ガチャ転生~SAO編~   作:気まぐれ荘

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骨との戦い

第五十五層<グランザム>、血盟騎士団本部

 

ナイトとフィリアがヒースクリフの元に訪れると中にはキリトとアスナがいたのだった。

 

ナイト「キリト、もう来ていたのか」

 

キリト「ナイト!お前どこ行ってたんだよ!?二週間も連絡が途絶えて・・・死んだかと思ったんだぞ!」

 

ナイト「すまない。だが、その話は後だ。ヒースクリフ、話を頼む」

 

ヒースクリフは顔の前で骨ばった両手を組み合わせ、眉間に深い谷を刻んでゆっくり頷いた。

 

ヒースクリフ「昨日のことだ、マッピング自体は犠牲を出さずに終了した。しかし、ボス戦はかなりの苦戦が予想された・・・」

 

SAOの百層の内のクォーター・ポイント、つまり二十五層と五十層は他の階層のボスと比べ強力だった。つまり、七十五層であるこの層も強力であると予想されたのである。

 

ヒースクリフは「そこで、我々は五ギルド合同のパーティー二十人を偵察隊として送り込んだ。偵察は慎重を期して行われた。しかし、ボスが出現すると同時に入口の扉が閉まったそうだ。

扉は五分以上開かなかった。ようやく扉が開いた時 ー 部屋の中には何もなかったそうだ。偵察隊の姿も、ボスも消えていた。転移脱出した形跡もなかった。

彼らは帰って来なかった・・・念の為、黒鉄宮までモニュメントの名簿を確認しに行かせたが・・・」

 

アスナ「十・・・人も・・・なんでそんなことに・・・」

 

ナイト「結晶無効化空間・・・?」

 

ヒースクリフ「そうとしか考えられない。アスナ君の報告では七十四層もそうだったということだから、おそらく今後全てのボス部屋が無効化空間と思っていいだろう」

 

キリト「バカな・・・」

 

ナイト「だから俺達を呼んだのか」

 

ヒースクリフ「ああ。統制の取れる範囲で可能な限り大部隊をもって当たるしかない。新婚のキリト君達を召喚するのは本意ではなかったが、了承してくれ給え」

 

キリト「協力はさせて貰いますよ。だが、俺にとってアスナの安全が最優先です。もし危険な状況になったら、パーティー全体よりも彼女を守ります」

 

ヒースクリフ「何かを守ろうとする人間は強いものだ。君の勇戦を期待するよ。攻略開始は三時間後。予定人数は君達を入れて三十四人。七十五層<コリニア>市ゲートに午後一時集合だ。では解散」

 

それだけ言うと、ヒースクリフとその配下の男達は一斉に立ち上がり、部屋を出ていった。

 

アスナ「三時間かー。どうしよっか」

 

ナイト「キリト、俺達は外に出ている。アスナと話が終わったら声をかけてくれ」

 

キリト「お、おい。ナイト!」

 

ナイトとフィリアも外に出る。

 

フィリア「ナイト・・・私達はどうする?」

 

ナイト「武器の修理やアイテムの補充といったところだな。まあ、そんな必要は無いだろうが」

 

フィリア「そうだね・・・武器はナイトが強化や修理してくれたし、アイテムは補充しときたいかな」

 

ナイト「キリト達も三十分は話し込むだろう。その間に済ませとくか」

 

ナイト達がキリト達と合流してから一時間後、七十五層に行くことにした。広場には、すでに攻略チームと思しき、一見してハイレベルと判るプレイヤー達が集結していた。

 

アスナ「ほら、キリト君はリーダー格なんだからちゃんと挨拶しないとだめだよ!」

 

キリト「んな・・・」

 

フィリア「ナイトもしなくていいの?」

 

ナイト「俺はいい」

 

キリトはぎこちない仕草で敬礼していると、ナイトの肩を叩く者が

 

?「よう!」

 

振り返るとクラインがいた。その横にはエギルの巨体もある

 

