ミレニアムオスメイド   作:男でミニスカメイド服はキツイ。

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00(ダブルオー)は誘いに乗る。

「おぉっす――あっ?」

 

 美甘ネルはC&Cの部室の戸を開ける。毎度のごとく集合時間は過ぎているが……もはや向こうもそれ込みで集合時間を設定するようになった。

 

 ネルはちゃんと間に合うように家をでたりしてるのだが……何故だろうか、いつもいつも時間ギリギリになる……まぁ、そのお節介焼きな性格が災いしているとか誰は十分だろう。

 

 さて、ネルが部室に入ると……そこに居たのは椅子に座って何やら日本刀とリボルバーの手入れをしているタイガだけだった。アスナやカリン、アカネの姿は見当たらない。

 

「他の奴らは?」

「なんか茶葉と茶菓子買いに行きましたよ〜。俺はちょっと武器の手入れに時間がかかりそうなので残ってるだけです。」

 

 そう言ってタイガは日本刀を照明に当ててその光沢を見る。ネルは「ほぉん」と軽く唸ると、タイガの向かい側へと乱暴に腰を下ろした。

 

 ネルは少しの間ぼぉっと手入れをしているタイガを見つめていると、一つ問いかける。

 

「タイガ、お前よく自分で武器の手入れしてるけどよ。それって他の奴に頼むんじゃいけねぇのか?」

「えっ?」

 

 タイガはあっけらかんと声に出る。

 

「いや、そりゃあ簡単な手入れなら兎も角よ。お前って結構ちゃんとした整備もするだろ?」

「しますね。」

「それって他のやつに頼んじゃいけねぇのか?あたしは刀の方はよく知らねぇからあれだけどよ、リボルバーならエンジニア部に整備してもらうとかできんだろ?」

 

 タイガはそれを聞くと静かに唸る。

 確かに、整備などといった事は専門家に任せても吉だろう。しかし、タイガはそれをしない。何故なのか?

 

「……まぁ確かに?エンジニア部に頼んだほうが速いし、この日本刀だって百鬼夜行学園で手入れを承ってくれる場所はあるっすけど。」

「おう。」

「でも……まぁ、一言で言うなら愛着ですかねぇ?」

「愛着?」

 

 ネルが小首を傾げると、タイガは静かに頷いて言葉をかける。

 

「まぁ、俺この装備との付き合いも長いんで。自分の装備の面倒は自分で見たいって気持ちがあるんですよね。」

「てめぇは物結構大事にするもんな。あたしと会った時からその銃と刀もってたろ。」

「懐かしいっすね。俺がまだ不良だった頃の話だ。」

 

 タイガはかつて、元々ミレニアム生の中でもそれなりに名を聞かせていた不良、ヤンキーだったのだ。ブラックマーケットにも出入りするほどで、色々手を焼かれていた。

 

 そこからネルにボコボコにされ……喧嘩仲間となり……まぁ、なんやかんやでネルに誘われてC&Cに所属することになったのだ。実を言うと加入順ではコールサイン持ちだとタイガが一番遅かったりもする。

 

「ま、俺が愛着持ちやすい以前に、あんたらが色々ぶっ壊しすぎなんですよ。」

「あぁっ!?」

 

 C&Cと言えば後先考えず多くの施設を破壊することに定評があるが、タイガはそんなC&Cの中で数少ない破壊活動を最小限にとどめる側の人間だ。

 

 無論必要な時ならば容赦なくぶっ壊すが。

 

「別に良いだろうがよ、そっちの方がはええんだ。」

「それで予算が減らされたらどうするんすか。」

「うるっせぇな、お前もお前でなんでそんなに予算気にしてんだよ。」

 

 タイガはC&Cの中でもセミナー並みに予算には煩い方だ。貰った予算の管理等もタイガが行っている……ネルやアスナはあまり予算関係には無沈着。

 

 カリンは数字に弱くて詳しい予算管理は出来ない。アカネはそういった管理は得意だが……破壊活動や爆弾を前提に予算を組んでしまう。

 

 消去法で予算管理はタイガが組むことになるわけだ。まぁ、多少減らされた程度ではC&Cの活動に支障はないが……タイガにとっての問題はそこではない。

 

「予算減らされたらねぇ……俺専用のバトラー服作って貰えなくなるじゃないっすか。」

「んなこったろうと思ったよ!つか、まだ諦めてなかったのか!?」

 

 C&Cの制服はメイド服だ。タイガは入部する前には唯一の男子生徒であるタイガの事を考えてバトラー服を作ってもらえるかと思っていたのだが、結果は……タイガも変わらずにメイド服。

 

 理由は……態々たった一人の男子生徒の為に専用のバトラー服を作る必要はないという判断からだ。タイガはブチギレて抗議したが、結果は今もこうやってタイガはメイド服を着込んでいる。

