黄金世代の白雪姫   作:サリエリキキ

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 ぜいこみさん、惰性で生きてる人間さん、さかなのおかしらさん、うさづきさん、評価付けありがとうございます。やる気が出ます
 感想、ここすきなど皆さんありがとうございます。頑張ります。




 史実だと、前年比2割以上の馬券売上観客数減少したレースが珍しくない絶望に涙さえ涸れ果てた頃ですが、この世界線ではそんなことがないのでJRA元気です。


宝塚記念を前にして

 1999. 6.17

『あと僅かだ! カイフタラが遅れた! カイフタラが遅れた! 

 残すはエンゼリのみ! 

 頑張れ! メジロブライト頑張れ! 

 頑張れ! 頑張れ! 抜かせ! 

 抜かした! エンゼリ! メジロブライト! 

 メジロブライトだ! 

 メジロブライトだぁぁっ! 

 メジロのステイヤーだ! 日本のメジロだ! 日本の血脈だ! 

 川内が左手を上げました! 

 アスコット競馬場に日本の旗を立てました! 

 ゴールドカップに! 金杯に日本の旗を立てました!』

 

 安田記念の4日後、メジロがおじいさんの夢を果たした。

 何十年も脈々と受け継いだ日本の血が挑戦すると、多くのファンが応援団としていき、伝説を見た。

 涙ながらにおじいさんの遺影を掲げるメジロのおばあちゃんの姿に、入場出来たファンの拍手と歓声は記念写真を終えるまで続いた。

 

 

 

 

 

 その日から約4週間後、北海道北野牧場にて

 

 

 ひんっ(全くお前さんという奴はボスとしての自覚が足りん)

 

 午前中にファンを乗せたりファンサービスに勤しんだあと、腹に自分の仔がいる妻ホーリックスと散歩して厩舎まで送りご機嫌なオグリキャップは、モグモグと牧草を食んでいたタマモクロスの台詞に顔をしかめた。

 

 ひんっ(種付けしたら牝など放置すべきだろう。なのにお前さんときたら牝の傍に居るなど、何時も何時もおかしなことばかり。ボスとして、いや大人の牡としてありえん。もっと威厳ある態度を取れ、俺のように。

 お前の姿を群れの連中が真似したらどう──むぅ)

 

 馬の常識を説く馬界最強広域指定団体オグリキャップ組相談役タマモクロスは、近づいてくる軽トラの姿に顔をしかめた。

 

 オグリキャップと違いタマモクロスは基本的に人間が嫌いだ。

 居心地良かった生まれ故郷から連れ出されて走らせ続けられた上で、何頭もの牝馬に強制的な種付けをさせられたのだから嫌いだ。

 人間が近づく気配に、ここに落ち着くまで居心地悪い場所ばかりだった事を思いだし顔をしかめてしまう。

 近くにくるのはオグリキャップみたいに正面から挑む馬でなく、囲んでくるような根性の無い気に入らない馬たちばかり。

 レースで囲まれて転んだことのあるタマモクロスにとって嫌な馬しか近くにいなかった。

 ついつい喧嘩して、人間をも攻撃して病院送りにしまったのだ。

 

 人間は怖いから。

 

「秋天だ。いくぞ。勝つぞ。天皇賞だ。秋だ。秋天なんだ。そこに。乗るんだ。勝てる馬に、お前に乗れてるんだ。乗り替わりなんかさせるか。お前は俺の馬だ。渡すものか。勝つ」脂汗流しながらこんな事言い続ける足の大腿骨折れた奴に乗られてみろ怖いとしか思えねぇ。

 最初にオグリキャップと走った時、激痛を耐えながら勝ちにいって勝った鞍上は凄いと思う。相棒として誇らしいと思う。

 

 だが、怖い。

 

 ただただ怖い。

 

 ギラギラした相棒がレースより怖くてしかたなかった。

 

 乗って欲しくなかった。

 

 オグリキャップには言わないが、初めて一緒に走ったあのレースで一番怖いのは迫るオグリキャップではなく乗っている相棒だった。

 激痛に喘ぎながらも自分に風車鞭して追う相棒の精神性が怖くて仕方なかった。

 早く降ろしたかった。降りて欲しかった。

 相棒を早く降ろしたくて前目に走って勝った。

 大嫌いな馬運車よりも相棒が怖かった。

 

