此処からある程度展開をトばします……少し超展開な気もするけど
例えば仮にメシアンどもが遠い未来辺りで数の暴力か何かでガイア連合を乗っ取ったとしよう。そして意地汚い奴らは俺たちの功績も成果も自分達のものだと恥知らずに喧伝するだろうさ。それが奴らのお家芸だしな
だが、それやったら俺たちの『ニキ、ネキ呼び』も奴らは乗っ取る訳だ。真面目腐って脳死状態で意味も解らず杓子定規にニキネキで上層部を呼ぶメシアンどもの間抜けぶりだけは嘲笑えそうだな
(ある酔った黒札の酒席での愚痴)
あの初回限定成功率激低の洗礼を超え、彼らは遂にそれぞれのシキガミがロールアウトするのを心待ちにしていた。まぁあの洗礼から次の日、疲労困憊だった上に温泉に入ってカレー食べて寝る……前に彼らの義務として書くレポート記載をこなしてからの爆睡だったからそれこそ彼らは昼間になるまで爆睡していたりする
だいたい5から6レベルだった彼らが一日で更に5、6レベルも跳ね上がる様な荒業を大した被害も無く甚大な疲労と半日の爆睡、補填や修繕費用負担の契約が無ければ装備、アイテム、スパルトイの修理費で赤字になっていたかも知れないが、少なくともその程度で済んだのは彼らがちゃんと大人数でパーティーを組んでアイテムを出し惜しみせずにガンガン仲間達の為に使ったことやそれまでの身体を削る様な努力などのおかげだろう
その日は装備やスパルトイも修理中なので流石に休養日に当て……いや、創はその修理見学に向かい、翔太も魔法石作成バイトに顔を出してマハ・ジオストーン作りの内職に入ったり、稟や陽介も修練場で格上達に模擬戦を挑んでボコボコにされていたり、ヴェルは蔵書庫で魔法の書物で勉強したり、裕人は食堂でジャンニキの手伝いを申し出てガイアカレーのレシピや技術を見て盗もうと試みたりと全く休もうとはしない
自由に行動出来る夏休みは非常に短い。一応まだ三十日以上あるが、逆に言えばもう残り三十日其処らしかないとも言える
稟たち東京組ならそれなりの長期休暇があれば此処に来る事は出来るだろう、現在四国在住留学生という身分のヴェルも更に時間は掛かるが未だ翔太に比べればマシな部類ではある。翔太だと現状飛行機で長時間掛けて移動するか沖縄、山梨間を転移出来る密輸課高位メンバーに予約を入れて少なくと五百魔貨という大枚叩いて転移するしかないのでまぁ大変なのだ
稟達東京組からしても東京から山梨というのは結構厳しい距離なので出来る修行はやっておくに限るし、ヴェルも翔太よりはマシとはいえ四国から山梨は非常に遠いので今の非常に恵まれた修業環境は殆ど今だけしか使えないから今が踏ん張り処であると、この期間中に伸び悩むならまたショタおじの地獄修行に短期突入も覚悟に入れて……と、六人全員そう思っている
まぁ実際今以外でもこれから生涯踏ん張らないと破滅一直線な世界である、という自覚があるから。だが
この星霊神社から外の世界には殆ど安全圏は無いし、霊力は使えば回復するのが大変らしいと聞く。だから外に生きて故郷を
少なくとも一度は必ずこの夏休み中に六人全員で行く事にした『地方遠征』でその格差を先に体感することになっている。一応表向きとはいえこの神社に来た理由はアルバイトや就職案内という事もあるので一度はそれっぽい事をしようという次第である
流石に六人分の専用シキガミ短期間同時ロールアウトは厳しかったらしく、それぞれ陽介、創、裕人、ヴェル、稟、翔太の順で完成した
……今にして思えば、彼らはこの地点で少しでも怪しむべきだったかも知れない。掲示板を見れば専用シキガミの予約は数ヶ月待ちであり、現状では早くとも彼らが進級するぐらいに完成するのが普通である筈なのだが
意味深に書いてはいるが、今回は新しい嫁シキガミ希望者達の福音として六人分の最優先権を行使してでも行う為に必要不可欠だとスパルトイ制作スタッフの説得が成功したから出来たプログラムである
丁度やる気と根性のある奴が複数人来たという幸運もあるし、と軽い気持ちでやったらあの悪名高い『最初の洗礼』をスパルトイを巧く活用して乗り越えてくれるという大金星を挙げてくれ、しかもその日の内にレポートまで書いてから提出してくれたので製作者である大輝のプレゼンはノリにノっていたらしい……本来ならば『撤退戦時の有益性』についての考察に使われる予定のイベントだったが、あの六人は本当に巧くやってくれた