 

 その日以来、タイガは永遠に専用のC&Cのバトラー服を作って貰うように隙を伺っているのだ。

 

「俺は未来永劫永久に諦めねぇですよ。ここまで来たら意地でもぜってぇ専用のバトラー服作ってもらうんだ。」

「……呆れて言葉も出ねぇ。」

 

 ネルはそう言って目を細めながら瞳を燃やしているタイガを見る。タイガは瞬間ネルの肩をつかんでブンブンと揺さぶる。

 

「先輩にゃわからんでしょうねぇ!外掃除の度にヒソヒソ言われて……しまいにゃ女装趣味って思われる俺の気持ちが!何を言っても何をしても(でもこいつメイド服なんだよなぁ)とか思われる俺の気持ちが!」

「思わねぇよ誰も!つかやめろ揺らすな!揺さぶるなてめぇ!!」

 

 ネルはタイガの顔面に一撃の拳を入れる。タイガは目元に青痣を浮かべながらがっくりと肩を下ろす。

 

「ったく……んな気にすんな、確かに違和感はぬぐえねぇが、普通に似合ってっから!」

「その違和感が問題だって何度言えばいいんですか先輩。」

「だぁっもう面倒くせぇなぁ!?ぐちぐちぐちと!コールサイン05を背負うならもっと堂々としてやがれ!」

「俺はアンタほど大雑把じゃないんです〜!ナイーブなんです〜!」

「自分で言わねぇだろそれ!?つか誰が大雑把だゴルァ!!」

 

 二人の言い争いは加速する。止まらない。二人は次第に取っ組み合い、互いを睨みつけ合う。

 

「最近テメェは調子乗ってると思ってたが……間違いじゃなかったみてぇだなぁタイガァァ!!C&Cに拾ってやった恩を忘れやがって!アタシへの連敗記録伸ばすかテメェ……!!」

「上等だこの野郎……!!元はと言えばテメェをそのダブルオーって玉座から引きずり下ろす為にC&Cに入ったんだ俺ぁ……!!表に出る必要すらねぇ、今ここでぶちのめしてやらぁ!!」

 

 そうして二人は取っ組み合いの喧嘩を始めてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 部室でそんな惨劇が繰り広げられているのを知らずに、アスナにカリン、アカネは買い出しから戻ってきていた。

 

「ふふっ、いい買い物が出来ましたね♪」

「ね!お買い物楽しかった!タイガ君も来ればよかったのに!」

「全く、武器の手入れを怠らないのは良いことだけど……少しくらい付き合ってもバチは当たらないだろ。うに。」

「カリンちゃんちょっと寂しそうだったもんねー!」

「なっ、先輩。別に私は……」

「カリン、素直が一番ですよ。」

「アカネまでろ…全く、良いから入るぞ。」

 

 そう言ってカリンは部室の戸を開けると……次の瞬間目に入るのは……タイガを押し倒しているネルの姿だった。

 

 ネルは笑みを浮かべながら、タイガを逃さないようにしっかりと捕まえる。

 

「へへっ……漸く捕まえたぜタイガァ……暴れんなよ、上手く()れねぇだろうが……!!」

「くっそ離しやがれ――――!?ちと待てネル!カリン達帰ってきてる!?」

「あぁっ?関係あるかよ、漸く捕まえたんだ……ぜってぇ逃さねぇ……!」

 

 ……正直、光景と発言を切り抜いてみせるともう完全にアウトなのだ。カリン達は唖然と持っていた袋を地面に落とす。

 

「?二人とも何してるの〜?」

「……部長?流石に部室でそういう事をするのはいかがなものかと。」

「あぁっ!?コイツから誘ってきたから乗ってやったんだろーが!(喧嘩的な意味で)」

「タイガ……そう、なのか?部長が良いのか?」

「ま、待てっ!?待てお前ら!!お前ら多分確実に何かを勘違いしている!だから待て、マジで待て!!……なんだその蛆虫を見る様な目は!?まて、マジで……話を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!

 

 このあと、無事誤解は解けたが……それはそれとして部屋の中で喧嘩したことについては烈火の勢いで怒られた。




タイガ:ミレニアムの二年生。C&Cに入ったのは喧嘩相手だったネルに誘われ、ネルをダブルオーの座から引きずり下ろす為。因みに、留年している金髪のポテチ好きな友人が一人いるのだが、最近連絡が取れないらしい。

ネル:タイガをC&Cに誘った張本人。本人としては誘えば何時でも何処でも喧嘩が出来るのと、単純にタイガの戦闘スキルを見込んでの推薦。タイガがメイド服を着ることになるのはさすがに想定外だったそう。
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