追記 今更小説を書いている人間から出る言葉ではないと重々承知なのですが、作者は齢16にして読点の打ち方を全く理解していません。なので皆様から見たら文の区切りが気持ち悪い部分が多々あると思いますがゴミを見るような目で生優しく見守ってください。
第一章 南国の島
「…何故私はドイツ、アフリカ、アメリカ、アラスカとたらい回しにされた挙句とうとう名前も知らない日本の島ってどういうことです。」
「お前が優秀であちこちから求められてるからだろうな。」
「それだったらありがたいんですけどね。」
皮肉混じりに言い返す。
高飛 明(たかあす あきら)というのが自分の名前である。高飛というのは本当の名前らしいけれど、明は育ての親である男がつけてくれた。日本生まれの純血な日本人だが、捨てられて孤児となっていた所を助けてもらった。助けてくれた男は日本人とアメリカ人のハーフでかなり優しく接してくれていた。自分も心を許して本物の家族のように育てられた。親父は本当の家族を探せと言っていたが、あったこともない親のことなんてどうでもいいのでなんとも思わない。自分は軍隊に助けられた分の恩返しとして戦っているだけだ。地球の総人口60億人の中から歳から10歳までの少年少女が10000人が『星の官軍』と戦う力を得た。自分もその1人として選ばれ今まで数年戦ってきた。
「明日の朝6時に日本のハチジョウアイランドに向かってくれ。お前の機体ごと空輸する。」
司令はお気に入りのM1911ピストルを分解整備しながら感情が感じられない声で話す、パイロットの一人くらいどうでもいいと思っているのだろうか。
「了解しました。」
俺は気だるそうに部屋を出て力のない足取りで部屋に戻る。時刻は夜の八時を過ぎていた。
荷物をまとめ終え、何も考えずベットに入り泥のように眠る、あっという間に朝は来た。
こんな寒い所から離れられるのはいいが仲良くなった海兵隊員と離れるのは正直言ってかなり寂しい。
「お互い生き残ってまたどこかで会おうぜ。」
別れ間際の悲しみをうち消そうとするように互いにハグする。日本人が故に他のパイロット達とと比較して一回り程小柄、金髪やブロンドの短髪が多い中で個性的な黒髪をある程度伸ばしているがくせっ毛で少し右側に流れている。顔はそれなりの美男子だ、普通に学校生活を送っていたらかなりの人気者に慣れていたかもしれない。
「あぁ、まだお前らにポーカー勝ち越してないからな。」
「ハハッ、ジジイになるまで勝ち越しはせねぇよ。」
「言うじゃねぇか、じゃあ行ってくるぜ。」
そう言って自分は輸送機に向かって走り出した。仲間の前だからって少し強がってしまった。
「いい加減彼女作れよ〜」
後ろからとんでもなく心に刺さるの言葉が飛んでくる。
「うるせ〜」
明が乗り込むと輸送機はすぐに日本に向けて飛び立った。海上を飛行するならば敵の艦船や航空機からの攻撃を受ける可能性が大きいので、警戒を続けながら慎重に太平洋を飛ぶ。
350トンの物資又はレシプロ戦闘機を5機格納する能力を持った大型機。ロッキードC-10
『星の官軍』と戦うレシプロ戦闘機は作られた国や組織がバラバラなので航続距離が長いものや短いものまでまちまちだが、それらを戦線まで運ぶために作られた機体だ。空中発進と空中機体収容が可能である。
明はその機体の端で飛行服を着て待機していた、何時でも出撃出来るようにするためだ。
「…あっつい、やばいぜ太平洋。」
厚さ10ミリの防弾ガラスの丸窓から外を眺めながらボヤいた、しかしなんだか本能的に嫌な雰囲気がする。アラスカを出てから一晩機内で過ごして約28時間、『星の官軍』の警戒網を避けつつ進むため、かなり遠回りになってしまったがあと少しで目的地に到着するはずだ、しかし何か感じる。殺意の塊のようなものがこちらに近づいている気がする。機上レーダーがあるから、敵機が出てきたら出撃するように指示があるはず。だがレーダーが捉えない何かを今確実に感じている。何か来る!
