体育館に戻った頃にはモノべえの放送は終わっていた。
「みんな~どこにいるの~?」みたまが呼びかけると体育倉庫から揃って出てきた。
「何か発見はあった?」
塩屋が電子生徒手帳を差し出す。
「こんな物がありました」
「わたし達の物ではないのよね?」
「はい。電源が入らないので誰の物なのかも分からないんです」
「それは後で考えましょ。それよりも」
「やちよや十七夜とは連絡がついたんだけど・・・」鶴乃が言葉を引き取り状況を伝える。
「テレパシーを使ったことがバレた?」
「うん。キュゥべえも使えるから勘付かれたのかも」
「捜索の方はどうだったんだ?」
ひなのの問いに明日香が答える。
「2階までは行ったのですがモノべえとやらの放送が入ったので戻ってきたのです」
「それなら仕方ないか。それでこれからどうする?皆で探索に戻るか?」
少女たちが黙り込む中、まさらが口を開いた。
「今は寄宿舎で休んだ方がいいんじゃないかしら」
このはもそれに賛同して続く。「そうね。少し疲れたし一人になりたいわ」
「そうだな。拠点になる場所の確認もしておきたいしな」
反対意見も出ず、それぞれ体育館を出ていく。
晴海は誰もいなくなった体育館を振り返りながら本当に出られるのか不安を抱いた。
【寄宿舎内】
校庭を横切るように設置された通路を渡り寄宿舎に入ると内部は奇妙な造りになっていた。
1階には食堂と浴場、階段があり個室のある2階へと繋がっている。壁面はモノべえの顔が無数に描かれている他に監視カメラが4台設置され、床は鏡張りになっている。
「や、やだ!何で床が鏡張りなの!?」
少女たちが慌ててスカートを押さえたり目を逸らしていると再びモノべえが現れた。
「ふふーん。それはね、スカートの中がチラチラ見えたりオマエラが恥ずかしがる姿を見るのが楽しいからなのだ!ハァハァ」
「いつからあなたは変態になったのぉ?」
結菜やまさらなど魔法少女姿がスカートでない者たちが攻撃しようと駆け出す。
「二人とも、止まって!」みたまの静止に二人は足を止める。
「みたまさん?なぜ止めるの?」まさらが冷たい視線をみたまに向ける。
「忘れたの?校則のこと」
「・・・そうだったわね」
「きゅぷぷぷぷ。こんなつまらない事で死ななくてよかったねぇ。でも二人だけスカートじゃないなんて不公平だよね」
「あなた、何を言ってるのぉ?」
「きーめた。校則を追加します!」
⑨殺人を決行するとき以外は魔法少女への変身を禁止とします。
魔法少女からは非難の声が上がる。
「そんな校則に何の意味があるのよ!」
「そうだそうだ。この変態!」
「うるさいなぁ。早く変身を解かないとこうなっちゃうぞ!」
モノべえの言葉と同時にテレビが現れ派手な服装とメイクをした少女の映像が流れている。
そしてぬいぐるみに掴みかかった彼女は槍に串刺しにされていた。
「同じ仕掛けがここにもあるんだよ。意味は分かるよねぇ?」
全員が揃って変身を解き制服姿になる。
「そうそう!学校なんだからやっぱり制服じゃないとね!」
「・・・覚えておきなさぁい」
「怖い怖い。ここの映像は生中継してるから可愛いの履いておいてね」
それだけ言い残しモノべえは姿を消した。
「生中継?最悪ね」
「ここは落ち着かないから上に行きませんか?」
晴海が皆を促し階段を昇っていくが階段も鏡張りとなっていた。
2階の通路はガラス張りであったが鏡よりかはマシに思えた。
「話したいことはあるけど今は休みましょう」みたまの一言で皆個室に向かっていく。
「皆さんお戻りになったんですね!」
月夜が個室から顔を覗かせる。
「月夜先輩!」晴海が彼女のところへ駆け寄っていく。
