色々と忙しくて執筆する暇が中々に・・・
さてと言い訳はこのくらいにして。
今回からMSが出てきますよー
時系列がおかしいかもしれませんがご了承下さい。
記録日 U.C 0079 11/20
記録者 旧世代人体兵器艦娘-深雪
「・・・こちらグール2、異常無し」
「了解グール2・・・グール3、応答して」
「ふぁぁ~・・・こちらグール3。異常無えよ~」
「グール3、今は任務中だよ・・・深雪ちゃん」
「はいはい、分かってるよー・・・以上、通信終わり!」
「えっ!?ちょっ深雪ちゃ」
そう言いながら私はヘルメットから聞こえる通信を切る。
(全く・・・何千年経っても真面目な奴等だよ)
今私は巨大な人型の兵器、モビルスーツという名のコックピットの中にいた。
中は様々な機器から計器類があったり、前と左右にモニターがある。
そして手元に二つの操縦桿と今座ってるシート、意外と座り心地は悪くない。
そんなシートに体を預けながら私はモニターに映された光景をぼんやりと眺めていた。
そこには広大な宇宙と、周りにデブリが少々・・・といった感じだった。
これは私達が搭乗している人型兵器、モビルスーツの頭部カメラから映し出されている。
・・・人類が宇宙世紀という新たな時代へ踏み出してから早70年近くが経過していた。
今はこうして吹雪、綾波、そして私の3人でグラナダ周辺の警備をしている。
連邦軍に配属され戦争が始まり、オデッサ作戦後しばらくしてここへ私達は飛ばされた。
そこでは毎日訓練と鍛錬の日々、休暇なんて無いに等しかった。
でも私は艦娘の時と同じく人類を守るための力を得るためだとそう信じていた。
・・・でも現実は違った。
サイド3という地球から最も遠いとされるコロニーがジオン公国と名乗り、
地球連邦軍に対して宣戦布告してきた。
地球からの独立自治権の確立が目的らしいが、連邦政府はそれを良しとしなかった。
そのため地球人であるアースノイドと宇宙人であるスペースノイドとの間で軋轢が生じ、
こうして戦争へと発展した。
・・・どうして?
宇宙世紀という新たな時代が始まる前や始まったばかりの時、
皆は新しい希望を胸に抱いていた筈だろう。
なのに何故人類は戦争という選択肢を選んでしまったのか。
私達が命を賭して手に入れた平和はどこへ行ってしまったのか。
私達の相手はいつの間にか怪物から人へと変わっていた。
人の死の重さがどれだけ悲惨なものか、皆知っているだろうに。
考え方が違う、受け入れられないというだけで人を殺せるのか。
(こいつも人殺しの道具・・・なんだよな)
連邦軍が本格的に量産したモビルスーツ、ジム。
今搭乗しているのはその先行量産型にあたるものだ。
最初は連邦軍にモビルスーツはガンダム、ガンキャノン、ガンタンクの3機だけだったらしい。
らしいというのはそういう噂を軍で聞いただけだ。
更に驚いたのは、ガンダムを操縦したのは私達より3つか4つくらいしか違わない少年だという事。
・・・いや、今となっては年など関係ないか。見た目でという問題だ。
噂では初陣でザクを2機撃破したらしいが・・・どう考えても異常だ。
初めて乗ったモビルスーツでそんな事はまず一般人には不可能だ。