堪らず内線電話の受話器を取って怒鳴った
「パイロット!左旋回、急げ!」
『イエッサー。』
大型の機体だがよく曲がる。旋回のために傾く機内でバランスを取りつつ窓の外を睨む。翼を掠めるように右側に機関銃の弾幕が現れる。間髪入れずに機関銃を撃った犯人が上から下に飛び抜ける。鋭い機影をした機種を持つ液冷エンジンの機体、P-51マスタング、第二次大戦当時は最強として恐れられたバケモノだ。
『増速用火薬ロケット点火、加速します。』
ロケットの力を借りて瞬間的に速度が上がり向こうが追撃の体制を整える前に一旦振り切った。
「救援要請を出して退避するんだ。」
『増援が着くまでは?』
「ちと厳しいが俺が足止めするしかない。」
冷や汗を拭いながら飛行帽を被る。
「クソ、あと1時間もあれば着いたのに。」
格納庫に駆け込み燃料の入った機体に飛び乗る。
「転把回せ!」
整備兵に始動転把を回させる、今ではクランクハンドルと呼ばれることが多いこのハンドルをフライホイールに装着して回すことでエンジンの始動を行うものである。整備兵がクランクハンドルを回すと始動機からサイレンのような唸り声が聞こえる。ここで明がスタータークラッチを操作すると、エンジンに回転が伝わり唸りを上げる。たった1100馬力程度のパワーだがこの軽量の機体を持ち上げるには十分だ。明の乗る機体零式艦上戦闘機五二型が唸りを挙げる。
「ハッチを開けろ!すぐに飛び出すぞ。」
機体下部のハッチが開き固定されていた機体が外される。
速度が出るまで急降下するのでマイナスGがかかる。
「東に迂回して館山に逃げろ!三時間で基地に着く。」
後ろのマスタングを確認しながら無線で輸送機に叫んだ、敵機は輸送機を無視し急降下でこちらを追いかけてくる。全部で4機だ。
「よし、それでいい。地獄までついてこい!」
海面スレスレで機体を引き起こして奴らを引きつける。奴らも逃がすまいとこちらに食らいついてくる、奴らの機銃の射程に入る前に機体を思いっきり引き上げる。そのまま宙返りをして奴らの後ろに回り込む。最後尾のマスタングを光像式照準器の12ボルトの淡い光に捉える。機体の一部と化した自分の指が引き金を引く、すると両翼と機首から13ミリ機銃3門と20ミリ機関砲2門が火を吹き5本の火箭がマスタングに向かって伸びる。それに突っ込んみ、もろに弾を受けたマスタングはジュラルミンの破片とオイルを撒き散らしながら海面に突っ込んだ。フットバーを蹴飛ばし操縦桿を右に倒す、1機落としては離脱を繰り返しゆっくりと奴らを料理する。多対一の戦闘はこれに限る。しかしそう思った矢先、新たな敵が現れた。真正面から黒い点現れる、それは段々と大きくなり形をはっきりと認識できた。P51とは違う丸い胴体をしている。空冷エンジンの機体だ。F8Fベアキャット、第二次世界大戦後に開発されたマスタングと並ぶ最強クラスのレシプロ機。両者500キロを超えるの速度のため相対速度は1000キロ以上だ。すれ違うやいなやベアキャットは反転し背後に着く。
「クソっ!」
低空のため逃げるのは難しい。P51も速度差を利用して距離を詰めてくる。流石に自分が詰みであることを感じた。しかしそれをかき消す声が耳に飛び込む
『遅い!』
6筋の火箭が明を狙っていたF8Fを貫くとそのまま火を吐いて海面に飛び込んで行った。
『やった!これで通算57機目ですよ!』
『そんなこと言ってる場合じゃないだろ、まだいるぞ!』
日本陸軍名機の三式戦闘機飛燕とアメリカの名機F4Uコルセアだ、ここでやっと増援が来たことが理解できた。一人は少し楽しそうな女性の高い声、もう一人も女性の声だが低い声で口調は男らしい。こちらの事を忘れて戦闘を続けている。あっけなくF8Fの背後に付くとそれぞれ一連射ずつで撃破してしまった。
「味方が来たのか…」
追われている間に吹き出していた汗を拭う。
『数の優位ができたからこのまま押し込む、援護してくれ。』
三機目の味方機が自分の真横を飛び抜け、無線で手伝うよう要求される。時速六百キロを超える速度で零戦を掠めたのはスピットファイアだった。
スピットファイアはイギリスが作った名機だ、マイナーチェンジを重ね終戦までイギリスを守った高性能機である。
「援軍感謝する。誰だかわからんが頼もしい。」
命を助けてもらっただけあって感謝しかない、だがまだマスタングが残っている。
『あと3機いるぞ、気をつけろ!』
3人目の声はよく澄んでいて声で耳に耳に飛び込んでくる女性の声だった。
『来たな。』
前を飛ぶスピットファイアは右上方から攻撃をしてきたマスタングの攻撃を軽やかな機動で回避するとあっという間に後に張り付いて撃墜してしまった。
「とんでもない空戦技術だな、あれ程のものは見たことがない。」
彼女たちが来てからはほぼ何も出来なかった、ただ一方的にP51達がサンドバッグにされる様を見ただけだった。
