朝日が差し込む室内に、窓際に佇む小鳥達の鳴き声が響き渡る
その鳴き声が目覚まし時計の役割となったのか、ベッドで眠る青年は眼を開き上半身を起こす
だが青年は起き上がりこそしたがベッドから出ようとはせず両手をパンパンと叩く
その音を聞いて直ぐにドアが開き、オシャレなスーツ姿の白髪の老人が室内に入ってくる
「お呼びでしょうかカズマ様」
「目覚めのコーヒーを頼むよセバスチャン」
「ハイデルです」
「頼むよハイデル、さてそろそろメイドのメアリーが来る頃か」
「あ……あの……」
「ああ、お早うアイリス
それにティアラ」
『♪♪♪』
時間は前日の夕方、カズマとサトシ達がベルセルク王国の第一王女アイリスによって王都に連れられ王宮内の一室に案内された時に戻る
「では行って参ります」
クレアが遠出し王宮を離れている国王……つまりアイリスの父に魔道具を使い今日起きた事の報告と確認を取って来ると言い残し室内から出ると、アイリスは隣に控えるレインに耳打ちする
いきなり拉致に近い形で王都に連れられ王宮内に案内されカズマもサトシやピカチュウ達も混乱し無言になるなか
『やっぱり王宮は凄いロト、建物に使われている物質がカズマの屋敷とは比べ物にならないぐらい固いロト
コレならめぐみんやセレナの爆裂魔法やバルスリンのだいばくはつでも壊せないロト』
等と人によってはテロリストが下見しているのかと思われる様な物騒な事を言うロトム図鑑と
『ナマァ……』
今度はアイリスに抱っこを求め見事に抱かれる事に成功したナマケロを除いて、耳打ちするアイリスをボーと眺めていた
「カズマ様 サトシ様、ようこそ当城へ
皆さんは客人としてお呼びしたので余計な気遣いや礼儀作法など必要ありません、この城を自宅と思いリラックスしご寛ぎください
この部屋はサトシ様のです、カズマ様のは後でご案内しますね
との事です」
「………………」
『………………』
「あの………魔法使いのお姉さん」
「レインです」
「あぁじゃあレインさん、ちょっとコッチに
サトシ、ピカチュウ、お前らも来い」
「……………うん」
『…………ピカ』
先に我に返ったカズマがレインを呼び、サトシとピカチュウと共に部屋の隅に
「これ……誘拐ですよね」
「違います」
「いや俺らの確認を取らず連れて来たんだから誘拐じゃねえか」
「いいえ王女のアイリス様は御二人を客人として招き入れたのです、だから誘拐ではありません何故ならアイリス様は王女ですから」
「そ……そうですか……
(権力を振りかざしてきやがった)」
「あのレインさん、何で王女様は俺達をお客さんとして呼んだんですか?」
「実は2週間前に、アイリス様と身分こそ釣り合わないですが同年代の遊び相手が出来たのです」
「へぇ~小さな国の王女様とか?」
「いえ一般の少女です、アイリス様より少し年下の」
「一般人が王女様の遊び相手になったんッスか?」
「どうやら例の王都で暴れたモンスターの騒ぎの際に家族と離れ離れになってしまった様で、1人で城下町をさ迷っている所を我々と街の様子を見学していたアイリス様が見つけ
家族が見付かるまで、この城でワタクシの遊び相手として彼女を保護すると」
「王女様優しいですね」
『ピィカァ』
「ええ、まるで妹のように彼女……ティアラちゃんを可愛がっています
ただ彼女どうやらモンスターに襲われたショックで口が聞けなくなった様で、アイリス様以外には心を開いてくれなくて
なのでアイリス様ご本人だけでなくティアラちゃんの遊び相手として、お若い冒険者の御二人を呼ばれたのかと」
「なるほど
(やっぱ優しい王女様なんだな
ん? でも女の子の相手すんならダクネスや他の女子共も呼んだ方が良くねえか?)」
「アイリス様は常に厳格な王族である事を強いられてきました、普段はお父上の国王様やお兄様のジャスティス王子様だけでなく私やクレア様の言う事も素直に聞き入れるアイリス様が、ティアラちゃんを城に招き入れる事や御二人を我々に許可なく連れて来るといった行いに出て私達も驚いています
どうかアイリス様のワガママを許していただけないでしょうか、暫くの間だけで構いません……アイリス様とティアラちゃんの遊び相手になってはくれませんか」
「「………………」」
サトシとカズマは互いに顔を見会わせアイリスの方を見る
『ナマァ~』
「フフフ♪」
ナマケロを抱っこし微笑む姿は普通の女の子が生き物とじゃれている姿にしか見えず、会食中の彼女は今レインが話してくれた通り厳格な王族として作られた姿で、今の彼女こそが本当のアイリスという人間の姿
「……………俺は構わねえけど、お前はどうするサトシ?
ポケモン集めあんだろ」
「俺も良いよ、王女様やティアラって子も遊びたいだろうし
少しの間ですよね?」
「勿論です」
「なら大丈夫です」
『ピカピカ♪』
「御二人ともありがとうございます
アイリス様、御二人が暫くの間アイリス様とティアラちゃんの遊び相手になってくれるとの事です」
「本当ですか♪」
「おう♪
(最初は如何にもな王族かと思ったが、結構可愛いところあるんだな)」
そう言って嬉しそうに笑うアイリスにカズマは優しく笑いながら応える
「レイン、ララティーナに御二人は暫く王宮に居る事を伝えてちょうだい
ワタクシはティアラを御二人に紹介します、ワタクシの自室に居ますか?」
「はい、ちゃんとお留守番しているとの事です」
「では御二人とも暫く待っていてください
ごめんなさい、カズマ様と一緒に待っててね」
『……………ナマァ』
「はいはい……お帰り」
ゴロゴロと床を転がり、カズマの足を登りながら定位置へと帰る
それを見送り、レインと共にアイリスが室内から出ると、ドアを開けた際にドア前に重装備をしている兵士が10人も待機しているのが目に入るサトシ
「兵隊の人達スゲー鎧や剣持ってたな」
『ピィカピィ』
「そりゃ国のお偉いさんを守るのがあの連中の仕事だからな、最近モンスターに侵入されたみたいだし幾ら王女様の客人で貴族のダクネスの仲間だろうと一般人の俺らに対して警戒してんだろ」
「それでか、でもあんな大勢に見張られてるって何か息が詰まりそう」
「別に俺ら悪い事する訳じゃねえんだ堂々としてりゃ良いんだよ、にしても王女様と女の子の遊び相手か……何やればいいんだ?