私達ですら過酷な訓練を受けてようやくここまで操縦できるようになったのに。
(何なんだろうなソイツは・・・一体)
等と思っていると目の前のモニターにデータが送信されて来た。
グール3・・・綾波のジムから転送されてきたものだ。
データを見ると敵のMS、ザクの改修型らしき物が映し出されていた。
私は切った通信をもう一度入れ直す。
「・・・あっ、やっと繋がった!もう深雪ちゃん!作戦中に通信勝手に切らないで!」
「あぁもう!了解ですよ小隊長!」
半ばやけになりながら私は返事を返す。
「11の方向に敵機確認!数は3・・・こっちに向かっています!」
「どうすんだ隊長・・・いや、吹雪!」
「グール2、深雪ちゃんは私と一緒に前へ、綾波ちゃんは後方支援に回って!」
「「了解っ!!」」
足元のペダルを踏み、吹雪のジムと共にバーニアを吹かして速度を上げて敵へ向かう。
実は私たちのジムは普通のと違って改造されている。、
例えば、綾波のジムは偵察と索敵に重点を置いているため頭部にレドームが付いている。
そのため武装はスプレーガンが1丁と軽装。
偵察機は火力を必要としないため当然とも言える。
それとは反対に吹雪のジムには両腕にシールドが2枚、
腰のサイドアーマーにスプレーガンが2丁、肩にサーベル2本と高火力武装。
・・・少々やり過ぎでは?とたまに思うことがある。
私のジムには高威力のキャノン砲が搭載。
格闘にも対応できるように一応サーベルもある。
そして全員の機体には共通して、かつて私達が艦娘であった頃使用していた、
駆逐艦であった頃の武装である連装砲を模したキャノン砲が装備されている。
コイツがこの隊の最大の特徴・・・
いや、モビルスーツにそのような特徴が見られるのなら、艦娘が乗っていると見て間違いはないだろう。
この隊のコードネームであるグールも、生きる屍のような私達とっては相応しい。
・・・だが艦娘は不老ではあるが不死ではない。
死ぬ時は普通の人間同様呆気なく死ぬ、死体の山の一つになろうものなら簡単になれる。
それを再認識したのは初陣ともなったオデッサでの戦闘。
磯波が乗った陸戦型のジムはコックピットをザクのヒートホークで真っ二つに切り裂かれた。
初雪の乗るジムは相手のマシンガンで蜂の巣にされ、白雪が乗るジムは敵ののヒートサーベルで一刺し。
敷波は・・・もう嫌だ、思い出したくない。
とにかく普通の人間の死に方ではない死に方ばかりだった。
それを見た私達は、恐怖と悲しみが入り混じった説明しようのない物に襲われた。
吹雪なんかただひたすら泣き喚いてばかりで・・・いや綾波も、私もそうだった。
泣き喚こうが何も変わらない、誰も助けてくれない、それが戦争という現実。
人同士の戦場は艦娘でいた頃の方がよっぽど生ぬるい、無慈悲で残酷な世界だと私は知った。
その現実にまたこうして私達は立ち向かっている。
今度は泣かない、誰も死なせはしないと覚悟を決めた。
次第に敵のザクの姿が大きくなって見えてくる。
「まずは一発、格闘をぶち込むぜぇ!」
そのままの速度を維持しながらサーベルを抜き、ザクの懐へと飛び込もうとする。
するとザクは腰に据えた巨大な脇差から刃物を抜き出したように見えた。
(何か・・・引き抜いたか!?)