『ミッションコンプリートだ、私たちはこれで。』
「あぁ、またどこかの空で会おう。」
F4Uと飛燕の二機は綺麗な編隊を組んだ状態で南西に消えていった。
「あんたは行かないのか?」
スピットファイアはどうやら別の部隊の機体らしい。
『あぁ、私は八丈島への転属でこの空域に居たんだ。』
「なら同じだな、ここから南東に40分くらいだ航路図を貰ってるから一緒に行こう。」
「それはありがたい、燃料は大丈夫か?」
「心配ないさ、零戦は長く飛べることが自慢だからな。」
2機は南東に機首を向ける。輸送機は単独で八丈島を目指してもらう。
「いや、旋回戦なら零戦が勝つよ、絶対だ。」
「それはどうかな、スピットだって欧州一の旋回性能でバトル・オブ・ブリテンを戦い抜いた。もっとも私のMk9は対フォッケウルフの格闘戦向けに作られた機体として大戦中盤に作られた機体だから何も関係ないのだがね。」
「スピットファイアは防弾装備とか大馬力のエンジンが着いてるから羨ましいよ、こっちはたった1130馬力だからな。」
「そうか、私は零戦についてる水エタノール噴射システムが羨ましいよ。」
並んで飛行している中同時に振り向いてふと目が合ってしまった。
「「…アッハハハ」」
互いに楽しくてつい笑ってしまう。
お互いに航空機に関する理解が深いのでつい馬鹿みたいに話し込んでしまった。実を言うと30分以上話し続けており、これはほんのごく1部なのだ。
「ん?八丈島ってあれのことじゃないか?」
「危ない危ない、通り過ぎるとこだった。」
目的地の八丈島が右側に見えていた。八丈島はふたつの山が合わさったひょうたんのような形をした島でありその中間に飛行場がある、これは昔は民間向けだったの自衛隊が買い取ったが現在でも民間と共用として使われている。軍用機が着陸するには少々設備不足だったらしく誘導路が増やされ、格納庫も増設して滑走路も500メートルほど伸びている。いわゆる軍民共用空港だ。
「レディファーストだ、お先にどうぞ。」
「助かる。」
先に降りてもらい自分はそれを上空から眺める。着陸というのはパイロットの性格や技術がモロに出る。やたらバウンドさせずに必要最低限の動作で着陸するのがもっとも良いとされている。スピットファイアは基本に忠実な操作で丁寧に機体を着陸させる。スピットファイアが誘導路に入った辺りで明にも着陸の指示が出た。
自分はひねくれているので普通の着陸はしない縛りをかけて自分を追い込む、アプローチの角度に突入するとエンジンを切る。
「あ〜管制塔へ、エンジンが停止したからやり直しはできない。」
さらに通常なら着陸時に速度を落とすために使うフラップも展開しない。
「今度はフラップも壊れた、どーやって着陸しようかな。」
『おい!何を考えている、もしかしてどこか壊れたのか?』
スピットファイアから通信が入る。
「どうやらフラップとエンジンがイカれたらしい。」
フラップがないのならば普段よりも機体を上に向けて抵抗を増やしてやればいい。そうすれば速度は落とせる。理想としては130キロ前後まで速度を落としたいが針はまだ200キロを示している。
「…」
飛行場は目の前だ、時間はあまり許されていない。だがすぐに速度を殺す方法ならひとつある。半ば強引に機首を上げて上昇にエネルギーを使用することと正面に対する空気抵抗を増やし減速させる。
「全然速度が落ちていない…」
地上からスピットファイアのパイロットが見守る。
高度6メートル、一気に操縦桿を下に引き機首を60度近く引き上げる。一瞬高度が少し上がるがすぐに速度は一気に140キロまで落ち、速度不足によって自然に機首は下がり、高度が落ちることで尾輪が着地する。前輪2つも遅れて着地する、成功だ。
「全くだ、今日もまた上手くいった。」
機体を誘導路に進ませ格納庫の前に止める。スピットファイアのパイロットが機体から降りて待ち構えていた。
「お前、頭のネジが5本くらい抜けてるんじゃないか?」
いきなり辛辣な言葉を投げかけられるが全く気にしない。
「いや、機体が壊れた時の練習にはちょうどいいよ。」
「一歩間違えれば死ぬぞ…いつもそうか。」
自分で言ったことが当たり前だったので呆れたのか頭を抱える。
「そうだよ、だから肝が据わるんだよ。そういえば名前を聞いてなかったな。」
明は名前を機体から降りながら名前を聞く。
彼女は飛行帽が取ると肩口程までの長さの金髪が風になびいた。次にゴーグルを外すと澄んだ深い深い青色の瞳がこちらを見つめていた。強さと可憐さが両立された凛々しい顔の美人だった。
「ルー・M・フィンだ、よろしく。」
「高飛 明だ、よろしく。ルーでいいかな?」
「構わないよ、アキラ。」
固い握手を交わす。両者共英語圏で育っているがお互いの訛りでコミュニケーションが難しいので互いに流暢に話すことが出来る日本語で喋ることにした。
