sideキリト
ナイト「キリト・・・お前に後は任せる。・・・折れた剣はこれを使え・・・」
ナイトのHPバーが消滅する。ナイトは穏やかな笑みを浮かべ、キリトを見つめる。ナイトの全身がポリゴンとなって四散した。
キリト「嘘だろ・・・ナイト・・・こんな・・・こんなの・・・」
部屋全体が静寂に包まれる中キリトの絶望の声だけが響く。そして
フィリア「ナイト・・・ッ!」
ミト「くっ!・・・ナイト・・・」
エギル「ナイトー!くそっ!」
クライン「ナイトー!そんなのってねぇよな・・・!」
各々の絶叫ではない叫びが部屋に蔓延する。キリトは床に刺さるナイトが残した剣を漠然と見つめた。左手を伸ばし、それを掴む。
キリトの愛剣と同じように重いその剣はキリトによく馴染んだ。のろのろと立ち上がり、茅場に打ちかかった。
キリト「ああぁぁ!」
技とも呼べない、攻撃ですらないその動作に、茅場は憐れむような表情を浮かべ ー 盾でキリトの剣を弾き飛ばすと、長剣で胸を貫いた。
キリトはHPバーがゆるやかに減少している間に、ナイトのことを思い出す。すると
ナイト(キリト!諦めるな!お前には・・・まだ仲間がいるだろう。それにアスナを一人にしていいのか?)
ナイトの声が聞こえた気がした。ナイトの声でキリトは目を開く。
キリト「まだだ・・・まだだ!」
キリトには胸に剣を突き刺したまの茅場の驚愕した顔が見えた。
キリト「うおおおおお!」
ナイトの残した剣がついに茅場の胸を貫く。茅場の顔には既に驚愕の表情はなく、穏やかな笑みが浮かんでいる。
お互いの体を貫いた姿勢のまま、キリト達はその場に一瞬立ち尽くす。
キリト(これで・・・いいか・・・?)
ナイトの返事はなかったがほのかな暖かさが一瞬、肩に感じた。
キリトは沈んでいく意識の中で、自分の体が飛散するのを、そして同時に茅場も砕け散るのを感じた。
システムアナウンス「ゲームはクリアされました ー ゲームはクリアされました ー ゲームは・・・」
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sideナイト
ナイトは気づくと不思議な空間にいた。
ナイト(ここは・・・そうか・・・キリトがクリアしたのか)
ナイトはその場所を少し歩くと二つの人影が見えた。
ナイト「キリト、アスナ・・・お疲れ様」
キリトとアスナは驚愕の表情を浮かべた後、穏やかな笑みを浮かべる。
キリト「ごめん。・・・ナイト・・・俺も死んじゃったよ」
ナイト「うん・・・?クリアしたんじゃないのか?」
キリト「いいや・・・相打ちさ」
ナイト「なら大丈夫だと思うが・・・」
ナイトは首を傾げながらも周りを見渡し、指を指す。
ナイト「アインクラッドが崩壊していく・・・なかなかに絶景だと思わないか?」
ナイトの問に答えたのはキリトやアスナではなく
茅場「絶景だとも」
ナイト達は視線を右に向けると、いつの間にかそこに茅場晶彦が立っていた。ヒースクリフではなく、SAO開発者としての本来の姿だ。
キリト「あれは、どうなってるんだ?」
茅場「比喩的表現・・・と言うべきかな。現在、アーガス本社地下五階に設置されたSAOメインフレームの全記憶装置でデータの完全消去を行っている。あと十分程でこの世界の何もかもが消滅するだろう」
アスナ「あそこにいた人達は・・・どうなったの?」
茅場「心配には及ばない。先程、生き残った全プレイヤー、六五四七人のログアウトが完了した」
キリト「・・・死んだ連中は?一度死んだ俺達がここにこうしているからには、今まで死んだ四千人だって元の世界に戻してやることができるんじゃないのか?」
茅場「命は、そんなに軽々しく扱うべきものではないよ。彼らの意識は帰ってこない。死者が消え去るのはどこの世界も一緒さ。
君達とは ー 最後に少しだけ話をしたくて、この時間を作らせてもらった」
ナイト「茅場さん・・・あなたの目的は達成されましたか?」
茅場「ああ・・・私が最初に言った通り、この世界を創り出し、こ世界でどう生きるかの観賞が目的なのでね」
ナイト「いや・・・言い方を変えましょう。こんなことをした理由は?」
茅場「理由 ー か。私も長い間忘れていたよ。なぜだろうな。