……むしろ、やり過ぎてしまった
この大金星から、この六人のうち一人の故郷である沖縄……地理的問題で日本防衛に於いて決して欠かせぬ立地にあり、その先の大戦にて抱えた米軍基地の影響により日本で一番メシア教が蔓延る場所であり、しかも先の大戦以降に発生したメシア教すらもう触れることも出来ない忌み地扱いの超ド級危険異界を抱えた火薬庫の管理者案件に『比嘉 翔太』を用いるというとんでもない案が提出される事となった
沖縄生まれの俺たちなら後数人は存在するが……残念ながら今まで基本的に故郷に嫌な思い出しかないから沖縄を捨てた者か連合の脛かじり、戦闘には適さない者しか居ないので沖縄支部の管理人に相応しい者の宛が無かったのだ
一応、修羅勢や見どころのありそうな誰かに沖縄支部の管理を……という案もあったが、残念ながら皆目的があったりそういう能力が完全に皆無の修行バカか外部、現地民嫌いばかりだったのでその案は凍結された
ショタおじや俺たちきっての卜占スペシャリストである『くそみそニキ*1』が『この六人が揃わないと絶対上手くいかない』と太鼓判を押して推薦した……あの二人やこの卜占会に参加出来る力量持ちの俺たちの予言が完全一致した結果秘密裏に沖縄支部の設立とその卜占の結果必須となった残り五人の沖縄送り計画が発足するのだった
沖縄の危険性はショタおじとて理解している……しかし重要性も理解している。だからこそ彼らみたいなまだ若い身空の新米俺たちを苛烈な死地で殆ど孤軍奮闘させる訳には行かぬと否定材料の為にやった卜占が見事に直撃し、その結果もうこれは彼らを沖縄に送るしかない状況になってしまっていた次第である
「……どうしてこうなった?」
その結果が出た後のショタおじの一言である
まさか根性とやる気のある性根も良い将来有望株とはいえ、非常に一般的かつド新人六人に任せるには余りにも苛烈で危険な大難事である。故に彼らが希望するならスパルトイ運用試験後にショタおじ直々の苛烈な修行短期間コースが開講される事になり、その任務を受けてくれるなら財界俺たちやガイア連合の手厚い支援も確約される運びとなった……勿論、成長を妨げない程度にではあるが
そして、夏休みが終わって一年間の間だけスパルトイ計画のリーダーでありショタおじ公認悪魔召喚士である『朝倉 大輝』が相棒たる俺たちの一員にして『前世からの妻』と共に彼らの師匠として導き、本当にどうしようもない時のケツモチを務めてくれる事が決まった……本来は彼自身もとある支部の長だが、様々な事情もありまぁ一年ぐらいは彼らに教鞭を摂る生活を送る余裕がある、故郷であるその支部に所属する他の俺たちが代理で支部長をするぐらいは簡単な引き続き一つで出来るぐらいにはシステムが整っている。新しい組織であるガイア連合にしてはやけに整ったシステムではあるが、まぁその理由は後日に何らかの形で語る事になるだろう
大輝達の暮らす郷で保護しているヴェンデリンは大輝に着いて行く事は容易いし郷里の家族友人恋人の身内保護を条件に出せば今すぐにでも行くだろう、残りの四人は幸いな事に保護者達がガイア連合に関わる会社と縁深く、中には『彼女の父親が俺たちの一員』という者まで居るので富豪俺たちの手練手管に任せれば夏休み後は全員即沖縄に転校決定である……それと四人の説得はショタおじと幹部や財界俺たち一同でしっかり行い誠意を見せる必要があるが
かなり突拍子の無いジェットコースターな展開ではあるが、それだけ沖縄支部を任せるに足りる人材が見つからなかったこととその焦りからこの早急な決断と相なった。翔太やヴェンデリンにも重い使命を背負わせる事になるのでちゃんと説得する必要があるから六人全員にちゃんと誠意を見せなくてはならない
だが、それは彼らがちゃんとテスターとしての責務をどう完遂するかで最終判断が下される。このままいけば確実にこの話は成立するけどまぁ万が一の不測の事態というものは世の中にはあるが
ショタおじの見立てでは彼らは割と運命愛され系である稟と運が悪めの陽介以外皆『幸運力は高い分類だが運命力は普通寄り』と推定していたが……それでも『偶然』というものは時にその全てをすり抜けるものだろう。彼らが奇縁に導かれて大きな時代の潮流に巻き込まれるのもまた定めなのかも知れない
