(正直理由うんたらとか読まなくても特段問題はないです。最初と最後で主人公がどう考えてるのか、どうしたのか、どうなったのかぐらいわかれば十分です。次話にお進みください)
ちょっぴりイカれた主人公ですが温かい目で見守っていてください。
多分努力の方向性は間違っていなかった。己の力を見誤った修行をしてしまったからなのだろうか。
私は死んだらしい。実感は湧かないのだが……、いや死んだから実もくそもないのだが。
まあ走馬灯がチラリと流れてきたので少し人生を振り返ってみようと思う。
人との交流もあまりできなかった私は、愚かな人生を過ごしていたと断言できる。
そんな私の人生を変えたのはふと本屋に立ち寄り、『陰の実力者になりたくて!』を手に取ったときであった。衝撃が走った。
何て素晴らしい作品なんだと。
陰実の世界にのめり込んでいった私はこう思うようになっていった。『シャドウ様を殺したい』と。
突拍子もないことなのは重々承知している。最初はシャドウ様の凄さに気づくことができなかった。だが、理解を深めるうちにどれだけシャドウ様が優れた武の高みにいるのかを理解した。そして私はシャドウ様に憧れる少女Aになったのだ。だが少女Aのままでは良いのか?否、変わるべきである。
ならばと体づくりを始めたのだ。自分を鍛えるうちにこう考えるようになったのだ。もしシャドウ様を殺せたのなら、自身の武は凄まじいほどの高みに届いているのだろう。
その時、私はどんな幸福で満たされるのだろうか。魅力的である七陰や、ナンバーズ達が心の絶対的な支えであるシャドウ様を失い絶望する姿はどれほど美しいのだろうかと。
この殺意は愛である。敬意である。そして憧れである。
それから私は、無駄な努力であるのは百も承知で、ただひたすらシャドウ様を殺せるぐらいの力をつけようと、強くなるために必要なものは全力で習得し、人生をかけて努力し続けた。いつかシャドウ様を殺せることを夢見て。
だけど、時が経つにつれて自身の知能が上がるとともに自分がいかに馬鹿馬鹿しいことをしているのかと。その上でこのようなものでシャドウ様に敵うはずがないと。
こんなことをしていても、あのシャドウ様を殺すことなど不可能なのだ。
別に自信がないわけではない。軍人程度ならば余裕で勝てるほどであると自負している。
しかし、シャドウ様は比にならないほど強いのだ。一般人ごとき、赤子の手をひねるがごとく圧倒してしまうのだ。そのうえ魔力という私たちにはない力を持っている。
自分自身が核になってしまうような彼を殺すために必要なものは何か。
魔力、またはそれに酷似した人智を超えた力だ。
それがシャドウ様のことについて思いふけ、修行を重ね、武を究めているうちに辿り着いた答えである。
この世界に魔力の存在を証明した人がいないように、魔力が存在しないことを証明した人もいないのだ。
とはいえ、どのように習得するかなど誰にもわからない。
シャドウ様でさえ成り行きで魔力を習得したようなもの。
しかし、魔力を習得したことは事実。
ならばと私は、シャドウ様を模倣し、座禅を組み、滝に打たれ、瞑想し、断食し、ヨガを極め、改宗し、精霊を探し、神に祈り、自身を十字架にはりつけた。
正解は存在しない。己が目指した道を、ただ突き進むのみ。
◆◇◆◇
そして時が経ち、私は高校最後の夏を迎える。人智を超えた力は未だ見つかっていない……。
いつもの修行を終えると辺りはすっかり暗くなっていた。
私は傍に脱ぎ捨てていた下着を身につけ制服に袖を通す。未知なる力を身につけることはできていない。しかし最近続けている修行には手応えを感じている。
今もそうだ。
修行を終えたこの身は、頭の中がチカチカと輝き、視界がグラグラと揺れている。魔力のようなものか……その影響を確かに感じるのだ。
今日の修行も実に充実したものだったと言えよう。森で服を脱ぎ捨て全裸になることで森羅万象を感じ、大木に頭を打ち続けることで物理的に雑念を排除し、かつ脳に刺激を与えることで未知なる力の覚醒を促す。シャドウ様も実践した、極めて理論的な修行方法である。
ああ、視界がぼやける。まるで脳震盪でも起こしたかのようだ。
そのときふと、怪しげな光を見つけた。まるで宙を泳ぐかのように、漂う光。不思議な光だ。
「ま、魔力……?」
私はおぼつかない足取りで近づこうとして……。
とてつもない地響きとともに視界が消えた。重みが骨を、筋肉を、内臓を、砕いていった。
◆◇◆◇
そして私は違和感を抱えて目を覚ました。
文字数少ないですが(改稿のたびに徐々に増えてます)、1話以降は出来る限り多くしていこうと思います。失踪しないように頑張っていきますので、評価や感想など、何かしらアクションがあると今後のモチベーションにつながります!