だがそんなのは関係無い。
相手は恐らく金属の剣、だがこちらは熱と光の剣。
どちらが勝つかなんてのは目に見えている。
「もらったぁ!!」
サーベルを真横に振る。
しかしサーベルはザクを真っ二つにはせず、あろうことかビームサーベルを受け止めている。
「なんでっ!?なんで切れねえんだよっ!?」
「・・・残念だな!この刀は対ビーム用にコーティングされている!」
「っ!この声は!」
一度切り払って距離を離す。
(今、回線から聞こえた声って・・・)
私は昔の記憶を思い出しながらザクが持っている刀と脇差を今一度見直す。
どこかで見たことがあるような脇差、そして通信で聞こえたあの懐かしい声。
「まさか・・・日向さんか!?」
「そういうお前はまさか・・・」
「日向!何やってんの!」
恐らく日向さんが乗っていると思われるザクの後方から、
もう二機のザクがマシンガンを撃ちながら接近してきていた。
弾がバラつきながらこちらに雨のように向かってくる。
「・・・もう二体いたか!」
「深雪ちゃん!」
吹雪のジムがシールドを構え私の前に出て盾になってくれた。
「もう一機のザクの相手は私がする!深雪ちゃんはもう一方をお願い!」
「おう、了解!」
そう言って私と吹雪は距離を取って、1対1の状況を作り出す。
(・・・二手に分かれて一機ずつやろうって魂胆ね)
目の前のジムが二機、分かれて飛んでいる。
どれも見たことあるような砲の形をした武装を積んでいた。
・・・間違いない、彼女達だ。
私達艦娘の・・・いや、日本の軍艦の始まりである最初の一隻、吹雪。
その吹雪からなる同系列の軍艦である吹雪型の連装砲だ。
「ねえ日向、やっぱりあのモビルスーツって・・・」
もう一方の、バズーカを腰に携行したザクから通信が入る。
恐らく中に入るパイロットも気付いたのだろう。
「ええ、彼女達ね」
「良いの?あの娘達は伊勢、君の・・・いや日向と君の」
「教え子だった・・・と言いたいの?最上」
「・・・うん」
「そんなの何千年も前の話。今は敵でしかないわ」
「伊勢!そんなの、そんなのってないよ!ボクはあの娘達となんか・・・!」
私は手に持ったマシンガンを最上のザクに銃口を向ける。
「本気なの・・・?」
「戦えない、なんて言わないわよね?死にたければ話は別だけど」
「・・・分かった」
「ならよろしい」
マシンガンの銃口を改めて敵のジムがいる方向へと向ける。
「さて行くわよ、最上!」
「了解・・・」
最上のこの言葉と同時に足元のペダルを踏みブースターを吹かす。
ガタガタとコックピットの計器類が揺れ動く中、身体にGの負担がかかる。
それを感じながら私は最上に言った事をもう一度思い出していた。
(冷たく言い過ぎたかな、私。本当は私だって・・・)
接近しているジムからビームの破片が断続的に飛んでくる。
それに対抗するようにマシンガンで応戦をする。
ビームと弾が戦場を飛び交う。
だが両者が放った弾は、お互いの回避運動で全て回避される。
(射撃じゃ駄目・・・なら!)
ザクの腰の刀を引き抜き、ジムの上のポジションを取る。
(敵のまさかと思うポジションが、こちらの優勢の位置になる・・・なんてね)
私は訓練生時代に戦術を教えてくれた教官の言葉を思い出し、クスリと笑った。
「チェストォォォォッ!」
ブースターを下方に向け、勢いを付けて刀を一気に振り下ろす。
ジムは一歩遅くこちらに気付いたのか、こちらに頭部が向く。
だがもう遅い。
ジムの頭部から足までかち割ってやる。
・・・だが振り下ろした刀は虚しく空を裂いた。
当たる寸前に紙一重で回避されてしまった。
「避けられたっ!?」
「・・・刀がなんだぁっ!!」
私は咄嗟に肩にあったサーベルを引き抜き真横に振る。
振ったサーベルは、刀を振り下ろした体勢のままのザクの片腕を斬る。
「ちぃっ!!やるわね、吹雪!」
「その声・・・伊勢先輩!?」
私は通信から聞こえた声に驚いた。
艦娘になってまだ右も左も分からなかった頃、戦闘や救護の仕方まで教えてくれた、
私達の憧れでもあった戦艦の艦娘の伊勢先輩の声だ。
聞き間違いなんかじゃない、ハッキリと聞こえた。
「・・・その声、伊勢先輩ですよね!?どうしてジオン何かに!!」
「私はジオンの考え方が正しいと思うからこうしているのよ!」
「コロニー落としをやった悪魔の軍隊が正しい・・・!?