彼ら……特に翔太がメインとなって沖縄関係のあれやこれやをやらないと先ず沖縄方面の未来は碌な事にならないし、失敗すれば九州域すら様々な厄災に飲まれて終わるかも知れない。最悪西日本全域にその厄災が撒き散らされてしまう*2
兎に角今は召集出来る幹部達を召集準備し、財界系俺たちの一員でありこの六人のとある一人の彼女の父親でもある『マダオニキ』を最優先で召集しての事前説明を行う必要がある
この二週間弱は非常に慌ただしい事になりそうである
そんな、裏でのごたごたや未来に巻き込まれる激流の兆候には今は未だ無関係な翔太は……マハ・ジオストーン作成の修行兼アルバイトで時間を有効活用して、ついに来たシキガミ引き渡しを迎える直前にとある文章を読ませられていた
『シキガミの十戒』
旧約聖書のモーセが神より渡された人間と神の間に取り決められた十の戒律を記したあれ……のパロディのまたパロディだ
少なくともこのガイア連合で神を敬う、偶像禁止、神の名を呼ぶ*3ことを守る者など『天使部*4』にすら存在しない。むしろ一部の俺たちには聖書に痰を吐き、嬉々としてそれを着火剤にまだ生きている過激派メシアンや天使を薪にしてキャンプファイヤーする派閥すら居る、それすらメシアンや天使に対して穏健な部類の俺たちですら大概は『そらそうよ』と納得するぐらいにはあの神*5を唾棄し嫌悪し軽蔑するのが俺たちである……むしろ不倶戴天の怨敵そのものだろうあの邪神は?
しかし、この『シキガミの十戒』は違う、これはそのパロディである『犬の十戒』若しくは『犬との十の約束』を元にシキガミ製造班や『シキガミガチ勢』と呼ばれる俺たちの一部が作成した新しいシキガミを受領する者全てが必読義務扱いしてくる書類であり、これを誦じられるぐらい読み返すのがシキガミガチ勢の嗜みだとか?
以下にその内容を書き記す
1:私の一生はだいたい貴方と同じです。あなたと離れるのが一番つらいことです。どうか、私と暮らす前にそのことを覚えておいて欲しいのです
2:あなたが私に何を求めているのか、私がそれを理解するまで準備と共に待って欲しいのです。私は常に貴方の事を考えて生きています
3:私を信頼して欲しい、それが私にとってあなたと共に生活できる幸せなのですから
4:私を長い間叱ったり、罰として閉じ込めたりしないで下さい。あなたには他にやる事があって、楽しみがあって、友達もいるかもしれない。でも、私にはあなたしかいないのです
5:私に飽きても時々話しかけて欲しい。あなたの心さえあれば私はやってゆけます
6:あなたの周囲がどのように私を扱ったか、私はそれを決して忘れません。私にも感情はあります
7:私を殴ったり、いじめたりする前に覚えておいて欲しいのです。私は強い力であなたを傷つけることができるにもかかわらず、あなたを決して傷つけないと決めているのです。性癖なら全身全霊で受け入れますが殴らせるのだけは心が苦しいです。マゾ性癖を満たすのはシキガミの意義的に厳しい事です
8:寝取り寝取られ脳破壊は嫁婿シキガミにとって最悪の虐待です。ミナミィネキの甘言に惑わされないで下さい……悪魔しょうかんは悪い文明
9:私は子供を産む為の力はありません、その事だけは忘れないで下さい。それだけは覚悟して私の手を取って下さい
10:あなたが側にいてくれるからどんな日も幸せです。忘れないで下さい、私は生涯あなたを一番愛しているのです
一部某エロの権化に関わるアレな内容もあるが、それでもシキガミと……それも嫁、婿シキガミを迎える者達にはなるべく読み聞かせたい内容ではある
それを熟読して……色々な覚悟を決めた翔太は最後の書類にサインを記入する。これで『ルカ』は彼に納品される事が決まった……自分自身の身体の肉や血をこれでもかと注ぎ込んだ高級シキガミをこの期に及んで受け取らない者などこれまでもこれからもとんと聞かない話ではあるが
そして翔太の前に運び込まれた棺桶の様にも見える高級シキガミ用保存コンテナが現れる。その蓋が翔太の眼前で自動的に開く
その箱に納められていたのは……正に美の結晶だった