「今日着任の高飛 明特務中尉とルーフィン特務中尉ですね、基地司令がお待ちですので応接室まで。」
言われるがままについて行き基地司令に会うことになった。
「現時刻をもって八丈島基地に着任しましたルー・フィンです。」
「同じく、高飛 明です。」
姿勢を正して敬礼を行いながら自己紹介を済ませる。
「うむ、機体もいいがパイロットもかなりの腕のようだな。先の戦いを機体のガンカメラの映像で見せてもらった、正直感動した。」
「ありがとうごさいます。」
いきなりお褒めの言葉を頂いたので咄嗟にお礼の言葉を返す。
「色々してあげたいけど、空襲が増えてるし、東側の偵察機もちょくちょく来るから休みがないんだわ。ごめんね。」
「問題ありません、私たちは今後も飛行服で待機でよろしいですか?」
自分が聞こうと思っていたことを先に聞かれてしまった。
「いや、下にうちの部隊のパイロットがいるから会ってくると言い、ついでに基地を案内してもらうといいよ。」
ラミネートされた建物の地図の待機所を指さして場所を教えてくれた。その時、廊下からドタドタと走るような音がしたと思ったらドアのノックもなしに扉が勢いよく開き元気な声が響いた。
「新しいパイロットの案内を任された三鷹 明日子です!」
小柄な体に日本人らしい黒い髪をポニーテールにまとめている。瞳は大きく、赤みがかった茶色だ。ルーと比べたら少し小柄な印象を受ける。
「お〜ちょうど、お前の紹介をしようと思ってたんだけど自分から来たか。今日着任したルー・フィンと高飛 明だ、基地を案内してやってくれ。」
「リョーカイ、それじゃあ着いてきて!」
ニコニコで手招きしながら廊下に飛び出す、2人も司令に一礼してから彼女について行く。元々ターミナルとして使われていた建物を改築し司令部や宿舎を集約した建物を飛び出して基地内を3人で練り歩く。
「やっぱり共用の空港なだけあってヤシの木だとか壁のアートだとか色々派手だなぁ。」
明が前から思っていたことを口に出してみると三鷹明日子はすぐに振り返って答えた。
「うんうん、そうでしょ〜ここ軍民共用だから一般の人に威圧感を与えないようにしたいっていう理由とリゾート感あった方が観光地として栄えた八丈島のイメージに合ってるってことらしい。」
「なるほど…ところでどこから案内してくれるのだ?」
「そうだねぇ、腹が減っては何とやらって言うでしょ、だから食堂から!」
「腹が減っては戦は出来ぬだな、昔親父から聞いた。」
「そう、それ!」
ということらしいので歩いて食堂に向かう。
「ここが食堂だよ、まぁ今3時だから誰もいないけど。」
食堂には人っ子一人おらず完全に静まり返っている。
(うむ、まぁそんな気はしていた。)
「朝昼晩ここに来れば美味しいご飯が食べられるからね。」
「日本食は全く未経験だからこれからがとても楽しみだ。」
ルーが楽しそうに話す。
「うん、イギリスとかアメリカには無いようなものばっかりだから楽しみにしてね、たまに私も作るから。」
「明日子も料理が出来るのか。」
「うん、お母さんに叩き込まれたからね〜。じゃあここは夕食の時にまた来るとして次、格納庫に行こう!」
今度は食堂の建物から格納庫までの数百メートルを全力疾走するのだが2人共全く息が上がっていない。明はこの気温の高い八丈島の気候に完璧に順応できていないのか少し息が上がってしまった。
「はぁ、暑すぎだろここ。何度なんだよ。」
「うーん、今日は31度くらいかな。まだ楽な方だよ。」
明日子は淡々と答えるが明からしたら尋常じゃない数値である。
「アラスカなんか夏でも20度行かない日がしょっちゅうだったのに。これは慣れるのに時間がかかりそうだな。」
「ルーは大丈夫なのか?」
「あぁ、私はここの前はインドだったからな、ここよりもう少し暑かったくらいだ。」
「ここより暑いって…」
「まぁ気温の話は終わり!早く中に行こ。」
明日子に連れられて中に入ると並べられた4機の戦闘機と整備士が作業をしている姿が見られた。整備士達は明の零戦とルーのスピットファイアを見て話し込んでいる。
「よく日本まで持ってこれたもんだ。」
「零式艦上戦闘機52型丙、大戦末期に登場したF6Fやコルセアに対抗するために身軽さを捨てて重武装化した型や。機首に13ミリ一門、翼内に13ミリと20ミリを2門ずつ詰め込んでんねん。」
「こっちもこっちで上等な機体やな。」
一人がスピットファイアの方を指さし話題が変わる。
「こっちはスピットファイアのMk9型、ロールスロイス・グリフォンエンジンに載せ替えた最初の型やねん。ドイツの戦闘爆撃機に対応するために高い旋回性能とハイパワーなエンジンを持ち合わせてるんや。20ミリと7.7ミリ2門ずつ、もう少し欲しいところだが我慢出来る積載量やな。」
