《王宮内のパーティー会場》
貴族や冒険者達が豪華な料理やワインに舌を唸らせ、昨夜の戦の勝利に浮かれ多数の冒険談や戦果の話題で盛り上がるパーティー会場にて
隅っこに寄り、会場内の誰とも目線を会わさない様に1人チビチビと飯を摘まむ男が居た
「…………モグモグ」
男の頭にはタンコブができ目も腫れて青色となっており、1人で飯を摘まむ姿も相まって哀愁を漂わせていた
そんな男の元に純白のドレス姿の美女が美しい髪を靡かせながら近付く、そして男性の前に立ち止まり優雅に口を開き
「カズマったら何時もアタシの事バカ扱いしてるけど、本当は貴方の方がバカなんじゃないの」
毒を吐く
「違うんだ!!最初は大人しくするつもりだったんだ、でも周りが俺をアイリスだと思って褒め称える内に自分は王族で何をしても許される存在なんだと錯覚してしまったんだよ……だから……つい羽目を外して」
「やっぱりバカじゃないの!!
イブ良く見ておきなさいアレがバカなロリニートよ、貴女はあんな男に引っ掛ちゃダメよ絶対」
『アゥアゥ!』
「うっ………うぅぅ……」
何時もなら駄女神が舐めた口叩くんじゃねえと言い返す所だが、実際彼女の言っている通りバカな事をしてロリコン扱いされても仕方がないと自覚しておりカズマは涙目で水の女神と未来の水の神からの軽蔑の眼差しを受け止めていた
彼がこんな惨めな扱いを受けているのは、体が元に戻った際に裸で風呂場に居る事に取り乱したアイリスを、共に入浴していたダクネスとクレアが不信に思い訳を聞き、ネックレスによってカズマとアイリスの体が入れ替わった事が明らかになり
「うぅ………アイリス…ティアラ……」
パーティーの女性メンバーやロトム以外のポケモン達から凄まじい雷とお仕置きをくらったのも堪えるが、王宮に入って直ぐにティアラを迎えに来たアイリスに目を逸らされ、クレアから今晩はアイリスとティアラに会話どころか近付くのも禁止にされてしまった事が一番堪えていた
「いやはや今回の戦は楽勝でしたな、特にダスティネス様の率いるパーティーが獅子奮迅の活躍をしたのが大きいですなぁ」
「年甲斐もなくハシャギましたよ、5人共まだお若いというのに騎士団や兵達が苦戦する魔王軍を相手に戦場で大立ち回りする場面を見ては興奮するなという方が無理な話だ」
「あの5人は全員上級職、しかも少年の方は200年前に1人しかなった事がないモンスターマスターという珍しいクラスの様で、何でも小さいながら魔王軍が怯えて逃げ出す程の力を持っているにも関わらず人間に従順なシモベのモンスターを召喚し使役するとあ
あの5人ならば親玉の魔王すらも倒せてしまうのではなかろうか」
「ありえますね、ダスティネス様とアークプリーストの女性にアークウィザードの少女2人にモンスターマスターの少年、後は王国が誇る最強の魔剣の勇者ミツルギ殿と御二人の仲間
この8人が組めば世界は救われますよ」
カズマの近くに居る貴族達が、パーティーメンバーに対する感想で盛り上がっている
しかし話題の中のパーティーメンバーにはカズマは含まれて居ない
(わかってるよ……どうせ俺は最弱職だ……コボルトに殺された惨めな男だよ)
「所で何ですかあの惨めな男は?」
「確か先週、噂の義賊を捕まえると大口を叩いていた冒険者では」
「あぁ居ましたな、結局捕まえられなかったようですね」
「良くもまあ会場に居られますなぁ、自分なら恥ずかしくて王宮どころか街にも居られませんよ」
「聞けばダスティネス様のパーティーのメンバーらしいが、荷物持ちか何かでしょうな」
(言いたい放題言いやがって!!
チキショー!!)
パーティー会場にて自分の仲間達は貴族や兵達、そして冒険者達に囲まれ称えられているのが目に入る
特に春風男ことミツルギがパーティー開始の挨拶に現れた時の参加者の女性達の歓声に面食らってしまう
仲間や知り合いが大勢に囲まれ食事するなか、1人寂しくモクモクと肉を頬張ると
「ちょっと!!アタシ達も参加させなさいよ!!」
「なんだ?」
城門の方にて、パーティーの受付を行うおかっぱ頭でメガネのギルド職員の女性と冒険者らしき女性が何やら騒ぎを起こしており、何事かと窓からカズマが覗き見る
「ですから冒険者カードをお出し下さい、今夜は先の魔王軍の戦に参加された冒険者の方々のみ参加可能なので貴女やお連れの皆様が戦に参加したかの確認の為にカードを」
「そうやってパーティーの招待客を選出するなんて生意気ね、だからアタシはおかっぱ頭のメガネ女が嫌いなのよ!!!」
「おかっぱ頭でメガネの何が悪いんですか!!!」
「そのお高く止まった態度よ!!!」
「なんだ? 酔っ払いか?」
すると騒ぐ女性の後ろでオロオロと狼狽えていた男性と、厚手のコートを纏う人物が女性を下がらせる
「スミマセン彼女酔っ払ってまして「アタシはお酒飲んでムググ」実は私達カードを失くしてしまい」
『だから今日だけはカードニャしで入らせて欲しいのニャ』
「申し訳ありませんが冒険者カードの確認が出来ないなら参加は出来ません、ですのでお引き取りを
今日はもうギルドはお休みなので明日以降に再発行にいらして下さい」
「はい分かりました、仕方ない引き上げよう」
「ちょっと待ちなさい!このまま、おかっぱメガネに言いくるめられたまま何て嫌よ!!」
『あのお姉さんはマトリじゃニャース!!』
『ソォォナ『マネッ!』……』
「そんじゃあ失礼します!!」
「すまない」
マスクとサングラスをした青髪の男性が受付に軽く頭を下げ、女性を連れ帰る2人の後を追う
「なんだったのよアレ………」
「受付も大変だな」
「どうすんのよ、冒険者カードってのが無いと折角のごちそうが食べられないじゃない」
『先週はニャくても入れたのにニャ』
「すまない、私が昼に侵入したので警戒されたかもしれん」
「いや今日のパーティーは戦いに参加した奴らしか最初から入る事を許されてないみたいだし、オーティスのせいじゃねえさ気にすんな」
先程騒いでいた団体、ロケット団とオーティスは王宮から離れ城下町の裏通りに腰を下ろす
『当初の作戦ではパーティーの最中にニャア達がジャリボーイの側に近付いてから、コジロウとマネネが義賊の振りをして警備の奴らを誘い出しピカチュウゲットでチュウの手筈だったニャ
しかし会場に入れニャいニャら作成変更ニャ』
「どうすんのよ?」
『調べによればジャリボーイ達はその戦いで大活躍したみたいニャ、だから今晩は奴ら王宮でお泊まりするのニャ
ニャので寝静まった深夜に警備の奴らをコジロウとマネネが誘い出し、ニャア達が別ルートで侵入しピカチュウゲットでチュウニャ』
「「オッケー!」」
『ソォォナンス!!!』
『マンネマッ!!』
「じゃあ私はその間に妹を」
「ちょっと待ちなさい、どうせならアンタの妹を取り返すのも手伝ってやんわよ」
「な……何故だ?」
「アンタ1人だったら捕まるかもしんないわよ、相手は王女なんだから警備も凄いだろうし」
「まあ任せな、こちとら侵入のエキスパートだ大船に乗ったつもりでいてくれ」
『おニャじ世界出身の侵入ニャかまニャだしニャ、ここまで来たニャら一蓮托生ニャ』
『ソォォナンス!!!』
「よーしピカチュウとオーティスの妹のついでに、ごちそうも戴くわよ」
「へいへい」
『マンネッマネッ!!』
「す……すまない
(本当は目的を達成後コイツらを囮にして逃げようと考えていたが、ロケット団だがコイツらは極悪人ではないようだ……コイツらも逃がすとするか
だがトレーナーからピカチュウを奪わせる訳にはいかん、隙を見てピカチュウを逃がさねば
待っていてくれ………ラティアス)」
『???』
「どうしたのティアラ?
