ミレニアムオスメイド 作:男でミニスカメイド服はキツイ。
「……済まない、タイガ……ここはどうやって解けば良いんだ?」
「あぁ、ここムズいよな。取り敢えずこの公式を代入するまえにこっち側を先に説いた方が分かりやすいと思う。」
「なる……ほど……兎に角やってみる。」
「応。」
この日、タイガは同学年でC&Cの仲間であるカリンとちょっとした勉強会をしていた。理由は……次のテストへの対策の為だ。
カリンは……まぁ、成績はそこまでいい方ではない。色々と事情があるとは言え、赤点スレスレが多いのも事実だ。そんな現状を何とかするための勉強会なのだ。
「ど、どうだ?」
「あぁ……計算ミスがあるな、惜しい。でも公式の解き方は合ってるから、ケアレスミスをなくしていけばいい調子になると思うぜ。」
「そ、そうか……」
カリンは再び問題集と向き合う……数学はカリンも中々の苦手教科だ。数字を見てるだけで頭が痛くなってくる。思わず弱音を吐いてしまうほどには。
「うぅ……数学は苦手だ……」
すると、タイガはさらりと言う。
「ま、頑張って克服していこうぜ。カフェの店主になるんだろ?なら売り上げの計算とかも考えて、少しくらい数字に強くなっておかなきゃな。」
「……夢の為と考えれば、少しはやる気が出てくるな……」
「おう、俺も勉強してるから、何かあったら声かけてくれ。」
そう言って、タイガは目の前の教科書を見ながらノートを取る……カリンは問題集を解きながら、タイガの方を見る。
その横顔は、いつになく真剣で真っすぐ目の前の教材に向けられていた。
もっとも、とっているノート表紙には『打倒美甘ネル!』と書かれており、内容もいかにしてネルを叩き潰すかが書かれていた。教材も、当然戦闘スキルを上げるための教材だ。
どれだけネルにご執心なんだとカリン呆れも出てくる……と同時に、子供じみた嫉妬心も…………はてさて、そんな感情を抱くようになったのは一体いつからなのだろうか。
カリンにとってのタイガへの第一印象は……妙な奴、だった。
不良上がりで部長から直接スカウトされた新人。キヴォトスで唯一の男子生徒。
数少ない
そんな男との初任務は、ミレニアムの機密データを持ち出した犯罪者を追う……まぁ、難しくはない任務だった。
特段これといった会話もなく、カリンとタイガは、順調に犯罪者を追い詰めて路地裏まで追い詰めることに成功したのだ。辺りには工事中の建物が立ち並んでいた。
「追い詰めたぞ。」
「ま、神妙にお縄に着け……ってやつだな」
「くっ……クソぉ!こんな所で!」
カリンは愛銃を向け、タイガは日本刀をぬきみにして片手に、もう片手にはレ・マット・リボルバーを持って向ける。
ターゲットは苦虫を噛み潰したような表情をしていた。そして、がっくりと腰を下ろす。
「……ふぅ、なんとかなったな。」
「おっかけっこなんて暫く振りだったよ俺。」
「良かったな、俺からは毎日のようにすることになるぞ。」
「どうせなら可愛い子ちゃんと海辺でしたいですけどね……冗談っすよ、そんなゴミ虫を見る目で見るな。」
「全く……」
カリンは深くため息をついてから、タイガ都共に、ターゲットのその手首に手錠をつけるために駆け寄ろうとする。
「……へっ。」
次の瞬間、ターゲットの表情は苦虫を噛み潰したような顔から、薄気味悪いニヤケ面に変わった……それを真っ先に察知したのは、他でもないタイガだった。
そして、タイガは知っている、一見窮地に追い込まれた人間がするこの表情は……大抵ろくでもない事の前触れだと。
「あっぶね!?」
「っ!?」
次の瞬間、タイガは咄嗟にカリンを押し出す……カリンはその行為の意味が一瞬では分からなかったが、すぐにその真意を知る。
次の瞬間、派手な爆発音とともに、工事中の建物から無数の鉄骨が降り注いだのだ。
カリンは咄嗟に押し出されたお陰で無事だったが……タイガは避けきれずにその鉄骨をもろに受ける羽目になった。
「た、タイガ!?」
カリンは思わず彼の名を叫ぶ……だが、その間にもターゲットは柵を乗り越えて先に行こうとする。カリンは板挟みの状態になると、鉄骨を押しのけてタイガが現れる。
「ぜぇ……はぁ……」
キヴォトスの生徒は丈夫だ……銃弾でもかすり傷が負わない程度には。しかし、今回はさすがに鉄骨が爆風と共にドストレートに頭上に落ちてきたせいで、タイガも少し頭から血を流していた。
カリンはその光景に一瞬驚くと次の瞬間、タイガは声を上げる。
「カリン……追え……」
「な、何を――」
「追えッ!!!」
「っ!……わ、わかった……」
カリンはタイガに気圧されて、一瞬タイガのほうを振り向きながらターゲットを追いかける。
それがなんとか功を奏して、ターゲットは無事に確保することが出来たのだった。
それで、タイガはと言えば、全身に痣をつけて、頭には包帯を巻かれ、片腕にギプスをつける羽目になったが、特に命に別状はなかった。
流石キヴォトスの生徒だ!なんともないぜ!