 思い出したくもないが、心の底に刻み込まれてしまった。

 

 やはり、人間は怖くて嫌いだ。あのレースから更に嫌いになった。

 

 

 

 ──現役時にプールの時以外は周りの人間が大好きだったオグリキャップと違って、タマモクロスは厩務員以外は大嫌いであり、厩務員も嫌いである。

 

 

 

 ふひん(怖いから嫌いなんてガキみてぇな俺は)

 

 嫌になるがやむを得ない。

 それからの種牡馬生活で、人間がさらに怖くなり嫌いになったのだから。嫌だ、薬は嫌だ、無理やり立たせられて……辞めよう忘れよう。今はそんなことがないのだから。

 

 周りにはオグリキャップ以外の馬もいる。せめて威厳ある姿で軽トラを迎える決意をして立ちながら日々を振り替える。

 

 あれからしばらくの日が過ぎた。

 ここは良い。怖さを忘れることが出来た。

 最初は傍に馬はいなかったし、走りを教えた牧場で産まれた幼駒は痛みが好きだが根性がある馬だったし、増えた馬はオグリキャップの群れに入ったから空気を読むし、何よりも例外的に大好きな人間たちに

 

 

 

 

 

 軽トラのドアが開き

 

「ほれ、お前ら今日のオヤツはスイカやぞ。ニシキダクロスの初勝利の祝いだ。よーく、冷やしとるからな」

 

 うぃぃんっ♡(おっちゃ~ん♡)

 

 その姿を見たタマモクロスは瞬時に子供になり突進した。

 

 威厳? 

 なにそれ

 周りの馬? 

 敵だよ。おっちゃんにすり寄るもの。

 

 うぃぃんっ(撫でてぇゃっ)

 

 柵の扉が開くと同時に、他の馬より先にタマモクロスは再会できた大好きな人間の胸に柔らかく飛び込む。

 柔らかく飛び込まなければ、大好きな人間を傷つけるなんておぞましいことをしてしまうからだ。

 

 ふぃぃんっ(ふぁぁっっ、おっちゃ~ん)

 

「ははっ、相変わらず、昔っから甘えん坊やなあ」

 

 錦田場長に撫でてもらい至福の表情で甘えるタマモクロス。

 

「相変わらずタマは素直で可愛いなあ」

 

 せっせせっせと切ったスイカを寄ってきた馬に与える同乗していた従業員は目を細める。

 今までタマモクロスを預託された厩舎や牧場の従業員が見聞きしたら、「嘘だ! そいつは、近くにいる馬全部に喧嘩売るだけじゃなく、人間には噛みついて蹴り飛ばして何人も病院送りにした気性難の悪魔だった!」と悲鳴を上げるほど今のタマモクロスは素直で可愛い馬だった。

 

 錦田場長一家に再会して以来、気性難では無くなったのだタマモクロスは。

 訪れた一般客にも、撫でさせてくれるほど優しく穏やかだけどキリッとしてて可愛格好良いと評判である。

 なお、「ヤベェ、ビッグボスは怖いけど絶対に突然キレたりしない良いボスだ。けど、相談役はヤベェ。気に障ることしたら、いきなりプッツンするタイプだ。近寄らないでおこう」矯正が終わり社大に帰ったサンデーサイレンスにそんな評価をされていたりするのが、馬社会におけるタマモクロスである。

 

 うぃぃんっ(おっちゃん、おっちゃん、()()、ウチええこにしてたで。だから、おっちゃんの手からスイカ、スイカちょうだいっ)

 

「お、スイカ食べたいんやな。ほれ」

 

 うぃぃんっ(わーい)

 

 なので、錦田場長との触れ合いを邪魔する愚かな馬は居なかった。

 その為、プッツンしたタマモクロスの姿は北野牧場に来てから見た人も馬も居なかった……馬は本能で危険馬だと感じ取ったが。

 錦田場長に纏わりつくその姿は家に飼われている小動物そのものだった。

 この状態のタマモクロスに一言言えるボスであり、自身とは別の意味で大人の牡馬の威厳の無い姿に一言言い返してもいいオグリキャップだが。

 