あっ! ダメよナマケロ、ちゃんと食べるなら座らないと」
『ナンマッ!』
テーブルの上で寝ながら食事する事を注意され、注意するのが他の者ならばそのまま食べるがアイリスに対しては素直に言う事を聞いて彼女の隣の椅子に座り食べ始めるナマケロ
『!!!
?
♪♪♪』
「ん? あっ………お兄様」
共に食事を行っていたティアラが会場隅の方に向かい笑いながら手を振っており、何事かとアイリスがそちらを見ると寂しそうに1人で肉を頬張るカズマの姿が
先は彼に対し無視をするぐらい怒っていたが、流石に時間が経過し頭が冷えたので今のアイリスは怒りの感情よりも明日には彼らがアクセルに帰る寂しい気持ちが勝っていた
「あっ……アイリス……」
その視線に気付き互いに目と目が合う
(良かった、もう怒ってないみたいだな……ただ
出来る事なら最後に見る顔は、そんな悲しそうな顔じゃなくてゲームをやったり俺やサトシの話を聞いてる時の明るい笑顔が良かったな)
彼女の隣に居るティアラに手を振り替えし、悲しそうな顔をするアイリスよりも数週間の間ずっと見てきた彼女の楽しそうな笑顔を見て別れたいなと考えていると
「なんだ貴様、まだ居たのか」
最低限の敬語すら最早使わなくなったクレアが目の前に立つ
「今回の戦で多大なる活躍をしたダスティネス卿とサトシ殿や他の皆様方は王宮内にて休まれても構わんが、貴様は宿に行けアイリス様とティアラと同じ屋根の下に暮らさせてたまるか」
「随分辛辣だな……そりゃ俺が殆ど悪いけどな俺ら1週間同じ屋根の下で暮らした仲じゃないか、最後ぐらい優しくしろよな」
「誤解を招く言い方は辞めろ!!!
それに優しくしたではないか、本当なら貴様のした事
首が飛ぶ案件なんだ、それを不問にしたんだ感謝しろ!!」
「ついでにアイリスと一緒に風呂に入れた事も感謝しな」
「あぁ感謝してるさ、だから不問にって貴様何を言わせる!!!ブッた切るぞ!!!!」
「お前が勝手に自白したんだろうが!!!
というかあのネックレスどうしたんだよ?
さっさと処分しとけよアレは神器って呼ばれる品物なんだからな」
「処分など出来るか、アレはジャスティス様に送られた献上品なんだ
それにロトム殿が言うには体が入れ替わるのは3時間だ、それぐらいなら入れ替わっても危険は無い」
「ま……まぁな」
「それにネックレスよりも先ずは貴様の始末が先だ」
「こここ……殺しは……だだだダメだろ!!」
「安心しろ殺しはしない、ただ王都からアクセルに返すだけだ
サトシ殿もアイリス様の部屋に不法侵入こそしたが実力は確か、彼や他のメンバーだけなら残っても構いませんと聞いたが貴様が一緒でないと嫌だと断られてしまった」
「ふっ、流石は俺の弟だ」
「お前の脳内家族のな
良いか、その中にアイリス様とティアラを混ぜるなよ!!!
とにかく明日にはアクセルに帰れ、今夜は最後の夜だからなゆっくりパーティーを楽しんでいくといい
楽しめるほど戦果をあげたのならな」
「う……うぅ……チキショー!!追い出したいなら堂々と宿に帰れって言えよ!!
分かったよ!宿に帰りゃ良いんだろ!!」
「おい待て」
「ふ……ふん!今更止めたって……まあどうしてもって言うなら」
「貴様の着替えが部屋に残っているから忘れず着ていけ、置いていくなら処分させてもらう」
「お心遣いどうも!!!!」
着替えを取りに部屋に向かう
そんな彼の姿を見つめる人物が
「お兄様………」
『???』
「ティアラ、お前の大好きなケーキ持ってきたよ」
『ピッカァチュ』
『♪♪♪』
「おっとと! いきなり抱き付いたらビックリするじゃんか、はいユックリ食べなきゃダメだぞ」
『パクパク』
『ティアラはイチゴたっぷりのチョコケーキを食べる時が一番幸せロト、データ更新ロト』
「ハハハ♪本当だな
あれ? どうしたのアイリス、パーティー楽しくないの?」
「お兄様が……宿に帰ったの」
「カズマが?」
『キョロキョロ
確かに先まで居た場所に居ないロト』
「クレアと何か話していたから恐らくネックレスの件の事を注意されたか、明日にはアクセルに帰れと言われ機嫌が悪くなったのかも……」
「そっか……分かった、俺とピカチュウが励ましてくる」
『ピッカァ!?』
「お願い、後ワタクシはもう怒ってないって伝えてちょうだい」
「オッケー任しといて♪」
『ピカピ、ピッカァピッカァチュ』
「ほっとけないよ、それに俺も会場から早く出たいしさ」
「どうかしたんですか?」
「ちょっと嫌な事があってね、ほらピカチュウ
カズマにご飯持って帰ってあげようぜロトムも運ぶの手伝ってくれ」
『分かったロト』
『ピィカァ……ピカチュ!』
「ナマケロ」
『ナンマァ♪』
呼ばれて満面の笑顔を見せる
「貴方もお兄様を励ましてあげて」
『………………』
露骨に嫌そうな顔を見せる
「お願い」
『…………ナマァ!!』
分かったと頷き、会場内の食べ物をタッパーに詰めるサトシ達の手伝いに向かう
《城下町》
「悔しい!! 何だよ何だよ!!あんな言い方しなくても良いじゃねえかよ!!
そりゃ俺が悪いよ!!100%悪いけど最後ぐらい嫌味言わなくても良いじゃんかよ!!ちくしょうが!!」
宿へと向かう道中にて、泣きながら喚くカズマを街の人間達は気味悪がり避けていた
約1名を除いて
「おや? またお会いしましたね」
「あぁん? あっ……アンタ確か俺とぶつかった人」
「どうも♪」
ウィズの店前でぶつかり掛かり、そしてアクア達が王都に来る前に再会した金髪の商人がニコやかな笑みを浮かばせお辞儀する
「まだ王都に居らしたのですね、あの後直ぐに当店に来てくれると思いヒスイの村に帰りお待ちになっていたんですよ」
「アンタ時間が出来たら来てくださいって言ってたじゃねえか」
「イヤですねぇアレは本音の建前ですよ、商売人なら直ぐに来て欲しいと願うじゃないですか」
「あっそ……悪いけど今の気分じゃ遠出する気にはならないから、まだまだ先になるぜアンタの店行くの」
「嫌な宣言を堂々としてくれますね、うーん……では貴方と一緒に居た少年の品物を売り物にしたお詫び品をお渡ししますね、コレで当店の商品がどの様な物かを知って戴き興味を持ってもらいましょう
どうぞ」
「紐? 何だよコレ?」
「当店で昔から売られている古参のアイテムでしてね、ソレを強く握れば握った人物が安住の地と思う場所に移動出来ます」
「へーテレポートって事か、そりゃあ便利だな」
「でしょ、強そうなモンスターが目の前に現れた時、または敵に囲まれた時に使用して逃走を図る事が可能と中々に使用頻度が高い効果ですからね
しかも握る前に縄を持つ人に触れていれば、その人達も一緒にテレポート出来ます」
「普通にスゲェじゃねえか!!
いや待て……俺の知り合いの魔道具店に売られてる商品もメリットだけなら凄いが、それを覆すデメリットがあるが………もしかして」
「……………」
「露骨に目を反らすな!