何を・・・何を言ってるんですか!?」
「ジオンの崇高な理想が分からない、正義面するだけの子供が言いそうな事!」
「え・・・?」
私は伊勢先輩が何を言っているのか分からなかった。
ジオンは開戦当初、地球にコロニー落としをして人口の半数を死に至らしめている。
大量虐殺を行った軍隊の理想・・・そんな考え方分かりたくもない。
「こんなに時間が経っても、まだ地球にへばりついている人の言う事をまだ信じると言うの!?貴方は!!」
「先輩だって、元は私達と同じ地球人じゃないですか!」
「黙りなさいっ!!」
私は残ったザクの片腕にあるマシンガンを構え、吹雪の乗るジムへ銃口を向け発砲する。
(そんな・・・そんな、どうして)
「吹雪!!ボーっとしてんじゃねえ!!死にてえのかっ!?」
向こうから深雪ちゃんの乗るジムがシールドを構え、私を庇ってくれた。
でも私は頭の中で、なぜ?どうして?・・・を繰り返していた。
答えなど見つかる筈も無いのに。
でも頭の中はそれしか無かった。
「おい、吹雪!!どうした、しっかりしろ!!」
その深雪ちゃんの一言で私は我に返る。
「えっ・・・あっ、ありがと深雪ちゃん」
「お前なぁ・・・」
呆れた口調だった。
もし深雪ちゃんがいなければ放ったマシンガンの銃弾が直撃し、私は死んでいた。
深呼吸を数回繰り返し、心を落ち着かせる。
(昔は先輩だったとしても・・・今は敵なんだ!)
改めて心の切り替えをし、操縦幹を強く握りしめる。
(そうだ・・・敵なんだ!)
「きゃああああああっ!?」
そう思ったと同時に大きな悲鳴が通信から聞こえた。
「しまった!?あっちには綾波一人っきりだっ!?」
「綾波ちゃんっ!?」
伊勢先輩達と交戦に夢中になっていて、もう1機いたザクの存在を忘れていた。
確かバズーカらしき武器を持っていた筈だ。
だが綾波ちゃんの武装じゃ・・・!
「・・・っ!撃ちたくない、けどっ!!ごめん!」
(やられるっ!?)
(もらった・・・!)
「綾波ちゃん!」
私は咄嗟に足元のペダルを踏んでバーニアを吹かし、腰のサーベルを抜き接近する。
「綾波ちゃんから・・・離れろぉっ!!」
「・・・えっ?」
そのままサーベルを胸のコックピットがあるであろう部分へ向けてサーベルを突き刺す。
刺したザクは全身の力が抜けたようにそのまま機能停止した。
「も、最上ぃぃぃーーーっ!!」
「はぁっ・・・はぁっ・・・!」
一機仕留めた。
が、後ろのザク二機の内一機がこちらをめがけ発砲してくる。
「よくも・・・よくも最上をぉっ!!」
「待て、伊勢!これ以上は無理だ!撤退するぞ!」
「・・・っ!!了解!」
二機のザクが撤退していく。
その後ろ姿は正に艦娘の時の伊勢、日向先輩の姿そっくりだった。
(先輩・・・)
「あの・・・吹雪さん、ありがとうございました」
綾波ちゃんのジムから通信が入る。
「えっ?ああうん、お礼を言われる程の事じゃないよって、うわぁっ!?」
深雪ちゃんのジムが急に私の機体をど突き、その衝撃で体が揺れる。
「なーぁ吹雪ぃ?この深雪様にもお礼を言うべきじゃないかぁ?」
「・・・そうだね、あの時は本当にありがとう深雪ちゃん」
「そうだそうだ!もっと褒めても良いんだぜ?」
「ふふふっ・・・」
深雪ちゃんの笑いにつられて綾波ちゃんも笑い出す。
私も自然と笑顔になって笑っていた。
このまま皆で生き残りたい、戦争を終わらせて皆でいつまでも笑っていたい。
私は心の底からそう思った。
さて皆さん、どうだったでしょうか。
吹雪型好きや航空艦好きの皆様にはちょっときつい内容だったかなーなんて思います。
さて艦娘達の乗っているMSですが、
一年戦争ではかなりの数のMSが生産されています。
ですのでMSVのような位置付けだと思ってくれれば有難いです。
誰かプラモで再現したりしてくれないかなぁ・・・
因みに吹雪、深雪、綾波の三人の武装を見て、完全にDチームだって思った人は
流石です。
では次回まで、また。