 スイカ、うま、スイカ、うま

 タマモクロスにアレコレ言われた事を忘れ、つめた~いスイカを満喫するオグリキャップにそんな思考は欠片もない。あるはずがない。

 

 生産者代表として後継者の錦田場長の息子を送り出した北野牧場は、宝塚記念を前にして平和だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 1999/7/11宝塚記念

 

 宝塚記念。

 年末の総決算ともいえる有馬記念と同様に、上半期の締めくくりのレースとして出走馬をファン投票で選出するレースを作ろう。そう考え、阪神競馬場新スタンドが落成した記念に、翌夏の1960年に創設されたレースである。

 趣旨は、関西地区の競馬を華やかに盛り上げるである。

 

 つまりは、「有馬記念? 関東でファン投票の大レースだと! くそっ東京モンだけっ! 何時も何時も! よし、関西でも作るんだ! ファン投票の大レースを! あっちが冬なら夏だ! 初夏に大レース作れ!」の流れで作られたレースである。スタンド云々はぶっちゃけ理由付けだ

 今年の1999年からは専用のファンファーレさえ用意されたレースは、春の中距離実力日本一のレースと位置付けられ関西の誇りとして──

 

 

 …………

 

「阪神レース場は客が入らなすぎます。八万人も入ったら一杯な競馬場では今年の宝塚記念は不適でしょう。前回のブームでオサイチジョージが勝った時のように、途中で客を入れることが出来なくなるなどと許されません。

 関東で、東京競馬場でやるべきです」

 

 関西の誇りとして

 

「は? 開催地を変える? 何を言うとんや。伝統ある宝塚記念やぞ。当然阪神やろ。宝塚市阪神競馬場でやった上で、ファンに観戦を満足してもらえるように環境を整えんのがワシらの仕事やろ。なのに、何言うてんのや」

 

 関西の誇りとし

 

「お気持ちは分かります。しかし、仮設スタンドを増設しようにも、阪神競馬場は土地が無いのです。10万人を超えるのは危険です。ホワイトグリントの阪神3歳牝馬ステークスの時のような子供が落下するなどということは絶対に避けるべきです」

 

 関西の誇りと

 

「あれは、おんどれらがイベントちうてオグリまで呼んでしまったからや。大阪公園でイベント会場作ってそこにオグリをと言うた、うちらの意見を無視しよってからに」

 

 関西の誇り

 

「阪神3歳牝馬ステークスの時は許可が取れなかったのです。許可が取れた桜花賞を念頭には置けません。そして、安全面の問題とは念には念を押すべきなのです。22万人を問題なく入れた広い東京競馬場と、改修を終えた中山での開催を考えるべきでしょう。トレセンの改修も終わった今なら水も問題なく──」

 

 関西の誇

 

「きたないで! そのために中山の改修と美浦トレセンの改修を優先したんか! おんどれら! ブームで客が大挙しとるし、有馬記念は一番儲かるレースだからその為にって錦の御旗立ておって卑怯や!」

 

 関西の

 

「そんなことはありません。栗東トレーニングセンターも改修したではありませんか。

 必要だったのです。必要だからそうしているのです。中山競馬場と、東西トレーニングセンターだけではありません。それからが本番です。

 御承知の通り、日本競馬に更なる多様性を作る予定です。

 ホワイトグリントが──」

 

 ──流れるように室内の全員が、二拝二拍手一拝をもって、部屋にある神棚に置かれている葦毛馬像と白毛馬像に祈りをささげた。JRAの信仰心は揺るがない。

 

「ホワイトグリントが愚かな我々に教えてくれたように、親のファンを子に受け継がせるためには、マル父の馬たちの活躍が不可欠です。

 ……我々は愚かしいことに勘違いしておりました。サンデーたち輸入馬産駒でも問題ない。と。

 ハイセイコー後に年800万人まで失われた観客を呼び戻してくれたオグリキャップから何も学んでいませんでした。

「競馬場に行かなくとも、テレビを見れば競馬が見れる。馬券は場外馬券場などで買えばいい」そう割り切って居なくなった観客ではなく、オグリキャップが呼び込んでくれた新規の客はオグリキャップの子が活躍すると思っていたから競馬場に脚を運んでくれていたのにっ。それなのにっ。われわれ、はっ(男泣き

