ガチャ転生~SAO編~   作:気まぐれ荘

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ボス戦

 

ディアベル「みんな・・・もう、俺から言うことはたった一だ!・・・勝とうぜ!!」

 

湧き起こった巨大な鬨(とき)の声と共に<トールバーナ>の町から迷宮区タワーまでの大人数による行程はまるでお祭りをしてるかのような気分になりナイト達一行はそれが逆に不安を感じた。

道中襲いかかってくるモンスターは腕自慢達により瞬殺されるのを見ながら隊列の最後尾のナイト達は雑談を続ける。

午前十一時、迷宮区着。午後十二時半、最上階踏破。死者は無し。

その道中危ない場面もあったがディアベルの的確な指揮で事なきをた。そしてついにたどり着いた巨大な二枚扉の前で最後の確認や休憩を行っていた。前方でディアベルがパーティーを並べ銀の長剣を掲げ

 

ディアベル「行くぞ!」

 

短く一言だけ叫び、思い切り扉を押し開けた。

ボス部屋は長方形の空間で、左右の幅はおよそ二十メートル、扉から奥の壁までが百メートル。アインクラッドのボス部屋は、戦闘が開始されても大扉は閉まったりしない。だから敗色濃厚となった場合は全滅を待たずに逃走することは可能である。

そんな事を考えてると、ほぼ暗闇に沈んでいたボス部屋の左右の壁で松明が燃え上がり、部屋の最奥部の粗雑で巨大な玉座に座するシルエット--。

騎士ディアベルが合図をすると同時に、総勢四十四名からなる攻略部隊は、盛大な鬨(とき)の声を上げつつ一気に大部屋へとながれこんだ。まず最前列て突進したのは、ヒーターシールドを掲げる戦鎚(ハンマー)使い率いるA隊だ。その左斜め後方を斧戦士エギル率いるB隊、右にはディアベルと仲間五人によるC隊と、両手剣使いが率いるD隊。更にその後ろを、キバオウ率いるE隊、F隊、G隊が三パーティーで並走する。

そして一番のしんがりに、ナイト達四人。

A隊リーダーと玉座との距離が二十メートルを切ったその瞬間、それまで微動だにしなかった巨大なシルエットが猛然と跳んだ。空中で一回転し、地響きとともに着地。オオカミを思わせるあぎとをいっぱいに開き、吠える。

 

ボス「グルルラアアアッ!!」

 

獣人の王、<イルファング・ザ・コボルトロード>の外見はβテストと同じで、青灰色の毛皮をまとった、二メートルを軽く超える体躯(たいく)。血に飢えた赤金色に爛々(らんらん)と輝く隻眼(せきがん)。右手に骨を削って作った斧、左手には革を貼り合わせたバックラーを携え(たずさえ)、腰の後ろには差し渡し一メートル半はあろうという湾刀(タルワール)を差してある。

コボルトロードはA隊リーダーに向けて右手の骨斧(こつぶ)を力任せに叩き付けた。ヒーターシールドがそれを受け止め、眩いライトエフェクトと強烈な衝撃音か広間を揺らした。

その音が合図かのように左右の壁の高い所にある穴から三匹の重武装モンスターが飛び降りてくる。取り巻きの<ルインコボルド・センチネル>

だ。E、G隊とナイト達が三匹のタゲを取る。

こうして、十二月四日午後十二時四十分、ついに最初の対ボスモンスター戦闘が開始された。

<イルファング>のHPゲージは四段。三段目までは斧と盾を武器に使うが、四段目に突入すると腰のタルワールを抜き、攻撃パターンががらりと変わるのが最大の難関であるがアルゴの攻略本にはそれも余さず書いてあった。<センチネル>の相手をしつつ、ナイトとキリトは視界の端で最前線の様子を捉え続けたが、戦術が破綻する気配は感じとれなかった。各レイドパーティーの平均HP残量も八割あたりで安定している。

このまま終わってくれとキリトは祈るが、ナイトだけがこの結末を知っていた。

コボルトの王とその衛兵対四十四人の戦いは、キリトの予想を上回る順調さで推移した。

ディアベルのC隊が一段目をD隊が二段目を削り、現在は3段目の半分を超えたあたりだ。取り巻きの相手は余裕で処理できたので、途中からG隊をメイン戦場の支援に回したほどだ。

こと目覚しいのは、アスナとミトの女性コンビだった。アスナは<リニアー>でコボルトの喉元(のどもと)に存在する唯一の弱点を正確に貫き、ミトは鎌を回しながら攻撃を防ぎ、隙のない反撃で弱点を付く。

そのときキリトはキバオウと話しを始め、キリトが動揺しながらキバオウが離れるとほぼ同時にボスのHPゲージが最後の一段に突入した。

三段目を削ったF、G隊は後退し、代わりに全回復したC隊がボスに向かって突進していくところだった。

キリトが違和感を覚え、その理由に気づいた時、叫ぶ。

 

キリト「だ・・・だめだ、下がれ!!全力で後ろに跳べーッ!!」

 

しかしその声は、イルファングが始動させたソードスキルのサウンドエフェクトにかき消された。しかしその影でひっそりと動く何者かがいた。

コボルトの王の巨体が、どうっと床を揺るがせ、垂直に跳んだ。空中で体を捻り、武器に威力を溜める。落下すると同時に、蓄積されたパワーが、深紅の輝きに形を変えて竜巻の如く解き放たれる。

