ミレニアムオスメイド   作:男でミニスカメイド服はキツイ。

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01(ゼロワン)は退屈しない。

 

 ……その日、タイガは休日。制服も着る必要のない彼は、その日は完全に私服の状態でミレニアムのショッピングモールを歩いていた。理由は単純に休日だから遊びに来た以上の理由はない。格好は休日ファー付きコートを羽織り、ジーンズを下につけている。

 

 久々に男らしい格好ができたのは良いものの、一つだけタイガにとっては由々しき問題がそこには会った……それは。

 

(……やべぇな、最近ずっと制服着てたせいでなんか落ち着かねぇ……)

 

 重症である。

 タイガは片手で頭を抱えながら、自分がだんだんと歪んでいることに気づく。

 

 彼はなんとか自分に女装癖はないと言い聞かせているが、メイド服じゃないと落ち着かなくなってる時点で相当である。別に四六時中着ているわけでもあるまいのに。

 

 「……ヤメだヤメだ。折角ショッピングモールに来たんだ、適当に店でも見てよう。」

 

 タイガはそう言って頭を振るい、ショッピングでもしようとあたりを見渡すと……一つの店に目が留まる。看板には『モモフレンズ限定ショップ』と可愛らしいフォントで書かれていた。

 

「モモフレンズ、限定ショップだと……!?行くか。」

 

 そう言ってタイガはその店へと足を進めるのだ。

 

 モモフレンズ、それは近頃のキヴォトスで最近流行ってたり流行ってなかったりするキャラクターブランドである。

 

 ペロロ――様を始めとして、ウェーブキャットさんやピンキーパカ等といった個性豊かなキャラクターが特徴的だ。

 

 実を言うと、タイガもそのモモフレンズの一ファンである。元々ぬいぐるみ好きなのもあってか、そのファンシーで何処か奥ゆかしさのあるキャラクターに惚れるのは、時間は掛からなかったという。

 

 タイガはその限定ショップで、Mr.ニコライと言うクアッカワラビーのキャラクターのぬいぐるみを持ち上げる。中々のサイズだ。

 

「すげぇ……Mr.ニコライさんの限定Verだ……!買っちゃおうかなぁ。」

 

 タイガが目を輝かせていると……突然、背後からこえがかけられる。

 

「あれっ?タイガ君?」

 

 その声にタイガは身体をビクリと跳ねさせて反応する。すると、何処かぎこちない動きでそっと後ろへと振り向く。

 

 そこに居たのは、タイガの先輩……C&Cのコールサイン01.一之瀬アスナだ。アスナはいつものような明るい笑顔を見せながらタイガへと駆け寄る。

 

「わぁ、タイガ君!こんな所で偶然だね!何してるの?」

「いやっ、まぁ色々と――」

「わぁ、モモフレンズだぁ!タイガ君も好きなんだね!誰が好き?ビッグシスター?ピンキーパカ?ウェーブキャット?」

「……俺はMr.ニコライさん派ですけど……」

「Mr.ニコライ!いいね!渋いね!……それで……タイガ君なんでここに居るの?」

「どちらかと言えばそれは俺のセリフっす先輩。」

 

 タイガは軽く肩をすぼめながらアスナへと問いかける。すると、アスナは軽く唸りながら考え込む。

 

「う〜ん……なんでだっけ?なんかぼーっとしちゃってて……気づいたらここに居て、そしたら楽しそうにしてるタイガ君をみつけて……追っかけてきちゃった!」

「……それ大丈夫なんすか休んでなくて。」

「うん!タイガ君見かけたらなんかつまんないの吹き飛んじゃった!」

「……さいですか。」

 

 まぁ、タイガとしては色々と心配事は残るが……見た所今は大丈夫そうだし、心配しなくても平気だろう。タイガがそんな事を考えていると、アスナはタイガをまじまじと見つめてくる。

 

「……なんすか先輩。」

「なんか、メイド服じゃないタイガ君って違和感あるね。」

「むしろこっちがナチュラルなんですけどね。」

「なんでだろ~ね。別に私服とタイガ君も見慣れてないわけじゃないのに、何故かメイド服の方がしっくりくるの。似合ってないのに。」

「あ、やっぱ似合ってはないんですね、俺のメイド服。」

「うん、けど合ってない訳じゃないの……似合ってないけどしっくりきて似合ってる……みたいな?」

「ちょっと訳わかんなくて頭パンクしそうなんで一旦たんまで。」

 

 これ以上メイド服が似合ってるから似合ってないかの話を続けていると、色んな意味でタイガの心が壊れてしまいそうだ。

 

 一呼吸置くと、アスナはタイガへと言葉をかける。

 

「タイガ君って今日予定あるの?」

「ねぇですよ。だから適当にショッピングモールで時間つぶすんです。」

「じゃあさじゃあさ、私も付き合ってもいいかな?私も暇なの。暇な時間って退屈だから嫌いなんだー!」

「あー……うーん……まぁいいか、んじゃ一緒に適当に店まわりましょうかぁ。」

 

 タイガが断る理由もないのでそう言うと、アスナはまた輝くような笑顔をタイガに向ける……あいも変わらず笑顔だけは一級品だなとタイガは思う。

 

「……それでさ、タイガ君?タイガ君が見てたMr.ニコライのぬいぐるみ、もうなくなりそうだよ?」

「えっ?……ホントだ!?くっそ、こうなりゃ衝動買いだ!すいませーん!」

 

 結局タイガは欲に負け、Mr.ニコライのミレニアム限定バージョンをお買い上げしたのだった。

 

 

 

 

 そこからは、タイガはアスナと共にショッピングモールを楽しんだ。

 

 アスナの服の買い物に付き合ったり――

 

