…よ、…。
>ピコン。
─賢き神よ、残忍な神よ、厳格なる神よ。我らの罪を…どうか、どうか、どうか!!
む!?
…よく来たな、贄の王よ。
私の名はボグオーン。七英雄の一人だ。宜しく、は無意味な言葉か。
この地上戦艦は古代人の技術の粋を極めたものでな、私の趣味が詰まった代物となっている。クジンシーから聞いているだろうが、これでも七英雄の頭脳を自認しているからな。聞いてない?…彼奴め、他人の評価をいつも蔑ろにする。
そうだ、この低下した腐れ脳味噌でだ。
仔細は省くが、今の我々はクジンシーと同じく多少の
あの阿呆は自分の天罰と思い込んでいたが、あの薄っぺらい器にモンスターの入る余地など、ありえない。常日頃から脳死で動くのが彼奴よ。奴らしく表現すればな。真実など、もはや分からぬ。アレもまた、壊れた同志だ。
ともかく、私がまだひとかけら程度に正気なうちはこの船を明け渡す気にはならん。必要であれば近場まで送らせて貰うが、如何かな?
>ピコン。
…そうか。残念だが、多少は抵抗させていただこう。
ここは我ら七英雄の愚かさを少しでも減らすために拵えた開発地。所有権を主張するのは構わないが、皇帝の私物となるのは拒否させていただく。コレは、民のための物だ。
>ピコン。
何故、なぜ、何故だと!?
貴様が王だからだ、皇帝!!
オアイーブを見てないのか、クジンシーは、私の醜い体で察しないのか!?権力に溺れた超越者という名の化物に方舟を渡せと!?民の為と嘯いて国民ですらない他種族の甘言に実験体となった成れの果てに、短命種達のゆりかごを譲れと!?
愚かでゴミ屑だった大神官にも一理はあった。だが、一理だけだ!一理の判断で国を委ねる皇帝が雌伏に潜んでいる貴様が、国のために国民を贄にしない保証はあるのか!?
…年若い王には無理もないことだが、私にはあの女が邪悪さを潜めていないとは信じられないのだ。
引き金は我らだ。クジンシーはモンスターらしく山賊として罪を犯した。七英雄は品性を地に落とし、死ぬべき恥晒しとなった。否定はせん。問題なのは、奴の一芸を見切るために皇帝は実験台となった点だ。
おかしいとは思わないのか?
>ピコン。
そう、か。………素晴らしい善人だな、王よ。だからこそ指摘しよう。
地位あるものが必要だったのは分かる。その上でソウルスティールを見切る実力が要るのも理解した。…だが。その術が我らの『吸収の術』の改良だと仮定するなら。経験のみを引き継げるなら。下地は多い方が得であり、我らを世界の脅威だと想定しているならば。
決死という行為は誰もが信用を保証する。あの女はそれを他人に押し付け、あまつさえ死後の安寧さえ愚弄した。我らと同様に、あるいはそれ以上の悪辣さにて。
死地に向かう人間を信用させるのは、利益ではなく、安心だ!
私は、身銭を切らないオアイーブを、信じることが出来なくなってしまった。下劣な本性を薬で誤魔化す私が期待した古代人の清廉さは幻だと理解してしまった。私達が救いたかった善良なる民達は、幻とは…信じたくはないが、所詮はモンスターに堕ちる程度の存在に期待するのは、愚かと自嘲してしまう。
…。
この船は、天変地異やタームから避難するための方舟だ。私の開発した一手間かけないと繁殖しない、除蟲材となる薬草を買い取った土地で栽培し、どのような厄災も乗り越えることを理想とした渾身の救助艇だ。
私如きの命に価値など存在しない。古代人の悪徳の芽を潰し切るまでの迷惑料を邪魔するのは、やはり懸念した土地買収に関してか?それならば代表者と協議して返却の代わりに対タームの除蟲をさせて貰うなど手立てがある。この身を憎んじるのならば、地主へ献上するのも構わないが…。
>ピコン。
……は、…中毒?
まやく、だと?ばかな。あれは我々にとっては─
───ッ。
は、ははは。
ヒトには無害、だった。
わかっていただろうにのう、ワグナス。
…。
すまない。
誠に、愚かで、間抜けな、腐れモンスター、自分勝手だが、少しだけ。一分だけで良い。黙祷をさせて欲しい。武器は構えたままでいい。形だけでも、私はヒトを自称していたい。
>ピコン。
─ありがとう。
…。
さあ!慈悲深き!素晴らしき皇帝よ!
端金の為に愚かな人間を洗脳し!麻薬を蔓延させた鬼畜外道な七英雄の成れの果てがお相手しよう!我が名はボクオーン!麻薬溺れのボクオーンだ!!
寡兵で来たのは作戦か?それとも地上戦艦に恐れをなしたから?─どちらにしろ、大きな間違いを犯したようだな。この私の前では!貴様など指先ひとつで容易く操れる木偶人形にしか過ぎない!
この世には操る者と操られる者がいる。操られるのも悪くはない。操る者が賢ければ、だが。愚者に操られるほど不幸なことはない。だから、だから私が全てを操る!この世の全ての者が幸せになるように!そう誓ったはずなのに!!あまりにも愚かなやつよ!!
我が身技を持って!互いに傷つけ合って死ね!!
やはり、強いな、…嫌になるほど。正しき者が勝つのは、誰から見ても幸福なことだ。ヒトを操る必要など、本来なら不必要な事柄なのに、何故…皆が取りまとめる王を創り上げるのだろうな。
…、………。
…私はボクオーンでも何でもないんだ。七英雄と名乗ってみたかっただけなんだ。麻薬作りもやめる。この戦艦も譲渡する。私は、報いを受けたかった。それだけを、求めて此処へ戻ったはずなのに、私達の頭は良心すら狂い壊れて終わっていた。
だから。
だから、頼む。
惨めに生きて、苦しむ、我々を。だれか。だれか、だれ─
ボクオーン
クジンシー(死体)の影響により理性が復活したことで罪悪感と理性消失の恐怖に取り憑かれる。避難場所としてのブンドド戦艦構築と合わせて金策として栽培した薬草は、古代人のカフェイン的な脳をブーストする薬の原料だったが、現代人にはカフェイン耐性は無かった。ゲーム的には祈りを無視すると数ターン無駄行動を行う。皇帝は哀れな実験体だと考えている。