凡庸でありふれた転生者達の小話   作:血涙鬼・彼岸

1 / 62
第一章 沖縄の萌芽編
覚書


 

「メシアンを信用する奴?なるほどそいつは詐欺師に自分のキャッシュカード、クレジットカード、その暗証番号を預けられるって事か?そりゃ凄いな。俺ならそんな物狂いに関わるのは真っ平御免被るね」

 

「そりゃそうだ、それこそ性犯罪者に自分の女房子供差し出す様なもんだぜ」

 

(ある名もない黒札達の会話の一幕より)

 

 

 

此処は山梨方面の富士山……の何処かにある、只人では『招かれる』かでもせねば存在を知覚する事すら不可能な言わば神域に限りなく近い場所である星霊神社、いや一般的に【ガイア連合】と言った方が伝わり易いだろうか?後々に『黒札』と呼ばれる超人(凡人)達の寄り合い所帯が存在する場所がある

 

この世に蔓延る『悪魔』なる怪異……如何に弱かろうと熊の如き力と蜚蠊にも似た素早さとしぶとさを備えた惨虐無惨凶悪無比な悍ましき怪物が闇に蠢いているのは『世界の裏側』を少しでも知っていれば最早常識だと言っても過言ではないだろう

 

そして……その『悪魔』どもは何れ表の世に現れこの世界を喰らい貪ると言われている。いやむしろその前にとある淫祠邪教が表を踏み躙る結末が先かも知れないか?

 

ガイア連合は今挙げた未来の破滅と今差し迫るその悍ましき淫祠邪教への対策の為にとある特殊な生まれ(転生)を共通点に持つ者達の寄り合い世帯である。例えるならばとある古いアメリカンコミックである『ウォッチメン』の構造に近いものがあるかも知れない……彼らが超人となった起源は大半がこの神社の神主でありウォッチメンで言う処のDr.マンハッタン*1に該当する男が『同じ生まれの同胞』を集めてこの世界の未来に彼らが彼ららしく生きる力を与える目的で出来たのが【ガイア連合】である

 

まぁ……この世界の終末時計は既に手遅れの段階に達し、このまま何もせずにいれば世界はとある邪神とその手先を讃える陰気臭い讃美歌が虚ろに響き、殆ど脳髄だけにされた人間の精気を貪る悍ましい『愛と正義』を振り翳すドス黒い邪悪らが我が世の春を謳歌する『秩序の地獄』が待っているだろう

 

……尤も、この団体が生まれたきっかけはインターネットの書き込みであり、そのノリもネットの冗談、そしてその【ガイア連合】という名前もネット内での安価というシステムで名付けられたやはり冗談みたいな内容で生まれた一種の冗談宗教みたいな?この世界のある法則で言うならば『ヒーホー属性の極み』みたいな団体だと言って良いだろう

 

しかし彼らが超人になる為の修行は(志願する難易度次第ではあるが)非常に過酷かつ苛烈なものであり、大半の者達は超人になる為の真の入門に至る最低条件である『覚醒』に至るまで様々な……肉体、精神を問わぬ地獄の様な苦痛を踏破してそれに至る必要がある

 

人に依ってはこの神社に来る前から様々な理由で覚醒していたり、この神社に入った瞬間に覚醒したり……悪ければこの地獄の様な覚醒修行を十日以上続けて特殊な修行の果てに目覚めた者もまた存在する

 

そして……そうまでして何故彼らは『覚醒』を目指すかと言うと……先に挙げた悪魔の存在や今差し迫る悍ましい脅威であるある淫祠邪教の跳梁跋扈への対策と自衛の為である

 

この世界で油断すれば嬲られ踏み躙られて無残に死ぬ……だけで済むならむしろ幸運であり、下手をすれば魂すら未来永劫悪魔や件の淫祠邪教の玩具として弄ばれる末路を辿るだろう

 

このガイア連合に所属出来る者達には幾つかの共通点がある……先ず、皆必ず『悪魔なぞ存在しない比較的平和な並行世界からの転生者』である事、そして『霊的な意味で非常に高い素養が必ず存在する』事、そしてこれはそれぞれの趣味嗜好の関係で全員ではないが『この世界がとあるゲームに最悪の意味で酷似し過ぎている事を知っている』と言う事だろう

 

 

『女神転生』

 

 

それはとある伝奇ノベルを元に生まれた神と悪魔の身勝手かつ不条理な争いに巻き込まれた人間達がその神や悪魔に与したりその神や悪魔を討つ為に絶望に挑む……ファミリー・コンピューターが現役だった時代から存在する非常にダークかつディープでマニアックな分類のRPGゲームの一つの金字塔である

 

その非常にダークで救いの無い、日本以外では発想さえ出ないだろう尖りに尖った世界観とシナリオ、世界観に勝るとも劣らぬ苛烈なゲームバランス、禍々しく凶悪なれど美しくもある悪魔のビジュアル、非常に洗練された音楽、そして従来のRPGには無かった『道中の雑魚敵を交渉で仲()にする』という当時としては非常に斬新極まりないシステムで一世を風靡した人気ゲームの一つである

 

……考えてみて欲しい。そのゲームをプレイするなら兎も角、そんな夢も希望も無い悪夢と絶望に満ち満ちた末路はほぼ破滅だけしか無い地獄より尚悲惨な世界に唐突に転生させられる恐怖と絶望を

 

世の中には「神も仏も有りはしない」という嘆きの言葉はあるが……この世界ではむしろ「神も仏も悪魔と一緒だ、皆滅んでしまえ」になるだろう

 

そんな祈りに何の価値も無く……むしろ『神に餌を与える』と言う意味では祈りすら有害な絶望の世界ではあるが、それでもこの地の存在を知れて加入する判断の出来た彼ら(俺たち)は幸運である

 

時に、世に言う『パンドラの箱』なるものにはありとあらゆる災いが封じられていると言われているが……その底には最悪の災いである『前知』という避けられない未来を強制的に見せられる災いが存在すると言われている。しかし彼ら(俺たち)はその『前知』と共にパンドラの箱に眠るもの一つの封印されしものである『希望』も掴む事に成功した、それだけは間違いなく救いであるだろうから

 

そんなパンドラの箱の底に沈んでいた彼ら(俺たち)ではあるが、まぁその幸運を活かすも殺すもそれは千差万別であり極端な例えで言えば英雄の素養を発現させる者や覚醒しようとも凡俗が抜けぬ一般人寄りな者、修羅の道を猛進する者からこの状況であろうとも自堕落かつ他責的に過ごす者からストイックに生きる者や背徳と退廃と快楽を良しとする者まで様々な者達が玉石混交に存在する混沌の坩堝とも言える組織?まぁ多分組織だと言える筈のナニカではあるだろうか?

 

この物語は……比較的修行に精を出してはいるが基本的に凡俗凡庸寄りである、所謂『半モブ俺たち』の日々の切り抜きだと思えば良いだろう

 

*1
ウォッチメン世界で唯一の『本当の超人』、彼の発明品の力でこの世界に沢山の『ヒーロー』が生まれた事を由来に

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。