シャドウ様を殺りたくて!   作:海老天 進司

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新年明けましておめでとうございます。どうも海老進です。今年もよろしくお願いします。


第10話 勝手に助けんな!

自室に戻った頃には太陽が昇りはじめていた。

 

いつのまにか寝ていた少女をベットに横たわらせて、私自身も床に寝転がる。

 

学校に行かねばならないのだが……、行かねば……、辞めよう。今日は体調不良ということにして休むことにするか。

 

行ったとて、心身ともに疲弊しているこの状態では何かしらのボロがでるなど、悪い方にしか転ばなさそうである。

 

これはサボりなどではなく、戦略的休暇なのだ。などと冗談を言っていないと今にでもメンタルが崩壊して、物言わぬ人形に成り下がってしまいそうである。

 

ひとまずは状況を整理しよう。あの時はかなり冷静さを欠いていたからか、記憶が少し曖昧ではあるが。

 

盗賊を借りに遠くの方まで行ったら、なんかいろいろ焼けてて、ギリギリ生きてた女の子を助けて、多分教団の人間たちをボコボコにしたらクロアがいて、一緒にいられないって言って……。

 

「すぅ……はぁ……」

 

落ち着け私、深呼吸、深呼吸だ。別に今焦ったところでクロアが帰ってくるわけじゃない。

 

ただ待つことしかできないけれど。今の私にできることはないけれど。それでも……。

 

「なんでよ……。なんでなのよ……。ねぇ……、クロアは私のことが嫌いなの……?」

 

私の頬を伝って涙が床にこぼれ落ちる。すごく気分が悪くなってきた。

 

だめだ。どれだけ冷静になろうとしてもなれない。

 

いなくなっていたときも少しショックだったけど、実際に再開した上でなんて……。

 

「そんなのって……そんなのって……あんまりじゃない……」

 

「んん……。あぁ?え?あ?え?」

 

悲観に暮れていたら少女が目を覚ました。切り替えろ私。

 

「ようやく目覚めた?傷は大丈夫かしら?痛いところがあるなら言ってちょうだい」

 

さっと涙を拭って少女の方を向く。

 

「なんで……」

 

どうしたのだろうか。

 

「なんで私を助けたの!」

 

「え……」

 

「だから!なんで!助けたのかって聞いてんの!」

 

「それは……なんでかって言われても……その……助けたいと思ったから……?」

 

「ふざけるなよ……勝手に助けんなよ!」

 

「なん……」

 

「勝手な自己満足で、自身の欲求を満たすために、本人が望んでるかどうかなんて関係なく、ただ自分のために私を助けるな!」

 

「いや……助けなかったらあなたの命は……」

 

「ああ、なくなってたさ!私はそれを望んでた!父さんも、母さんも、殺されていった。仲良しだった友達も、故郷でさえも何もかも失った!もう死にたかった!なのになのになのに!お前が!勝手に助けたせいで!悪魔憑きでどうせ死ぬのに!死ぬギリギリまで生き地獄でいろってのか!ふざけるなふざけるなふざけるな!一緒に死ねたらどれほど楽だったか!お前の勝手な自己満足のせいで!くそったれ!」

 

「ごめん……」

 

「ごめんじゃねぇよ!謝ったごときで許されると思ってんのか!ふざ……ける……なよ……」

 

◆◇◆◇

 

彼女は決して裕福な生まれではなかった。だが、彼女が幸せだった。

 

彼女のいた村は愛があった。不自由なことこそあるものの、住民の結束が強く、村自体も幸せに溢れていた。

 

だが、その平穏は彼女から起因したある出来事によって終わりを迎えることとなる。

 

彼女の首元に黒い痣が現れたのだ。この村の教育基準が高いものだったからこそ、彼女自身がそれが何を表すものか理解した、いや理解してしまった。

 

悪魔憑きだと。

 

このことが知られてしまったら、自分がこの村に居られなくなると考えた彼女は首元を隠すような服装をするようになった。

 

それは彼女の命を救うとともに村人の命を根こそぎ奪うことになるのであった。

 

ある日の朝、いつものように友人と遊んでいたときだった。ふとした拍子に転んでしまい、首元の痣が見えてしまったのだ。

 

友人も一目見るだけそれが何を意味するのかわかってしまった。ただ友人はすぐに首元を隠してくれた。

 

そう、この時に友人に見られていただけならよかった。だが、物陰から1人の村人がその瞬間を目撃してしまった。

 

そこからは、村中で議論が巻き起こった。悪魔憑きを許して良いのか、否か。

 

住民の結びつきが強かったからこそ意見が分かれた。この村の一員だからこそ最期まで見届けるべきである、もしくはこの村の平和のためにも教会に引き渡すべきだと。

 

その議論は、すでに1人が行動を起こしてしまっていたせいで無駄であったのだが。

 

ある日、教会の人間が来てしまった。悪魔憑きを出せと。そう要求してきた。

 

彼女の両親は当然の如く拒んだ。そして、その場で斬り殺された。

 

そこから虐殺が始まった。彼女は何もできなかった。ただ目の前で大切な人が殺されていくのを見ることしかできなかった。

 

そしてもういっそのことみんなと死んでしまおうと火の海に飛び込んだのだが……。

 

そして今に至る。

 

今の彼女は取り乱している。どうせ、あのまま死のうとしても教団の人間に回収されて、実験台にされていたのに。

 

悪魔憑きになった時点で幸せな未来はなかったのに。ここまでの不幸の理由をアペルに押し付けているだけなのに。

 

頭ではわかっていても、感情が理性を奪っていく。悪魔憑きはやはり呪いなのかもしれない。

 

運命の……。




ちょっとスランプに入ったので短めになります。(追記 加筆しました)それでも定期投稿は頑張っていきますのでみなさん応援の程よろしくお願いします。よければ感想もいただけると幸いです。それではまた次回で。
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