから始まるのは、オグリキャップの物語を受け継いだ物語。白雪姫の物語が始まると確信した。
そんな確信は僅か5日後に砕かれる
(どうってことない──いつも通りにやればいい)
圧倒的な単勝に推されながらも出遅れた馬に騎乗する騎手は心の中で独り言ちた。
馬に負担を一切かけることなくあっという間に先団に取り付き、2番手の位置をキープする。
マーク屋。
蔑称に聞こえるかもしれない言葉。しかし、騎手は畏怖と敬意を持ってそう呼ばれる。
圧倒的な1番人気馬をマークし、最良のポジションで可能な限り足を溜め能力的に劣るとみなされた馬で差し切り何度も下克上を成し遂げる。
傑出した騎乗能力があって初めて成しえる手腕には畏怖と敬意しかない。
的羽を自由にするな。は騎手の中で常識に等しい。だが
(7割程度の力でいい。こいつはこの場では──二段ほど抜けている)
圧倒的な能力を持つ馬に乗られた時には、どうしようもない。
『鞭を使うことなく抜け出た。凄い凄い脚だ。あっという間に後続を引き離していく』
軽く気合を入れられただけで、先頭を抜き去り、後続を引き離す。
先頭は必死になって追っているのに、後続は何度も鞭で叩いているのに、差を広げていく。
騎手は鞭は勿論、追うことさえしていない、完璧に流しているのに差を広げる脚。
【信じられません。おそらく7割くらいしか能力を出してません】
その脚を見た人々は確信した。
あの黄金の脚はあの白馬に、ホワイトグリントに届く。
あのマル外はそれほどの馬だ。マル外だからと色眼鏡は許されない。
『的羽は持ったままだ。持ったまま、馬なりのまま、同じく加速していた他馬を突き放していく』
【強い。本当に強い馬しか出来ないです。これは。なのに全力を出していない】
この日、人々が抱いていた確信は粉砕された。
この世代にホワイトグリントに伍しうる存在は居ないという確信は粉砕された。
『あっという間に3馬身。そして流して、ゴール! つ、強い、これは強い! 空恐ろしい走りです!』
これは、白雪姫の物語ではない。
『先週のホワイトグリントに続き、凄まじい馬が出ました! その名は、グラスワンダー!!!』
これは、黄金世代の白雪姫の物語である。
ホワイトグリントは他の世代ならば無敵クラスです。勝ち過ぎて強すぎてつまらない。そんな評価さえされうる馬です。
だがこの世代は違う。ギュ
このクラスがあと3頭いますからね!
いや、本当に、1流馬キングヘイロー陣営が「同世代が強すぎる」と絶望したのも仕方ありません。