しかし、それでもある程度の入院は必要のようで……1日限定だが病院にタイガはお世話になることになった。
ネルが見舞いに来たら、唐突に煽られたりしてブチギレで傷口が開きかけたりしたが、まぁ基本穏やかな入院生活だった。
……穏やか過ぎて、暇に思えてしまうほどに。
「あーあ、暇だ。なんか起きねぇかな。」
そんな風に特に思考せず言葉を発するタイガ……そんな彼が居る病室に、ノックが掛かる。
「っ?はぁい……誰だ?」
タイガが入室を許可すると、見舞いの品を持った、もう一人の見舞いの客が来た……他でもないカリンだ。
「た、タイガ……平気か?」
「あぁ、カリンか。どうしたよ。」
「どうしたよ……って、あの……見舞いにだな……」
「まじか!?なんで!?」
「なんでって……一応、助けられたからだ……が?」
「……?あぁ。」
カリンがそこまで説明して、漸くタイガもカリンが見舞いに来た理由がわかったようだ。バカなのだろうかこの男は、否、バカである。
「お前……大丈夫か?」
「いや、なんつーか、あまりに咄嗟すぎて覚えてないんだよあの時の事。」
そう言って頭を掻くタイガ……カリンは目を細めてタイガを見る。
「……だとしても、どうしたよは無いだろう。」
「確かにねぇな……マジで……」
「……まぁ、いいさ。そんなことよりも、傷はどうだ?痛むか?」
「死ぬほど痛い。」
「そうだろうな……その、済まなかった。私を庇ったばっかりに……」
「……まぁ、マジで反射的にやっちまったからな。お礼も謝罪も必要ねぇよ。」
そう言ってタイガは笑ってみせた。カリンとしては、一体タイガがどういう性格をしているのかわからなくなってくる。
「だが……そのせいでお前は傷を……」
「俺だってヘイロー持ってんだし、頑丈なキヴォトスのにんだぜ?問題ねぇよ……それにまぁ、お前が無事で何よりだからな。」
タイガはさらりとそう言ってみせた…ロすると、カリンは流石に目を丸くする。正直タイガとの関わりは薄い方なのに……無事で良かったとは……すると、タイガば言葉を続ける。
「どいつもこいつも撃ち合いに慣れすぎて忘れてるけど……本来なら痛い目になんか遭わねぇ事に越したことはねぇからな。ま、お前が痛い思いしたり傷がないだけでもよかったよ。」
「……不良上がりとは思えないセリフだな。」
「そうかぁ?」
そう言って、タイガとカリンはお互いに笑い合う……と、同時にカリンは目の前の少年が少し不気味に思えた。まるで自分ならいくらでも怪我をしてもいい様な言い草に。
そしてこの時からだろうか……何故だか目の前の龍造寺タイガと言う少年を護らねばと、共に居なければ思い始めたのは。
まぁ、そんな過去話があったりして……今や同じコールサイン持ちとして頑張っていたりするのだ。
因みに、タイガの自らを被害の外に置く……簡単に言えば、自己犠牲精神も健在だ。
同時に、カリンも日に日にタイガに惹かれていたりもする。カリンも妙な人間に惚れ込んだと思うが、まぁ今さら何を言っても仕方がないだろう。
「……タイガ。」
「あん?」
「……少しくらい、私達を頼ってくれよ?」
「急になんだよ、つかアスナ先輩にも前同じ事言われたぜ……善処しますよ。ちゃんとね。」
「……なら、良い。」
そう言って二人はまた勉強に精を出すのだった。
カリンには夢が2つある。
一つは、カフェの女店主になる夢――もう一つは、良妻賢母。叶うかどうかは分からないが――絶対に叶えてみせるという意志の下、カリンはほんの少しだけタイガを横目に見るのだった。
タイガ:痛いのは嫌い。だけど仲間が痛がるのはもっと嫌い。兎に角仲間さえ良ければ自分はどうなってもいいと考える自己犠牲精神の持ち主。それはそれとして自分も助かるように頑張るが、本当にどうしようもない時は真っ先に命を投げ出すタイプ。バカだけど勉強は別に苦手じゃない。
カリン:将来の夢が良妻賢母。タイガとは一番任務で組む頻度が多い……同時に、タイガの自己犠牲精神に一番さらされているため、若干タイガに脳を焼かれている。