おいサトシ、お前同い年か年下の女の子達と旅した事あんだろ」
「うん」
「その子達は普段はどんな遊びやってたんだ?」
「そうだな……ポケモンのお世話したり、後はお菓子作りとかもやってたかな」
『ピカ』
「ポケモンのお世話か……ナマケロ、お前王女様に懐いてんならお世話される係やるか『ナマァ!!!』お前……そんな即答するぐらい早く動けんだな……」
「じゃあカズマが12歳の時の同い年の女の子達は何して遊んでたの?」
「うーん……ドッチボールやってる奴もいれば真面目に本読んでる奴とか、後は……」
トントン
「失礼します」
軽い雑談をしていると、ドアをノックしアイリスが室内に入って来る
赤い髪をツインテールにしドレスを纏った、アイリスと同じく人形の様に大きな目をした可愛らしい少女が彼女の背に隠れカズマとサトシ達を見る
「御二人共お待たせ致しました、この子がティアラで」
『♪♪♪』
「わっ!?」
『ピィカァ!?』
アイリスが紹介しようとした瞬間、赤髪の少女……ティアラは嬉しそうにピカチュウを抱っこし始め
更に
『♪♪♪』
『………ナマァ?』
『中々積極的な女の子ロト』
ナマケロとロトム図鑑にも抱っこを行う
「ティ!ティアラ! ストップ!ストップです!
申し訳ありませんいきなり」
「大丈夫です、いきなりだからビックリしただけですから」
『ピィカァピィカチュ』
『ピカチュウだけなら分かるロトが、アチシやナマケロを抱っこしたいと思ってくれて嬉しいロト♪』
「まあコレぐらいの年の子なら生き物見たら飛び付くのは仕方ねえよ
(しかしコレまた可愛い美少女が現れたぜ)」
「それにしても初対面でティアラが全く警戒しないとは、やはり仲間に会えて嬉しいのね」
『♪♪♪』
「仲間?」
無言でニコニコと笑いながらピカチュウ達に手を振るティアラに対し、アイリスが呟いた言葉にサトシが反応する
「皆様にはお話します、但し他言無用で今から何が起きても決して騒がないで下さい
ドアの側に居る兵や、クレアやレイン達が来てしまいますから」
「そ……それって……(兵や側近達にも話せない事だと、おいおいまさか国の存続が掛かった重大な厄介ごとを頼んでくる気じゃ……ヤベェ……王女様から頼まれたら断れねえぞ)
「話って何ですか?」
「ティアラ、元の姿になって」
『???』
「大丈夫この方達は優しい人達よ、お願い」
『……………ラティ』
「あれ? この子って確か口が聞けないんじゃ……というか今ラティって」
『ティア』
「なんだ? 体が光って……ん?」
「あ……あぁ」
『ピ……ピィ』
『ロ……ロト……』
ティアラの体が突然光輝き困惑するカズマだったが、光が納まったティアラを見て固まり、サトシとピカチュウとロトム図鑑はまるで信じられない物を見たかの様に唖然とティアラ……否
赤と白の2色のボディと胸元に三角状の模様が浮かんでいる、体が宙に浮かぶ物凄~~~~~~く愛らしい顔をした生き物を見て同時に口を開く
「「『ラティアス!?」」』
『ピカァピカ!?』
「みみみ!!皆様!?」
『ラティ?』
ドンドン!!ドンドン!!
「なにかありましたかアイリス様!?」
「大丈夫ですか!?」
「何でもありません!! ちょっと転んだだけですのでお気になさらず!!!!」
「そうですか……何かあった時は直ぐにお知らせください!!」
「分かりました!!
お……お静かにお願いします……」
「「『『………………コクリ』』」」
『……………ナマァ』
半泣きで自身の口に人差し指を添えるアイリスに対し無言で頷き、プカプカと宙に浮かぶ伝説のポケモン<むげんポケモン>ラティアスを見つめる
『ラティア?』
「スゲェ……前にカズマが言った通り本当にラティアスが居るなんて」
「俺も驚いてるよ……マジで居たのか」
ポケモン図鑑を手に入れ、ドラゴンポケモンの一覧表を見せて貰った際にて
子供の頃に見ていたファンタジーアニメのドラゴンにソックリで、尚且つその可愛い見た目に一目惚れしてしまい、自分の初めてにしたくてラティアスはこの世界に来ていると言っていたカズマの戯れ言が何と本当であった
「所で御二人共、今ティアラの事をラティアスと言いましたが
もしかしてソレがティアラの本当のお名前なのですか?」
『その通りロト
ラティアス むげんポケモン エスパー ドラゴンタイプ
光を屈折させ羽毛で別の姿に変わる能力を使い人から身を隠し過ごすが、優しい心の持ち主の前にだけ姿を表す
サイズからして、この子はまだ子供ロト』
「アナタもこの子のお名前を知っているなら、この子が何と言っているのか分かりますか?」
『ポケモンなら勿論ロト』
「では」
「ちょちょ……待ってくれ王女様、その前に聞きたい事があんだけど」
「あっ!申し訳ありません
何故クレア達に内緒なのかについてですね、お話します」
「いやソレも気になるけど……コイツ……ゲットしてないよな?」
「ゲット?
