ミレニアムオスメイド 作:男でミニスカメイド服はキツイ。
「〜♪」
「……はぁ。」
ミレニアムのとある休憩所、そこではC&Cによる清掃活動が行われていた。C&Cの目的の一つには、ミレニアムに奉仕するというものがある。清掃活動等といったボランティアも、その奉仕の一つである。
タイガとしてこのボランティア活動、中々に嫌いじゃない。別に痛い思いしなくて済むし、こうやって掃除に性を出すのも悪くないものだ。偶にミレニアムの生徒にお礼を言われるとまぁいい気分になる。
「……はぁぁ……」
……ならば、何故タイガが溜息をついたのか……?その理由は簡単、本日一緒に清掃をしている人間が問題だ。
「〜♪」
楽しげに掃除をしているのは、タイガと同じく2年生のコールサイン03。室笠アカネである……はっきり言葉知らぬのであれば、タイガはアカネが苦手だ。
任務中に問答無用で爆弾を起爆させる爆弾魔でありながら、誰かに奉仕することを喜びとする根っからのメイド……二面性が怖すぎるのだ。
同じ様に施設を壊しまくるネルは、普段からあんな感じなので一周回ってある種の可愛げがある。
だが、アカネは違う……ナチュラルに普段と変わらない様子で爆弾による大規模破壊を行う。タイガも何度その爆破に巻き込まれたことか……
その為、タイガはアカネに対して苦手意識をもっているのだ。そんなアカネと、今日は二人っきりで清掃……大丈夫だとはわかっていても、なんとなく気が気でなくなってしまう。
「……?どうかなさいましたか?タイガさん。」
「いや……なんでも。」
アカネに問いかけられたタイガはそう呟いて掃除を続ける……まぁ、今は掃除の時間だ。そちらに集中すべきだろう……
「……届かねぇな。」
タイガば棚の上を掃除しようと試みたが、上手いこと届かない……仕方ないので、彼は部屋に備え付けられていた脚立を持って来る。
そうすれば、案外簡単に棚の上は掃除できた……そこまではよかった。一通り棚の上の掃除も終えて、タイガは片足を地面に下ろす。
「っ!……うおっ!?」
次の瞬間、ガコンと脚立が滑ってしまう。その弾みでタイガは脚立に脚を引っ掛けて倒れそうになってしまった。
(やべっ!?)
タイガは思わず目をつぶり衝撃に備えるが……次の瞬間、ガバっと誰かに抱えられるような感覚に身を包まれる。
タイガが恐る恐る目を開くと、目の前に映るのは天井を背にしたアカネの顔だった……
「大丈夫ですか?タイガさん。」
「あっ……はい……」
……タイガの脚は地面から浮いている。しかし、体に何かから後ろから支えられている。タイガは一瞬理解できなかったが、直ぐ様今の自分がアカネにお姫様抱っこされている状態だと理解する。
瞬間、タイガは顔から火が出そうになる。タイガもメイド服を着込んでいるとは言え男だ、さすがにお姫様抱っこは恥ずかしいにもほどがある……お姫様というか、くたびれた男子生徒なのだ、タイガは。
「あ……あぁの…………ちょっと下ろしてもらっていいっすかね?」
「あ、申し訳ありません。咄嗟だったので……」
「いや、むしろ助かったよ。ありがとう。」
タイガはそうお礼を述べて、アカネから下ろしてもらう。幸いなことに、脚立が倒れた程度で棚の中のものや、部屋には特に被害はない。これもアカネが咄嗟に受け止めてくれたおかげだ。
「あぁ、びっくりした。」
「気をつけてくださいね?仮にでもケガをしてしまったら大変です。」
「ちげぇねぇなぁ……さて、掃除もラストスパート、もうちと頑張るか。」
「ふふっ、えぇ。そうしましょう?」
しばらくして……休憩所の掃除を追えたタイガとアカネは、ちょっとしたブレイクタイムを楽しんでいた。ソファに座るタイガの前に、アカネの淹れた紅茶が出される。
「どうぞ、タイガさん。」
「おう、ありがとな。」
タイガはアカネへお礼を述べると、紅茶へと口をつける……相変わらず、アカネの淹れる紅茶は美味い。毎日飲んでも飽きないだろう。
「ふぅ、美味ぇ。」