話が一旦落ち着いたところで明日子が整備士の1団に話しかけに行く。
「おーい!新しいパイロットの2人を連れてきたよ〜!」
その言葉を聞いて皆一斉に2人の方へ駆け寄る。そしてすぐさま質問攻めに合う始末だ。機体の性能や他国で見た戦闘機に関する話、他にも色々な質問を投げかけられた。
「やかましいっ!」
格納庫の奥から一喝、島の外まで届きそうな声が響く。若い整備士をかき分けて腰の曲がった老人のベテランらしき男がやってきた。
「あんたらがこれのパイロットか…」
「はい、零戦の方が自分、明です。」
「スピットファイアの搭乗員、フィンです。」
老人はそれを聞くと。
「2人ともいい飛び方をしてるな。」
シンプルに褒めてくれた。
「わかるんですか?」
明が驚いたように聞くと老人は頭を掻きながら応えた。
「まぁな、下手くそが乗るとすぐエンジンはボロボロになるし、機体だって力が加わりすぎてシワだらけになる。だけどあんたらにはそれがない。あそこにいる明日子なんか1回出撃したらすぐボロボロだ。」
「…アハハハ」
明日子は目を合わせずに乾いた声で笑っている。
「とりあえずひとつだけ言えることがある。俺たちが機体を扱うからには、いつでも万全の状態で飛べるようにしてやるからな。」
「「ありがとうございます。」」
2人は深々と頭を下げた。
「いいんだよ、これが仕事だからな、分かったら早く行きな、まだ仕事が残ってんだ。」
言われるがままに格納庫を出て外で立ち止まる。
「次は?」
明が明日この方を向いて聞く。
「うーん、もう1人のパイロットの所に行こうか、多分部屋で寝てるけど。」
「もう夕方だぞ…」
困惑したようにルーがつぶやく。
「朝に弱いのに今日は叩き起されて9時には起きてたから。さっき2人の救援が終わったらすぐにへたばっちゃったんだよ。」
「なるほど、それなら仕方ないか。」
兵舎に向かって歩きながら普段の生活はどうしていたかという話になった。
「私は出撃がない時は基本的に訓練か運動かだったな。時には半日ずっと基地の周りを走り続けたから人間なのか疑われたこともあるくらいだ。」
「私は、飛ばない日はご飯作ったり海に行ったり近所の子供と遊んだり、余裕があったら本土に遊びに行ったり。」
ルーはトレーニング漬けで明日子は充実した休日といった感じだ。
「俺は…空軍パイロットの友人とメジャーリーグ見たり、ポーカーやらブラックジャックやらをしたり、あとはバイク乗り回したり射撃の練習をしてたな。アラスカだと冬場は寒すぎてバイクは動かないし銃だって凍るからほんとに暇だったけどね。」
「すごく…アメリカンだった。」
明日子が呟く。話に夢中になって自分が兵舎に入り廊下の真ん中まで来ていることに気づいてなかった。
「もう着いたのか…」
「うん、この211号室だよ。起きてるかなぁ」
明日子がドアをノックして呼びかける。
コン コン
「おーい、里緖〜起きてる〜?」
しかし一言も帰ってこない。
「寝てるのだろうな。」
「やっぱそうか〜でもどっちにしろそろそろ起きてもらわないとだし。」
「ならちょっと…」
明日子を避けてドアの前に立つと先程よりも激しくドアのノックする。
ドン ドン ドン!
「開けろ!デトロイト市警だ!…あっ違うわ」
「おい。」
「FBI OPEN Up!」(訳 開けろ、FBIだ!)
「それも違うだろ!」
ルーから盛大なツッコミが飛んでくる。
「え〜、じゃあ…大阪や!はよ開けんかい!」
さっきよりも強く扉を叩く。
「よ、よく知らない人間にそれだけ攻めた行動に出れるな。」
真顔でルーに言われてしまったのでこの辺りにしておく。
「冷静になってみればそうか…」
ドア前に立ったまま肩を落としていると顔面に強い衝撃が走る、開いたドアで顔面を強打したのだ、思わず鼻を抑えて悶絶する。
「つぁ〜、鼻が曲がったかもしれん。」
「人の部屋の前でデトロイトだとかFBIだとかうるさいな。」
寝巻きで髪はボサボサでまだ夢から覚めていなさそうな目をしているがはっきりとした口調で当たり前の文句を投げつけてくる。
「お、起きた!」
「ん?誰だこの2人。」
明日子の後ろに立つルーとドア横で悶絶している自分を見てつぶやく。
「あぁ、さっきの零戦とスピットファイアの人だよ。」
「ふーん、そうか。ならいい加減起きて着替えるか…ちょっと待ってろ。」
そう言ってまた部屋に戻って行った。
「ちょっと冷たいというか淡々としてるけど根は優しいよ里緖は。」
苦笑いしながら明日子が庇う。
「う、うむ優しいのだな、ならいいんだけど。」
ドアから離れて立ち上がりながら応える。
5分程待っていたら、彼女はオーバーサイズのTシャツの上にバイクジャケットを着たなんともキマッた服装で戻ってきた、髪も整えられている。さっきはよく分からなかったがどうやら髪は肩口で切りそろえられた長さになっているようだ。顔立ちは中性的で女性が見ればイケメンに見えるだろうし男性が見たら美人に見えるだろう。