会食の時のポットの姿をしたモンスターの様に、その赤いボールに入れる事ですか?」
「そうそう」
「入れてませんが」
「なら………よし」
初めてはナマケロになったが、今でもラティアスを手持ちにしたい欲は残っているのでニヤリと笑いながらカズマはモンスターボールを構える
『ラティ!? ティアァ!!』
チィン!!
「はう!?」
「カズマ!?」
『ピカカ!?』
するとラティアスはモンスターボールをエスパー技で操り、モンスターボールを2つボールが付いているカズマのカズマにぶつける
「ティティ…ティアラ……ダメです」
『ティア……』
アイリスの制止を受けて大人しくなる
「カズマ様、あの……大丈夫ですか?」
「あ……あれは……かなり痛いだろうな……」
『ピィカァチュ……』
下半身をモゾモゾさせて痛そうだなと、男だからこそ分かる痛みの共感をするサトシとピカチュウ
「な……何とか無事だ……あ……あ……危うくカズマちゃんになる所だったぜ…………流石は伝説のポケモン……えげつない攻撃してきやがる……」
『ピカピィチュ……』
アソコへのダメージは幻のポケモンの攻撃に関係なくキツイと誰にも聞こえないように突っ込むピカチュウであった
『どうやらラティアスはピカチュウみたいにモンスターボールが嫌いみたいロト』
「そっか……カズマ、ゲットはちょっと待ってあげて
それより王女様、何でラティアスが此所に……しかもクレアさん達に内緒にしてる理由って」
「この王都に4体のモンスターが侵入し暴れたという話はクレアとレインから聞いたと思いますが
実はその4体の内の1体が……ティアラなのです」
「ラティアスが?」
『ピカァピカ!?』
「嘘だろ……こんな可愛い顔して実は凶暴なのかラティアスって」
「そんな事ないよ、ラティアスは大人しいポケモンだから」
「その通りです! 暴れたのは2体だけで
ティアラと、この子に姿形が似た青色の体のモンスターは寧ろその2体からワタクシや王都を助けてくれたのです」
「何だって!?」
「どういう事か話してください王女様」
《2週間前 王都》
「レイン、お父様とお兄様はいつ頃帰って来ると?」
「魔王軍の前線基地近くの街に暫く滞在となりましたので、お帰りになられるのは数ヶ月後かと思われます」
「そう………」
「ご安心くださいアイリス様、国王様とジャスティス様がお留守の間もアイリス様は私やレインに部下達が必ず御守り致します」
「ありがとうクレア、でも暫くは寂しくなるわね」
「アイリス様…………そうだ、お久しぶりにダスティネス卿にお会いになられては如何でしょうか?」
「ララティーナと?」
「噂ではダスティネス卿の所属する冒険者のパーティーが魔王軍の幹部を撃退しているとの事ですし、楽しいお話をして戴けるやもしれません」
「そうね!
久しぶりにララティーナに会いたいわ、クレア!ララティーナにお手紙をお願いして良い?」
「勿論です♪
(あぁ~やはりアイリス様の笑顔は最高に癒される!!!!)」
(クレア様……また表情筋が揺るんでますよ)
カンカン!!! カンカン!!!
〈警報!! 警報!! 街に2体のモンスターが侵入し暴れています!!冒険者の皆様、数は2体のうえ魔王軍かは不明ですが油断せず対処に出向いてください!!!〉
嬉しそうにはしゃぐアイリスを見て釣られてクレアだけでなくレインも笑みを見せるが、街中から聞こえる凄まじい鐘の音とアナウンスが聴こえると彼女達の目付きが変わる
「チッ
また魔王軍か、国王様とジャスティス様の留守を狙う悪質な連中め
たった2体のモンスターなど直ぐ返り討ちにして来ます、アイリス様はこのままお部屋にてお待ちください、行くぞレイン」
「はい! 護衛の兵達をドアの前で待機させています、何か会ったら彼らに直ぐ知らせてくださいアイリス様」
「ええ、気をつけてクレア、レイン」
「「お任せを!」」
バタン
クレアとレインが出ていくと同時にアイリスはベッドに座り込む
「久しぶりだわララティーナに会えるの、どんな冒険者の仲間を見つけたのかしら」
トントン
「ん?」
バルコニーが見える窓をノックする音が聞こえアイリスがそちらを振り向くと
青い髪をした美形の青年が、アイリスよりも幼い赤い髪の小さな少女を抱え立っていた
「アナタ達何者ですか?まさか魔王軍の手先……あっ」
青年に抱えられている少女は全身に酷いケガをし呼吸も荒れており、青年も少女と同じくらいケガをし大量の血を流しているのが目に止まる
「彼女酷いケガをしていますが……それに貴方も、何かあったのですか?