 失礼。

 ……我々は、オグリキャップとホワイトグリントを育成した瀬戸内調教師の「目を奪われ自分と重ねさせて心から応援したくならなければ、スターホースにはなれない。共感されなければ愛されない」。あの金言を。あまりにも偉大な金言を理解していませんでした」

 

 もう一番、全員で二拝二拍手一拝を行い西の大物が応える。信仰心はより強くより深くなっていた。

 

「その通りや。社会の変化でお客さんは居なくなっても売上は上がったハイセイコー後と、オグリキャップ後はそこが違っとった。

 お客さんは共感して愛することが出来る馬を見にきとったんや。日本馬の子を見にきとったんや」

「ええ、ですから、馬を調べていました。馬の持つ物語を愛するために」

「なのに。活躍しとる馬は、重賞を取る馬は。サンデー産駒ばかり。

 一発7000万のヘイローを父に持ち、20億でアメリカから輸入された良血の産駒ばかり。一発800万やから、裕福な大牧場でしか付けられず育てられない産駒ばかり。高額やから入厩先も名門になる産駒ばかり。

 サンデー産駒は、人間で言えば、親の金で留学して親の縁でええ会社入った生まれついての富裕層のエリートや。

 バブル崩壊で、減俸もされず会社に居残れるか、高い退職金貰って潰れる会社から逃げたか、新入社員の面接して鼻で笑って✕つけた者達と認識されとる層や。

 生まれついての勝ち組だけが、外国の血を引いた生まれついての勝ち組だけが勝つ。

 どこに…………どこに、競馬場にわざわざ足運んでくれて馬券握ってくれるお客さんから共感される要素があるんや! 

 愛されるわけないわ! 

 敵やないか! 

 そら、客が冷めるしいなくなってたわ! 

 サンデーサイレンスのくそったれがぁ! 

 何よりも! オグリキャップの物語! 売上も客も増やしてくれた物語にありがとうと号泣しておいて! オグリキャップの娘の白馬が阪神競馬場の新馬戦に10万のお客さんを呼び込んでくださり! ようやく客層が変わったとわかったワシラぁ!! どあほぅや!!! 

「我々は愚かでした。本当に」

「……サンデー産駒じゃ共感されん。オグリキャップやホワイトグリントは真似できんからスターホース。この二つが分かるまで長い時間を無駄にしたわ。

 スターは、人間がどうのこうのしても絶対に作れん。ホワイトグリントが現れたのは奇跡や。

 神はおる。絶対に。

 それはそれとして、サンデー産駒はクソや」

 

 競馬運営組織であるJRAは、昨年からのブームの再来から現状を分析し、ここ数年怯えていた競馬ブームの余波が終わった冬の時代をもたらしかけていた要因がサンデーサイレンス産駒の躍進にあり! と確信──他にもJRAの慢心や不景気や娯楽の多様化などがあるのだが、組織レベルで確信してしまったのだから仕方ない──し、サンデーサイレンスたち輸入御三家産駒が嫌いになっていた。

 

「真のスターホースは現れるものであって作られるものではない。親の人気は子へと受け継がれる。それらが分かっただけでもよしとしましょう」

「せやな。無理くりスター作ったりする前でよかったわ。そんなことしたら、あかん。逆に、嫌気さしてもうてお客さん居なくなるで」

「客というのは、本当に嫌になるといなくなりますからな。

 三年前からの改善要望アンケートにあった「サンデー産駒しか勝たないからつまらない」「サンデーって何だよオグリの子何処だよ」「サンデー産駒ばかり、もう競馬見たくない」という大多数を占めていた意見を真面目に取り上げなかったのは、本当に愚かでした。

 それは生産界の問題だから農水省の担当では、と考えてしまっていた。

 あれこそが、去り行く客が最後に遺してくれた怨敵への警告だったのに」

 

 いや、怨敵になっていた。

 

「……オグリが引退してからも、メジロ三代春天制覇メジロマックイーン、皇帝の息子トウカイテイオー、スパルタの安馬ミホノブルボン。他にもライスシャワー、ツインターボたちと、共感される個性ある人気馬たちによって右肩上がりの来客と売上で気付かなかったわ。