「タイガ君!タイガ君!タイガ君ってこれに合わないかな?」

「何をどうしたら俺にそんな純白のワンピースが似合うと思ったんですか、先輩なら似合うと思うっすけど。」

「えへへ〜そうかな〜?」

 

 

 

 

 ゲームセンターでシューティング系のゲームを楽しんだり――

 

「タイガ君……これで5連敗だけど、もしかしてゲーム苦手?」

「ちくしょお!!もう1回だ!!」

「あはは!いいよ〜!負けず嫌いなところとかリーダーそっくりだね!」

 

 

 

 

 

 ショッピングモールのフードコートでご飯を楽しんだり――

 

「ハンバーガー食べるの久々かもな俺。」

「もぐもぐ……普段は何食べてるの?」

「万年カップ麺っすね。」

「そんなんじゃ栄養偏っちゃうでしょ!メッ……だよ!今度ちゃんとしたご飯作ってあげるから!」

「マジですか……。」

 

 そんな感じで、特に特別でもない……けど楽しいひと時を過ごしたのだ。

 

 

 

 

 

 

すると、時間はもう夕方……そろそろ帰宅時だ。

 

「……もう夕方だぁ。」

「そろそろ帰りますか。」

「うん!ありがとねタイガ君、やっぱりタイガ君やみんなと居ると退屈しないや!」

「大げさですよ……そんな大層なもんじゃ……?」

 

 タイガとアスナはそんな感じでお互いに今日買った荷物を手に持って歩き出そうとする。

 

 あとはこのまま帰るだけかと思われていたが……すると、タイガは物陰に一人泣きじゃくっている獣人の子供を見つけた。

 

 実を言うと、さっきここを通りかかった時にも、この場所ににあの子は居たのだ。さっきここを通りかかってからそれなりに時間は立ってるはずだが………

 

「……?どうしたののタイガ君?」

「ちょっと待っててください。」

 

 タイガは咄嗟にその子へと駆け寄る。

 

「……なぁ、君。さっきからどうしたんだ?ずっとここに居るけど……」

「……逸れちゃった……お母さんと……」

「ありゃりゃ……」

 

 泣きじゃくりそうになるのを我慢する子供を見て、タイガは軽く頭を搔く……タイガはアスナの方を振り向くと、若干申し訳なさそうに言葉をかける。

 

「先輩、悪いんですけど先に帰ってて貰って良いですか?俺、この子のお母さん探すんで……流石に先輩待ちきれないでしょ?」

 

 タイガはそう言うと……アスナは露骨に不機嫌な顔になる。すると、アスナはタイガの頭を軽くチョップする。

 

「痛てっ。」

「……もうっ!なんでそうやって一人で解決しようとするの?私が迷惑って思うと思った?流石に心外だよ!」

「いや、俺が勝手にやることだから先輩巻き込むのもなぁ………って――」

「むぅ、怒るよタイガ!こういう時は……手を貸してくださいって頼むものでしょ?仲間なんだから!」

「うっ……うっす。」

 

 珍しく若干怒りを含めた態度でタイガを叱るアスナ……タイガは何も言えずに相槌を打っていると、アスナはその子供へと手を差し伸べる。

 

「ふふっ、それじゃ!お母さん一緒に探しに行こっか!」

「う、うん……」

 

 子供は何処かぎこちなく、そう言って頷くのだった。

 


 

 

 

 

「ほんっとうにありがとう御座います!なんとお礼をしたら良いか……」

「いえ、俺は何も……」

「見つかってよかったです!!」

 

 結果はといえば、想定よりも早くに子供の親御さんを見つけ出すことが出来た。というのも、アスナが持ち前の()で想定よりもすぐに子供の両親を見つけてしまったのだ。

 

 タイガだけならここまで上手くはいかなかった。もっと長い時間確実にかかっていたことだろう……アスナ様様だ。母親はタイガとアスナに何度も何度も頭を下げてお礼を述べると、子供としっかり手をつないでその場をあとにするのだった。

 

 

 

 タイガとアスナは背伸びをして、一息ついてしまう。時間としてはそこまでかかっていないが、夕日は落ちて辺りは暗くなっていた。タイガは軽く頭を掻いて呟く。

 

「いやぁ助かりました先輩……つか俺ほとんど何もしてないですね。すいません……」

 

 タイガはそう言って肩をすぼめる。すると、アスナはまた不機嫌そうにタイガの頭をバシンとチョップする。

 

「いってぇ!?またぁ!?」

「何言ってるの!最初にあの子に気づいたのはタイガ君でしょ?情けないけど、私は気づけなかった……だから、そんなに卑下しないの!」

「わ、わかりましたからチョップはやめて……結構痛いっす。」

「わかればよし!」

 

 そう言ってアスナはうんうんと頷く。すると、今度はニッコリと笑ってタイガへ言葉をかける。

 

「でも、タイガ君やっぱり優しいね!」

「……別にそんなんじゃねぇですよ。」

「そんなんだよ〜タイガ君は〜!……でも、これからはもっと頼ってね?」

「……善処します。」

 

 そんな事をつぶやきながら、タイガとアスナは荷物を持って、ショッピングモールをあとにするのだった。

 

 




タイガ:モモフレンズファン。好きなキャラクターはMr.ニコライで本も持っている。最近の悩みは外に出る時メイド服をしていないと落ち着かなくなる事、本人は自覚しないようにしている。取り敢えず何かあれば自分が全部何とかすればよいと思っている。

アスナ:タイガの事は可愛い後輩だと思っている……が、当人があまり人を頼ろうとしないのでもっとC&Cの仲間を頼ってほしいとも思っている。モモフレンズはキャラクターを知っている程度。
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