待っててください直ぐにアークプリーストを呼んで」
警戒心よりも先にアイリスは目の前の男女を心配する気持ちが強まり、王宮内に在住するアークプリーストを呼びに行こうとした
その瞬間
『ガァァァァ!!!』
「モンスター!? 御二人とも早く中に避難を!!」
『ティオ!? ラァァティ!!!』
「えっ……モンスターの姿に!?」
青年の後ろから突如現れた三つ首のモンスターが凄まじい爆音と共に光線を三口全てから発射し、慌ててアイリスが青年と少女を中に避難させようとするが
突然青年の姿が人間から青と白の2色のボディと胸元に三角状の模様が浮かび鋭く尖った目付きのモンスターの姿に変わり面食らってしまう
『ラァティ!!』
「キャアァァ!!!」
抱える少女をアイリスが開けてくれた窓から室内に寝かせ、迫り来る光線に向かい青白いエネルギー波を放つ
2つの技がぶつかり合った事で爆発が起き、その爆音に思わずアイリスが悲鳴を上げてしまう
「どうしましたアイリス様!?」
「なっ!?もしやあれが街で暴れているモンスター達か!?」
「アイリス様!!今お助けのわぁあ!!!」
ドア前に待機していた兵達が部屋に入り、いつの間にか街の上空に移動し睨み合う2体のモンスターから王女を救出しようと室内に踏み込むも
『ギャオォォォ!!!』
突如現れた巨大な赤い翼を2つ生やしたモンスターが鋭利に尖った羽を飛ばし初め、それが命中し兵達全員が吹き飛ばされる
『ギャオォ!!』
「狙いはワタクシですね……言っておきますが王族は強いのですよ
(聖剣が無くとも1体ぐらいなら)」
『ギャオ』
「ん?」
だが目の前のモンスターはアイリスに見向きもせず、彼女の側で倒れている少女の方に手を伸ばす
「待ちなさい!! 彼女はケガをしているのよ!!」
『ギャオォ!!』
庇おうとするアイリスに対し燃えている牙を剥き出しにし噛み付こうとする
その時
『ティ……ティアラ!!』
『ギャオッ!?』
「待って!! そんなケガじゃ…えっ?」
目を覚ました少女がアイリスを庇う様に勢い良く前に飛び出しモンスターに体当たりし街の上空付近まで吹き飛ばす、そしてモンスターを追いかけようとするのを慌てて止めようとするアイリスの前で少女は姿を変える
隣に居るモンスターと色合いが赤で目付きが丸い事以外は同じ姿形のモンスター、ラティアスに
「あの子もモンスターだったの?」
『ティオ!? ラティオ、ティオスッ!!!』
『ティア……ラティア……ティアラ』
隣に並ぶラティアスに青色のモンスターは激しく怒鳴り付けるが、ラティアスは傷だらけの体を何とか動かし言い返す
「モンスターが4体………先程アナウンスされていた王都で暴れているモンスターは2体だから、仲間を呼んだという事……でも」
『ガアアッ!!!』
『ギャオォォォ!!』
三つ首のモンスターは闇のオーラを込めた光線を、赤い翼のモンスターは鋭利に尖った巨大な岩をラティアス達に放つ
『ティオッ!!!』
だが青色のモンスターの放つ光線により粉砕される
「どうやら仲間ではないようね」
『ティオ、ラティオ!!ティオス!』
『ティア……ラティア……』
再び青色のモンスターに強い勢いで怒鳴り付けられ、ラティアスは渋々王宮の方に向かいアイリスの元に
『ラティア…ティアァラティア、ティアスラティ』
「え……えっと……」
必死に何かを訴えてはいるがモンスターの言葉が分からず困惑してしまう
『ギャオォォォ!!!』
「流れ星?」
赤い翼のモンスターが凄まじい雄叫びを上げると空に大量の流れ星……いや流星群が出現、自然発生したとは思えない程に夥しい量の流星群がラティアスや青のモンスター達ではなく城下町の方に向かいドンドンと迫り来る
『ティア!?』
「あ……あんなに沢山……いけない!!このままでは城下町の人達が!!」
『ティアァ!!』
ラティアスが再び青色のモンスターの元に向かう
『ティアス! ラティア!!ラティ!!!』
『ティオ……ラティオ!』
街に迫り来る流星群を見上げた2体のモンスターの体が強く光始める
『『ラアァァァティ!!!!!』』
「流星群が……消滅した……凄い……ワタクシが今まで見てきたアークウィザードの魔法とは比べ物にならない力です」
2体の放つエネルギー波で夥しい数の流れ星が全て消滅
『『ハァ……ハァ……』』
「もしやアナタ達が?
ありがとうございます、おかげで街が救われ」
息が乱れるモンスター達にアイリスが礼を言おうとした時
『ガアアッ!!!』
『ティオォ!!!!』
『ティア!?』
三つ首のモンスターの放つ闇のエネルギー波が青色のモンスターにぶつかりバルコニーに落下させられる
『ガアァ!!』
「辞めて!!!」
「地獄の炎よ!焼き払え!!!インフェルノ!!」
『ガアァッ!?』
「アイリス様!!」
「ご無事ですか!?」
「レイン!! クレア!!」
倒れた青色のモンスターに寄り添うラティアスにも攻撃を仕掛けようとしたモンスターにレインの最上級魔法が放たれ直撃する
「申し訳ありませんアイリス様、今回のモンスターども中々に手強く王都に滞在する冒険者全員を集めている間に王宮近くまで接近されてしまい」
室内に入り説明するクレアの後ろには多数の冒険者達が控えており、中にはアイリスの見覚えのある顔も
「構いません、それよりもあの赤色と青色のモンスター達の」
「王女様に手は出させねえぞ!!」
「やってやるわよ!!」
三つ首と翼のモンスターだけでなく、冒険者達は気を失い掛けている青色のモンスターと彼を助けようとするラティアスにも武器を向ける
「お待ちなさい!! その赤と青色の子達はワタクシ達の味方です!」
「どういう事ですかアイリス様?」
