ナイト「ようやく化けの皮が剥がれたな・・・ヒースクリフ。いや ー 茅場晶彦」
ナイトの喜色の含んだ声だけが響いたのだった。キリトは剣を引き、ナイトの隣まで跳ぶ。
アスナ「システム的不死・・・?・・・って・・・どういうことですか・・・団長・・・?」
ナイトに続き、アスナがヒースクリフに問いかける。
キリト「これが伝説の正体だ。この男のHPはイエローにまで落ちないようにシステムに保護されているのさ」
ナイト「不死属性を持つ可能性があるのは・・・NPCかシステム管理者だけだ」
キリト「・・・この世界に来てからずっと疑問に思っていたことがあった・・・あいつは今、どこから俺達を観察し、世界を調整してるんだろう、ってな。でも俺は単純な心理を忘れていたよ。
<他人のやっているRPGを傍から眺めるほど詰まらないことはない>・・・そうだろう、茅場晶彦」
キリトとナイトの言葉に全てが凍りついたような静寂が満ちた。
ミト「団長・・・本当なんですか・・・?」
ミトが一歩前に出て問いかける。その声はかすれていたのだった。
ヒースクリフ「・・・なぜそれに気づいたのか参考までに教えてもらえるかな・・・?」
キリト「最初におかしいと思ったのは例のデュエルと時だ。最後の一瞬だけ、あんた余りにも速過ぎたよ」
ヒースクリフ「やはりそうか。あれは私にとっても痛恨事だった。君の動きに圧倒されてついシステムのオーバーアシストを使ってしまった」
ナイト「システムコンソールにアクセスした時に気づいた。だが・・・その事を信じる人は少ないと思った。だから、誰かが気づくのを待っていたんだよ」
ヒースクリフは少し疑問を持ったようだがゆっくり頷くと苦笑の色を浮かべる。
ヒースクリフ「予定では九十五層に達するまでは明かさないつもりだったのだがな。 ー 確かに私は茅場晶彦だ。付け加えれば、最上階で君達を待つはずだったこのゲームの最終ボスでもある」
キリト「・・・趣味がいいとは言えないぜ。最強のプレイヤーが一転最悪のラスボスか」
ヒースクリフ「なかなかいいシナリオだろう?盛り上がったと思うが、まさかたかだか四分の三地点で看破されてしまうとはな。・・・君達はこの世界で最大の不確定因子だと思っていたが、ここまでとは」
ナイト「本来あんたの前に立つのはキリトの予定だったんだろ?」
ヒースクリフ「その通りだ。・・・全十種あるユニークスキルのうち、<二刀流>スキルは全てのプレイヤーの中で最大の反応速度を持つ者に与えられ、魔王に対する勇者の役割を担うはずだった。
ナイト君の<絶刀>スキルは全てのプレイヤーの中でフロアボスにソードスキル無しで与えたダメージ量が一定以上かつ、その中で一番多かった者に与えられ、勇者パーティーの戦士の役割を担うはずだった。
だが君達は私の予想を超える力を見せた。攻撃速度といい、その洞察力といい、な。まあ・・・この想定外の展開もネットワークRPGの醍醐味と言うべきか・・・」
その時、凍りついついていたプレイヤー達が動き出す。
ディアベル「ヒースクリフ・・・さん・・・?どうして・・・こんな・・・」
ディアベルは言葉にならない疑問を抱いてるようだった。ディアベルは第一層で戦線離脱した後、二十六層から前線に復帰。それ以来血盟騎士団の幹部を務めていた。
KoB幹部「貴様・・・貴様が・・・俺達の忠誠 ー 希望を・・・よくも・・・よくも・・・よくもー!」
絶叫しながらヒースクリフに突撃する。ハルバードを握りしめ、大きく振りかぶる。だが、茅場の方が速かった。左手を振り、出現したウインドウを操作したかと思うと、キリトとナイト以外のプレイヤーの不自然な格好で倒れる。
ナイト「麻痺か・・・!」
キリトはアスナの上体を抱え起こし、その手を握った。
キリト「・・・どうするつもりだ。この場で全員殺して隠蔽する気か・・・?」
ヒースクリフ「まさか。そんな理不尽な真似はしないさ。私は予定を早めて、最上階の<紅玉宮>にて君達を待つことにするよ。だが・・・その前に・・・私の正体を看破した報奨を与えなくてはな。
チャンスをあげよう。今この場で私と戦うチャンスを。無論不死属性は解除する。私に勝てばゲームはクリアされ、全プレイヤーがこの世界からログアウトできる。・・・どうかな?」
アスナ「だめよキリト君・・・!あなたを排除する気だわ・・・今は引きましょう・・・!」
ミト「ナイト・・・!アスナの言う通り・・・今は引いた方がいいわ・・・!」
フィリア「ナイト・・・!死なないでね・・・」
