城の外庭に着くと既にユナとノーチラスが待っていた。
ナイト「すまない、待たせたか?」
ノーチラス「いや、僕たちが早く着いただけだ」
ユナ「ナイトも来たし、話しかけるね?すみません!衛士の隊長さんだっていう人が私たち冒険者を探してるって聞いたんです」
衛士「いかにも。我々の隊長は冒険者をお探しだ。お前達が冒険者というなら、取り次いでやろう。本部まで案内する、ついてこい」
案内された場所は応接室といった内装の部屋だった。
奥の椅子には優しそうな顔をしている男性が座っていた。
衛士隊長「御足労感謝するよ。私がこの町で衛士の隊長をさせてもらってる者だ、まあ、そんな肩肘張らずに聞いてください」
椅子に向けて手を向け座るように促す。そして、座るのを確認すると話を続ける。
隊長「部下の皆がちゃんと仕事をしてくれてるおかげでこの町は概ね平和なんですが、それでも犯罪はありますし、何かと問題は起きてしまうものでね、頭が痛いものですよ。部下達は防犯で手一杯、だから君達のような冒険者に問題の対処を手伝ってもらいたくてですね」
ノーチラス「事情はわかった。僕達でよければ手伝おう。で、まずは何をすればいい?」
隊長「ご協力感謝します。では、手始めにあるものの輸送を頼みたい。
先日、裏で悪どくやっていた商人を逮捕したんだが押収した証拠品が大量にあってね。部下がまとめてくれたのを受け取ってきてほしい。
部下とは城の中庭入口の近くー吊橋のたもとで合流してください。ああそれと、少々込み入った事情があってね、受け取ったものはこの本部ではなく私に直接渡してほしいんだ。このメモに書いた場所で待っているから頼んだよ」
ナイト(なぜ直接なんだ?そういう事もあるかもしれないが、俺の勘が怪しいって言ってる。あまり信用しない方が良さそうだな)
本部からでて吊橋に向かうと部下らしき人物が荷物と共に立っていた。
ノーチラス「ちょっといいか?衛士隊長だという人から頼まれて来たんだ。押収した証拠品を届けてほしいとかで」
衛士「先程、伝令の者が来て話は聞いてます。こちらの証拠品をお願いします」
荷物を受け取りメモに書いてある場所に向かう途中で
ユナ「謎解きのクエストって聞いてたけど、なんかちょっと地味だね。
まあ、お使いクエなのは最初だからかな」
ナイト「事前情報ではどんな感じに言われてたんだ?」
ユナ「えっとね、「衛士さんの達の依頼を受けてこの町で起きてる事件と、裏にある陰謀を暴く」、そういうクエストだって聞いー」
言葉の途中でナイトが口をふさぐ。
ナイト「何か聞こえる」
ユナ「えっ?風の音じゃー」
ナイトは咄嗟(とっさ)にユナの肩を掴み引き寄せる。直後、ユナのいた位置に剣が通る。
ナイト「何者だ!」
暗殺者のNPC「お前達のような<悪>を捨て置けぬ者。・・・<怒れる者達>の一人。これ以上、お前達に語ることはない。衛士やそれ取り仕切る貴族、そして、連中に与する者 ー 法で裁けぬ悪はここで消す」
怒りが混じる冷徹な声と共に短剣を振り下ろす暗殺者。それを刀で受け流し切り返す、それと同時に後ろに大きく下がり短剣を構え直す暗殺者。
ナイト(なるほど、短剣がとても頑丈で盾の役割も果たしてるのか。それに一般プレイヤーより強い)
ナイトは関心してると暗殺者が距離を取り武器をおろす。
暗殺者「衛士やその関係者は既に腐敗していると思っていたが、まだ、お前のように骨のある武人も残っていたのか。だが、汚職に手を染めたのであれば、消すだけだ」
ナイト「汚職だと?知らんな」
暗殺者「とぼけるな。あれだけの賄賂を受け取っておいてよく言う。骨があるとは思ったが、所詮は衛士の手の者か ー 死ね」
短剣を逆手に持ち替えてソードスキルを発動する。ナイトは動きが読めず警戒をすると、ユナが叫ぶ。
ユナ「下からだよ!下から上の斬り上げ!アッパーっていうんだっけ、とにかくそんな動き!名前は<ネイルハンマー>!」
ユナを信じバックステップで避ける。暗殺者は続けてソードスキルを発動する。
ユナ「えっと・・・思い出した!これも短剣のソードスキルでジャンプする技の<キングフィッシャー>ってやつ。おっきくジャンプした後、そのまま飛びかかるようにグサッてやる攻撃!横だよ!横に避けて」
暗殺者「次こそ仕留める ー これで終わりだ」
ユナ「次は<クリーピング・リーパー>は後ろに回り込んで後ろから腕を回して、首を斬りつける技だよ!」
暗殺者が後ろに回り腕を伸ばすと同時にカウンターで肘打ちをするナイト。なにか、柔らかいものが当たった。
ナイト(なんだ?なにか柔らかいものが?)
それに気を取られた隙に暗殺者は
暗殺者「くっ・・・!先に殺すべきはお前!」
ナイト「しまった、ノーチラス、カバーだ!」
しかし、ノーチラスは動かない
ナイト「ノーチラスどうした!早くユナを」
暗殺者「ー 死ね」
その一言と共に短剣を突き刺す。その間にナイトが割って入り腹に刺される。深手をいとわずカウンターを繰り出し吹き飛ばす。
ユナ「ナイトっ!大丈夫!」
ナイト「大丈夫だ。それよりも怪我はないか?」
ユナ「うん。私は全然平気だから」
ノーチラス「・・・すまない。僕が・・・僕が動けてさえいれば」
ナイト「たらればなど意味は無い。気にしなくていい」
ユナ「・・・あのね、ノーくんは」
ノーチラス「いい、僕から話すよ。戦闘のある・・・命のかかったクエストを手伝って貰ってる以上、話しておくべきだ」
ノーチラスの口から語られたのはフルダイブ不適合 ー 通称<FNC>の体質らしく、動けなくなるのもその症状らしい。
ノーチラスは<無意識>が<意識>の命令を上書きするらしく、とっさに動けない場合があるそうだ。つまり、ノーチラスは思考によってアバターを動かすVRMMOにおいて致命的な制限をかけられることになる。ことSAOにおいては命の危険が高まることになる。
ノーチラス「僕が心の奥底で思ってることによるものなのに、いや・・・だからこそか、僕自身にはどうにもならない。ユナの命が危なかったというのに」
ユナ「私なら大丈夫だから、気にしないでノーくん。ひとまず、転移門のほうまで戻ろうよ。預かったものも届けないとだし」
ナイト「ノーチラス、それは俺にはどうすることも出来ない。だからお前が乗り越えるしかないんだ。ユナを守るために」
ノーチラス「僕が・・・乗り越える・・・」
そんなとき、遠くでナイト達を見ていたプレイヤーがいた。
?「おィおィ、ナイトを見張るだけってメタクソ退屈な命令だたけどよォ、ちィとばかしおもしれェモンが見られたじゃねーか。あの殺し屋が持ってたダガー、へんな形してたがきっとレアモノに違ぇねえ。今回はあいつのターンだから手ェ出せねーし、どうしたもんかと思ったけどなァ。まァ、ヒマつぶしにはちょうどいい。ヘッドにもNPCをブッ殺しちゃいけねえとは、一ッ言も言われてねーしなァ」