デメリットを言え」
「安住の地というのは人各々ですからね
例えば強敵を前にし体力の限界を迎え逃走する為に縄を握る人物がレベル上げが好きな人ならば、沢山経験値をくれる凶悪モンスターの巣窟に飛ばされるので……状況が悪化します」
「…………(サトシとダクネスには使わせないでおこう)」
「後は風呂場が安住の地ならば……あっ、この場合の風呂場とは異性の方です、もしそこに飛ばされでもしたら警察沙汰に」
「貰う!! いえありがたく戴きます!!!」
「おやおや……自分の所の商品を使って悪事は辞めてくださいね」
「分かってるよやらねえよ
(俺にとっての安住の地はアイリスとティアラの居る王宮だ、コレがあれば何時でも何処に居ても2人に会いに行けるじゃねえか!!!)
あんがとな、ぶつかった人」
「喜んでいただき誠に嬉しいのですが、自分そんな名ではありませんよ」
「しゃあねえだろ俺アンタの名前知らないんだから」
「………………あっ
そう言えば名乗ってませんでしたね!!アッハハハ!!てっきり名乗っていた気分ですよ
申し遅れました、自分ヒスイの村イチョウ商店の店員
テルと申します………今はですが」
「今は?」
「実は訳あって名を変えているのですよ」
「名前を変えてる?
ははは、まさか指名手配犯のお尋ね者だったり」
「…………………なぜ分かりました」
「えっ…………ま……まじで」
「…………プッ!!
アッハハハ!!!!素晴らしいリアクションですね!!!
ジョークですよジョーク♪」
「んだよ驚かせやがって、意味深な間と急に真顔になんなよ!!」
「何やら貴方が泣きながら喚いていたので気分転換にどうかなと」
「………お心遣いどうも、まあ有難く使わせて貰うよ」
「因みに1度使えば使えなくなる消耗品ですので、使用する際にはご注意を」
「1回だけなのかよ!?
よしアンタの店に行ったら絶対コレ箱買いするから置いといてくれ」
「残念ながら、その商品の材料に使われている木と綿が中々手に入りにくい1品でして1年に2個しか作れないんですよ」
「じゃあ残りの1つ買わしてくれ!!」
「既に売っちゃいました♪」
「チキショー!!!!」
「ですが御安心を紐以外にも沢山魅力的な商品を揃えていますので、是非お買い物に来てください♪」
「気が向いたらな……まあ大事に使うよ」
「今度こそ店でお会いしましょう♪」
大きく手を振るテルに軽く手を振り彼と別れ、自分達が泊まる宿の部屋に入りベッドに寝転ぶ
「はぁ……いつでもアイリスとティアラに会いに行ける最高のアイテムゲットしたと思ったのにぬか喜びさせやがって、やっぱアイツ胡散臭いな……イケメンだし」
トントン
「カズマ、起きてる?」
「サトシ? お前何で此処に居んだよ?」
「会場抜け出して来たんだ、ご飯持って来たから一緒に食べよう」
「お……おう、今開けるぞ」
ドアを開くとタッパーを沢山持つサトシとピカチュウにロトム図鑑、そして
『………ケッ』
「よ……ようナマケロ」
舌打ちするナマケロを部屋に招き入れる。
「もしかして俺が出ていくの見てたのか?」
「俺じゃなくてアイリスがね」
「………まだ怒ってたか?」
「もう怒ってないよ、それを知らせて欲しいって頼まれちゃった」
「そうか……良かった
けど」
『ナンマァ!! ナマナマ!!ナンマケッ!!!』
「コイツはまだ怒ってるんだな」
『ピィカァピカ、ピカチュウ』
「僕もまだ怒ってるってさ」
「ちゃんと反省してるよ、悪いな伝言に飯まで運ばせて
俺1人で食っとくからお前ら王宮に戻れよ」
「言ったでしょ俺達と一緒に食べようって」
「俺に気使わなくて良い、早く行ってこい」
「いらない、俺アソコ居心地悪いから」
「何でだよ? お前もセレナ達と一緒に凄腕冒険者だって祭られてたじゃねえか」
「だって………貴族の人達ピカチュウ達の事を俺のシモベみたいな言い方したから」
「………そうなのか?」
『ピィカァ』
『この世界ではアチシ達ポケモン……モンスターに対してまだまだ偏見があるみたいロト』
「まあ仕方ねえわな、此所はモンスターと敵対してる世界だ、お前がポケモン好きなのは分かるが異世界特有の価値観をそう簡単に変えるのは難しいんだから、そう目くじら立てんなよ」
「それだけじゃない……カズマみたいな最弱職がリーダーで大変ですねとか、口先だけの男よりもサクラギって人の仲間になりなさいってカズマの事バカにされて………ムカつくから」
「……………ふっ
あんがとよ
よし、じゃあ一緒に食うか」
「うん♪」
優しい声色でありがとうと伝え、共に宿屋のテーブルに乗せた飯を食べる
「大体クレアの奴は俺に対して厳しすぎんだよ」
『ピィカァ、ピカピィピカカ』
『カズマがアイリスに変な知識を教えるから自業自得って言ってるロト』
「それを踏まえてもだ!!
つうか、どの道大人になったら知る事なんだ今の内に教えて何が悪い!!」
『ピィカァ………』
『ナンマァ!!』
「だよな相棒!」
ドン引きするピカチュウと違い、その件に関してはナマケロは完全同意し強く頷く
「確かに、一緒にお風呂に入ったぐらいで怒らなくても」
「いや………やった自分が言うのも何だが、その件に関しては俺が叱られるのは当然だと思うぞ」
「そうなの?
クレアさんやダクネスは知り合いなんだし別に良いんじゃ?」
「おいピカチュウ……お前本当このままで良いのか、何時かやるかもしんねえぞサトシ
女湯に入る事がどういう事か分かっててやる俺も大概だが、分かってないでやる奴の方がタチ悪いぞ」
『ナンマ!』
『ピッ………………ピカピ』
「ピカチュウ?」
苦い顔を浮かばせ見てくる相棒にサトシが首を傾げる
『流石に見ず知らずの人と一緒にお風呂は衛生上良くないロトが
互いに良く知る間柄なら衛生上安心して入れるロト』
「ロトムお前もか………いや待てよ、確かお前は性別が無いんだったな」
『そうロト、それがどうしたロト?』
「いや良い、性別の概念がないんならお前は知らなくても仕方ないか
よし分かったサトシ、俺が簡単に説明してやる」
「何を?」
「女湯に入るのがダメな理由だ
良いよな」
『ピッ……ピカ』
渋々許可を下ろすSSP(サトシ セキュリティー ポケモン)ピカチュウ
「良いか先ずナマケロが男、ピカチュウが女とするだろ」
「うんうん」
「そんで」
「何の話してんの貴方達……」
部屋の中から突如女性の声が聞こえ、カズマとサトシが慌て声のする方を見る
「「クリス!?」」
『ピカッカ!』
「久しぶりだねサトシ、ピカチュウ」
『協力者クリス、お久しぶりロト』
「協力者は一々付けなくて良いんだよ、久しぶりだねロトム」
「お前何時のまに入ってきた……」
「ついさっきだよ、何か真剣な顔で女湯に入るのがダメな理由について話そうとしてたけど……どういう経緯でそんな話に」
「説明長くなるから察しろ、そんで何しに来た?
例の件ならエリス様から頼まれたからやるが今日は断るぞ、パーティー会場には凄腕の冒険者が集まってんだ無理無理」
「例の件って?」
「こっちの事だ気にすんな
取りあえず情報提供だけしといてやる、お前のお探しの物はアイリスが持ってる、どうやら献上品の中に合ったみたいだぜ……はい終了、さっきの話の続きすんぞサトシ
良いか女の子のピカチュウが」
「そっか……なら急いだ方が良いね、サトシ達にも手伝って貰おうかな」
「無理無理、こいつ悪い事すんの嫌がるぞ絶対
女の子のピカチュウが風呂に入ってる時に」
「ねぇ一体なんの事?
カズマの話も気になるけど、そっちも気になって話に集中出来ないよ」
「話すとややこしくなるから我慢しろ、風呂に入ってる時に男のナマケロが割り込むとするだろ」
「良いの?
王女様の身に危険が迫ってるんだよ」
「そうした………はぁ?