「この寄宿舎は酷い造りでございます」
月夜たちも同じ経験をしたのだろう、恥じらいの表情を浮かべている。
「みなさんもよろしいでしょうか?」
「なぁに?月夜ちゃん」
「個室の事なのですが部屋割りが決まっているようです」
月夜が指差した扉には少女たちの似顔絵が表示されており、近くにはカードセンサーのようなものが置かれている。
「
ここに電子生徒手帳をタッチすると入室できるようです」
「なるほど。勝手には入れないってことねぇ」
会話を遮るように隣から電子音からした。
「あら、本当のようね」開錠したのは月夜の隣室のこのはだった。
「このはちゃん何してるのぉ?」
「少し疲れたので休ませてもらってもいいかしら?」
「そうね。わたし達も少し休憩しましょうか」
「賛成!」鶴乃が務めて明るく言うとそれぞれ個室へと向かっていく。
【塩屋晴海の個室】
室内にはベッド、衣装箪笥、洗面台があり洗濯機と個室トイレも設置されている。浴室は1階にしかないようだがトイレまで共用でなかっただけマシだと思えた。衣装箪笥の中を検めると制服と色違いの下着、寝間着が何着か仕舞われている。
ベッドに腰掛けるとテレビがあることに気付き電源を入れてみる。しかし電波が届いていないのか映像が流れることはなかった。
電源を落としてこれからどうしようか考えていると電子生徒手帳を拾ったことを思い出した。室内をもう一度探してみると洗面台の引き出しの中に充電コードが入っているのを見つけた。電子生徒手帳に差せたのでコンセントと繋げると充電が始まった。
行儀が悪いとは思ったが制服のまま横になると瞼が重たくなってくる。
ピンポーン、ピンポーン
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。慌ててドアスコープを覗くと月夜の顔が見えた。
「月夜先輩?」
ドアを開けると同じ制服姿の月夜が立っていた。「塩屋さん、気分は大丈夫でございますか?」
いつもどおりの月夜がいることに安心した。
「何かあったのでしょうか?」
「いえ、夕食の時間が近付いてきたので呼びに来たのです」
「申し訳ありません。すぐに参ります」
【食堂】
既に調理が終わったのかテーブルに並べられていた。
「おや、これで全員揃いましたね」
こちらに気付いたラビが声をかけてきた。
「遅れて申し訳ありません。あの、この料理は氷室さんが?」
「はい。これでも使用人経験があるので料理は得意なんです」
「ラビちゃんだけずるーい!わたしだって手伝いたかったのにぃ」みたまがプリプリと怒る。
「わたしだってまなか先生に教わってるんだから料理ぐらい出来るわ」
2人の言葉に少しだけ場の空気が和らぎ談笑しながらの食事となり、あいみやサーシャ、結菜と明日香など珍しい組み合わせが出来上がっている。
「ごちそーさまでした」鶴乃が手を合わせる。
「お粗末様でした」
「食器の片付けはわたしがやっておくからラビちゃんは休んでてよ!ふんふん!」
「お一人でやらせる訳には・・・」
「そうです!わたしも手伝います!」明日香も鼻息荒く声を上げる。
「じゃあみんなでやろうよ!みんなでやれば早く終わる!」
「それではお言葉に甘えさせていただきます」
食事を終えた者から食器を洗いにいく。アリナも素直に従っているのが意外だった。
その後も食堂で談笑が続いていたが気付くと時間が20時を過ぎようとしていた。
「あっ!そろそろお風呂行かないと!」鶴乃が気付いたように言う。
「そうねぇ。早く行かないと夜時間を過ぎてしまいそうだわぁ」
各々立ち上がり着替えを取りに個室へと戻っていく。晴海も天音姉妹と話しながらそれに続いた。
