フィリアに案内された洞窟に着くと手分けして鉱石を集めることになったナイト。ナイトは少し離れたところで女性プレイヤーを見つける。
ナイト「すみません、少しお話いいですか?」
女性プレイヤー「ええ、大丈夫ですよ」
ナイト「あなたもアインクラッドからここに飛ばされたのですか?」
女性プレイヤー「アインクラッド?変な事を言うわね、ここはアインクラッドじゃない」
ナイト「いえ、そうではなく、元々何階層にいたのですか?」
女性プレイヤー「元々・・・どこだったかしら。あちこち移動しているからどことは言えないわ」
ナイト「なるほど。では、ここでは何を?」
女性プレイヤー「何をって、もちろん攻略よ。アイテムやスキルを使って敵を倒して・・・」
ナイト「・・・拠点はどこにあるのですか?」
女性プレイヤー「拠点は・・・えーと・・・ド忘れしちゃったみたい。でも、そういうこと初めて会う知らない人にしゃべるものじゃないでしょう?」
ナイト「それもそうですね。すいません、お話ありがとうございました」
ナイトと話が終わると女性プレイヤーはどこかに去っていってしまった。
ナイト(何かおかしいな、まるで・・・いや、よそう)
ナイトはフィリアの元に向かう。フィリアは洞窟でナイトを待っていたようだった。
フィリア「ナイト、鉱石は集まった?私は集まったよ」
ナイト「こちらも集まった。じゃあ帰ろうか」
ナイト達は拠点と定めた例の紋様が描かれた管理区に着くと早速武器強化をするのだった。
ナイト「フィリア、待たせたな。武器が強化できた」
フィリア「ありがとう。大切に使わせてもらうわ」
ナイト「それはそうとフィリア、<ホロウ・エリア>について知っていることを全て話してくれないか?」
フィリア「そう言われても・・・私だって詳しいわけじゃないし」
ナイト「それでもいい、フィリアが経験したことで構わない」
フィリア「もう解った!教えてあげる。まずはここに来た経緯ね、私もあんたと同じように気づいたら<ホロウ・エリア>に飛ばされていたんだ。
でも、手に紋様は出たりしなかったし、もちろん、管理区にも来られなかった・・・だから休むときはダンジョンの安全地帯で寝ていたの。
でも、ある時、私が安全地帯で休憩しようとしたら近くで声が聞こえたの。で、声のする方に近ずいてみたら一人のプレイヤーを大勢のプレイヤーが囲んで、その・・・PKをしていたんだ・・・」
PK、プレイヤーキルとも呼ぶべきそれは他のゲームなら当たり前の所もあるが、SAOでは本当に死んでしまうので忌避される行為である。
フィリア「しかも、あれは相当慣れている感じだった。それで、安全地帯はモンスターの襲撃は防げるけど、悪質なプレイヤーの襲撃は防げないってことに気づいたの。
それからは、ロクに睡眠も取らず他のプレイヤーとも接触しないようにして過ごしてきたってわけ」
ナイト「ほぼ不眠不休か・・・そこで俺と会ったんだな」
フィリア「そう。・・・でも、あの時は悪かったね。あんたが来てくれたおかげで管理区っていう<圏内>で休みが取れるようになったし。
それに・・・武器の強化とかもしてもらったし・・・その・・・」
ナイト「・・・その?」
フィリア「か、感謝しているってことよ!はい!もうこれで私の話は終わり」
ナイト「そうか、色々話してくれてありがとう。ためになった」
フィリア「ね、ねえ・・・」
ナイト「ん?なんだ?」
フィリア「今度は私のほうからあんたに聞きたいことがあるんだけど」
ナイト「別に構わない。なんでも聞いてくれ」
フィリア「ええと、じゃあさ・・・あんたはどうしてオレンジの私に構うの?」
ナイト「心配だったから」
フィリア「心配?」
ナイト「ああ、危険な場所をウロウロ、しかも一人の少女がだぞ。普通は心配するだろ?」
フィリア「ほ、本当にそれだけの理由で・・・?」
ナイト「何かおかしいか?」
フィリア「あ、おかしいとかそういうんじゃなくて、逆に安心したっていうか。ほら・・・私はずっとここで変な奴らに囲まれていたから。ようやくまともな人に会えてホッとした・・・」
ナイトはフィリアが肩を震わせていることに気づき、思わず抱きしめる。
フィリア「えっ!」
ナイト「大丈夫だ。これからは俺ができる限り守る。だから、安心しろ」