「あの子達はあのモンスター達からワタクシを庇い、城下町に向かい落下した流星群を破壊してくれたの、だからクレア!レイン!あの子達に手を貸してあげて
攻撃はあのドラゴンの様なモンスター達にして!」
『ギャオォ!』
その時、宙に浮かぶ赤い翼のモンスターの背から大量の粉がラティアスと青色のモンスターに振り掛かる
「かしこまりました、全員アイリス様のお言葉が聞こえたな
あの青色と赤色のモンスターに………攻撃しろ!!!」
「えっ? クレア?」
「行くぞぉぉ!!」
「アイリス様を御守りしろ!!!」
まるで仇を見る様にラティアス達を睨み付けクレアが部下や冒険者に攻撃するよう指示を出し、兵や冒険者達も彼女と同じく鋭い目付きでラティアス達を睨み突撃する
「待って!!! その子達に攻撃しないで!!!」
「お下がりくださいませアイリス様、大丈夫です必ず敵は私達で打ち倒してみせます」
アイリスの目に、杖をラティアス達に向けるレインの姿が映る
「クレア…レイン……辞めて……辞めて!!!」
「全員掛かれ!!!」
「おおぉぉぉ!!!」
「なんで……なんで…ワタクシの話を聞いてくれないの」
【人間の……王女よ】
「えっ? だ……誰ですか?」
アイリスの脳内に男性の声が響き渡る
【わ……私だ……貴女が青色のモンスターと呼んだ……】
「貴方が!?」
【説明する時間は……ない……この2体だけでも……私が何とかする……貴女には……コ……コイツを……守って…欲しい】
『ティア!? ラティア!?』
「その子を?」
【頼む……か……必ず……私が迎えに行く……それまで】
『ガアァァ!!』
『ギャオォ!!』
『ティオ……ラティ……ラティオ
ラアァァァティ!!!!!!』
青色のモンスターは何とか立ち上がり体を宙に浮かべ、此方に攻撃を放とうとする2体のモンスターに向けて凄まじいスピードで突撃する。
「そうして暴れていた2体のモンスターと共に彼は何処かへと飛んで行き、この子だけがその場に残ってしまい
クレアがドトメを刺そうとするのをワタクシが何とか止め、その時に王宮内に鍵が壊れて中に入る事が出来ない空き部屋を思いだし
ティアラに灯りが付いていない空き部屋に逃げる様に伝え、何とか逃がしたのです」
「なる程な……そんで変身能力を使わせて、家族と離れ離れになったティアラって人間の少女として自身の側に匿ったって訳か……ポケモンだから声が出せないって設定付きの」
「はい……何故声が出せないのに、この子の現状をどうやって知る事が出来たのですかとクレアに突っ込まれた時は焦りましたが、初めて王女という立場をフル活用し乗りきりました」
(権力でゴリ押したのか……)
「ですが2週間経った今もクレアやレインに兵や冒険者達も……そして彼らから話を聞いた街の人々も、4体のモンスター……特にティアラと青色のモンスター達を危険なモンスターと認識していて……もしティアラの正体がバレたら」
(確かに……あの女騎士、今度会ったら叩き切るって言ってたもんな)
「でも王女様がラティアスとラティオスは無実だって言えば、皆分かってくれるんじゃ」
「ダメでした………どれだけこの子達は悪くないと説明しても敵……敵と、誰も全く耳を貸してくれません」
『王女様がアチシ達を暫く王宮に暮らさせて欲しいってお願いの時は、あのお姉さん達の様子は変じゃなかったロト
ラティアスとラティオスの事だけを聞き入れないのは確かに妙ロト、もしかしたら暴れたモンスターが何か技を使った可能性があるロト』
「そうだな……って!おいロトム、それにサトシも、お前らさっきからラティアスと何かもう1つ名前みたいなの言ってねえか?」
『ピカァカア!』
「ラティオスだよ、王女様が話してくれたラティアスに姿形が似ている青色のポケモンの事」
「ラティオス……そういやラティアスを図鑑で見た時に下の方にそんな名前があった様な」
『教えてあげるロト
ラティオス むげんポケモン エスパー ドラゴンタイプ
自身の見た物や考えた事を他者に見せる強力な念を使う事が出来る、心優しく争いを好まない性格のポケモン
王女様、青色の体のモンスターはこのポケモンだったロト?』
「間違いありません」
「本当だ色が違うだけでソックリだな……こんなに姿形が似て名前も一文字違いって事は、何か関係性のあるポケモンなのかこの2人?」
『ラティオスはラティアスのお兄さんロト』
「お兄様……だったのですか」
『ラティア……』
ロトム図鑑に映し出される伝説のポケモン<むげんポケモン>ラティオス、兄の姿を見てラティアスが悲しそうな表情になっていく
「あの……ロトム図鑑様」
『様はいらないロトよ、なんだロト王女様?』
「2週間前に何が合ったのかをティアラに聞いて頂けないでしょうか、何故王都に来たのか……あのモンスター達と何故戦っていたのかを知りたいのです」
「もしかして王女様、ロトムやカズマや俺達を王宮に呼んだのってラティアスから話を聞く為ですか?」
「ええ……本当は会食の場にティアラも連れて行きララティーナにこの事を内密で相談するつもりでしたが、ティアラのお兄様が何時来るか分からないので彼女には留守を任せました
どうララティーナに説明しようと考えて居た時に会食の場にモンスターマスターのサトシ様やナマケロ様と一緒に戦われたカズマ様、そしてモンスターのお言葉が分かるロトム図鑑様がいらっしゃったので……それで」
「なあ、ラティアスが王女様にテレパシーか何か使って話す事が出来たんなら、妹のラティアスもテレパシーが使えるんじゃねえのか?」
『確かにラティオスとラティアスは頭が凄く良いポケモンだからテレパシーで人間と会話出来るロトが、この子はまだ子供だからテレパシーが使えないロト』
「そうなのか……」
「……分かりました、ロトム、ラティアスの話を聞いて通訳してくれるか」
『任せるロト!