ナイト「やっぱり・・・お前らも参加するのか」

 

エギル「今回はえらい苦戦しそうだって言うから、商売を投げ出して加勢に来たんじゃねぇか。この無私無欲の精神は理解できないたぁ・・・」

 

いつのまにか来ていたキリトがエギルの腕をポンと叩き

 

キリト「無私の精神はよーく解った。じゃあ、お前は戦利品の分配からは除外していいのな」

 

エギル「いや、そ、それはだなぁ・・・」

 

情けなく口篭るその語尾に、クラインとアスナの笑い声が重なる。笑いは周囲のプレイヤーにも伝染し、皆の緊張が徐々に解れていくようだった。午後一時丁度にヒースクリフとその配下が現れる。

彼らの姿を目にすると、プレイヤーの間に再び緊張が走った。ヒースクリフはナイト達の方に真っ直ぐ進む。ヒースクリフはナイト達に軽く頷きかけると、集団に向き直って言葉を発した。

 

ヒースクリフ「欠員はないようだな。よく集まってくれた。状況は知っていると思う。厳しい戦いになるだろうが、諸君の力なら切り抜けられると信じている。 ー 解放の日のために!」

 

ヒースクリフの力強い叫びに、プレイヤー達は一斉にときの声で応じる。ヒースクリフはナイト達の方に向き直ると

 

ヒースクリフ「キリト君、今日は頼りにしているよ<二刀流>、存分に揮ってくれたまえ」

 

キリトはナイトに声をかけないのに疑問を抱きつつ、無言で頷く。

 

ヒースクリフ「では、出発しよう。目標のボス部屋直前の場所までコリドーを開く」

 

ヒースクリフが取り出したのは、<回廊結晶>。ナイト達がオレンジギルド<タイタンズハンド>にも使用した転移ゲートを開く結晶だ。

 

ヒースクリフ「では皆、ついてきてくれたまえ」

 

ヒースクリフがゲートに入る。間を置かず、四人のKoBメンバーがそれに続く。次々とゲートに飛び込み、転移していく。ナイト達も最後に転移する。

 

フィリア「・・・なんか・・・やな感じだね・・・」

 

ナイト「ああ・・・」

 

フィリアもいつもの元気さがなりを潜め、真剣な顔をしている。隣ではキリトとアスナも全く同じ会話をしており、二人は柱の陰で抱き合っていた。

 

ナイト「大丈夫だ。フィリアは俺が守ってやる」

 

フィリア「ありがとう・・・だけど、私もナイトを助けるよ!」

 

少し元気を取り戻したフィリアと頷き合い、前を見る。そこには、ヒースクリフの姿が

 

ヒースクリフ「皆、準備はいいかな。今回、ボスに関して情報がない。基本的にはKoBが前衛で攻撃を食い止めるので、その間に可能な限りパターンを見切り、柔軟に反撃してほしい。では ー 行こうか」

 

あくまでソフトな声音で言うと、ヒースクリフは黒曜石の大扉に歩み寄り、手をかけた。キリトはクラインとエギルの肩を叩き、振り向いた二人に言った。

 

キリト「死ぬなよ」

 

クライン「へっ、お前こそ」

 

エギル「今日の戦利品で一儲けするまではくたばるつもりはないぜ」

 

ふてぶてしく言い返した直後、大扉がゆっくりと開く。プレイヤー達が一斉に抜刀する。ナイト達も愛剣を引き抜き、周りに頷きかける。

 

ヒースクリフ「 ー 戦闘開始!」

 

そのまま、扉の中へと走り出す。部屋は七十四層のボス部屋よりも広いドーム状の部屋だった。背後で大扉が閉まる。

数秒の沈黙が続いた。ボスは出現しない。一秒、また一秒と時間が過ぎていく。

 

ナイト「上だ!」

 

全員がハッとして上を見ると、とてつもなく巨大なムカデがいた。

 

フィリア「うそ・・・<スカル・リーパー>!?」

 