フィリアはその言葉を聞いて少し涙がこぼれる。だんだん止まらなくなってきた涙をナイトは見ないように、フィリアの顔を胸に押し付ける。
しばらくしフィリアが落ち着いた後、各自休憩をするのだった。
日を跨ぎ朝。フィリアが少しもじもじしながらナイトに話しかける。
フィリア「ナイ・・・ト。ねえ、実はさちょっとお宝が有りそうな場所を見つけたんだけど・・・でも、そこにいるモンスターが強くて一人じゃ手を出せないの。もしよかったら、付き合って・・・くれない?」
ナイト「もちろん、フィリアを手伝うよ」
フィリア「ほんと!?よかったー」
ナイト「それで、場所は?」
フィリア「樹海エリアの・・・ダンジョンの中。隠し扉を見つけてね、その奥なんだけど。そこに出てくる奴が強くて・・・
でも、あん・・・えっと、ナ・・・イトが協力してくれるなら大丈夫だと・・・思う」
ナイト「では、お宝ゲットと行こうか」
ナイト達はダンジョンの隠し扉の奥に行くといたのはゴーレムだった。通常のゴーレムと違い、少し大きくて赤褐色だったが。ナイトが攻撃を受け持ち、フィリアが攻撃する。スカル・リーパーの時からの役割を今まで続けていた。
ナイト「ふう・・・ようやく終わったか。固すぎだろ」
フィリア「でも、ナイトは凄いよ。本職じゃないのに攻撃をここまで防げるなんて、さすが攻略組!」
ナイト「ん?俺は攻略組ってフィリアに言ったか?」
フィリア「いや・・・えっと・・・攻略組の<剣聖は>有名でしょ!」
ナイト「そんなもんか・・・」
フィリア「そうそう!」
ナイト「それよりも、フィリアだって強いぞ。その強さなら攻略組にも欲しいくらいだ」
フィリア「ほ、褒めすぎだよ・・・褒めてもなんにも出てこないよ?」
ナイト「別に、本当の事を言っただけだ」
フィリア「フフ、こうやって褒められたのってなんか久しぶりだなぁ。
あっ、ほら見て!宝箱があるよ!」
フィリアは奥にあった宝箱を見つけ、それ目掛けて走り出した。
ナイト「危ないぞ」
フィリア「平気だってば。ほらナイトも早く!」
ナイト(子供みたいだな)
フィリア「ナイトー何してるのー!早くおいでってば」
ナイト「すぐ行く」
フィリア「見たところ、蓋に罠が仕掛けられてる」
ナイト「いけるか?」
フィリア「余裕!私くらいになるとら罠の種類と数なんてすぐ解るの」
フィリアは集中するとわずか十数秒で罠を外し、鍵を開ける。
フィリア「・・・開いた!へっへっへ、さあ出ておいでお宝ちゃん」
ナイト「お宝ちゃん?」
フィリア「武器かな、それともアクセサリーかな・・・」
フィリアが宝箱から取り出したのはアクセサリーだった。
ナイト「かなりレアそうだな」
フィリア「えへへ、やったね!やっぱり、こうやってお宝を見つけるのは楽しいなあ」
ナイト(なんか、妹みたいで可愛いな)
フィリア「・・・はいコレ。あげる」
ナイト「いいのか?」
フィリア「うん。私は大丈夫だから・・・ナイトが持ってて。大事にしてよね、人にプレゼントするなんてあんまりないんだから」
ナイト「大事にする」
ナイトとフィリアは管理区に戻る途中プレイヤーを見かける。様子がおかしくて、ナイトが一人で追いかけるとフィリアも慌てて追いかけてくる。
?「ターゲットは片づいた。とっとと行くぞ!」
ナイト(今の手口、ラフコフか)
ラフコフ、正式名称は<ラフィン・コフィン>アインクラッド最大のオレンジギルド。PoHをリーダーとした組織で、目的が殺人のため他のオレンジギルドと区別され、レッドギルドと呼称される。
フィリア「・・・どうしたのナイト。怖い顔してる」
ナイト「フィリア、今日はもう引き上げよう」
フィリア「・・・うん。そうだね」
管理区に戻るまでナイトとフィリアは無言だった。ナイトはフィリアを早めにアインクラッドに戻す手段を見つけることにしたのだった。
ナイトはフィリアが休憩している間もフィールドに出てラフコフを探す。それを数日繰り返すと
フィリア「・・・この前ナイトと見かけたPKをしていた連中だよね」
ナイト達は物陰に潜み、PK連中の後をつける。
メンバー「片づけてきましたぜぇ、ヘッド」
ヘッド「遅せぇじゃねえか、何手間取ってやがったんだぁ?」
メンバー「いやー案外手強かったんスよ」
ヘッド「言い訳はいいんだよぉ!次はしっかりやれよぉ?」
ナイト(まさか!あいつは・・・PoHなのか!?)