 思い返せば、ビワハヤヒデたち高額外国産種牡馬産駒の世代辺りから冷めてきとったな。トウカイテイオーの有馬記念……

 いや、ナリタブライアンが阪神大賞典制して故障した辺りで、オグリの余波が薄れてたわ。ブライアンの海外制覇の夢が消えて売上も来客も鈍った。

 ……あの時期に競馬番組を終えたマスコミは憎たらしいけど流石や。よぉ見とる。

 ほんで、サンデーサイレンス旋風で、オグリ産駒が活躍せんからオグリの熱が吹き飛ばされよった。

 ろくな事せんなあの怨敵ども。

 今年のダービーもメイショウさんとこのドトウとかサンデー産駒以外広報に力いれて良かったで、評判は上々や」

 

 そして、輸入種牡馬御三家産駒以外の広報を強めた方が反応が良く客が入りグッズが売れることもあり、JRAの主観で否定する要素が欠片もなかった。

 だって、増えた客層が嫌がっていた要因であるサンデー産駒躍進と報道にJRAが適切に対処し始めたのだから効果覿面だよ。

 

「ホワイトグリントのように、オグリキャップたちが連れてきた客はオグリキャップたちの子を見に競馬場に来ていたのに、怨敵どもに追い出されましたからな。

 ホワイトグリントが居なければサンデーサイレンス産駒が受け入れられるのには、10年は必要だったでしょう。その間にどれだけの客と売上が減ったのか……

 ……あのままでは、ホワイトグリントデビュー前の一昨年、我々が最悪の最悪と想定した。インフレを加味した上で、10年で売上が3兆4000億円、観客1100万人まで減る状況が実際に起きたかもしれません」

 

 史実では、10年で馬券売上が4兆円から2兆8000億円へと1兆2000億円減り(インフレを加味すればほぼ半分)、観客が1400万人から750万人へと650万人以上減る。

 つまりはオグリが中央に来るまでより悪くなる。オグリが呼んでくれた客層と売上という財産を吹っ飛ばして更に下回る。

 そこまで人も去り売上も無くなってから、サンデー血統が根付きパート1国になる。

 そんな破滅までは流石のJRAも想定できなかったのは、誰にとっても幸いだったかもしれない。

 JRA上層部が憤死しかねないのだから。

 

「競馬は興行や。客を呼び込んで銭を落としてくれる馬こそが偉大な名馬や。勝ち負けはその次や。

 たとえ100戦100敗しようが、客を呼び込んで銭を落として貰えれば、その馬は紛れもなく真の名馬や。

 そして、サンデー産駒では絶対なれん」

 

 なので、容赦なくJRAはサンデーサイレンスたち輸入種牡馬御三家産駒の活躍を抑えにかかる。

 

『おっしゃる通りです。我々は何としても、親のファンを子へと受け継いでもらわなければなりません。

 ですので、着工したダート専用の前橋競馬場においては、笠松のような重いダートとする予定です。これなら他のオグリキャップ産駒も活躍してくれる(※ホーリックス産駒かステートキャップ以外活躍しません)でしょう。

 前橋には、ダートスプリントとダートマイルとダート長距離──ホワイトスノーの活躍で2000mダートG1も追加される──を始めとしたダートG1を、拡張工事中の札幌競馬場では洋芝の中距離とマイルG1を、加えて、拡張工事中の新潟で短距離G1を作り、更には中京競馬場を拡張して長距離G1を追加する。

 更に、G1だけでなくG2G3の賞金も上げる。

 そうすることで、輸入種牡馬産駒以外の、日本種牡馬産駒が活躍できる場を作るのです。

 そのためにも、日本競馬に更なる多様性を作ることが、今、必要なのです。パート2国の立場とブームによる利益を基にして作り上げます。その──」

 

 その為にも宝塚記念を大成功にするために関東で──

 

「ふざけんなぁ! 聞いていれば! 全部、三関の東! 東ばかりやないか! 関西にも作らんかい! 新しい重賞! 新しい競馬場! ええ加減にせえよ! 業突く張りの関東モンが!」

 