ナイト「いや、あの時よりもステータスは上だ」

 

フィリアが小さく叫ぶという器用なことをしていると、<スカル・リーパー>はパーティーの真上に落下してきた。

 

ヒースクリフ「固まるな!距離を取れ!」

 

ヒースクリフの鋭い叫び声で、全員が動き出す。落下地点から飛び退ると、間に合わなかったプレイヤーが宙を吹き飛ぶ。

HPバーが猛烈な勢いで減少していく。黄色から、赤へ ー そして、あっけなくゼロになる。

 

キリト(一撃で ー 死亡だと!?)

 

アスナ「こんなの・・・無茶苦茶だわ・・・」

 

一瞬にして三人の命を奪った骸骨百足は、猛烈な勢いで新たなプレイヤー目掛けて突進した。

 

攻略メンバー「わあああー!」

 

その方向にいたプレイヤー達は恐慌の悲鳴をあげる。再び鎌が振りかざされる。ヒースクリフが巨大な盾を掲げ、鎌を迎撃する。もう一本の鎌をナイトが弾く。

 

ナイト「大鎌は俺達が食い止める。側面から攻撃してくれ」

 

ナイトはなんともないように軽くいいながら鎌を再び弾く。その声でようやく動き出す。雄叫びを上げ、武器を構えて突撃する。

ボスのHPバーが順調に減っていくが、鎌を迎撃しているナイトに複数の悲鳴が届く。視線を向けると、百足の尾にある長い槍状の骨に数人が薙ぎ払われる。それは、鎌よりは攻撃力が低いのか一撃ではHPはゼロにならなかった。ヒースクリフとナイトには余裕が無い。

 

アスナ「キリト君・・・!」

 

キリト「ああ!」

 

キリトとアスナが尾の攻撃を受け始める。ヒースクリフ以外は攻撃の余波で少しづつHPが減少していくが、それに気づくことなく攻撃を受け続ける。

戦闘は一時間にも及んだ。無限にも思えた激闘の果てに、ボスモンスターのHPが後数ドットといったところだった。

 

ナイト「キリト、最後の攻撃だ。やるぞ」

 

キリト「解った!」

 

ナイトとキリトが連続攻撃を繰り出す。鎌を弾き、ソードスキルを当てる。鎌を避け、ソードスキルを当てる。まるで、一体となったかのような連携で<スカル・リーパー>を追い詰める。

 

キリト「これで・・・最後だ!」

 

キリトの攻撃で、ついにボスモンスターがその巨体を四散させた。しかし、誰一人として歓声を上げる余裕のあるものはいなかった。

 

ナイト「何人やられた?」

 

キリト「 ー 十四人、死んだ」

 

エギル「・・・うそだろ・・・」

 

エギルの声にも普段の張りは全くなかった。生き残った者たちの上に暗鬱(あんうつ)な空気が厚く垂れ込めた。

キリトは疲労でぼんやりとした意識のままヒースクリフを眺める。

そして、あることに気づき、剣を握り直す。

 

アスナ「キリト君・・・?」

 

アスナが呟く。しかし、キリトはその声に反応することなくヒースクリフに迫る。右手の剣を捻りながら突き上げた。ヒースクリフはそれに気づき、目を見開いて驚愕の表情を浮かべた。

キリトの剣がヒースクリフの胸に突き立つ ー 寸前で、目に見えぬ障壁に激突する。

 

アスナ「キリト君、何を ー 」

 

キリトの攻撃に、驚きの声を上げるアスナをナイトが止める。アスナもメッセージに気づき動きが止まる。その場にいる全員が動かなかった。

しかし、ナイトだけが動いたのだった。

 

ナイト「ようやく化けの皮が剥がれたな・・・ヒースクリフ。いや ー 茅場晶彦」

 

ナイトの喜色の含んだ声だけが響いたのだった。




年内はこれで最後の投稿です。
次回新年一発目の投稿で、アインクラッド編を完結させます
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