どういう事だ!!!」
『ナマナマ!!! ナンマケッ!?』
「アイリスの身に危険って……ねぇ一体なんの事なの教えてよ!!」
『ピカッカ!! ピィカァチュ!!』
『皆落ち着くロト、クリスが困惑してるロト』
「う……うんビックリした、まさかこんなに反応するとは
実はね……ん?どうしたの?」
「なんだ?またメロエッタからのテレパシーか?」
「メロエッタ!?」
『ピカピッカ!?』
「クリスのポケモンだってよ、ソイツとテレパシーでやり取りしてんだ」
「皆……話す前に場所を変えよう」
「何でだ?」
「この部屋が見張られてるよ、しかも反応からして人間じゃない奴に」
「えっ?」
「見張られてるだぁ?
俺の敵感知スキルに反応ねえぞ」
「敵感知スキルは本人に対する敵意以外には反応しないんだ、あたしのにも反応しないって事は
つまり監視者はあたしやカズマを完全スルーして、サトシだけを監視してるって事だね」
「俺?」
『メロエッタの超能力なら居場所や人数も分かる筈ロト、何人……いや何体いるロト?』
「……うん………うん…1体だって、場所は宿屋の前の住宅内」
「誰か分からないけど、狙いが俺なら倒してくるよ」
「待って、今この町で騒ぎが起きたら王宮の方の警備が強まって侵入しづらくなる」
「王宮に侵入?
それがカズマが言った例の件なの」
「ま……まぁそうだな……」
「監視者が何者か分からないけど、今から話す事を第3者に聞かれる訳にはいかないんだ
見付からない様に他の場所に行こう」
『でもどうするロト、移動したのをその監視者に見付かったら追い掛けられるロトよ』
「うぅん……そうなんだよね……」
「いや良い方法がある」
「本当?」
「どんな方法?」
ポケットから先程テルに貰った紐を取り出す
「「紐?」」
「説明は後だ、お前ら俺の体の何処でも良いから掴んでくれ」
「う……うん」
「分かった」
『ピッ』
『了解ロト』
『ナマッ』
全員がカズマの体や服やズボンを掴み、それを確認し終え紐を強く握ると
宿屋の室内からカズマ達の姿が消える
『ギギギ!? ギギギ? ギギギ?』
《王宮の城門前》
「やっぱ俺の安住の地はここだったか」
「ここ王宮!? 何で俺達王宮に居るの?」
「この紐……あっ失くなってやがる、本当に消耗品なのか
さっきの紐は強く握った奴の安住の地にテレポート出来るアイテムだ、ほらお前の知り合いのチャンピオンの女性に似てるって言ってた商人居ただろ」
「あぁカズマとぶつかった人」
「その商人さんに、さっき会った時にお試し商品って事でくれたんだよ」
「へー凄いアイテムくれたんだね、さっきの紐なんだが神秘的な力を感じたから浄められた材料から作られてるよ」
「そうなのか?あぁでも確かに1年に2個しか作れないぐらい貴重な材料使ってるみたいだしな……おっと今はそれよりも、取りあえずここじゃ目立つから裏に回るぞ」
門番達に見付からない内に城門から離れ王宮の裏手に回る
「此処なら大丈夫だ、そんでクリス……サトシに言うって事はバラしても良いんだなお前のやってる事」
「良いよ、あんまり他の人には知られたくなかったけど手を貸してくれる人数を増やす為だし仕方ないよ
実はねサトシ、今王都で話題になってる義賊ってあたしの事なんだ」
「えぇぇぇ!!!
ムググ!」
『ピカァァァ!!!
ムググ!』
「騒ぐな!」
『ナンマッ!』
「『コクリ』」
『だからカズマあれから義賊を捕まえるって言ってなかったロトね、知り合いのクリスだから見逃す為に』
「正確に言えば俺に義賊活動を手伝わせない条件で黙ってたんだよ、そんでコイツは今お前らも見た神器ってのを集めてるらしいんだ」
「アイリスの持ってる体が入れ替わるネックレスだね」
「ソレのせいで王女様が危ないんだよ」
「おい待てよ確かに体は入れ替わるが3時間だろ?
そんな大それた事は起きないんじゃ」
「あの神器はね、体が入れ替わってる最中に片方が死んだら2度と元に戻る事はないんだ」
「……………はぁ?」
「ほ……本当に……?」
『ピィカァ……』
動揺するカズマとサトシ達に、クリスは鋭い眼差しを見せる
「本当だよ……あの神器はただ体を入れ換えるだけじゃない、永遠の命を手に入れる事が可能なんだ
不治の病や寿命で自分の命に限界を迎えても若くて健康的な体の人間と入れ替わり、片方を殺せば永遠に生き続ける事が出来るんだから」
「想像よりヤベェ品物じゃねえか」
「でしょ
それであたしの調査でも名前までは特定出来なかったけど、とある貴族があの神器を手に入れた事は明らかになってるんだ
でもさっきカズマ言ってたよね、あの神器は王宮に献上された品物だって」
「「………あっ」」
『ナンマァ……』
機械のロトム図鑑以外の額から冷たい汗が流れ始め、それを確認したクリスが追い討ちを掛ける
「今その神器は誰が持っているんだった?
もし若くて健康的で社会的地位のある人物が持っていたら、間違いなく神器を献上した奴は体を奪い………王女様を殺すだろうね」
夜風の音しか聞こえぬ程の沈黙が辺りを支配する
「おいお前ら、今から会場に行ってアイリスに訳を話してネックレスを捨てさせに行くぞ!!!!!」
『ナマ!!』
「うん!!」
『ピカ!!』
『了解ロト!!』
「ダメだよ!」
「何がダメなんだ!! 早く捨てさせねえとアイリスが!!」
「もし神器の能力を知れば、王族や貴族達は血眼になってネックレスの神器を奪い合うよ
そうなれば戦争だ」
「アイリスはそんな事しないよ」
『ピッカァチュ!!』
「彼女はそうでも、彼女のお父さんの国王やお兄さんの王子はどうか分からないよ
王族に献上された品物を処分するなら、王女様は2人に許可を貰わないといけない……その時に神器の秘密を聞いて素直に処分すると思う」
「うっ………」
「あたし的には不老不死なんて絶対なりたくないけど、普通の人なら大金を払ってでも叶えたい願いだからね
間違いなく争いが起きるよ」
クリスの言葉に誰も反論しない……いや出来なかった、ソレだけ彼女の言葉には重みがある
「この話を君達にしたのは、君達なら神器の秘密を知っても決して悪用しないって思ったからだよ」
「そいつは………どうも
(風呂場覗いたなんて言えねえ!!!!)」
『クリス、どうすれば良いロト?
このままじゃアイリスが危ないロト』
「皆は王女様の遊び相手何だよね?」
『ロト? それがどうしたロト?』
月夜をバックにし、クリスはまるでいたずらっ子の様な笑みを浮かばせ
「今晩、王女様の元に遊びに行かない♪」
《王宮前》
時刻は0時を過ぎ、城下町の明かりが殆ど消えた深夜にて唯一明かりを放つ王宮前に4つの影が出現する
「ねえ何その仮面?