ラティアス、貴女とラティオスは何でこの街で2体のモンスターと戦ったロト?』
『ティアラ、ラティスアラ、ラティアラ』
『なるほどロト……可哀想ロト』
『ピィカァ…』
『ナマァ……』
ラティアスの話を聞き、ロトムとピカチュウだけでなくナマケロすら悲しい表情に変わっていく
「何って言ったんだ?」
『あのボーマンダとサザンドラは人間から隠れて過ごしていたアタシとお兄ちゃんを捕まえようとしたの』
「捕まえようと?」
『アタシ達は勿論逃げたけど、ボーマンダとサザンドラはずっと追い掛けてアタシ達に攻撃して来て……遂にアタシ気を失ったの
だから人間に変身して隠れる為にアタシを連れたお兄ちゃんが逃げた先がこの街なの、その中で一番心が美しくて優しい人間に……王女様に助けを求めようとしたらサザンドラとボーマンダが来て
後は王女様の言った通りロト』
「そうでしたか……あの時、ティアラのお兄様はワタクシに助けを求めに王宮に来てくれたのですね」
『ラティスティアラ……ティア……ラティア』
『アイリス王女様、ラティアスがアタシ達が来ちゃったせいで王女様の大事な街が壊れてゴメンって謝ってるロト』
「大丈夫よティアラ、建物は壊れても建て直せば良いんだから気にしないで
聞いて頂きありがとうございます」
『御礼なんか必要ないロト』
「じゃあ街で暴れたのはボーマンダとサザンドラって事か、ラティアスとラティオスを探す為に」
「だろうな
確かボーマンダとサザンドラって、俺がポケモン図鑑で見たドラゴンタイプのポケモンだよな?」
「うん、王女様が話してくれた赤い翼と3つ首のモンスターって特徴がボーマンダとサザンドラと一致してるから……でもだったらクレアさん達の様子をおかしくしたのは何の技だろうな……うーん」
「それに何でソイツらがラティアスとラティオスを捕まえようとしたんだ、まさかユキメノコみたいに自分と同じタイプのポケモンを仲間に集めて何か企んでるとかか?」
『それはあり得るロト』
「ボーマンダとサザンドラというのが、あのモンスター達の名前なのですか?」
『そうロト
ボーマンダ ドラゴンポケモン ひこう ドラゴンタイプ
怒ると我を忘れ辺り一面を破壊し尽くす、全ての物を切り裂く強靭な爪と牙が特徴
ササンドラ きょうぼうポケモン あく ドラゴンタイプ
動く物全てを食らい付くし破壊する、知性は高いがその知性の全てを破壊を考える事にしか使っていない
この2人はポケモンの中でも凶暴性が高いから、ユキメノコみたいにアチシ達をメカに入れた人間に恨みを持って暴れる仲間を集めてる可能性は高いロト』
「マジかよ……今度は何だ、美味い飯用意してくんなかったからキレたドラゴンの帝王とドラゴンの大王のコンビか」
『そこまではアチシも分からないロトよ』
「あのロトム図鑑様」
『だから様はいらないロト、アチシはロトムかロトム図鑑と呼んで欲しいロト』
「ではロトム、先程のモンスター達の姿をもう一度見せてくれませんか」
『構わないロト』
「うーん………」
「どうしたんですか王女様?」
「いえ……夜でしたし、ティアラ達の方に意識が行っていたのでワタクシの記憶に誤りがあっただけかもしれませんが
ティアラ達と戦っていたモンスター達と、この2匹……何処か違っている気がして」
「えっ?」
「それよりも王女様、そろそろあの女騎士かレインさんが戻って来るんじゃねえか
ラティアスを人間の姿にした方が良いッスよ」
「そうですね、ティアラお願い」
『ティア』
頷くと直ぐにラティアスはティアラとしての姿に変わる
「改めて、ティアラからお話を聞いてくれてありがとうございました」
「コレからどうするんですか?」
「ティアラのお兄様が戻られるまでワタクシが御守りします、必ず迎えに来ると言われていましたから
今日はありがとうございました、是非ゆっくりして休まれてください
カズマ様、クレアかレインが来たら貴方様のお部屋を案内させますね」
「待った」
「何を待つのでしょうか?」
「俺らを呼んだ訳、ラティアスの話を聞きたいだけじゃないんでしょ」
「………本当にそれだけです」
「いいや、ダクネスの屋敷から俺達を連れ出した時に俺らの冒険談を聞きたいって言ってた王女様のあの顔が演技や嘘なら、アカデミー賞もんだぜ」
「アカデミィショウ?」
「………ともかく、俺らの冒険談聞いて遊び相手になって欲しいんでしょ
ラティアスの事だけじゃなく自分の事にも時間使った方が良いッスよ王女様」
「……良いのですか……本当に?」
「ああ、お前も良いだろサトシ」
「勿論♪
王女様だって遊びたいだろうし」
「………ありがとうございます♪
ではティアラ、今日は一緒に御二人の冒険談を聞きましょう」
『♪♪♪』
「そんじゃ王女様」
「今この城にお父様やお兄様はいらっしゃりません、多少の事なら誰も咎める者は居ませんので
こうして私とティアラの前ではララティーナ……御二人はダクネスと呼ばれて居ましたね、彼女に話し掛ける様に接してください」
「分かった……そんじゃアイリスとティアラに話す前に、おいピカチュウ」
『ピカカ、ピカ?』
「悪いが何か飲み物持って来てくんねえか?」
『ピカピカ?』
「なら兵達に頼んでみます」
「待てアイリス
王女様に飲み物を運ぶ優しいモンスターって事で、厨房に行ったらケチャップ飲まして貰えるかもしんないぞ」
『ピカヵッピ♪』
「こんな王宮で使われてるケチャップだ、アクセルの街で売られてんのとは比べ物になんないぐらい美味いかもな」
『ピィカァァ♪』
「じゃあピカチュウ、俺も手伝うから一緒に行こうぜ」
「お前も待て、ピカチュウは1人で大丈夫だよな
1人で行った方がお利口様って事で明日もケチャップ飲ましてくれるかもな」
『ピカピ! ピカピィカァチュ!!』
「分かった、じゃあ頼むぞピカチュウ」
『ピカカッピ!!』
任せてと胸を叩きながらドアを開けて王宮の厨房に向かうピカチュウを、カズマは悪い笑みを浮かべながら見送る
「(アイツが単純で助かったぜ)
そんじゃあ冒険話の前に、ダクネスの名前が出てきた事だしアイツの話でもしようか」
《数十分後》
コンコン
「失礼致しますアイリス様、手続きを全て済ませて来ました
コレでカズマ殿とサトシ殿は正式な客人となりましたので気兼ねなくこの城に滞在して貰える事……」
手続きの完了を報告しに来たクレアが固まってしまう
「そしてダクネスは全裸のまま俺の後ろに回り込み、顔や耳までも真っ赤にしタオルを握り締め恥ずかしそうに」
「は!は!恥ずかしそうに、ララティーナはどうしたのですか!?」
「早く教えてよカズマ!!」
『!!!』
『ダクネスの新しいデータ欲しいロト、早く教えてロト!』
「貴様あぁぁぁ!!!!!アイリス様に何を教え込んでいる!!!!