三者三葉な言葉を聴きながらも立ち上がるナイトとキリト。
キリト「いいだろ。決着をつけよう」
アスナ「キリト君っ・・・!」
アスナの悲痛な叫びにキリトはどうにか笑顔を作る。
キリト「ごめんな。ここで逃げるわけには・・・いかないんだ・・・」
アスナ「死ぬつもりじゃ・・・ないんだよね・・・?」
キリト「ああ・・・必ず勝つ。勝ってこの世界を終わらせる」
キリトは二本の剣音高くを抜き放つ。
エギル「キリト!やめろ・・・っ!」
クライン「キリトー!」
声の方向を見ると、エギルとクラインが必死に体を起こそうとしながら
叫んでいた。
キリト「エギル。今まで、剣士クラスのサポート、サンキューな。知ってたぜ、お前が儲けのほとんど全部、中層ゾーンのプレイヤーの育成につぎ込んでたこと
クライン。・・・あの時、お前を・・・置いていって、悪かった。ずっと後悔していた」
クライン「て・・・てめぇ!キリト!謝ってんじゃねぇ!今謝るんじゃねぇよ!許さねぇぞ!ちゃんと向こうで、メシのひとつも奢ってからじゃねぇと、絶対許さねぇからな!」
クラインは滂沱(ぼうだ)の涙を溢れさせながら、再び起き上がろうと激しくもがいていた。
キリト「解った。約束するよ。次は、向こう側でな」
右手を持ち上げ、ぐっと親指を突き出す。
キリト「・・・悪いが、一つだけ頼みがある」
ヒースクリフ「何かな?」
キリト「簡単に負けるつもりはないが、もし俺が死んだら ー しばらくでいい、アスナが自殺出来ないように計らってほしい」
ヒースクリフ「よかろう。彼女は<せルムブルグ>から出られないように設定する」
アスナ「キリト君、ダメだよーっ!そんなの、そんなのないよーっ!」
キリトの背後でアスナの絶叫が響く。
ナイト「キリト、お前は死なない。その役目は俺の仕事だ」
キリト「・・・なら、死ぬ訳にはいかないな」
ナイトとキリトはふざけ合いながらも剣を構える。
ナイト「俺は限界まで手出しはしない。決着はお前の手でつけるんだ」
キリト「ありがとう」
キリトはナイトの気遣いに感謝しながら目の前の男に集中する。ヒースクリフはウインドウを操作するとHPバーが同じ長さに設定され、システム的不死も解除されたようだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~〜
sideキリト
キリト「(これはデュエルではない。単純な殺し合いだ。そうだ ー 俺は、あの男を) ー 殺す・・・っ!」
鋭い呼気と共に吐き出しながら、キリトは床を蹴った。
右手の剣を横薙に繰り出す。ヒースクリフが左手の盾で難なく受け止める。
キリト(ソードスキルは全て読まれる!ソードスキルに頼らず自分だけの力で・・・!)
キリトの攻撃はヒースクリフが全て叩き落とす。その合間にも、少し隙ができると鋭い反撃を浴びせてくる。キリトはそれを瞬間的反応だけで迎撃する。局面はしばらく変わらなかった。
キリト(もっとだ!もっと速く・・・!)
キリトの両手の動きは更に加速する。秒間何発もの攻撃を撃ち込むが、ヒースクリフの表情は変わらない。目にも留まらぬ速さで十字盾と長剣を操り、的確にキリトの攻撃を弾き返す。
キリト「くそぉっ・・・!」
キリトは焦ってしまう。奴には余裕があると・・・心に疑念が覆いっていき、致命的失敗をしてしまう。二刀流最上位剣技<ジ・イクリプス>を放ってしまう。二十七連撃は通常なら強力だが、ヒースクリフには致命的な隙になってしまう。
キリト(しまった・・・!ごめん ー アスナ・・・せめて君だけは ー 生きて)
もはやソードスキルは止められない。ヒースクリフが二十七回目の攻撃を防いだとき、左手に握られた剣が砕け散った。
ヒースクリフ「さらばだ ー キリト君」
動きが止まったキリトの頭上に、ヒースクリフの長剣が掲げられた。その刀身がクリムゾンの光を迸らせる。剣が降ってくる ー
アスナ「キリト君は ー 私が ー 守ってみせる!」
ヒースクリフの長剣とキリトの間に、凄まじいスピードで飛び込んできたアスナ。
システム的麻痺状態によって動けなかったはずのアスナが、キリトの前に立つ。ヒースクリフも驚きの色が見えた。だが、斬撃は止まらない。
キリトは全てがスローモーションに見えた。全てがゆっくり動く中、長剣がアスナの肩口に当たった瞬間 ー
ナイト「やはり・・・愛の力って偉大だな・・・」
ナイトがヒースクリフの長剣を刀で弾く。
ナイト「ヒースクリフ。こっからは選手交代と言ったところだ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
