七英雄は。   作:ややや

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今更ですがこの七英雄の内容は全て独自設定です。
そして書き溜め定期投稿の練習で拵えた一品のため感想のご指摘通り怪文書となります。
感想様のコメントを踏まえてタグを追加しました。


ノエルは観念した。

 …来ましたか。来て、しまいましたか。

 

 初めまして。私は七英雄のノエル。貴方達が葬り去った七英雄の、最期の一人になります。この場所で合間見えるとは、全てを察しての行動なのでしょう。

 

 ─肯定しましょう。私は七英雄のノエルであり、その分体。増えすぎた手脚を動かすことすらままならない七英雄の惨めさを慰めるための仮初の肉体が私となります。本体の私は、…いや、言わないでおきましょう。

 

 私達はそれぞれが強力な存在ではありますが、無敵とは程遠い。更なる強みとして、私達は自身の本体をどこかに隠すことにしました。普段は仮初めの体で活動することによって、仮に仮初めの体が倒されたとしても長い眠りにつくことで再び復活することが出来る。…何よりも、狂う仲間を見ないで済む。

 

 此処は七英雄の本体が安置されている隠し場所です。最早形骸と成り果てている七英雄が集結する理由は…とうに消え去ったのでしょう。

 

 私は学ぶことが好きです。どんなにくだらない知識もいつかの誰かは必要とすることが必ずある。知識は智慧の源であり、私は貪欲に学びました。

 

 人々を護る知識。悪と戦う知識。己を研く知識。剣を振る知識。身を捌く知識。ワグナスを支える知識。七英雄を繋ぐ知識。皇帝の力の源泉を見出す知識。

 

 そして、私達を殺そうと貴方を嗾ける、オアイーブの心を知る…愛を知る知識。

 

 …因果。恨みはなく、悲しみも薄く。私達の激情は屍体の山に埋もれて久しく。皆が皆、狂い果てて尚、理性を残してしまいました。リスクを、欲を、恥を、苦痛を、憎悪を、何もかも。忘れて仕舞えば救われる何かを、私達は捨てることが出来ませんでした。

 

 その果てが、血の誓い。七英雄がただ一人となった場合に、あらゆる活動を放棄してでも、七英雄の本体を守らなければならないという、保身の誓い。私が負ければ七英雄は狂い果て、欲のままに皇帝を喰らい尽くす。…恥知らずながら、私達はそうしてしまう。

 

 伝承法という飴は、毒餌とわかっていても、あまりに甘美に映ってしまう。

 

 >ピコン。

 

 …オアイーブの術は、リスクが軽微すぎるのです。

 

 自身の能力や記憶、意思を別の者に継承するための技法、術法と貴方は称しましたが、肉体一つに対して魂が複数乗ることは本来あり得ないこと。水袋に複数回水を注ぎ込んで、零れ落ちないことを無事と評する、そう言い換えても良い。肉体という器は、便利でも万能でも無いのです。

 

 勿論、継承により強化された部分はあるでしょう。しかし、肉体には種としての上限があります。肉体への負担は強化された恢復を超え、貴方の肉体を確実に蝕んでいる。

 

 自然回復を超えた身体機能の活動とは、即ち生理機能の衰退を指します。貴方なら歴代皇帝の人数分の速度で寿命を消費し、心身ともに不可逆的に低下する肉体はそれを老いという形で反映されなければなりません。

 

 今までの皇帝なら苦しくとも納得はできました、非戦闘時に肉体の代謝を抑えて寿命を調節していると。しかし、貴方は違う。七英雄を複数人斃し、ありとあらゆるモンスターを退治した貴方に、老化の兆候がカケラも見当たらないのはおかしい。

 

 私が思いつき、考えられるのは二点。一つは貴方が神に愛された全ての皇帝を受け止めるほどの器を有した真の皇帝である場合。もう一つが、継承法が魂の上乗せではなく、魂の書き換え(アップグレード)だった場合です。

 

 自意識を維持したまま、肉体だけを都合良く改造する、不要な肉体を廃棄できる、魂という認識不可の領域にある分野のタグ付けを可能とする業…!まだら模様である私達の魂を切り分けるワクチン…!世界に肯定された、私が考案した吸収の法(ゴミ)とは比べものにならない、完璧な技術!!