「新しく来た高飛さんとフィンさんだよほら、挨拶して」
「わーったよ」
親子のようなやり取りのあと自己紹介に写った
「羽月里緒だ、三式戦に乗ってる。よろしく頼む」
「よろしく」
「よろしく」
2人とも手を差し出し握手をする。里緒がポツリと口を開いた。
「これで全員揃ったわけだけど…何するんだ?」
「…えーとなんも考えてなかったや。」
明日子が目を逸らす
「じゃあ武道場に行こう。お前らなんかやってたか?」
「俺は少しだけ剣術をやらされたよ。」
「私は銃剣術をそれなりに」
「ちょうどいいな。」
里緒が不敵な笑みを浮かべながら廊下を歩き出す。
宿舎になっている建物の半地下に連れてこられた。体育館の半分ほどの空間で地面が他と違い板張りになっている、半地下だが天窓から光が差し込んでいて照明をつけていなくても明るい、ここが武道場らしい。
「いい場所だ」
明がつぶやく
「あれ、里緒は?」
明日子が周囲を見渡すが姿は見当たらない。どこに行ったのかと疑問が浮かんだがすぐに疑問は晴れた。倉庫の中から木刀を二本持って出て来ると明の足元に一本投げつけ自分は木刀を構える。
「取れよ、手合わせしようぜ。」
「武道場に連れてこられるって聞いてある程度察したけどちと急だな。まぁいい相手になろう。」
明は両手で体の目の前でまっすぐに剣を構える。それに対して里緒は顔の横で刃を前に突き出す形で構える。
「随分と実戦的だな…いいぜ、こいよ。」
二人の距離はおよそ5m、どう考えても人間の一歩で詰めることの出来る距離では無い、しかし里緒は一瞬、時間にして0.1秒程でこの距離を詰めてきた。予備動作はなかった、姿勢を変えず刀を構えたままこの距離を詰めてきたのだ。明も咄嗟に刀を構え踏み込むと横から薙ぎ払うように一閃、しかし完全な空振りに終わる。咄嗟に己の本能が『上だ』と叫ぶ。第六感のようなものかもしれない。咄嗟に左に飛び退け、上から振り下ろされる一撃を回避する。
「お前、ほんとに人間か…」
一瞬で5mを詰めた疾走、斬撃を上方向に回避する跳躍力、どれも人間離れしている。
「残念だろうけど人間さ。」
また一瞬で間合いを詰めて来る。相手の方が機動力があるのならばそれを封じて近づかせて戦えばいい。
両者とも距離を詰め剣を交える。剣速は互角、どちらかが攻めに転じるともう片方はその攻撃を全て防ぎ、受け流す。木刀だが今にも火花が散りそうな打ち合いだ。両者とも姿勢が乱れたと思うと同時に立て直し、互いに先手を取ろうと刀を突き出す。里緒の木刀は明の頬を掠め明の木刀は里緒の脇腹を掠める。互いに真剣ならば大怪我をしている。
「ははっ、いいなお前、めちゃくちゃ強いじゃないか。」
里緒が刀を床に落とし離れる、どうやら満足したらしい。
「やっと満足したかい、まぁ楽しかったからいいけどさ。」
少し離れたところから傍観していたルーが近づいて来る。
「2人共一歩間違えたら死んでいたレベルだったな、見事だ。」
「「一体何処でそんだけの技術を身につけたんだ?」」
里緒と明がお互いに同時に問いかける。
ウゥ〜〜〜
互いに答えようとしたが突如鳴り響く空襲警報にかき消されてしまった。明日子が内線電話に飛びつき状況を確認する。
『西山電探より八丈島基地へ、北西方向から接近する機影三機を捉えました。大型機です。迎撃の用意を!』
「北側?露助じゃないのか?」
明が体を起こしながら問う。
「北側なら確実に本土のレーダーに引っかかるから先に連絡が入る。だから星の官軍だな。」
「ならすぐに上がるぞ。格納庫まで走れ!」
4人で武道場を飛び出して格納庫に走る。その頃レーダーでは…
「あ!レーダーから一機消えた、反射波が2機分になった!」
レーダーを見ていた自衛官が声を上げる。レーダーに写っていた三つの点がふたつに減った。
「なんだと!?減るとはどういうことだ?」
それを聞いた上官も近寄り問い詰める。
「分かりません、ただこのレーダーは新式なのでまだ調整が終わってないんです。もしかしたら波が行き届いてない場所があるのかもしれません。他の同一種があれば比較調整できるんですが…ただこの飛んでる二機の少し前におかしな反射波があるんです。海面の反射に近い、時化の時とかに良く出るような…」
今後数日の天気に関する書類に目を通す
「低気圧が近づいてる、時化でもおかしくは無い…」
「でも一応報告しましょう。」
「わかった。」
受話器を取りもう一度基地に繋ぐ。その頃4人は機体に乗り込み準備を終えようとしていた。
「二機に減った?」
「はい、レーダーから消えたそうです。」
「勝手に墜落してくれるなら楽なんだがな…」
ルーは電話の報告を聞いていた、明はとある問題に直面していた。
