七英雄は。   作:ややや

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この世界線で一番理性を保った存在


ロックブーケは模倣した。

 あら、お久しぶりね、皇帝様。

 

 いいえ、女帝様と呼ぶべきかしら。誌面にあった歴代の皇帝図を見たけれど、初の女帝らしいわね。おめでとう。

 

 こっちはいつものワッフルツリー栽培でぼちぼち稼いでいるわ。まあ、モンスター税で赤字だけど。この遺跡を縄張りにしている以上は、ね。たとえ、討伐対象になっても此処を動くつもりはないわ。

 

 …そんなに悲惨な顔をしなくても良いじゃない。ここ数年の異常気象に加えて犯罪グループによる違法整形手術の斡旋に万能薬の密売。いくら居住型ダンジョンモンスターといっても討伐依頼は当然よ。

 

 …正直騙した人達の偽装が凄すぎてあまり実感が湧かないのよね…

 

 確かに私は家賃がわりに思われるがままに綺麗な身体を作り替えたわ。同化の法は肉体を乗り換える技術。自身の身体に書き換えれる手順だけを調整すれば思うがままに身体を改造出来る。屈強な筋肉を作りやすい肉体を、子を作りやすい身体も、誰もが美しいと振り向くような顔でも。

 

 悪いことはしてない…つもりだったのだけど。帝国法もダンジョン管理条法も戦時法も…いや多いわよ、化石の脳みそには荷が重いわ。テイマー免許に医師免許、脱税?とか説明されても私には手が出せないわよ、言いなりにならない方が良かったのかしら?

 

 >ピコン。

 

 慰めは要らないわ。私は馬鹿だと嘲笑っていたクジンシーの与太話みたいに、思い込みで他人を疑うことを、誰かが保証した答えを確認することを忘れてた、それだけ。吸収の法…ターム退治に携わったこともそう。お兄様とワグナス様を想ってこのザマになったけれど、あまり後悔はないのよね。

 

 だってそうじゃない。心が化け物になるっていっても、ヒトとケモノで精神にたいそうな違いなんてある?誰もが生きたがりだし、子を愛せるし、同族殺しもするし、仲間意識だってある。私達が壊れたのは脳障害による自己破綻と、社会性を失ったことによるストレス性の認知症を患っただけ。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 つまりは今の残状を自業自得で結論付けるってことだけど。世の中上手くいかないわね。年喰って皺を誤魔化したら脳までツルツルになっちゃう。子供でもいれば違ったのかしら…ワグナス様はアレになったし、私も作れないだろうし、栓なきことかしらね。

 

 最近はスラムのがきんちょに栽培を手伝わせてたけど、アイツらサボることに小賢しい知恵を働かせるのよね。おばばおばばと喧しいし。大体ヘッドロックすれば大人しくなるのに、それをやるとリーダー格の娘が凄い形相で睨むのよね…あれはタームを殺せる威力があるわ。

 

 昔は良かった、と婆らしく断言出来たら幸せだったのかしらね。なんだかんだでダンターグと一緒にみんなの介護をしてたら色々と老け込んでしまったわ。…歳よね…最近はスキンケアも忘れがちだし…寝衣のまま外出を考えた時は遂に此処まで来たかと自嘲したわよ、ふふふ。

 

 …はぁー。

 

 ほんっとうにしょぼくれた顔ね。新聞にあった覇気に溢れた顔付きはどこに行ったの?拡大政策であらゆる国を侵略する帝国なら、必要な殺しの一つや二つあるでしょうに。お仲間の方が余程私の危険性を理解しているわよ?