PoH「それでNEXTTARGETは・・・んん?」
ナイト(まずい、気づかれたか・・・)
ナイト達は静かに撤退を開始する
PoH「・・・ふぅん?」
メンバー「なんかあったんすかヘッド?」
PoH「・・・いいや、なんでもねえ。少し場所を変えるぞ。ここは人が来るかもしれん」
メンバー「ういっス」
ナイト達は少し離れた場所で姿を現す。
フィリア「・・・行ったみたいだね。ナイトはあいつらのこと知っているの?」
ナイト「ああ・・・嫌って言うほどな・・・」
フィリア「ナイト・・・凄く怖い顔してる・・・」
ナイト「あいつらはギルド<ラフィン・コフィン>知ってるだろ?」
フィリア「えっ!?・・・そいつらがここに?」
ナイト「結構前にトッププレイヤー達は奴らの凶行を止めるために合同討伐隊を組織した。俺もその一人だ」
フィリア「ナイトが・・・」
ナイト「戦いは凄惨(せいさん)を極めて敵味方双方に多大な犠牲者がでた・・・その果てに<ラフィン・コフィン>は壊滅した・・・はずだったが・・・
その残党が<ホロウ・エリア>に残っていたとは・・・」
ナイト達は管理区に戻り対策を考えるのだった。そして次の日ナイト達は教会を見つける。
ナイト「教会か、本当の教会ならカルマ回復クエストができるんだが」
ナイト達が教会に入ると神父らしき人物が神像に向けて祈っている所だった。神父はナイト達に気づくと立ち上がり、こちらを向く。
神父「・・・そこの貴方、何か悩みがあるのですね?」
フィリア「え、ええと・・・はい!」
神父「しかし、残念ながら懺悔室(ざんげしつ)が壊れてしまっており・・・」
ナイト「これは教会を修理する材料を集めるクエストだろうな」
フィリア「それで修理した後に懺悔するのね?」
ナイト「ああ」
フィリア「解った。とりあえず試してみようよ」
ナイト「なら、条件に合うアイテムを探すか」
ナイト達は手分けして修理に使えそうなアイテムを片っ端から集めて回る。三十分ぐらい集めると、一度教会に持っていくことにした。
神父「おお!これで教会を再建できる・・・」
ナイト「後は教会が直るまで待てばいい」
フィリア「・・・うん」
神父「ありがとう!貴方達のおかげで教会が再建できました!」
ナイト「それで、悩みの相談は・・・」
神父「これは、些少ですが・・・心ばかりのお礼です。また何か悩みがありましたらこちらにお運び下さい」
神父は教会の中に入り、祈りを再開するのだった。
フィリア「・・・やっぱり、違うみたい」
ナイト「そうだな・・・すまないフィリア」
フィリア「どうしてナイトが謝るの。私のために協力してくれて・・・すごく嬉しかった」
ナイト「・・・次、もう少し探してみるよ(もしかしたら、普通の方法ではフィリアのカーソルは直らないのか?)」
フィリア「・・・ナイト、なんでそんなに・・・?」
ナイト「俺達は仲間だからな」
フィリア「・・・でも、私は・・・ナイトに優しくしてもらえるようなそんな・・・」
ナイト「俺がフィリアに優しくするのに理由はいらない。俺がしたいからしてるだけだ」
フィリア「ナイト・・・」
ナイト「急いで新しいやつを探すから管理区で休んでてくれ」
フィリア「・・・うん」
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sideフィリア
ナイト「それじゃあ行ってくる。直ぐに戻るから」
フィリア「うん・・・待ってる」
ナイトは管理区から出ていきフィリア一人が残る。静寂が空間を満たし、フィリアの呟きが響く。
フィリア「・・・行っちゃった・・・か。私は足手まといなのかな・・・」
?「よく解ってるじゃねえか」
フィリア「!誰っ!?」
フィリアは短剣を構えると周囲を見渡す。すると出てきたのはPoHだった。
PoH「おっと危ねぇ。そんなモン突きつけるなよ。怖くて膝がブルっちまうじゃねえ」
フィリア「どうやってここに・・・」
PoH「そんな事どうだっていいだろう?世の中不思議な事だらけだしなぁ」
フィリア「お前は・・・ナイトが言っていた・・・<ラフィン・コフィン>とかいう・・・」
PoH「おーおー俺らも有名になったな。こっちの世界でも知られているとは」
フィリア「私を殺しに来たの?そう簡単にやられると思って・・・」
PoH「おーいおいおい、まぁ落ち着けよ。別にお前ぇ殺しに来たわけじゃねぇ」
フィリア「・・・じゃあ、何の用」
PoH「そんな怖ぇ顔するなよ。同じオレンジ同士だろぉ?」
フィリア「・・・だったらなんだって言うの?」
PoH「オレンジ、オレンジ、オレンジ、オレンジ、肩身の狭いオレンジ同士仲良くやろうぜ」
フィリア「ハッよく言う・・・」
PoH「知ってるぜ。俺はお前が何をしたか」
フィリア「それは・・・どういう意味?」
PoH「言えないよなぁ・・・言えないよなぁ・・・あのビーター擬き野郎には」
フィリア「ビーターってナイトのこと?ナイトに何かしたら・・・」
PoH「おお怖い怖い。別に何もしねぇよ・・・今はな」
フィリア「・・・」
PoH「まあ今日は帰るわ。でも、俺達話が合うと思うぜ、オレンジ同士あんなヒーロー気取りのヤローよりはな」
フィリア「・・・用がないなら消えろ」
PoH「OK わかったわかった・・・お前ぇ・・・あいつと一緒にいたら死ぬぜ・・・」
フィリア「ちょっとそれどういう意味!?」
PoH「おお〜怖い怖い。じゃあ帰るぜ、また来るからよぉ」
フィリアはPoHが去っていった方を見て構えを解くと呆然とする。
フィリア「・・・ナイトといると・・・私が死ぬ・・・?」
その声は自分でも気付かぬほと小さく震えていたのだった。