ガチャ転生~SAO編~   作:気まぐれ荘

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ビーターと配下

ボスが消滅すると同時に、後方に残っていたセンチネルも四散したようだった。周囲の壁に掲げられていた松明が、暗いオレンジから、明るいイエローへと色彩を変える。一瞬訪れた静寂の後勝鬨(かちどき)を上げる声がそこらじゅうで響いた。キリトは剣を切り上げた姿勢のまま、動くことが出来なかった。<ベータとの違い>が顕在化(けんざいか)するのを恐れるように。

その時、小さな白い手がキリトの右腕に触れ、ゆっくりと剣を下ろさせた。立っていたのはアスナだった。ケープを剥ぎ取った彼女の美貌に見入り続ける視線を、無言で受け止め、小さく囁(ささや)く。

 

アスナ「お疲れ様」

 

その言葉にキリトはようやく確信した。終わったのだと。周りでは獲得経験値や分配されたコルの額、アイテムを見ながら騒いでいた。

そんななか、床から立ち上がりゆっくり近く大きな人影があった。エギルだ。

 

エギル「・・・見事な指揮だったぞ。そしてそれ以上に見事な剣技だった。コングラチュレーション、この勝利はあんたたちのものだ」

 

途中の英単語を見事な発音で言ってのけた巨漢は、右拳を固め、突き出してくる。キリトは拳を合わせようと右手を持ち上げかけたその時。

 

キバオウ「なんでや!!なんでディアベルはんを、ワシらを騙したんや!」

 

突然、そんな叫び声が背後で弾けた。半ば裏返った、ほとんど怒り叫んだその声に、広間の歓声は静まり返る。

 

キバオウ「ジブンらが最初から情報を伝えとったらディアベルはんが危険な目に遭うことも・・・ワイらが死にかけることもなかった!」

 

キリトは言葉の意味が解らなくて無意識に呟く。

 

キリト「騙した?」

 

キバオウ「そうや!ジブンら、ボスの使っとった技知ってたやんか!

最初からその情報伝えとけば!」

 

その叫びに、残りのレイドメンバーたちがざわめく。

その疑問に答えたのはE隊の一人だった。

 

メンバー「俺知ってる!!こいつは、元ベータテスターだ!だから、ボスの攻撃パターンや、旨いクエスト、狩場とか、全部知ってるんだ!!

知ってて隠してるんだ!」

 

その言葉を聞いてもほとんどのレイドメンバーは驚きは無かった。誰もが初見のはずのカタナスキルを見切った時点で確信していたのだろう。

 

エギルとタンクをしてくれていた一人が律儀に手を挙げ、冷静な声でいう。

 

タンク「でもさ、昨日配布されていた攻略本に、ボスの攻撃パターンはベータ時代の情報だ、って書いてあったろ?彼たちがテスターでも知識はあの攻略本と同じなんじゃないのか?」

 

その疑問に押し黙ったE隊メンバーの代わりにC隊メンバーの一人がある一言を口にする。

 

メンバー「あの攻略本が嘘だったんだ。アルゴって情報屋が嘘を売りつけたんた。あいつだって元テスターなんだ、タダで本当のことを教えるはずがなかったんだ」

 

この流れがまずいと感じたメンバーが止めにかかる

 

アスナ「あなた達ねぇ・・・」

 

ミト「よしなさい」

 

ディアベル「みんな、やめてくれ。違うんだ、彼たちは・・・」

 

その間にキリトは一つのアイデアが浮かんだ。そして実行しようと覚悟を決めた時、後ろで嗤い声が聞こえた。

 

ナイト「クハ、クハハハハッー」

 

ナイトだった。キリトはナイトのしてる事に勘づき止めようとする。

 

ナイト「元ベータテスターだって?・・・俺をあんな素人(しろうと)連中と一緒にしないで欲しいな」

 

メンバー「なんだと?」

 

ナイト「俺はベータテスト中に他の誰も到達出来なかった層まで登った。ボスのカタナスキルを知ってるのは上の層でカタナを使うMOBと散々戦ったからだ。他にも知っているぜ!アルゴなんか問題ないくらいにな!しかも俺はあるクエストの報酬でボスの使う武器が変更されてる事を知っていたよ」

 

キバオウ「なんや、それ。そんなんベータテスターどころやないやんか!もうチートや、チータやんそんなん!」

 

周囲から詰(なじ)る声が飛んでくる。そのなかで<ビーター>という奇妙な響の単語が耳に届く

 

ナイト「<ビーター>いい呼び方だなそれ、俺はこれから<ビーター>だ。これからは他のテスター如(ごと)きと一緒にしないでくれ」

 

ナイトは内心でキリトが参戦しなかったことに安堵しながら顔を向ける

 

ナイト「こいつらは、俺の配下でな?そこそこ使えるからパーティーを組んだのにまさかLAを取られるとは思ってなかった。まあいい、俺が憎いならこいつらを好きにすればいい」

 

レイドメンバー「ふざけるなよ!そんな事する訳ないだろ!」

 

周囲も最低、パーティーが可哀想だなど擁護(ようご)する声が多いことに笑いながらナイトは更に言う

 

ナイト「二層の転移門は俺が有効化してやる。出口から主街区まで少し歩くから、ついてくるなら死ぬ覚悟をするんだな」

 

歩き出すと、アスナとミト、他数人は何もかも解ってるという眼をしていた。

第二層へと続く扉を開けると、いきなり絶景が眼に飛び込んだ。しばらく絶景を楽しんでいると、足音が複数聞こえた。足音の主たちはかすかな吐息(といき)をもらしてから、近くに座る。

 

ナイト「なんとなく、来ると思っていたよ」

 

ナイトがそう呟くと、闖入者(ちんにゅうしゃ)は少し不満そうな声で答えた。

 

ミト「エギルさんとディアベルさん、キバオウから伝言がある」

 

ナイト「そうか、キバオウはどうでもいいな」

 

その言葉に少し笑いながら伝言を伝える

 

ミト「エギルさんは、次のボス攻略も一緒にやろう、って」

 

アスナ「ディアベルさんは、攻略組をやめて鍛え直す、って」

 

アスナとミトは1度咳払いをして

 

アスナ・ミト「キバオウは、今日は助けてもろだけど、ジブンのことはやっぱり認められん。わいは、わいのやり方でクリアを目指す、って」

 

その言葉を脳内で繰り返しているとようやくキリトが口を開く

 

キリト「なんで、なんであんなことを言ったんだ。お前はベータテスターじゃないだろ!」

 

その言葉はほとんど涙混じりの言葉だった。

 

ナイト「だから?」

 

その言葉にキリトは更に叫ぶ

 

キリト「お前解ってるのか?これから先ずっと嫌われるんだぞ!?」

 

ナイト「お前たちが解ってるならそれでいい。他のやつの言葉なんて気にしない」

 

あまりに冷静なその言葉に全員唖然(あぜん)とする。

 

ナイト「我が配下よ俺に続け」

 

キリト・アスナ・ミト「イエス・マイロード」

 

その言葉の後吹き出しながら移動を始める。その背中にはなんの後悔もなかった

 

 




ナイトかキリトの真似をしたのは原作の再現をしながらキリトにヘイトが行かないようにするため。付け加えた言葉は作者の趣味
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