「なんだこの振動、それに筒温も少し高いな…」
横で最終チェックを行っている整備士聞いてみる
「さっきプラグを変えたんですがその後からなんですよ、ひとつ火花が弱いのがあるんです、しばらく飛ぶと溜まったカーボンが燃えきって正常になります。」
要するにエンジンの不具合である。だが勝手に治るから問題ないとの事らしい。
「具体的にどれくらいだ?」
「おそらく5分くらいです。」
「わかった。」
「ご武運を」
その一言を受け取ってからキャノピーを閉じ滑走路へ向かう。飛行帽に組み込まれた無線機から情報を受け取る。
「敵大型機接近、離陸後は高度20000フィートで北西へ向かってください。」
滑走路と誘導路に機体を並べる。
「蒼穹隊一番機 羽月 里緒 出る。」
「蒼穹隊二番機 三鷹 明日子 出撃します!」
コルセアと三式戦闘機がルーと明より先に飛び出す。2人は先に管制官からコールサインを伝えられた。
『まずはルー中尉だ君のコールサインは蒼穹隊三番機、次にだ高飛中尉は四番機だ、クリアードフォーテイクオフ、離陸を許可する。』
「蒼穹隊三番機 ルー・フィン、出る!」
「蒼穹隊四番機 高飛 明、出撃する!」
2機が滑走路を駆け抜け速度をあげて離陸する、しかし明の零戦だけが速度が乗らず失速寸前でフラフラと飛んでエンジンからけたたましく異音が鳴り響いてる。
バンバババッバンバンバン
「くそっ、離陸するんじゃなかった…とは言ってももう引き返せる状態じゃないか、引き返そうと旋回すれば失速して墜落するからこのまま調子が出るまで真っ直ぐ飛ぶしかない…」
6分後、零戦を除く3機が高度5000mに到達した。仮に零戦のエンジンが絶好調だったとしてもこの三機に追従するのは難しかったかもしれない。
「上方にコントレイル確認、高度およそ9000、大型機だやはり2機しか居ない。」
ルーが2つの機影を真っ先に見つける。
コントレイルとは英語で飛行機雲を表す言葉である。
「あそこまで上がるのにはまだ7いや8分ってとこか…」
里緒が上を見上げながらつぶやく。
「1機足りないが行くしかない、楔形だ、一番機より四番機へ、こちらの後方を警戒してくれ。」
見当たらない明に呼びかける。
『こちらエンジン不調、出力不足のため追尾不可、繰り返すエンジン不調につき追尾不可。』
「…了解した、二番機の明日子へ、後方を見ておいてくれ。」
3機は少しずつ上昇を続ける。その下で明は不調の機体と格闘していた。
「だいぶ調子が戻ってきた…もうフルに吹かせるな。」
海面スレスレの曲芸飛行状態から回復し高度100mに登っていた。日は沈み空は薄暗くなっていた。海と空の境界があやふやな世界に少しの淡い月明かりが差し込んでいる。
上を見上げるとルー達の3機とそのさらに上を飛ぶ爆撃機が見えていた。しかし突如月明かりが遮られ上から布を被せられたように上を飛ぶ機体も見えなくなった。
「何だ!」
それは正しくレーダーから消えたもう1機だった。
爆撃機でありながら低空に隠れてから再上昇しルー達の背後を取るつもりだったのだろう。大型で丸く太い機体に長い主翼と高く上に伸びた垂直尾翼。米軍が太平洋戦争で運用したB29だ。400キロ前後で飛行しているようで300キロで巡航している零戦には見向きもせずに追い越して上昇していく。明も病み上がりの機体に鞭打ってフルスロットルで追いかける。
「低空に敵機、高度200から上昇しつつあり。爆撃機です」
機体を傾けて下方を警戒していた明日子が里緒に連絡する。
「まじか、挟み撃ちかよ。爆撃機の上昇力じゃここまで来るのには時間がかかるが、こっちが全部片付けて降りたところで鉢合わせするとめんどくさい。」
b29は超空の要塞と呼ばれる程防御力が高く、速度性能も申し分ない、さらに銃座は射程が長く、角度によっては戦闘機数機分の火力に匹敵する、それを明1人に丸投げしたのだ。
『今そいつの下から追いかけてる、やれるだけやってみるが撃墜されても文句言うなよ!』
そう言って無線は切られてしまった。
零戦の速度がほぼ全速の540キロに到達させ、上昇してb29の左後ろに飛び込む、そのまま後部銃座の真下を横切り垂直尾翼の右側に飛び出す。横転を打って機首をb29の方に向ける。照準器の表示とb29が重なった時、スロットルの引き金を引く。機首を引き起こしながらb29の太い胴体と左翼に13ミリと20ミリを叩き込む。そのまま銃座の死角であるb29の下側に離脱。振り返った時にはb29は左翼のエンジンから火を吹いて体勢を崩していた。高飛がもう一度攻撃を仕掛けられるようにポジションを整えようとした時、b29は燃料に引火し爆発、破片をまき散らしながら海面に落ちて行った。その爆発は上空の3機からも見えていた。
「なんだあの光は。」
「飛行機に火がついたんだ、明が下の機体を落としたんだ!」