無茶苦茶イカすぐらいカッコ良いのに何故かムカつく気配を感じるんだけど」
影の1つ、鮮やかな銀色の髪を靡かせ口元を黒い布で覆ったクリスが
2つめの影、怪しげな仮面を被り自分と同じ衣装を完璧に着こなすカズマに話を振る
「アクセルの町にある、とある魔道具店の大人気商品だ
正体を隠す為に付けたのさ」
「へぇ………今度買いに行こうかな」
『ピィカァ……』
『アレはカッコ良いのかロト?』
『…………ナマ』
3つ目の影、2人と同じ衣装を着て
下半身にナマケロ、上半身はロトム図鑑、バンダナを頭に巻き大きめのマスクで口元を隠したピカチュウが顔となり肩車して立つポケモン達がバニルから貰った仮面をカッコ良いと表すクリスの感性に疑問を感じてしまう
「えー中々にイカしてると思うんだけどな、サトコはどう思う?」
そして4つ目の影
ピンクのショートヘアーに花柄の黄色のリボンを装着し、1人だけ紫の全身タイツ姿の人物に仮面の感想を問うが
「………………」
肝心の人物はクリスの問いを無視し両手で顔を覆い隠しブルブル体を震わせていた
「どうしたサトコ?」
「な……何で俺だけ……」
「俺じゃないだろ」
「ア……アタシだけ……こんな格好なの」
「正体を隠す為だ」
「じゃあカズマも」
「名前を出すなって言ったよな」
「あ……兄上様も」
「俺の歳を考えてくれ」
「そうだね一気に犯罪臭が増すよ」
『ピカピカ』
『ナマナマ』
「うっせぇ!!」
『それにしてもサトコ良く似合ってるロト』
「違和感が全くないね、ねえもしかしてだけどサトコ、元からそういう衣装着る趣味とかあったり?」
「ないよ!!! ねえお願いだから俺……アタシも皆と同じ格好にさせて!!」
説明不要とは思うがサトコとはサトシであり、彼はカツラを被り衣装も1人だけ全く違うピチピチタイツ姿で女装させられていた
「俺とお前は王宮じゃ有名人だから念入りにバレないようにしないとダメだろうが、もし警備の人間に見られたら逃走出来ても刑務所行きが約束されるぞ
それに言ったよなコレはお前への勉強だって
質問だ、お前今の自分の姿をどう思う?」
「恥ずかしいよ……」
「そうソレが羞恥だ、どうやら羞恥の感情はちゃんとあるみたいだな安心したぞ」
「この恥ずかしいって思うのが何の勉強になるんだよ?」
「もう1回質問だ、今のお前の姿をセレナ達に見せたいか?」
「はぁ!?
嫌だよ!! 絶対嫌!!!」
「何でだ?」
「何でって!? みっともなくて恥ずかしい姿なんだよ!!」
「それだ」
「えっ?」
「お前が深夜にアイリスの部屋に入った時、アイツは今のお前と同じ気持ちだったんだ」
「そうなの?」
「あぁ、アイリスなら寝顔も可愛いだろうが
普通はどんな顔してるかなんて自分じゃ分からない寝顔を誰かに見られたくないんだ」
「でも隣にティアラが居たよ?」
「ティアラとアイリスは一緒に寝てるだろ、つまり寝る前から室内に居るのを認識してるんだ
窓開けて侵入したお前とは違う」
「ねえ時々出てくるティアラって誰の事なの、というか窓開けて侵入って何!?
まさか王女様にサトコ夜這い掛けに行ったの!?」
「ヨバイ?」
「オヤビン悪いが一旦黙っててくれ話が脱線する
とにかくだ、女の部屋に許可なく入ったり女湯に男が入ったり覗くと女達は今のお前と同じぐらい恥ずかしいって感じるんだ
他人にそんな思いさせんのは良いか悪いかどっちだ?」
「そりゃあ悪いよ、あれ?
じゃあ王宮に居た時、ナマケロがアイリスの居る女湯を覗いたのってダメな事なんじゃ?」
「そうだ」
『ナマァァ!?』
『ロトト!? 急に動かないでロト!!』
『ピィカァ! ピカァピ!!』
まさか自分に飛び火してくるとは思っていなかったので、動揺しまくり上に乗せるロトム図鑑とピカチュウの体勢が崩れ掛ける
「えっ………ナマケロ……王女様の入浴覗いてたの」
『……………ナマナマ』
『アイリスには内緒だってロト』
「そうか、だからアイリスの体のカズ……兄上様と一緒にお風呂に入ったダクネスとクレアさんが怒って「とにかくお前はその格好で羞恥を知れ!!良いな!!」えぇ!?」
「…………………悪用したんだ」
「反省してます!」
クリスからの軽蔑の眼差しに屈して謝罪する
そんな彼らの前に
『エッタァ』
オレンジ色のターバンを巻いたメロエッタが華麗に地面に着地する
「本当にメロエッタだ」
『ピカッピ!』
「よお久しぶりだな」
『エッタァ』
「………やっぱ可愛いくねぇ」
手を上げるカズマを完全スルーしクリスの元に歩み寄る
「お帰りメロエッタ、例のサトコの監視者はどうなった?」
『エッタァメッロ』
「逃げたか……姿は?」
『メロエッタ』
「エルレイド? ポケモンの名前?」
「うん、もしかして昼に見たあのエルレイドなのかな?」
『ちょっと待つロトよ……合ったロト
この色違いのエルレイドで合ってるロト?』
『エッタァ!』
『そうだってロト』
「何であの時のエルレイドが俺の事を監視してたんだ?」
『ピィカァ?』
『それは分からないロト、後サトコ俺は禁止ロトよ』
「うぅ………」
『それにしても幻のポケモンのメロエッタが味方に居るのは心強いロト』
「えっ!? コイツ幻のポケモンなのか?」
『そうロト
メロエッタ せんりつポケモン ステップフォルム ノーマル かくとうタイプ
特殊な発声法で歌うメロディは聞いた者の感情を自在に操る事が出来る』
「へー歌声で感情を自在に操るか、そりゃ確かに凄い力だな
所でステップフォルムって何だ?」
『メロエッタはステップフォルムと「さあそろそろ準備も終えたし、行くよ皆」ロト?』
何故かクリスが慌ててロトムの説明を終わらせ、皆を王宮の裏側に向かわせる
今回の彼らの目的は王宮に侵入しアイリスのネックレスを奪う事、賊の真似事を嫌がっていたカズマとサトシ達も2週間ともに過ごしたアイリスの命が掛かっているなら不法侵入に窃盗の犯罪行為を行う事に躊躇いもなく決意し
聳え立つ王宮を見上げる
「それじゃあ最終確認だよ、正体がバレない様にサトコはポケモンを召喚しない事
チビ君達が技を使う時は無言でね、サトコや下っ端君は間違えて技名を言っちゃダメだよ」
「へいオヤビン」
「はい親分」
『了解ロト親方』
「呼び方の統一しようよ、って言ってもオヤビンも親分も親方も嫌だけど」
「じゃあ下っ端呼びは辞めろ」
『ピィカッ、ピカピカ』
『ナンマッ!』
『アチシ達もチビ扱いは嫌ロト』
「俺もサトコ呼び嫌なんだけど」
「「『俺は禁止』」」
『ピカピィカ』
『ナマナァマ』
「………………アタシも変えてよ!」
『メッロ?』
「あの子は男の子なの」
『メッ!?』
「でも名前で呼ぶわけには行かないでしょ?」
「そもそもだ何でお前が仕切ってんだ?
千里眼スキルがある分、俺の方がオヤビンだろ?」
「いやいや、王都で義賊として名を上げてきたのはあたし何だから必然的にあたしがリーダーでしょ」
「……良しなら此処は公平に勝負で決めようぜ」
「良いよ、何の勝負だい?」
「分かったポケモンバトルだ、クリスはメロエッタを手持ちにしてるんだし」
『メンロ、メロエッタ!』
ヤル気満々に蹴りの構えを取るメロエッタにカズマが口を開く
「いや、バトル何かしたら騒ぎを聞き付けて警備の奴らにも見つかっちまうし時間も掛かるわ体力だって使うだろ
手短に騒がず体力も使わないで恨みっこ無しの公平な勝負といや、じゃんけんだ」
「じゃんけんかい? 良いよその勝負乗った」
「よしサトコもやれ
ハンデだ、コイツが勝ってもお前がオヤビンで構わないぜ」
「へーハンデだなんて余裕だね」
「ねえ俺……アタシは親分になれないの?」
「お前がリーダーになったら俺らに擬音で指示してややこしくなる、授業を受けさせてやってんだ俺の言う事を聞け」
「別に女装の授業なんか受けたくないよ!」
「お兄ちゃんに口答えするんじゃありません!