しかも幼いティアラと貴様の仲間の少年にまで!!!!ぶった切られたいのかこの愚か者!!!!!」
「ちょちょ!?待った待った!?く…苦し…苦しいって
これはアイリスが是非話してくれって」
「なぁ!? 貴様の様な只の冒険者が王女様であるアイリス様を呼び捨てだと!?
この無礼者!!!!ブッ殺してやる!!!!」
「(王女様の前だってのに、ダクネスと同じでキレたら口悪いなコイツ……)
つうか頼むからあんま騒ぐなって」
「待ってクレア!!
カズマ様達にはワタクシがララティーナと同じ様に呼び捨てで構わないと言ったのです、だから剣を下ろして」
「そ……そうなのですか……」
「なあカズマ、それで話の続きは?」
「待て!? 君の様な少年が聞くような話ではない!!!
アイリス様も聞いてはなりません!!!それよりもティアラはもう寝る時間です、早く寝かせてアイリス様もお休みになりましょう!!」
「大丈夫、ティアラもワタクシもまだまだ眠くないわ」
『♪♪♪』
「うっ……ならカズマ殿、せめて別の話をお願いします」
「しゃあねえな、ほんじゃ俺とダクネスが勝負して負けた方がとんでもない目にあう罰ゲームを掛けた結果、俺が勝った話を」
「とんでもない目にあう罰ゲーム!?」
「是非是非!是非その話を!!」
「いけませんアイリス様!!!!聞いてはなりません!!!!
この男ダメな奴です!!!!!」
「おい、会ってまだ半日も経ってない人間に対して失礼だな
つうか騒ぐなって言っただろ、あんま騒ぐとSSPが来んだろうが!!」
「SSP……? 何だそれは何かの略称か『ピカカ!!!!ピィカァァァ!!!!』ん?確かアレはサトシ殿のモンスター」
「ほら帰って来たぞ、クソめんどくさいSSP(サトシ、セキュリティー、ポケモン)が」
『ピカカ!!!ピカピ!!ピィカァチュ!!!!』
「おうおうピカチュウさんよ!!お目当てのケチャップを堪能してたのに大急ぎで帰って来るとはご苦労なこって!!」
『ピッイ!! ピカァ!』
口の回りに付いているケチャップを大急ぎで拭き、電気を発しながらカズマを睨み付ける
「おっと待った、こんな所で十万ボルトなんかブッ放したら色々大変な事になんじゃねえか」
『ピィ!? ピィィイ……』
王女の前、王宮の中、王女の側近の前で強力な電流を放出すれば自分は凶暴なモンスターとして認識され
それを友人にしているサトシの立場も危うくなるぞと、会食の際に言われた事を再度ゲスな笑みで言ってくる男をタダ睨み付ける事しか出来ずピカチュウは悔しがる
(何だろうか……このネズミの様なモンスターが何を言っているか私には分からないが、何故だかシンパシーを感じるのは)
「まあ安心しな、ちゃんとオブラートには包んでやっからよ」
「いえカズマ様、純度100%のお話をお願いします!」
「アイリス様!?」
「なあカズマ、カズマ「はいカズマだよ」どんな罰ゲームやったか早く教えて気になるよ!」
『アチシのデータ予想では』
『ピカピ!? ピカカ!?』
《数時間後》
「スヤスヤ」
『スヤスヤ』
深夜まで続いたカズマの話に対し、怒ったり怒ったり怒ったり怒ったり怒ったり怒ったり怒ったりを繰り返し続け遂に限界を迎えたクレアとピカチュウはベッドに背もたれしながら眠りについていた
「まあ! ワタクシと同姓同名で同年代の方がポケモンを扱うチャンピオンの御一人なのですか?」
「ああ! 凄く強くて立派なチャンピオンになったんだぜ俺の仲間のアイリスは」
流石にカズマもアチラ系の話のネタが尽きたので真面目な話を挟みつつ、サトシの冒険話と交互に話す事となり
全く眠そうな気配を見せず、アイリスはティアラと共に年相応の少女らしく楽しそうに2人の話を興味津々に聞いており、いつの間にかモンスターではなくポケモンと呼ぶ程に熱中し
更にすっかり打ち解けたのか、はたまたカズマに釣られたからか、ダクネスと同じ対応で構わないと言われても彼女に敬語を使っていたサトシもアイリスに対し何時もの砕けた口調で話し掛けていた
「ポケモンを仲間にし人間の仲間と一緒に冒険の旅に出るなんて……何と心踊る出来事なのかしら♪
カズマ様が話してくれた学校というのも非常に興味深いです、ワタクシと同年代の子達が同じ建物で同じ服を着て勉学に励むだなんて楽しそうです♪
やはり外のお話しは色々刺激的で楽しいですね♪」
「(まあ俺らの話どっちも異世界の話だから確かに刺激的だわな、学校とか俺からすれば普通の事だけど)
というかそんなに気に入ったんなら流石に王女様が外に出て冒険の旅は難しいが、学校ならこの街に作ればいいんじゃないか?」
「そうだよ、王女様なら学校を直ぐに作れるだろうし、そこに入学すれば沢山友達が出来るしやってみなよアイリス」
『もし学校を作ったらアチシが授業風景を撮影してあげるロト』
「…………ダメですよ」
「ん?」
「何でダメなんだ?」
悲し気な表情でアイリスが呟いたと同時に
カンカン!!! カンカン!!!