見た処の年齢は二十歳に届くかどうか?腰まである艶やかなストロベリーブロンドの髪、抜けるように白い肌、だいたい162㎝ぐらいの身長に絞まる処は絞まり、豊かな処は豊かなメリハリの効いた綺麗な身体つき……そんな絶世の美女の姿をした彼専用の魔法支援系花嫁型シキガミ『巡音ルカ』がその棺で眠りながら翔太を待っていた
嘗ては一反木綿や折り紙擬きがスタンダードであり、『悪魔召喚プログラムは無い』からその代替えプランとして作られたシキガミというガイア連合最大の特徴……最初は首だけが人間に近く胴体は紙製のハリボテだったが、様々な俺たちの不撓不屈の努力の結果近年では殆ど人間そのものな専用シキガミがスタンダードになり、このルカみたいな美しい存在がデフォルトとなった
彼女持ちである翔太以外の五人はそれぞれバラバラの人間以外の形態を選択していると聞いた。魔法が苦手な稟は支援用の浮遊する認知異界対応機能付き魔法支援タイプの自立思考式書物型でその表紙の色と人格が女性型らしいから銘は『楓』、裕人は隠密活動の支援に自立思考式外套型で銘は『影法師』、創は前世で飼いたかった兎で名は『シア』、ヴェンデリンは自身の長所を伸ばすつもりで自立思考式魔法杖型を選び銘は内部の人格から『アルフレッド』、陽介は勿論魔剣型で銘は『シルバーソード』、それぞれ皆自身の身体二人から三人分は注ぎ込んだ力作揃いである
仲間達のシキガミを見ながら自分の自慢のシキガミを見る……まるで
『……ついこの間まで、最初は生首状態でご対面だったんだったか?今ではまるで硝子の棺に眠る白雪姫か、さもなくば眠り姫だなさしずめ』
そんな印象を感じながらこのストロベリーブロンドの眠り姫に口付け……前世今生初のキスをする。認証完了
「……おはようございますマスター。識別ネーム『巡音ルカ』と申します、コンゴトモヨロシク」
未だ生まれたばかりで情緒が無いからか機械的な冷たい印象ではあるが、非常に流暢な会話をこなせる……それなりに一般スキルをガン詰みした結果だろうか?ついでに悪魔が仲魔になる際の定例文である。これをプログラミングしたのは何処の阿保だろうか?そのセンスは嫌いではないが
ともあれ、こうして彼は自身の専用シキガミを入手することに成功した
アナライズしたルカのデータはこんなものだった
巡音 ルカ 人間型シキガミ Lv1
ステータスタイプ:【速】、【魔】タイプ
耐性:呪殺、破魔、精神状態異常無効
スキル:ブフ、ムド、ディア、マカカジャ、チャクラウォーク
一般スキル:嫁入りセット+良妻セット*6、音楽セット基礎*7、運転、体術
装備:ボーカロイド式衣装ルカバージョン
魔法型だけあって魔法系技能に長けた造りであり、一般的スキルに偏重した仕様ではあるが非常に優秀な魔法使いだとわかる……指定に入っていない破魔無効とマカカジャ、しかも魔法使い系垂涎のチャクラウォークというレアスキルまである。これは霊地の休息が無くとも霊力の回復が可能になる大人気レアスキルである。このスキル持ちの回復魔法使いは外部で活躍する際に非常に重宝するのでありがたい話である
恐らくは翔太が使った大量の血肉の影響だろうか?基本的に白兵戦にスキルは回避用の体術以外は無いけど腕力は多少はあるから予備のグラディウスを後で渡しておく予定ではある。まぁ護身用にはなるかも知れないし
兎にも角にも翔太もこれでシキガミ獲得である。明日は……先ずは受付に寄って『ルカに音楽の基礎を教えてくれる人』を探して貰う事にした。一応宿舎で夜に聴こえる綺麗な子守唄の歌い手さんの紹介と基礎レッスンを希望し、報酬として今日作れて一個だけ許可を得て持ち帰ったマハ・ジオストーンと百魔貨を予め受付に提出しておく
後は未だ自我が完成していないルカを伴い、図書室の浅層部にある絵本などを読み聴かせながら彼女の自我が少しずつでも芽生え易くなる様に語らいから入る
その日一日は割とゆっくり過ごせた……そしてその日の夕方に『例の歌い手さん』がその仕事を引き受けてくれたのである
明日を楽しみにしながらルカを寝かしつけて自身も寝る。明日は簡単な音楽のレッスン後はまた修業とルカの強化目当ての異界探索訓練からである
「おやすみ、ルカ」
まるでアメリカの幼い子供にする様な額にキスで優しく眠らせておく。明日からはまた大変だが彼女には頑張って欲しいものだ