ルーが火焔の方を見ながら無線に叫ぶ。
「これで迎撃の邪魔は入りませんね、遠慮なく行かせてもらいます。」
明日子のコルセアが加速し上空のb29に向けてまっしぐらに突っ込む、そのままb29の右翼を掠めるギリギリの距離で機銃を発射、右翼の付け根に弾を集中させ翼をへし折り撃墜した。
「くっそ、また勝手に突っ込みやがって。あともう1機の方を仕留める、手伝え三番機!」
「了解した。」
三式戦が胴体右側から攻撃を仕掛け、スピットファイアは上昇しb29上空で反転、逆さ落としに突っ込みながら20ミリを叩き込む。2機の連携攻撃によりb29は胴体から火を吹き高度を下げて行った。
『こちら管制塔、蒼穹隊へ爆撃機を全機撃墜した、こちらのレーダーに敵影なし、』
「終わったか…けどこいつらなんのためにたった3機で」
明が肩の力を抜いてつぶやく。
「うちは滑走路は1本で建物も少ない、たった3機でも十分驚異になる。」
「b29の爆弾搭載量は9トン、3機だと27トンで250キロ爆弾なら100発を超えるから小基地ならそれでも壊滅する。」
『蒼穹隊各機、警戒態勢解除、帰還せよ。』
「了解。」
その後も2人ずつのローテーションで飛行服を着用した状態で待機をしていたが追撃はなく朝が来た。
「一晩開けてみればなんともあっない話だ。」
明達4人は海岸に流れ着いたb29の残骸を見て立ち尽くす。
「こいつB-29じゃなくて偵察型のF-13だぞ。」
F13とは写真偵察機器を搭載したB-29を改造した偵察機で高高度からの情報収集を専門とする機体だ。
「挙句もっと酷いのはこっちだ、敵はF-13の護衛に電波高度計を取り付けたB-29を付けていたんだ。」
里緒が黒く塗られた残骸に足を乗せながら解説してくれる。翼と思しき残骸に小型のレーダーのような物が取り付けられている。
「爆撃機で爆撃機を護衛してたんですね。」
明日子が頷きながら応える。
「あぁ、それも低空専門だ、でもさらに低空を飛んでた高飛が落としちまったと…」
「多分こちら離陸直後を銃座迎撃して足止めするためだったんだろうな。」
「機体の不調に助けられたな。」
戦場では何が起こるか分からない、零戦の不調がなければ全滅していたかもしれないし、明はb29に轢き殺されていたかもしれない。でもここのメンツは引きがいいというか強運が味方についているような気がする。
「あとは解析のメンバーに任せて帰ろうぜ。」
眠たいのか里緒が早く帰ろうと急かす。
「同じく、1日で2戦は俺も疲れた。」
基地に戻ろうと来た時、迷彩服の男が小さな紙切れを持って走ってきた。
「高飛特務中尉とフィン特務中尉に連絡があります。おふたりを輸送した二機のC-10ですが、二機とも退避後に別戦闘機の攻撃を受けて撃墜されたとの情報が入りました。」
「…そうか。」
ルーは少し俯いて小さく呟いた。
「こればっかりは輸送機を退避させるように言った俺が悪かった、搭乗員にはほんとに恨まれても仕方ない。」
明は淡々としているが発する声一つ一つに重みがあった。四人の間に沈黙が流れる。それは非常に重く、何かを考えさせられる時間と空間だった。
過去を振り返ることは出来ても戻ってやり直すことは出来ない、人は生きている限り進み続けるしかない。二人はそう自分に言い聞かせて生きてきた。それは今後も変わる事は無い。だがそれをどう受け入れるか、誰かと分けて受け止めることが出来るのかは二人が決めることが出来る。
「なぁルーよ。」
「どうした?」
「どこが俺たちのゴールなんだろう?」
その質問にルーは荒削りながらも正解に近い回答を返した。
「ない、そんなものはない。常にゴールを駆け抜け続ける、ひとつゴールしたらまた次の戦いに赴く。そうやって常に未来の人々が平和に過ごせるように尽くし、死んでいった過去の者が報われるように努める。それが私達が向かうべき場所だと思う。」
その返答に感動し少し少し返答が遅れる。
「…なるほど、すごくいい答えだよ。自分が見失いかけていた物を教えてくれた。本当にありがとう。」
「いや、私も聞かれるまではすごく悩んでいたんだ。自分のやっている戦争が正しいのか否か。私は私のために死んで行った者に報いる事ができるのかと、でも進み続ける事が報いになるのでは無いか、いや進み続けることしか出来ないなと思った。」
ルーの横顔は朝焼けに照らされ輝いていた。
「なぁ、空気読んでなくて悪いんだけど腹減ったから速く帰りたいんだ。」
里緒が空気を読まずに帰投を進言してくる。どうやら自覚もあるらしい。それを聞いたルーは優しくわかったと言い、振り返り歩き始めた。横顔から水滴が飛び朝焼けの光の中に消えていくように見えた。
( `・ω・) ウーム…まだ己の中の『高飛 明』像が定まっていないような気がする…
次回は登場した機体の解説になります。