軌道ー水平。 攻撃角度ー三百六十度。

カタナ専用ソードスキル、重範囲攻撃<旋車>(ツムジグルマ)

迸(ほとばし)った六つのライトエフェクトは鮮やかに赤く、まるで鮮血のように見えた。視界左に表示されるC隊のHPゲージは一気に五割を下回りイエローに染まった。それだけに留まらず、床に倒れ込んだ六人は一時的な行動不能状態ースタンしているのだ。

動ける者は、一人としていなかった。奇妙な静寂のなか、コボルトロードが、硬直から回復した。そこでようやく我に返り、キリトは叫ぶ

 

キリト「追撃が・・・」

 

同時に前線のほうで、エギル以下の数名が援護に動こうとした。だが間に合わなかった。

 

ボス「ウグルオッ!!」

 

獣人が吠え、両手で握った野太刀(のだち)を床すれすれの軌道から高く斬り上げた。ソードスキル<浮舟>。狙われたのは、正面に倒れるディアベルだった。誰しもが間に合わず斬られる瞬間、衝撃音がなる。

ナイトだった、ナイトがギリギリ間に合い野太刀をパリィしたのだった。その隙に言う

 

ナイト「後退しろ、スタンは解けてるはずだ」

 

C隊の面々は誰一人欠けることなく後退したのだった。キリト、アスナ、ミトが合流し、イルファングに向き合いながら言う。

 

ナイト「行けるな、キリト」

 

キリト「ああ!」

 

短いやり取りだったが何をするかは明白だ。しかし、レイドメンバーは動揺から抜け出せておらずまとまりが無くなっていた。

ナイトとキリトはすぐ側に立つアスナとミトに「後方に留まり、前線が決壊したら即座に離脱」するように言おうとするが、思考を先読みしたかの如く先に宣言した。

 

アスナ・ミト「私達も行く。パーティーだから」

 

その言葉に刹那の逡巡(しゅんじゅん)を蹴り飛ばし頷く

 

ナイト・キリト「解った。頼む」

 

四人同時に体の向きを変え、広間の奥に走り出す。その時、近くを走るアスナとミトが激しくはためくフード付きケープを体から引き剥がす。

艶(つや)やかな栗色と紫色のロングヘアが、顕になりプレイヤーたちすら、その凄絶(せいぜつ)なる美しさに目を奪われ、沈黙した。奇跡的に生まれた刹那の静寂を逃さず、叫ぶ。

 

ナイト「全員、出口方向へ下がれ、ボスを囲まなければ範囲攻撃は来ない、その後ディアベルの指示にしたがえ!」

 

声の残響が消えると同時にプレイヤーは後方へと動く。それを追うようにコボルトの王も体の向きを変え、並んで走るナイト達と正対する。

 

キリト「手順はセンチネルと同じだ!・・・行くぞ!!」

 

ナイト・アスナ・ミト「了解!」

 

前方では、コボルト王が両手で握っていた野太刀から左手を離し、左の腰だめに構えようとしている。キリトはソードスキルを発動させ野太刀と交差し、甲高い金属音とともに大量の火花が弾け、ボスと互いの剣技を相殺させて二メートル以上もノックバックした。

生まれた隙をアスナが<リニアー>でコボルト王の右腹を深々と打ち抜いた。四段目のゲージが僅かに減少する。それからキリトが弾き、ナイト達が追撃する。これを十五か十六回目に、それが途切れた。キリトが吹き飛ばされ、追撃しようとしたコボルト王をナイトが止めたが吹き飛ばされる。この時、エギル達がタンクとして合流。

その後キリトとナイトが指示を出しながらHPゲージを削っていく。それが約五分も続き、ゲージが残り三割を下回り、赤く染まった。

その瞬間、気が緩んだのかタンクの一人が脚をもつれさせた。よろめき立ち止まったのはイルファングの真後ろだった。

ボスが取り囲まれ状態を感知し、<旋車>(ツムジグルマ)を発動する。

キリトが何とか間に合い剣を振るうと、人型モンスター特有のバットステータス、<転倒>状態を引き起し。ナイトが叫ぶ

 

ナイト「全員ー全力攻撃!囲んでいい!」

 

エギルら六人とナイト、キリト、アスナ、ミトで攻撃するも<転倒>状態から起き上がろうとしていた。間に合わないと判断したナイトとキリトは

 

ナイト「キリト、最後の攻撃、一緒に頼む」

 

キリト「こっちのセリフだ」

 

お互い少し笑い走り出す。残りゲージは三パーセントくらいだが、イルファングは垂直に跳び上がる。ナイトとキリトは同時に地を蹴り、エギルたちの隙間を抜ける。同時に攻撃しコボルト王の左右の肩口から腹までを切り裂いた。HPゲージ残り一ドット。

獣人がニヤリと嗤った気がした。それに対しナイトとキリトも獰猛(どうもう)な笑みを返すと、素早く手首を返した。二つのV字の軌跡を描き、またもやイルファングの左右の肩口から抜けた。

コボルト王の巨躯(きょく)は不意に力を失い、後方へとよろめいた。

その体に無数のヒビが入り、両手が緩み、野太刀が転がった。直後、アインクラッド第一層ボス<イルファング・ザ・コボルトロード>は幾千幾万の硝子片へと変えて盛大に四散させた。

座り込んだキリトの目には

 

[You got the LAST Attack!!]

 

という紫色のシステムメッセージが、音もなく瞬いた。

 

 

 

 

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