シャドウ様を殺りたくて!   作:海老天 進司

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戦闘以外はギャグでいいのかなぁっと思い始めた海老進です。日常回なのでのほほんとしています。


第7話 優等生に嫌がらせするのは自然の摂理

優等生とは、非優等生である一般生徒の尊敬の対象であると同時に、嫉妬の対象である。

 

自分たちと違って才能に恵まれているから、環境に恵まれているから。だから優等生なのだとそう思われることが多い。

 

実際には、本人の努力が大半である。環境はあくまでも補助に過ぎない。

 

いくら環境に恵まれていたとて、才能に恵まれていたとて、本人が努力しなければ優等生という立場になることはない。

 

つまりは、嫉妬している暇があったら努力しろといったところだ。

 

だか、現実問題それを理解している人は少ない。もちろんのことだがカナデは嫉妬している。

 

そんなことはどうでも良いのだが、一つ問題がある。

 

選抜大会の一回戦の相手が将来有望な魔剣士で、優等生のアイザックくんなのだ。

 

非常に面倒である。対戦表が張り出された時、

 

「あんなやつ、アヤメがぶっ飛ばしちゃえ!」

 

なんてカナデに言われてしまっている。棄権したかったのだが、カナデに期待されているからにはある程度は何かしたいところ。

 

そして今に至る。私はすっと剣を抜く。

 

視線の先には高身長で緑髪の整った好青年であるアイザックくんが剣を構えている。

 

流石は優等生と言ったところだろうか。女子生徒の声援、いや黄色い悲鳴が会場のそこかしこから聞こえてくる。

 

実際に対峙すると、カナデがムカつく理由がよくわかった。いかにもな立ち振る舞いがいちいち鼻につく。

 

容姿が多少よくて、ちょっと他の人より実力があるからと調子に乗っているようにしか見えないのだ。

 

もちろん負けるつもりではあるのだが、嫌がらせをしたくなってきた。

 

「アイザック・ナントカ対アヤメ・シヤト!」

 

審判が私たちの名を読み上げる。

 

アイザックの梔子(くちなし)色の瞳が私を見据える。

 

「試合開始‼︎」

 

開始と同時にアイザックの剣が走る。それは優等生と呼ばれるだけあり、見事な軌道を描き私の胸に迫る。

 

遅い。だが今の私が反応してはいけない。ならばとる行動は一つ。

 

剣が胸に触れる瞬間に少しだけ気付かれないように足の指の力だけで後ろに跳び、吹き飛ばされる演技をする。

 

そのまま地に落ち、バウンドして、倒れる。

 

これでいい。

 

「試合終了!」

 

動かない私を見て審判は終了を宣言した。

 

「勝者アイザック・ナントカ‼︎」

 

会場を黄色い歓声が包み込んだ。

 

アイザックくんはそれに応えるように手を振り、倒れている私の元に近づいてきた。

 

その瞬間、アイザック君は転んだ。見事なまでに転んだのだ。実際は私に”転ばされた“のだが。

 

アイザックくんの足元をすっとスライムで掬い上げたのだ。その時間コンマ1秒。

 

会場は静まり返った。アイザックくんの顔を見ると非常に無様な顰めっ面をしていた。

 

変な空気感のなか、アイザック君は退場していった。

 

試合を終えて、会場の外に出るとカナデが待っていた。

 

非常に満足げで満面の笑みを浮かべていた。

 

「お疲れ様、アヤメ」

 

「労うつもりないでしょ……」

 

「まっさかぁ。そんなことないよ」

 

「それで、なんでそんなニヤニヤしてるのよ」

 

「そりゃ、あいつが無様に転んでったからに決まってるでしょ」

 

カナデも満足そうで何よりだ。

 

「黄色い歓声を浴びてたのに転んだ途端にすんって止んで。いやもう、最高!」

 

「正直私も同じこと思ってる」

 

「だっよね〜!

 

私とカナデの機嫌が絶好調だったので奮発していい喫茶店でパンケーキを食べてその日は寮に帰った。

 

 


 

 

選抜大会の翌日の放課後、私はとある人物を待っていた。

 

「アヤメさん……、すいません。遅れました……」

 

その人物とは、

 

「大丈夫ですよ、シェリー先輩。私が早かっただけですから」

 

シェリー・バーネットである。あの日以来そこそこ話す機会が多くあり、今度一緒に出かけないかと私が誘ったのだ。

 

シェリーはすこし渋っていたが、ルスラン副学園長がたまたま通りがかって、「ぜひいってきなさい」と言われたため、「お義父さまが言うなら……」となったのである。

 

「ありがとうございます」

 

「それではいきましょうか」

 

実際のところ、私自身がシェリーをよく知っておきたかったというだけなので、特にやましい気持ちはないのである。

 

そして、まず向かった先はいい喫茶店である。前日、カナデと行ったときにここのパンケーキがものすごく美味しかったため、シェリーにも食べてもらいたいと思ったのだ。

 

「えっと……、何を頼めばいいんのでしょうか?」

 

「ここなら、パンケーキがおすすめですよ」

 

「そうなんですね!」

 

昨日のカナデに負けず劣らずのいい笑顔だ。友達とお出かけといった経験はないのだろうか……。いや、これ以上考えるのはやめておこう。

 

そして、私たちはパンケーキと紅茶を頼むことにした。

 

「そういえば、昨日の選抜大会でのシド・カゲノーくんの試合、見ましたか?」

 

「ええ、まあ」

 

「何度も立ち上がってる姿が、すごいかっこよくて……」

 

「そう……ね?」

 

「昨日、シド君とお友達になれて、手作りのクッキーも受け取ってくれたんです……」

 

「よかったわね」

 

すごく目をキラキラと輝かせてシドくんのことを語るシェリー。

 

本人は幸せそうなのでいいのだが……。いかんせん、シェリーのことを知ると言う意味では失敗である。選抜大会の後に予定を入れたのが間違いだった……。

 

「こちら、パンケーキと紅茶になります。ゆっくりとお楽しみください」

 

「ありがとうございます」

 

店員さんが届けてくれたパンケーキと紅茶がテーブルに置かれる。それを見てシェリーは、目をキラキラと輝かせいていた。かわいい。

 

「そういえば、最近の授業で習ったことなのですが……」

 

私から話を振ることにした。ハムスターのようにパンケーキを食べながら話しているシェリーは、小動物なんて比べ物にならないぐらい可愛かった。

 

「すごく……おいしかったです」

 

満足そうなシェリーを見て、何か今までの悩みが吹き飛んだように思えた。




そういえばなんですが、主人公ちゃんの原作知識は4巻までしかありません。だからカエデも知らないしアイザックも知らない。しかし4巻まではあるということはシェリーちゃんが……、と言うところまでわかっているからこそ、それをより深く味わうためにお出かけをしにいきました。最低ですね。あと、無様に転んだアイザックくん……可哀想ですね( ^ω^ )。

それはそうとして、木曜日投稿を謳っておきながら金曜日投稿になってしまったことをお詫び申し上げます。

そして、お気に入り登録してくださっている方、ありがとうございます。よければ感想もいただけると幸いです。
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