ホラ時間勿体ないから、さっさとヤルぞ」
「良いよ、そんじゃあ」
「「「じゃんけん! ポン!」」」
《数分後》
「敵感知は任せたよメロエッタ」
『エッタァ!』
「じゃあたし達は城内に侵入するよ、行くよ助手君、サトコ、相棒君」
「「『はい、お頭』」」」
『ピカァ』
『ナンマァ』
じゃんけんには自信があったカズマだったが、サトコには勝てたがクリスには負けてしまい無事お頭クリスの助手君となり
チビ君呼びから相棒君呼びに変わったポケモントリオと、最早サトコ呼びを受け入れたサトコちゃん「ちゃんはいらない!!」と共に城壁に向かう
「所でお頭、メロエッタは置いていくの?」
「彼女には敵感知に集中して貰うからね、情報はあたしの頭に届くから直ぐに皆にも知らせるね
そんで助手君、城壁を登って侵入するって言ったけど流石に高過ぎじゃない?
コレをよじ登るのはキツいよ」
「お任せあれ
ンソゲキィ」
先にフックが付いたロープを装着させた矢を狙撃スキルで放ち、城壁の縁にフックを掛ける
「コレで登れんぜ」
「良くやったよ助手君」
「まぁ任してくださいな、ほんじゃ行きますか銀髪盗賊団の初めての仕事に」
「うん!
銀髪盗賊団?」
「名前合った方が良いでしょ、お頭の特徴を付けときやしたぜ」
「君あんなに嫌がってたのに案外ノリノリだね……まぁでもチーム名があるのは良いね、銀髪盗賊団か……フフフ…シンプルだけど気に入ったよ助手君」
ロープを使い銀髪盗賊団は城壁を登り初め、王宮の中庭に侵入成功
「今警備の人達は全員右の方に集まってるって、左から行くよ」
「なら暗視スキルを持ってる俺が先導する、お前ら付いてこい」
「了解だよ」
「オッケー」
『任せるロト』
中庭を足音を立てずに移動して行くと、先導するカズマが突然足を止める
「待った……馬車が倒れてんのか?」
中庭の通り道に積み荷を大量に積んだ馬車が壁に持たれかかっており、その壁は中庭から王宮への入り口の扉であり、このままでは馬車が邪魔で扉を開ける事は出来ない
「こんのぉ……重てぇ!」
「どうやらこの馬車が扉を覆い隠す様に倒れたから、警備の人達が右側に集中してるって事かな」
『どうするロト、こっちから王宮の中に入るにはこの扉からじゃないと』
「任せて
んんん……よいしょっ!!」
「「おぉ……」」
『ピカピピッカ♪』
カズマが持ち上げようとしても全くピクリとしなかった馬車をサトコは持ち上げ、別の場所に移動させる
「ありがとねサトコ」
「どう致しまして」
城内へ忍び込むと、中は月の光以外に明かりが無い暗闇が支配していた
普通ならば真っ暗で広い王宮内を移動するのは困難であるが
『王宮の中のナビゲーションならお任せロト、此処からアイリスの部屋がある最上階に行くには先ず2つ先の部屋を左に行くロト』
「オッケー」
王宮内の見取り図を完璧に記憶しているロトムの案内と、暗視スキルを持つカズマの先導により一同は苦もなく先に進んで行く
「待って、誰か居るって」
メロエッタからの伝言を伝え全員足を止める
「ういぃぃ!!」
「おい飲みすぎだぜぇお前……ヒックゥ」
「パーティーの参加者の冒険者だね、アタシ見覚えある」
「酔っ払って会場から此処まで来たって訳だね」
『困ったロト、アソコの階段を登らないと最上階に行けないロト』
「任せな……頼むぜ相棒」
『ナンマァ
ふわぁぁ~』
階段付近に座る冒険者2人にナマケロが<あくび>を向け
「「ぐがぁあ~ぐがぁあ~ぐがぁあ~」」
見事眠りに付く
「ナイス」
『ナンマァ』
互いに親指を上げた手を見せ合い、階段を登り始める
だが
キョロキョロ キョロキョロ キョロキョロ
「あの警備の人は手強いね……さっきから辺り一面をキチンと見渡してるよ、というか顔怖い……」
「あぁ見覚えある、俺が夜中に王宮内を潜伏使って散歩してても直ぐに見つけて何時も早く寝ろって口煩く説教して来る真面目男だ
ちっ、さっきの冒険者は酔っ払いだから眠ってても警備の奴らは不信がらないが
アイツが眠ってんの警備の奴らに見付かったら、誰かに眠らされたって騒がれちまう」
数階登った先に王宮の兵が警備として立っており、左右だけでなく階段もチラチラと確認しており全く身動きが出来ない
『ピッ? ピカカ、ピィカァチュピ?』
「お頭、兄上、相棒がその人ってタラコ唇の人って聞いてるよ」
「あぁタラコ唇の男だな、それがどうした?」
『ピカ、ピッカァピ! ピカァチュウ』
「なら僕に任せてだって、何か知り合いの兵隊さんみたい」
「お……おい」
衣装から飛び出し、階段を登り兵の元に
「誰だ!!
ん? あぁ~ピカチュウ君じゃないか♪」
『ピッピカ♪』
「もしかして私に会いに来てくれたのかい?」
『ピッカァ♪』
「そうかいそうかい♪」
『ピッピカ、ピカ……ピカチュウ』
困った表情で自分のお腹を擦り始める
「あぁお腹空いたんだね、待っててね何時もの持って来てあげるよ」
『ピッピカ♪
ピカピ、ピッカァ』
兵が立ち去るのを確認し、ピカチュウが下に居る皆に上がるように指示を出す
「サンキュー相棒」
「あの兵隊さん可愛い生き物好きなんだね……」
「人は見掛けによらねえな……」
全員が階段を登りきると、先程の兵がケチャップ入りの器を持って帰って来る
「はいどうぞ」
『ちゃぁぁ♪ピィカァチュ♪』
「食べ過ぎはダメだよ」
兵にバイバイと手を降り階段を登る
『ゴクゴク
ピカァ♪』
「王宮で暮らしてる時に、ああやって良くおねだりしてケチャップを貰ってたんだってさ」
「自分の可愛さ利用して何やってんだお前……」
「ねぇ君達」
階段を登っていると、突然クリスが立ち止まる
「正式にあたしと悪徳貴族専門の盗賊団を作ってみない?」
「「御断りします」」
『盗賊は嫌ロト』
『ナンマァ』
『ゴクゴク
ピィカァ♪』
「残念……」
予想以上に誘ったメンバーが優秀なので、正式に盗賊団を作りたくなってしまうクリスであった。
階段を登りきり、再び暗闇が支配する場所をカズマの先導で進んで行く
その時
「義賊だぁ!!!」
「「「ビクッ!?」」」
王宮内に男性の叫び声が響き渡り、全員立ち止まる
「嘘……もしかして見付かった?」
「マズイ! 皆こっちに避難しよう! 此処に沢山人が来るって!」
「くそぉ! 何でバレたんだ!?」
メロエッタに空き部屋を調べてもらい、其所に一同は避難する事に
「例の義賊だ!!!」
「何処ですか!?」
「外だ!! 外を見ろ!!」
「外だ?」
「あれ……あたし達じゃないの?」
『まさか模倣犯ロト?』
「あっ!この部屋窓があるよ、外を見てみ………ふぇ?」
空き部屋から兵達の会話に聞き耳を立てると、彼らが義賊と呼ぶ人物は現在外に居るらしく
どういう事だと窓から外を見ると、何故かサトコが間の抜けた声を出して固まってしまう
『ピカピ?』
「どうしたサトコ?」
ピカチュウとカズマも窓から外を見ると
「レディース&ジェントルマン!!!