「晴海ちゃん、またあとでね」月咲が気軽に声をかける。今日初めて会ったが月夜が間に入ってくれたことで早くも打ち解けることが出来た。
「お風呂場で待っているでございます」
「はい。すぐに用意します」
【塩屋晴海の個室】
個室に入り着替えを用意する。勝手に用意された下着を使うのは抵抗があったがずっと同じものを着け続けるわけにもいかず手に取った。
【脱衣所】
脱衣所に入ると天音姉妹やみたま、鶴乃が先にいた。しかし一点も睨み誰も脱ごうとする様子がない。
「あのぅ。どうかしたのですか?」
「ああ、晴海ちゃん。あれ見て」
月咲が指差したそこには監視カメラが設置されている。
「今も見られているってことですか?」
「そのようねぇ。一体何を考えてるのかしら」
「きゅぷぷぷぷ、それはね」再びモノべえが姿を現した。
「せっかくだから脱ぎ脱ぎするところも撮っちゃおうと思ってね。美少女が恥ずかしがってる姿って興奮するよね、はぁはぁ」
「この変態!」鶴乃の一声に端を発し全員声を荒らげる。
「文句ばかり言うとトイレにも仕掛けちゃうぞ」その言葉に皆言葉を詰まらせる。
「騒がしいけど何かあったの?」まさらとあいみが入室してくる。
「二人ともあれを見て」月咲が再び監視カメラを指差す。
「ああ、そういうこと」まさらはカメラを一瞥したが気にした様子もなく制服を脱ぎ始める。
「ちょっと、まさら何で脱いでるの!?」
「何でって、脱がないとお風呂に入れないし気にしてもしょうがないでしょう」会話に応じながらも脱ぎ続けて裸になった。
「これで満足かしら?」
「いい脱ぎっぷりだけど恥じらいがある方が好きだなぁ」
「そういうのはわたしには期待するだけ無駄よ。それじゃあ先に行ってるから」
まさらは一人で浴室に行ってしまった。
「ちぇー。みんなには期待しているよ!じゃあね~」
「どうする?」鶴乃が呟く。
「まさらちゃんの言うとおりだわ。気にしないようにしましょう」 みたまも脱ぎ始めたのに倣い他の少女たちも脱ぎ始めた。
【浴室内】
浴室はかなり広く16人なら余裕で浸かれるほどに浴槽も大きい。先に入ったまさらは体を洗っている最中だった。「あいみ、やっときたのね」
あいみはまさらの隣に座った。「撮られてると思うとやっぱり恥ずかしいよ。まさらは何で平気なの?」
「部活終わりはシャワーを浴びるんだけどみんな裸だから見るのも見られるのも慣れてるのよ」
「そ、そうなんだ」
「じゃあわたしは浸かってくるからごゆっくり」
「う、うん。あとで浸かりながらお話しよう」
「ええ、待ってるわ」
晴海も体を洗い終わりお湯に浸かると疲れが溶けてゆくような気がする。今の状況は未だに理解が追い付かないがみんながいるならどうにかなるような気がした。
「どうしてここにカメラがあるのですか!?」
脱衣所から聞こえた明日香の大きな声に浴室にいる者は笑いそうになるのを必死で堪えていた。
【塩屋晴海の個室】
部屋に戻り電子生徒手帳を確認すると充電は既に終わっているようだ。電源を入れてみると画面が表示された。
【□□□□□】
クロを当てるごとに一つずつ数字が表示されます。
すべての数字を電子ロックに入力すると外に出ることが出来ます。
「何、これ?」突然のことに頭がうまく働かない。これとモノべえの言葉を信じるならば5人死ななければいけないということなのだろうか。そのことを想像すると寒気がしてくる。電子生徒手帳を放り出し晴海はベッドに潜り込んだ。
(こんなの全部夢よ)
強く自分に言い聞かせ晴海は眠りに落ちていった。
プロローグ~希望ヶ峰学園神浜分校~完
To be continued.