フルダイブ環境システムの開発を知った時 ー いやその遥か以前から、私はあの城を、現実世界のあらゆる枠や法則を超越した世界を創り出すことだけを欲して生きてきた。そして私は・・・私の世界の法則をも超えるものを見ることができた・・・
子供は次から次へといろいろな夢想をするだろう。そらに浮かぶ鉄の城の空想に私が取り憑かれたのは何歳の頃だったかな・・・その憧憬だけは、いつまで経っても私の中から去ろうとしなかった。
年経るごとにどんどんリアルに、大きく広がっていった。この地上から飛び去って、あの城に行きたい・・・長い、長い間、それが私の唯一の欲求だった。
私はね、まだ信じてるのだよ ー どこか別の世界には、本当にあの世界が存在するのだと・・・」
キリト「ああ・・・そうだといいな」
沈黙が訪れる。視線を遠くに向けると、崩壊は城以外の場所にも及び始めていた。
茅場「・・・言い忘れていたな。ゲームクリアおめでとう、キリト君、ナイト君、アスナ君 ー さて、私はそろそろ行くよ」
風が吹き、それにかき消されるかのように ー 気づくとその姿はどこにも無かった。アインクラッドが完全に消滅し、残るはナイト達だけとなった。
キリト「・・・お別れだな」
ナイト「いいや、お別れではない。現実でまた会えるから・・・一旦お別れだ。・・・あれ?これもお別れか?」
アスナ「ふふ・・・ね、最後に名前を教えて。キリト君の本当の名前」
キリト「桐ヶ谷・・・桐ヶ谷和人。多分先月で十六歳」
アスナ「きりがや・・・かずと君・・・年下だったのかー。・・・私はね、結城・・・結城明日奈。十七歳です」
キリト「ゆうき・・・あすな・・・ナイト、お前も教えてくれよ」
ナイト「俺か・・・?俺は、如月・・・如月蒼。キリトと同じで今月で十六歳だ」
世界の終焉は間近だった。周囲の空間が次々と輝きに呑み込まれ、光の粒を散らしながら消滅していく。
キリトとアスナは抱き合いながら、ナイトはそれを少し遠くで見ながら最後の時を待った。
視界が光に満たされていく。全てが純白のヴェールに包まれ、極小の粒子となって舞い散る。
キリト(アスナ・・・君を愛してる)
アスナ(キリト君・・・君を愛してます)
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side和人
空気に、匂いがある。和人はゆっくり目を開ける。その途端、脳の奥までを突き刺すような強烈な白い光を感じ、慌てて目蓋を閉じる。
おそるおそる、もう一度目を開けてみる。目に大量の液体が溜まっていることに遅まきながら気付く。
和人(ここは・・・どこだ・・・?)
周りを確認すると、何か柔らかいものの上に横たわっているようだった。そして、空調装置がある。
和人(空調装置・・・機械・・・?・・・アインクラッドじゃ無い!)
和人は慌てて跳ね起きようとしたが、体がいうことを聞かなかった。全身に力が入らず、すぐに情けなく沈んでしまう。自分の体は驚くほどやせ細り、無数の産毛が生えている。腕には注入装置と思しき金属の管がテープで固定されていた。
視線を周りに向けると、白いカーテンやワゴントレイ、閉じられたドアがある。得られた情報を推察すると、ここは病室だということが解った。
和人(これが・・・茅場の言うゲームクリアの報酬なのか・・・)
和人はゲームをクリアしたと認識しても、さしたる感慨や歓びは湧いてこなかった。ただ戸惑いと、僅かな喪失感を覚えるのみだ。
和人(俺は、あのまま消えても良かったのに。彼女とひとつに・・・)
そこまで考えるとあることに気付く。それは喪失感の理由だった。
和人「あ・・・す・・・な・・・」
二年間使われることのなかった喉に鋭い痛みが走る。だが、それすらも意識していなかった。和人は彼女 ー 明日奈が生きてることを確信し、全力で起き上がろうとする。
頭を固定している何か ー ナーヴギアだ ー を外し、病室の外に出る。
和人(明日奈・・・どこだ・・・)
和人は明日奈が同じ病院にいることを信じ、探すのだった。
はい・・・完結だー!・・・ってことで、アインクラッド編を読んで下さりありがとうございます。次回は閑話ってことで、ナイトが使った装備やスキルなどを解説したいと思います。