王都を騒がす噂の義賊がやって来たぞ!!!」
『マンネッマンネッ!!』
沢山のネオンが巻き付くニャースの顔をした気球に乗った白のシルクハットとマント姿の男性とマネネが、王宮内に向けスピーカー越しに名乗りをあげていた
「おいサトコ……アレだよな」
「うん……アレだね」
『ピィカァ……ピカ』
「なになに? あのあたしの模倣犯のこと知ってるの?」
「撃ち落とせ!!」
「ファイヤーボール!!」
「カースド・ライトニング!!」
王宮内に居る魔法使い達が気球に向かい魔法を放つ
「マネネ! ものまね」
『マァァネェェ!!!』
「うわぁぁぁ!!!」
「あいつリフレクトを使えるのか!?」
マネネが敬礼すると、向かって来た数多くの魔法が跳ね返り王宮に命中する
「お~い~どうしたんだぁ?
もう終わりかよ~とっつぁん」
「くそぉ!!! 義賊め人をおちょくりおって!!!」
「うぅ……せっかく上手く隠れて行動出来てたのに、というかあたしに変なイメージ付くじゃない!!!
何なのあの模倣犯!?」
「俺たちも援軍に行くぞ!」
「おう!」
「部屋の外の連中居なくなったみたいだな……お頭、今の内に行きましょうぜ!
今ならアイツが警備の目を引き寄せてくれてる!」
「待って!! あたしが今まで築き上げたクールでミステリアスの義賊像をぶち壊されたんだよ!!!
文句言いに行かせて!!」
「それは後にしましょう、ささ行きましょうよお頭」
『ピィカァチュ』
『ナンマケッ!』
偽義賊が注意を引いている間にアイリスの元に向かおうと部屋を出ようとするが
「放て!!」
「狙撃!!」
「狙撃!!」
「あぁ待ってくれ とっつぁん!!
こっち!こっちを狙ってくれ!!気球は狙わないで」
バシュン
「あぁぁぁ!?」
『マンネッェェ!?』
気球に弓矢が命中し破裂してしまい勢い良く落下して行く
『ロトォォ!? お頭、皆も早く出るロト!!あの気球がこっちに』
ドォォン!!!
時すでに遅し、見事に気球がクリス達の隠れる部屋に落下してしまう
「あぁ痛たた……大丈夫かマネネ?」
『マンネッ』
「ふぅ…良かった」
「ちょっと貴方!!」
「ん? わぁぁ!?」
マネネの無事を確認しホッと息を吐く男性の肩をクリスは激しく揺らす
「あたしの目指してたミステリアスでクールな義賊像を良くも壊してくれたねぇ!!!!」
「お頭落ち着いて!」
「どうどう!」
「あの部屋だ!!」
「覚悟しろ義賊!!」
「ほらお頭、警備の奴ら来ましたぜ逃げましょう!!」
「分かってるよ!!
貴方も来なさい!!」
「は! はい!!!」
『マネマネッ!!』
気球がぶつかり割れた窓から、全員は急いで外に出る。
「皆様お下がりくださいませ!!」
「何を言うか、噂の義賊がどんな奴か見せるんだ!!」
「いけません!追い詰められば何をするか分からないのですよ、お下がりください」
王宮内に義賊が現れた事で、貴族連中が噂の義賊がどんな輩かを一目見ようと兵達を押し退けようとしているなど王宮内が騒がしくなる中
とある貴族の顔色が段々と青くなっていく
(マズイ……もしも義賊がアイリスの持つネックレスを盗みでもすればワシのハーレム計画が……こうなったら!)
「おやアルダープ殿、どちらへ?」
「帰るんだ!!
賊が居る様な場所に居られるか!!!」
《バルコニー》
「ハァ…ハァ……何とか撒けたぜ」
壁越しに移動しながらメロエッタの指示通り警備や冒険者達の居ないルートを通り、一同はパーティー会場内近くのバルコニーまで何とか辿り着く
『アイリスの居る場所まで離れちゃったロト』
「本当………余計な事してくれたね偽物さん」
ギロリと偽義賊をクリスが睨み付ける
「なな何を言う、私は本物の義賊だ」
「義賊はあたしだよ!!」
「げぇ!? まさか本物!?」
『マンネマッ!?』
「あれ? 何やってんのコジロウ?」
『ニャんで王宮のニャかに居るニャ?』
『ソォォナンス』
するとパーティー会場だった部屋からムサシとニャースとソーナンス
そして
「まさか気球を撃ち落とされたのか?」
オーティスが偽義賊ことコジロウの元に
「そうなんだよ……しかも運が悪い事に本物の義賊が来てるんだよ」
「マジで?」
(あん? この青髪野郎……何か見覚えが……)
「アナタ達、一体何なのよ」
カズマがオーティスを見ながら必死に何かを思い出す隣で、クリスがロケット団に対し何なのよと強く言い放った瞬間
何処からともなく音楽が
《背景BGM サン&ムーンの時のBGM》
「何なのよアナタ達と言われたら」
「聞かせてあげよう、我らが名を」
「欺世盗名・開門揖盗
儚きこの世を盗みし一輪の悪の華、ムサシ!」
「孤狼盗難・鼠窃狗盗
切なきこの世に盗みに参った悪の使徒、コジロウ!」
『家ニャい安全・防犯活動
この小説を見てるミンニャ、寝る前の戸締りを忘れちゃダメだニャと教えてあげる悪の星、ニャースでニャース!』
「「ロケット団参上!!」」
『ニャのニャ!』
『ソォォナンス!!!』
『マンネッマネッ!!』
「ロケット団……?
あっ!お笑い芸人の!」
「「『違う!!!』」」
『ソォォナンス!!!』
「お笑い芸人じゃないなら何なのさ結局!」
『アチシ達の世界の悪者ロト』
「えっ!? 悪者!?
(そうだ思い出しました、確か昨日カズマさんが話してくれたサトシさんのピカチュウさんを狙う悪者!!)」
『ニャア?
ジャリボーイの所のロトムの声がするのニャ』
「そいつだ
服の下にナマケロ、真ん中はポケモン図鑑に入っているロトム、そして顔のピカチュウが各々肩車をしている」
『ピカッ!?』
『ナマッ!?』
「ピカチュウですって!?」
「本当だ!良く見たら顔が黄色だぞ!!」
『ソォォナンス!!』
『通りで会場内や王宮の中を探しても居ニャい筈ニャ、ピカチュウ、オミャー何時のまに義賊にニャたのニャ?』
『ピィィィ!』
義賊の格好をしている時に自分の名を出すなと口の前でバツマークを作りロケット団に見せつける
「ナマケロが居るって事は此方の茶髪は、もしかしてジャージボーイかしら?
王宮の中でジャリボーイとアンタだけは探しても居なかったもの」
「…………さ……さぁ……誰の事やら」
「って事は………」
ロケット団の視線が、何故か先程から自分達と顔を会わせない様に反対の方を振り向いているピンク色の髪でピチピチタイツ姿の人物に向けられる
「アタシ……知りません……アナタ達の事なんて」
精一杯の裏声で誤魔化す
「おっ! メチャクチャ強そうなポケモントレーナーが居るぞ!!」
「えぇどこどこ!? バトルしたい!!!
あっ!?」
「やっぱりジャリボーイね、というか………アンタその格好」
「確かに良く着物やらドレス着て女装してたが、流石に……ソレは辞めといた方が良いぞ」
「自分の意思で着たんじゃない!!!」
「おい……いま良く着物やドレス着てたって……えっ……マジで………お前そういう趣味あったのかサトコ」
「うわぁぁぁ!!!!!!!!」
「バハバカ! 叫ぶな!」
「バルコニーの方から声がするぞ!!」
「義賊め!! 逃がさん!!」
サトコの叫び声で居場所を特定されてしまい、警備の人間達が一斉にバルコニーに向かう
「ほら見ろ!!!」
「ちょっと……これヤバくない……警備の連中此処に来るんじゃないの!!」
『ソォォナンス!!!』
『ジャリボーイ!! オミャーのせいニャア!!!』
「お前達がからかうからだろぉぉ!!!!」
『ピィカァァチュ!!!』
「マズイよ……数え切れないぐらいの人数が一斉に此方に来てるって!!
こうなったら仕方ない……今日は諦めて退散しよう!!」
「ダメだ!!俺は明日にはアクセルに返されんだぞ!!」
「でも捕まったらどうするの!?」
「それでもやらなきゃ……アイリスが……俺の可愛い妹が危ないだろうが!!!」
「妹……?