 

 帰れる…!私達は此処へ還ることが出来る…!!

 

 初めて、初めて。私は神へ感謝することができます。私欲に負けて犯罪を犯す悪徳も、貴方という褒美の前には塵芥にすぎません。

 

 皇帝、その命を貰い受ける…!!

 

 

 

 

 

七英雄 ノエル

七英雄 ノエル

七英雄 ノエル

 

 

 嗚呼、やはり悪いことはするものではありませんね。

 

 貴方は気高く、強く、まさに理想の英雄でした。かつてはワグナスもそう呼ばれるべき存在でしたが、異界での数千年の孤独は私達を狂わせるには十分過ぎました。

 

 血の誓い。私達が自覚して罪を犯したあの日。あらゆる次元を探索した結論として、故郷に戻るにはエネルギーの規模が足りないと絶望した、翌日。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 私達は私達を直視することが出来ませんでした。私はノエルの人格をエミュレートしたモンスターで、当然彼らもモンスターに七英雄の仮面を貼り付けたヒトでは無いナニカでした。だから、罪を平然と重ねてしまいました。

 

 慰めではない、純粋な客観から来る人格を維持していたのは、()()()()()クジンシーだけでした。彼が永き果てに出してしまったチャンスに、私達はあまりにも惨めに罪を犯して、しまった。

 

 それでも、私達は、ただ、帰りたかった。唾棄される化け物としてのゴミ捨て場での野垂れ死ではなく、ただの古代人モドキとして葬式と埋葬をしてほしかった。

 

 七英雄となった私達に与えられた罰は、待ち焦がれていた世界が余りにも脆いことだった。

 

 七英雄が一回でもこの世界に立ち入れば、世界が災害に襲われるのを理解しました。私達が逃げ出したかったあのラストダンジョンは、私達を閉じ込める監獄であると絶望しました。

 

 七英雄が狂い果てるまで、長くはありませんでした。

 

 この分体(からだ)は、本来ならば私の様にある程度のヒトガタを模ることが出来ます。私すら、会話機能のためにこうして無駄な生命力で明瞭に話せるほどに、まともな人型を取り繕うことが出来ていません。それにも関わらず、私達が異形の身体を観測体として放つのは、七英雄が正気を失って久しいからです。

 

 私が死ぬことで、本体は自制を失うでしょう。狂い果てた英雄は、今度こそ世界の破壊者として君臨することになります。私達が命懸けで護ったはずの世界を、我がモノとして傲慢に愚かしく、嘆かわしいことに。

 

 吸収の法により自と他を区別することが困難になった私達は説得は不可能です。そのような余裕は、私達に存在しません。ボクオーンの生み出した麻薬患者のように、この世界を求めて災害を伴ってまろびでることでしょう。

 

 義務感のみで作られた私でも、不快を覚えるほど醜悪な生き様です。…なんだ、私もまだ品性は残っているじゃないか。

 

 …。

 

 災害を防ぐには、彼らが興味を惹く餌が必要になります。七英雄が警戒するほど強く、死地に迷いなく伴ってくれる部下が存在し、尚且つ彼らのように外法を使いこなした、そんな存在が彼らが住まう異界…ラストダンジョンに入れば、彼らはそちらを優先することでしょう。

 

 >ピコン。

 

 >ピコン。

 

 …ふふ。ただの脅しですよ。私は此処で死にますが、本体はまだ生きています。なら、次の私のために策を弄すことに、何も矛盾はありません。七英雄のように、惨めに生きて醜態を晒すくらいなら、死んだほうが幸福だと、考えただけです。用済みの英雄には、報酬など与えられることはないと、分かりきってしまいましたので。コレから奪い続ける人生を過ごす貴方には、道を提示してこそ、私達の意義が、あります。

 

 私達に、慈悲を与える存在など、存在しないのですから。

 




ノエル
 自分の術による失敗で四六時中後悔してローテンションな状態。自身の状態を救うべくカバ人間などの被検体を元に研究をしていたが、どうにもならなかった。皇帝はついに来た断罪者だと確信している。
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