sideナイト
ヒースクリフ「これは驚いた。スタンドアロンRPGのシナリオみたいじゃないか?麻痺から回復する手段はなかったはずだがな・・・」
ナイト「これが人間の可能性ってやつだヒースクリフ。心意の力ってやつだろうな」
ナイトは<絶刀>起動する。その身に纏う光は炎へと変化し、体から溢れている。
ナイト「これから見せるは我が秘奥・・・これらを全て防げるか!」
ナイトは刀を一振、鞘に収めた状態で構える。
ナイト「一刀流 居合 獅子歌歌」
ナイトが凄まじいスピードでヒースクリフに迫り、すれ違い様に斬る。
ヒースクリフは驚いたものの冷静に盾で防ぐ。盾に刀が触れる音が鋭く響き、火花が散る。
ナイト(やはり、これ位の技の冴えだと通らないか。本物なら違うだろうが・・・)
ナイトは再び刀を振るう。正面からだけではなく、斜めからも含めた連撃である。刀は振るう事にどんどん速くなっていく。
しかし、ヒースクリフは正確に全ての攻撃を防ぎ、反撃をしてくる。ナイトは後方へ跳び距離をとる。
ナイト「速く、速く・・・速く!<無明三段突き>!」
ホロウナイトに使用した高速の突き。それを更なる練度で繰り出したそれは、ヒースクリフの盾に阻まれる。しかし、お互いの武器にひびが入る。それに気づかない二人は更なる剣戟を繰り出す。
ナイト(一振でだめなら・・・二刀流だ・・・!)
ナイトは二振目の刀を装備する。
キリト「二刀流・・・!?」
キリトの声が聞こえたナイトは
ナイト「<絶刀>の効果の制限解除とは、システムの恩恵を受けない代わりに、あらゆることが出来る。例えば、さっき使った高速の突きや居合だ。だから、ソードスキルは使えないが、擬似二刀流は出来る」
ヒースクリフ「直剣ではなく、刀の二刀流か・・・先程の技といい・・・君はまるでびっくり箱だな」
ナイト「さあ・・・続きといこうか・・・!」
ナイトは右手の刀を真っ直ぐ突き出し、左の刀が角度を変えて斬りかかる。ヒースクリフは盾で一度に受け止める。
防がれた瞬間ナイトは回り込むかのように高速で動き出し、上下左右ありとあらゆる角度から立て続けに斬撃を繰り出す。ヒースクリフは盾をかすかに傾けて斬撃を一つ一つ確実に受け流していく。
ナイトは焦りから攻撃に集中していく。ヒースクリフはその隙を見逃さず、盾を突き出す。ナイトはそれに気づいたが、間に合わず体勢が崩れる。ヒースクリフは長剣を繰り出す。
しかし、完全には崩れなかったため無理やり後方へと跳ぶ。ヒースクリフの反撃はナイトの肩に掠った。
ナイト「(さすがに固い。フェイントや誘いにも乗らず完璧に裁かれる・・・なら)ヒースクリフ・・・これが最後の攻撃だ!」
ナイトは刀を全て収め、新たに一振の刀を取り出す。その刀は塚や鍔が無く、抜きみであった。ヒースクリフはその刀を見ると完全防御姿勢を作り、攻撃に備える。
ナイト「其処に至るは数多の研鑽。縁を切り、定めを切り、業を切り、我をも絶たん紅蓮蒼月。すなわち、宿業からの解放なり!」
ナイトの上段からの振り下ろしに、ヒースクリフの盾がぶつかる。火花が散り、金属音が響く。それは数秒で決着が着いた。ナイトの刀がヒースクリフの盾を壊し、胸に到達する。
ナイト「うおおおおぉ!」
胸に到達した刀をナイトは更に押し込み、切り裂く。しかし、ナイトはヒースクリフに勝ったと思い油断してしまう。
ミト・フィリア「ナイト・・・!前・・・!」
ナイトは前を慌てて向くと、ヒースクリフの長剣がナイトの胸を貫く。
ナイト「な・・・!しまった・・・油断した・・・」
ヒースクリフ「神聖剣のスキル<聖なる祝福>だ。これは盾が破壊されると、一度だけHPが三%の状態で復活することが出来る。・・・ナイト君、これがなければ君の勝ちだ」
ナイトのHPバーは消滅していた。
ナイト「キリト・・・お前に後は任せる。・・・折れた剣はこれを使え・・・」
ナイトは新しく直剣を取り出すとポリゴンとなって四散した。ナイトの死んだ場所には取り出した剣が刺さっていたのだった。
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
はい・・・すいませんでしたー(´;ω;`)今回で完結させることが出来ませんでした。次回・・・次回こそは完結させます・・・なので許してちょ
⊂( ・∀・)彡ガッ☆`Д゚)ヴッ
それとヒースクリフの神聖剣スキル<聖なる祝福>はオリジナススキルです