 

 >ピコン。

 

 三世代くらい前に聞いた言葉ね。答えは同じ『動けない』一択よ。この土地に残されたアレを晒すわけにはいかないわ。まあ、皇帝様なら中に入るくらいは許してあげても構わないけど。

 

 ─顔色が変わったわよ、お仲間様。

 

 随分と口数が増えたわねぇ。さっきまで(モンスター)へ悠長に無駄に隙だらけで会話していた皇帝様を無視して。護身の心得が足りないんじゃないかしら、()()()()()()()()()()()()()()

 

 図星半分、欲半分ってところね。生き残りの古代人当たりから聞き出したのかしら、エイルネップ神殿に眠る()()()()に関して。性別が変わって改めて恐怖した?単純にチンケなプライドの問題?あるいは、差別かしらね。()()()()()()()()()()()()()()と。

 

 国も巨大化して血が増えれば澱む箇所も生まれる…か。古代人(わたしたち)と違って寿命で交代する分だけ健全よね。ただ、その浅ましさだけは私の勘所に触れるには十分過ぎる代物だった。

 

 皇帝様(あなた)には悪いと感じるけど、私が私として持ち堪えた自尊心として、人面獣心の仲間だけは許せない…!身を削って世界を守る存在に差し出す報酬が、マイナスなモノで肯定されるものじゃあない。もう二度、私は過ちを繰り返さないと、馬鹿を貫くと、あの遺体に誓ったのだから…!

 

 ああ、クソ、イライラする…!高潔なフリをして腐臭を垂れ流す存在が一番嫌いなのよ…!私を自覚させるな、腹立たしい…!

 

 生贄に集る鬱陶しい蠅どもが…!!

 その醜い下心ごと、溶かし壊して見せましょう…!!

 

 

 

 

 

七英雄 ロックブーケ

七英雄 ロックブーケ

七英雄 ロックブーケ

 

 …ふ、ふふふ。何とか、道連れには出来た…かしらね。

 

 一人だけ…一番腐っていた奴は貴方に魅了された人形にしたわ。此処の遺跡を壊した後、それを使って粛正しなさい。歴代皇帝の智慧があれば、それくらい難なく熟せるでしょう?

 

 …そんな顔しないでも良いじゃない、別に貴方のためじゃないわ。私はこの程度で暴走する程度に、()()()()()()存在なの。死ぬべき化け物だとは、自覚しているわ。いずれ来たツケを払った、それだけのこと。

 

 …まあ、ね。こんな…終わりを望んでいた、わけじゃないけど。でも、世界が求めているならしょうがないじゃない。言い訳が出来る死なら、何でも良いかなって。諦めたのよ、私は。何も思いつかなかったから。

 

 私の芯は変わらない。

 

 いつも愛されていたい。誰よりも、誰からも。上手くいかないのは当然。皆の心を繋ぎ止めても、愛がなければ維持なんて無駄なだけ。ただ真っ直ぐに見つめて欲しいだけなのに、私は見つめ返す目を捨ててしまった。

 

 お兄様、ワグナス様。お二人の心を支えるために、私は何をすれば良かったのですか。あのオアイーブの様に見捨てれば良かったのですか。覚悟して共に逝くことは愛とは呼べないのでしょうか。

 

 分からない、わからない、何も。

 

 何もかも、私には。

 

ダンジョンにて反乱 恥知らずの『将来』

バレンヌ帝国初女帝の衝撃も久しい中、皇帝主導のダンジョン討伐にてユダ侯爵率いる私領軍が暗殺未遂を敢行した。ダンジョン内での仲間割れは平時の民兵においても共通のタブーとして周知された事実であり、侯爵の無知無毛さを現した凶行である。皇帝陛下は歴代の名に相応しき武威を持ってダンジョン討伐と併せて侯爵軍を粉砕。侯爵の未来を見据えた犯行は皇帝のスケジュールひとつ妨げることはなかった。この件を『警鐘』と受け止めた皇帝は内政に力を──

 

— バレンヌ帝国xxx新聞記者、マリア・ルーマス

 




ロックブーケ
 介護が嫌になったダンターグと共に逃げ出したものの、することがないためのんびりと医者モドキをこなしていたら大神官への道程を見つけてしまった。守護者の突破も出来ず、報告もしたくなく、かといって放置するのも怖いため定住したところ、何世代が経って何故か住民がカルト信者と化した。心身の不調は更年期だと思っている。
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