アイリスとは王女の名だな?」
「あぁ? そうだよ、だから何うわぁぁ」
「私の宇宙一可愛い妹を返せぇぇ!!!!」
「はぁ!?」
血走った目で睨まれながら胸ぐらを掴まれ、何が何だか分からず困惑するカズマ
「オーティス落ち着け!!」
「離せ!! 目に入れても痛くない、何処に出しても恥ずかしくない、嫁の貰い手に絶対困らないぐらい可愛い………誰が嫁に出すかぁぁぁ!!!」
「本当に落ち着け!!!」
「ソレぐらい可愛い可愛い私の妹を何処に隠したぁぁ!!王子なら知っているだろう!!!」
「あぁぁあのスミマセン!!俺王子じゃありません!!!」
「王女の兄なら王子ではないか!!!」
「だから違うって……ん?
ああぁ!!思い出したぞ!テメェ今日の昼間にアイリスの部屋に来た暗殺者じゃねえか!!!」
「えぇ!? 暗殺者!?」
『ピィィィカァ!?』
『ナンマァ!? ナマナマケェ!!』
「グハッ!!」
「オーティス!?」
ナマケロの<じごくづき>が直撃しカズマを掴む手を外してしまう
「良くやった相棒!」
「どういう事だよロケット団、何でお前達アイリスの命を狙う悪い奴と一緒に居るんだ!」
『ピッカァピ!』
「何言ってんのよ!! コイツは暗殺者じゃないわ被害者よ!!」
『被害者ロト?』
『オーティスは訳あって王女様に預けた妹を返しに来て貰っただけニャ、ニャのに肝心の王女様に暗殺者呼ばわりされて追い出されたのニャ!』
「だからこうやってアタシ達と王宮に侵入して妹を取り返しに来たのよ!!
立派な被害者じゃないの!!!」
「アイリスに預けた妹…?…あっ!?」
「ま……まさか……お……お前……ラティオ」
「ん!?」
サトコとカズマが動揺した瞬間
「居たぞぉぉ!!!」
「仲間が複数居るぞ!!」
「全員捕らえろ!!!」
大量の兵や冒険者達がバルコニーに一気に押し寄せる
『わぁぁいっぱい来たロト!?』
『ソォォナンス!!!』
ジリジリと距離を詰められ追い詰められていく
「こうなったら……ポケモンを出して戦うよ」
「待て! 召喚したらお前の正体が」
「でもこのままじゃアイリスが……そんなの兄上だって嫌でしょ」
「うっ……」
「掛かれ!!!」
「うぉぉぉ!!!」
どうしようかと思考を働かせるカズマの事など知らず、兵や冒険者達は一斉に向かってくる
「はぁ……」
「「お頭?」」
するとタメ息を吐きながらクリスが皆の前に立ち、ポケットに手を入れる
「本当は逃走したかったけど……皆逃げないみたいだし、最後までやり遂げないと、お頭失格だね
何よりスカウトした皆だけ活躍してて、お頭だけ何もしない訳にはいかないよ!!
ワイヤートラップ!!!」
ポケットから投げられた数本の金属製のワイヤーが鉄条網の様に伸び始め、クリスと兵達の間に蜘蛛の巣の様に立ちはだかる
「のわぁぁ!!」
勢い良く向かって来た団体がワイヤーにぶつかり、その反動で飛ばされていく
「くそ!!切断しろ!!」
「ダメです!! 固すぎて切断出来ません!!!」
ワイヤーの隙間は虫が1匹通れるかぐらいの大きさかしかなく、鋼の硬度もあって切断も通り抜けも出来ず悪戦苦闘する兵や冒険者
「流石だぜお頭!」
そんな彼らの様子に気分を良くしたクリスが笑いながら皆の方を振り返る
「エヘヘ♪
これで時間が稼げるよ、取り敢えず下の階層に戻って作戦を立てよう
空き部屋の場所も教えてくれたしね」
「分かりやした!」
「うん!」
「待て」
バルコニーから下の階層に飛び降りようとするクリス達をオーティスが呼び止める
「なに?
君達も一緒に来たいって言うんなら構わないよ」
「下の階層よりも安全な場所がある」
「どこだい?」
「空の上だ」
「…………はぁ?」
真顔で空を指差すオーティスに目が点になってしまう
「私は妹の居場所と安否を知りたい、だから詳しい話をさせて欲しいんだ
王子でないとしてもお前は妹の事を知っているんだろう、私の名前を言い掛けたのがその証拠だ」
「聴こえてたか……あぁ知ってるよ!」
「では何故……いや……詳しく聞かせてくれ、空の上でな」
「なんだ!?」
突然オーティスの体が光輝き始めロケット団とクリスは驚くが、カズマとサトコやポケモン達は全く微動だにせずオーティス………いや
『ラティオ、ティオス』
ラティオスの姿を見つめていた
「ラ………ラティオス!?」
「嘘っ!?」
『ソォォナンス!?』
「か……彼ポケモンだったの?」
「おい……あのモンスター……」
「あ……あぁ……あの時の凶暴モンスターだぁぁ!!!」
『ティオラ! ラッティオ!!』
『乗れだってロト!』
「オッケー!」
『ピッカァ!』
『ナママ!』
「あいよ! お頭早く!」
「う……うん!」
『ラティオ! ティオラティオス!!』
「おいニャース、ラティオス……いやオーティス……どっちでも良い!なんだって?」
『ニャア達は手に掴まれだってニャ!』
『ソォォナンス!!』
「ここに居たんじゃ捕まるわ、そんじゃ遠慮なく!」
「おう!」
『マネッ!』
『ラッティオ!!!』
こうして背中にクリス達、そして両手でロケット団を抱き抱えラティオスは遥か空中に飛び上がる。
《アルダープ邸》
「どういう事だ……何故あのチャンピオンの少年が忽然と姿が消えた!?」
『ギギギ?ギギギ?』
「分からないで済むか!! さっさと見つけてこい!!
あの少年が居ない事を確認してから行動を起こしたいんだ……でなければ……また……また邪魔される!!!」
バタン
「パスチャー!!!」
「わぁぁぁぁ!? あああアルダープ……様!?
どうしました今日はもうお帰りにならないかと」
「今すぐモンスター共を連れて王宮に行け!!!」
「は……はぁ? 何故ですか?」
「例の義賊が王宮に現れた!!
もしもだ……あのネックレスを盗まれでもしてみろ、ワシの長年の夢であるハーレム王国の野望がぶち壊れてしまう!!
だからソイツらで義賊を追い払え、いや殺しても良い!!何とかしろ!!」
「ま……待ってください!! この街にまだ例の少年が居るのです!!!
今のコイツらの力ではあの少年に勝つなど」
「口答えするなぁ!!!ワシのシモベならシモベらしく素直に言う事を聞け!!」
「シモベ……私が……この私がギギギィ……待てよ!!」
歯を食い縛り、血が出る程の力で拳を握りしめるパスチャーだったが
ふと何かを思い付いたのかニヤリと笑いアルダープに頭を下げる
「分かりました、では早速行って参ります」
『ギギギ』
「良いな!!ネックレスを盗まれでもしたらタダでは済まさんぞ!!」
屋敷を出ると、パスチャーは殆どが白で上の部分が黒く両端が赤いボールを3つ取り出し放り投げる
『ガアァァァ!!』
『ギャオォォ!!』
『アァブゥ!!』
そこから三つ首のモンスター、赤い羽を生やすモンスター、頭に6本のトゲを生やしたキノコの様なモンスターが飛び出す
「あの親父の言いなりになるのは気に入りませんが、コレはまたとないチャンス
王宮の者達は義賊を敵と認識している、あの少年や王宮の者達全ての注意を義賊に向けさせれば
クッククク!!楽に行動出来る
行くぞテツノコウベ、トドロクツキ、アラブルタケ、テツノブジン
ラティアスを捕獲しに」
何とオーティスの正体はラティオスでした(殆どの人が前回で気付いてる)