「喜んでいただけて何よりです。」
そう言ってアカネはメイドらしい綺麗な所作で頭を下げる。
やっぱり基本丁寧でメイドらしい性格なのだが……あのすぐ爆破するという思考回路はどうにかならないのだろうか。
キヴォトスの人間らしいと言えばらしいが……とてもじゃないが、アカネの望むメイド像からは離れていっている気がする。
「……?タイガさん、いかがなさいましたか?」
「いんや……なんかもったいねぇなって……」
「……?」
「……ま、なんでもねぇよ。忘れてくれ。」
タイガはそう言って紅茶へと口をつける……そして、またこわばった顔がほころぶのを感じる。
なんだかんだ言ってもアカネが入れてくれる紅茶は仕事を終えて疲れた体にはいい薬になる。正直、アカネが入れてくれる一杯は本当に癒やしになるのだ。
「……にしても、今日のは一段と美味いな。茶葉が違うのか?」
「トリニティからいい茶葉が手に入ったので、使ってみました。」
「トリニティのか……どうりで味が良い訳だ。」
トリニティ総合学園といえば、泣く子も黙るお嬢様学校。そこのいい紅茶をアカネが淹れたとなれば、美味いのも必然だろう。
「…………ふふっ、でも良くわかりましたね?」
「C&Cに入っていろんな紅茶飲んでたらわかるようになっちまったよ。」
そう言ってタイガは軽く笑うと、タンスから茶菓子としてポテチを取りだす。アカネは思わず目を見開く。
「紅茶にポテチ……ですか?」
「……あぁ、まぁ、うん。」
「……合うんですか?」
「いんや?全く?」
そう言うとアカネは肩をすぼめる。すると、タイガはポテチの袋を開けて、その中に詰まった品物を見て呟く。
「……昔の友達がポテチ開ける度に何処かともなく現れてポテチ分けろって言ってきてな。」
「……失礼ですが、その友達って……今行方不明だと言う?」
「あぁ、今でもポテチ開けたらまたふらりと現れてくれるんじゃねぇかなって……思ったりして。」
半笑いになりながらポテチをつまむタイガ……暫くは気まずい無言の空間が続くと、沈黙に耐えかねたのか不意にタイガが言葉を紡ぐ。
「そーいえばよ。」
「はい?」
「いや、俺のコールサインって05だろ?……で、お前のコールサインは03な訳だ……間の04って誰なのかお前知ってるか?先輩達やカリンに聞いても04が居るのかすら知らないって言うしよ。」
……それは、タイガの以前からの疑問。何故自分のコールサインが05なのか、04は誰なのか?そもそも居るのか?ならば何故であったことがないのか……
「コールサイン04……私も
「……そっか。いや、普通になんで会ったことすらないのか気になってな。」
「私も、いつか会ってみたいと思っているのですが……」
コールサイン04……一体誰なのだろうか?何故姿を見せないのか?エージェントとしては、誰もその素性を知らないのが当たり前なのかもしれないが……C&Cの人間としてはどうにも違和感がある。
「……俺も会ってみてぇな。コールサイン04に。」
……タイガはそう呟く。
タイガが04ついて気にしているのは、ただ同じC&Cのメンバーだからではない。
タイガの居なくなった友人が、その04かもしれない。その低すぎる可能性に望みをかけているからなのかもしれない。
(……久々に会いてぇな……
タイガは、紅茶に映る自分を見ながら居なくなった友に想いを馳せる。そんな儚げなタイガの顔を見ながら、アカネはこころの中で呟いた。
(……カリンも難儀ですね。)
アカネは同級生に、心の中でそんな言葉をかけながら、また紅茶を一杯口に含むのだった。
タイガ:ポテチはコンソメ派。1年の頃はポテチを開ける度に友達が何処からともなく現れてシェアしろとせがんできた。ある日を境に友達は姿を現さなくなり、タイガも捜索しているのだが、まるで
アカネ:ミレニアムボマーメイド。お掃除と称して爆破するやべー人。何度かタイガを爆発に巻き込みかけた前科あり。なんやかんやでアカネの淹れるが一番美味いと思う。