ガチャ転生~SAO編~   作:気まぐれ荘

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妖精姫の戦い

sideアスナ

 

空の頂きに貼り付いたまま微動だにしないと思われた太陽も、やがてゆっくりと傾き、弧を描く地平線を赤々と染め上げた。

前回のオベイロンの訪問から、現実世界では五時間は最低でも経過したと判断し、アスナはそっと体を起こした。タイルの上を歩くと金の扉の前に立つ。

 

アスナ「・・・三・・・二・・・九・・・キリト君・・・私頑張るからね」

アスナはオベイロンが立ち去る時に覗き見した扉の暗証番号を押す。一際大きく金属音が響き、わずかに扉が開いた。

 

アスナ「ナイト君・・・少し静かにしててね」

 

アスナは反応がないだろうと思いつつナイトの脇を通り抜ける。するとナイトが動きだし、アスナの後を着いてくる。疑問に思いつつも先を急ぐため走り出す。誰かに見つからないか、モンスターがいないのか、と警戒しながらも物陰に隠れつつ動く。

アスナはチラリと後ろを見ると、ナイトはアスナの邪魔にならないように着いてきているみたいだ。

 

アスナ(ナイト君自体は反応していない・・・なのに動いている。何故?本能的なのかしら・・・?)

 

アスナはナイトのことを考えつつも進むと巨大な壁と小さな穴が見えてきた。道は穴の中に広がっている。慎重に穴に近ずくと、その奥に人工的なドアがあるのが解った。ロックされていないことを祈りつつ内部に滑り込むと息を吐き、通路を進み始める。

 

アスナ(真っ白な通路ばっかり・・・目立ちそうで怖いわね・・・それに、長い。ちゃんと進んでるはずなのにわからなくなりそうだわ)

 

アスナはひたすらに歩き続けると二枚目のドアを見つける。そのことに少し安堵しつつもドアを開くと、全く同じような通路が続く。そのことにげんなりしつつも足を踏み入ると、入ってきたドアが痕跡すら残さず壁面に溶け込んでしまった。

アスナは慌てつつもドアのことは忘れることにして先を進む。少し進むと壁に一枚のポスターを見つける。アスナはようやく白色以外の物を目にして思わず駆け寄ってしまう。

ポスターはこの場所の案内図だったようで、現在地は<ラボトリー>と呼ばれる場所の最上層<フロアC>にいるようだ。

 

アスナ(・・・実験体)

 

アスナは案内図の下の方にあった<実験体格納室>と記された文字を見つける。しばし黙考した後、身を翻(ひるがえ)して通路を再び歩き出した。やがて通路の左側にドアが現れる。その中に入ると、現実世界でいうエレベーターの役割を果たす操作盤が目に入る。

 

アスナ(このボタンを押せば<実験体格納室>に行けるはず。キリト君・・・待ってて!)

 

ボタンを押すとドアが閉まり、無音で降下する。数秒後停止し、ドアが開く。足を踏み入れると眼前には、上層と同じような通路が一直線に伸びていた。

通路はそう長いものではなかった。歩くうちに今までのものより少し大きなドアが見えてくる。ドアの前に立つと音もなく左右に開いた。奥から差し込んできた強烈な光に、思わず目を細める。

 

アスナ(・・・!?)

 

内部を見た途端、アスナは息を呑んだ。途方もない広大な空間だった。そこにびっしり、かつ整然と、短い柱のようなものが並んでいた。

柱は床面からアスナの胸のあたりの高さまで、白い円柱が伸びている。

太さは両手で抱えられるほどで、その上面には人間の脳髄が浮かんでいる。

 

アスナ(・・・苦しんでる)

 

アスナは直感的にそう悟った。オベイロンの台詞<感情を操るテクノロジー>とこの場所<実験体格納室>が結びつく。

 

アスナ「なんて・・・なんて酷いことを・・・」

 

アスナは両手で口を覆いながら喉の奥で呟いた。その時、アスナの肩を誰かが軽く叩く。びっくりしながら慌てて振り向くとナイトがいた。

 

アスナ「どうしたのナイト君?・・・何かあった?」

 

ナイトはアスナに何かを差し出す。それを受け取るとシステム管理用のカードだった。

 

アスナ「どこでこれを・・・ナイト君!私をそこに連れていってくれる!?」

 

アスナはナイトがこれをどこで手に入れたかを理解し頼み込む。だがナイトは首を横に振る。そして、指をある方向に向ける。その方向を見ると、ナメクジの姿をした人間がいた。

ナイトはアスナの手をとりエレベーターへと戻る。アスナは少し抵抗するもビクともしないため諦めたのだった。

 

アスナ「ナイト君・・・どうしてなの?」

 

ナイトはどこかに顔を向けると慌てるかのようにアスナをお姫様抱っこをして走り出す。鉄格子にアスナが戻されるとまた扉の前に居座る。

 