 その為にも宝塚記念を大成功にするために

 

「はぁ! 言わせておけば! 阪神競馬場は1991年に改修したでしょうが! 前のブームの儲け使ってぇ! それに! 土地がねえんだよ関西はよぉっ! マトモなインフラある平地全部使っちまって盆地だけじゃねーかぁ! 盆地に競馬場作れるわけねーだろ!」※作れますが工事費も維持費も高くなり工数も増えるので誰もやりません。

 

 その為にも宝塚記念

 

「抜かせや! 前のブームで中山も改修したやろがぁ! 阪神だけみたいにいいおってぇ」※大抵の施設をオグリブームの儲けで改修しました

「そこまで言うなら、関西馬のホワイトグリントは東京には関東には遠征させんぞ!」※それを決めるのは馬主の北野オーナーです

 

 その為にも

 

「ふ、ふざけんな! それ言ったら戦争だろうがぁぁっ! オグリとグリントは、関西でも関東でもない神の馬ということにしただろうが! あんた計画に賛同してサインしておいてそれはないだろ! 日本競馬の多様性を作る計画書に賛同してサインしただろうがぁ! 宝塚移転もその一環何だよぉ!」※阪神競馬場から宝塚記念を奪うなんて計画書には一文字も書かれていません

 

 その

 

「抜かせ! オグリも! グリントも! みんな関西馬なんや! なのにデカいレース関東ばっかりでやりおってから──」

 

 ……………………※お見苦しいのでJRAの会議はカットいたします。

 

 

 

 ──関西の誇りとして宝塚記念は今年も阪神競馬場にて行われる。

 

昨年の天覧競馬時の如く内紛競馬ブームに一致団結するJRAは、今回も大阪城公園などの臨時会場を抑え、収容人数が厳しい阪神競馬場においても出来る限りの多くのファンが安全かつ快適に観戦が出来るように努力した。

 

 

 

 

 当然だが、トウカイステージが引退した頃に完成したここまでして作ったG1は、大半がサンデーサイレンスの系譜の狩り場になった。

 が、その頃にはサンデー血統が日本に根付いたうえで競馬の年間観客数が野球に次ぐ数になっていたのでJRAは一切気にしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※作者注

 

 JRAがパート2国の今のうちにG1を作ろうとしているのは、作れるからです。

 パート1国の場合には作ろうとしても国際セリ名簿基準委員会などとの調整が難しく中々作れません。

 何よりも、原資をブームで稼いだので作ろうとしてます。

 

 パート1国とパート2国の違いは一流と二流の違いです

 パート1国のG1は国際的に通用する最高位レースで、セリ名簿での価値や競走馬の評価に大きく影響します。だから、Jpn1なら作れますが新しいG1は中々作れません。

 しかし、パート2国のG1は国内では最高格付けですが、国際的には格が低く、競馬界での評価が限定的なため、新しく作るハードルは低いです。

 

 そういう意味で、今現役の日本馬で国際的に認められるG1馬は、国内唯一の国際GIジャパンカップか海外G1を制したエルコンドルパサーとホワイトグリントとメジロブライトとシーキングザパールだけになります。

 他の馬は国際的にはG1馬ではありません。

 作中では昨年の1998年、日本のダートを走っていないホワイトグリントが最優秀ダート馬にも選ばれたのは、パート1国のダートG1を2勝したという桁外れの戦績によるものです。満票で選出されました。

 ホワイトグリントが登録した途端、安田記念に登録していた海外馬が逃げたのは「本物のG1馬が来た」からです。それほどにパート1国とパート2国のG1は、特に海外から見て格が違います。

 今でいうとコリアカップをイメージしてください。当レースは韓国内ではG1ですが国際的にはG3です。1999当時はそこまで規定されていなかっただけで、日本のG1はジャパンカップを除いて海外から見ればG2・G3相当です。

 だからこそ、セイウンスカイ陣営やグラスワンダー陣営は海外のパート1国に行って本物のG1馬になろうとしています。彼らは愛馬が本物のG1馬ホワイトグリントと互角だとレースで走って確信したのです。




 本物のG1馬タイキシャトルの国内評価の低さは、ホワイトグリントと走らなかったからなのでどうしようもないです
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