『!? !? !?』
『何ロト?この鐘の音?』
<魔王軍襲撃警報!! 魔王軍襲撃警報!!
騎士団は直ぐに出陣を、冒険者の皆様はギルド前に至急集まってください!!
繰り返します>
凄まじい鐘の音が王宮内に鳴り響き、それに続き魔王軍の襲撃を知らせるアナウンスの声が響き渡り
そんな大音量の中ピカチュウは今も寝ていたが、隣のクレアは直ぐに目を覚まし体を起こす
「奴らまた来たか、行って参りますアイリス様」
「気をつけてクレア………お兄様じゃなかったわねティアラ」
『…………』
もしやラティオスが来たかと思ったが、違った為に落ち込むラティアスの頭を優しく撫でアイリスはカズマとサトシの方を見る
「こんな状況ですから、ワタクシだけがのんびりと学業に勤しむ事など出来ません
それに今はティアラをお兄様と再会させるのがワタクシの目的ですから、さぁもう一度お話を聞かせてくれませんか♪」
「う……うん!」
「おう
(そういや忘れてた、この世界は魔王をやらのせいで色々ヤバいんだったな)」
《1時間後》
<魔王軍の撃退に成功しました!!ご協力戴いた冒険者の皆様には感謝致します、臨時報酬がありますので参加された冒険者の方々は冒険者ギルドに>
『早いロト!? もう解決したロトか?』
「クレアや兵達は皆優秀ですので、王都の冒険者達も高レベルの方々が多いですし」
「ふーん……(でもこの国の首都だってのに夜間に襲撃を何回も掛けられるとか、戦況的に結構押されてんのか?
ったく……カンナギ含めた日本のチート持ち連中は何やってんだしっかりしろよな、まあ此所は王宮だし警備も万全だろうから安全………いやボーマンダとサザンドラに侵入されてたわ……大丈夫なんだろうか)」
思わず不安がるカズマが顔に出してしまい、それを見たアイリスが落ち着いた表情で口を開く
「今日はもう遅いですしお開きにしましょうか、楽しい時間をありがとうございました♪
さあティアラ、パジャマに着替えましょう」
『!!』
コクりと頷き返す
「今夜はワタクシのワガママにお付き合いして戴きありがとうございました、早朝にレインにアクセルまで送って貰う様に伝えますので今夜はユックリ休まれてください」
「なぁアイリス……ラティアスとラティオスの事は大丈夫なのか?
何なら俺もカズマも手伝おうか?」
「大丈夫、此所は常に魔王軍に襲撃される危険地帯ですから御二人をコレ以上巻き込む訳にはいきません
ワタクシが必ず見つけてみせますしクレア達に見つからない様に致します
もしまたあの2体のポケモンがティアラを狙って王都に来たらワタクシが追い払います、王族は強いですから♪」
「………分かった」
「そうか……(俺らに気を使って強がり言ってんのか、こんな可愛い女の子に気を使われるなんて……情けねえな俺
って言っても流石に魔王軍の軍隊とドンパチやりたくねえし、世界最強のトレーナーのサトシはともかく俺が居たってな……ここはお言葉に甘えて帰ろう)」
「カズマ様……サトシ様……いつかまた王都に遊びに来てください、今度はララティーナや他の皆様と一緒に
ワタクシやティアラに、また素敵なお話を聞かせてください♪」
王女でなはなく12歳の少女らしい明るい笑顔で伝える
「オッケー!任しといて!
俺の冒険話まだまだ沢山あるから楽しみに待っててくれ」
『アイリス、今度はこの国の歴史を教えて欲しいロト、アチシは色んなデータを知りたいロト』
「ええ♪
その時はまた色々なポケモンを見せてください」
『任せるロト』
「俺も沢山ネタ仕入れておくよ、そうだ!俺らがポケモン探してる時にもしラティオスを見付けたら、何とか此所に連れて来て再会させてやっからな」
『♪♪♪』
「グハッ!!」
「ストップ!ストップですティアラ!」
「大丈夫だよ、コレぐらいの子に急にのしかかられるぐらい
昔、弟によくされたから平気だ」
『♪♪♪』
「ティアラ、もうすっかりカズマに懐いたね」
「ならこのままゲット……はダメだな」
「………ふふ、カズマ様はまるでワタクシのお兄様みたいですね♪
ワタクシが幼い時、そうやって抱っこを要求したら優しく笑いながら抱っこしてくれて」
「今……なんて言った?」
「えっ?優しく笑いながら抱っこして」
「その前……俺をまるでの後」
「えっと………ワタクシのお兄様みたい」
「もう一度」
「ワタクシのお兄様みたい?」
「砕けた感じで……もう一度」
「………お兄ちゃんみたい」
その時カズマの中で何かが爆発した。
そして時は次の日の早朝に進む
『♪♪♪』
「お早うございます………お兄ちゃん」
「ああ、お早うアイリス♪」
あの後この城に暫く残ると言い出したカズマは、王宮の豪華な朝食をベッドに座り食べながら、シーツを変えるメイドをガン見するという悪い方の貴族らしい振舞いを行い
カズマの隣に座るティアラの頭を撫で、ドアの陰に体を半分隠し恥ずかしそうに細い声でお兄ちゃんと呼ぶアイリスに爽やかな笑みを見せていた。
ラティアスの人間形態はカノンでもポケスペのでもないです