アスナ「私 ー 負けないよ、キリト君。絶対に諦めない。必ずここから脱出してみせる」

 

アスナはベットに歩み寄ると、横たわる振りをしてカードを枕の下に挟み込んだ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

sideキリト

 

キリトは様々な人の力を借りてアスナの元に続くゲートに辿り着いた。しかし、ゲートは管理者権限によってロックされていたがアスナが落としてくれたシステムアクセス・コードによりゲートの中に突入したのだった。

 

キリト「ここは・・・?」

 

?「・・・判りません、ナビゲート用のマップ情報が、この場所には無いようです・・・」

 

キリト「そうか・・・ユイ、アスナのいる場所は判るか?」

 

ユイと呼ばれた少女はキリトとアスナがアインクラッドの時に会ったAIである。キリトとアスナをパパ、ママと呼び二人もユイのことを娘として接しているのである。

 

ユイ「はい、かなり ー かなり近いです。上の方・・・こっちです」

 

白いワンピースから伸びた素足で床を蹴り、音もなく走り出す。キリトは右手に握ったままの剣を背中に戻し、慌ててその後を追った。

 

ユイ「ここから上部へ移動できるようです」

 

ユイを追って数十秒走るとユイが立ち止まる。ユイの言葉に従い上部に移動すると

 

キリト「高さはここでいいか?」

 

ユイ「はい。 ー もう、すぐ・・・すぐそこです」

 

ユイはキリトの手を引いて走り出した。いくつか内部に並んだドアの前に差し掛かったが、ユイはそれらには目を向けることなく通過した。

 

ユイ「この向こうに・・・通路が・・・」

 

ユイは何も無い壁を手で撫でると、ブン、と音を立てて消滅した。その奥には通路が伸びている。ユイは無言で足を踏み入れると、一層スピードを増して駆け始めた。

やがて、前方に四角いドアが行く手を塞いでいた。ユイは立ち止まることなく、左手を伸ばすと、勢いよくドアを押し開いた。

 

キリト「無いじゃないか・・・空中都市なんて・・・」

 

ALOのグランドクエストは世界樹の頂きにある空中都市に辿り着き、妖精王オベイロンに謁見する・・・という内容なのだが、世界樹の頂きに辿り着くにはシステムアクセス・コードが必要ということからクリア出来ないようになっている。

 

キリト「・・・許されないぞ・・・」

 

キリトはこの世界を動かしている誰かに怒りを滲ませる。すると、右手が引っ張られた。ユイが、気遣わしそうな目でキリトを見上げていた。

 

キリト「ああ、そうだな。行こう」

 

キリトとユイは樹上の道を進む。やがて、金属を縦横に組み合わせた格子 ー いや、鳥籠を見つける。

 

ユイ「パパ・・・誰かがいます。これは・・・プレイヤー?」

 

キリトはユイの言葉に考えを巡らせる。プレイヤーがこの場所にいるはずがないため運営の人物と考えられる。キリトは剣を構えながら疾走する。

 

キリト「アスナ」

 

ユイ「ママ・・・ママ!」

 

キリトとユイはアスナを見つけ、同時に叫ぶ。しかし、鳥籠に到達する寸前にキリト達の前に立ち塞がる人影

 

キリト「・・・ナイト!どうしてお前が・・・」

 

そう。立ち塞がったのはナイトだった。SAOの時と姿が変わらないままそこに立っていた。

 

アスナ「キリト君!ナイト君は須郷さんに体を操られているの!」

 

キリト「そうか・・・ナイト、俺達は一回も戦ったことは無かったよな・・・どっちが強いかここで試してやるよ!」

 

キリトとナイトが武器を構え、突撃する。すると、突然鳥籠付近が水没する。

 

アスナ「な、なに!?」

 

アスナが叫ぶキリトもナイトも動きを止め・・・いや、動かすと凄まじい抵抗を感じ、立っているのも苦痛になる。

 

キリト「ユイ ー」

 

キリトはユイに状況が分かるか聞こうとすると、ユイが突然体を仰け反らせる。

 

ユイ「きゃあっ!パパ・・・ママ・・・気をつけて!何か・・・よくないモノが・・・!」

 

その言葉が終わる前に。ユイの小さな体の表面を紫色の電光が這いまわり、一瞬眩くフラッシュとともに消え去っていた。

 

キリト「ユイ!?」

 

アスナ「ユイちゃん!?」

 

キリトとアスナは同時に叫んだ。しかし答えはない。キリトが必死に手を伸ばし、アスナの体を引き寄せようとした。アスナも手を差し出す。

だが、二人の指先が触れ合う直前、凄まじい重力が襲う。

 

アスナ「キリト・・・くん・・・」

 

キリトがその言葉に答えようとした、その時だった。粘つくような笑いを含んだ、甲高い声が闇の中に響渡った。

 

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